ぱーてぃ!
めーーーーしいいいいいいだああああああ!
「うっひょ」
「静かにして下さい、らいうさん。今自分たちは、パーティの常連……つまり、こういう場に行き慣れている人としてここにいるんですから。」
僕はフューに手で口を塞がれた。
喋り終わったフューが手を離したので、僕はすかさず言った。
「めし。」
今の僕ならわかる、常に腹が減っているビアンカの気持ちが!
「静かにして、下さい、この鳥以下狸。」
ひうっ。フュー怖い。
「にくー……にくをくわせろー……」
少しばかり静かに主張してみる。
「とりあえず、らいう、食え、ローストビーフ。」
う……うまあああ!
ジューシーな味わい!うまあじ!
ジュン優しー、冷たいフューとは違う!
「何か言いたそうですね、らいうさん。」
「なんにもないヨーー」
やばい、怖い、フュー。なんかずうっと怖い。
あれ?サンクは?
サンクは、ガチガチに固まっていた。
……えっ……意外……。
「サンクあんまりこーいう場来たことない?」
「……っ!?……あ、らいうちゃん……いいえ、そんなことないわ。大丈夫、大丈夫……」
ぬー?
サンクはゆっくり深呼吸をした。
「ええ、大丈夫、落ち着いて計画を遂行しましょう。」
パーティ会場では、きれいなおべべに身を包んだ人たちが、あちらこちらで談笑している。
怪しい動きをしたらいかにもバレそうだ。
まずは僕のターン……人目を引きつける役!
みんながダンスしているところにたぬき姿で登場、真ん中で華麗なダンスを踊るのだ!
ふるふるふるふーんふーん、ぬぬーんぬん、ぬ…
「今流れている曲はこちら、天才ピアニストによる生演奏で……」
あ、あれ!?僕、全然注目浴びてないんですけど!?
司会っぽい人が紹介した、天才ピアニストにぜんぶ持ってかれちゃった……天才ピアニストだからしょうがない……天才ピアニスト……僕も気になるもん……。
しかあしっ!ここでくじけるわけにはいかない!そうは問屋ががらがらがっしゃん!しない!
「らいうちゃん、だめ。今はだめよ。また後で、また後で機会を見て計画を遂行しましょう。今は只の舞踏会参加客として振る舞って。」
サンクにぐいっと引っ張られて、僕は人型に戻った。
「ただの舞踏会客って……どうすればいい?ローストビーフを永遠に食べ続けるでいける?」
「いけないわね。私がリードするから、踊りましょ。一緒にいたほうが何かと都合がいいしね。」
僕とサンクは踊り始めた。
サンクに比べて身長が低い僕は、半ばサンクに持ち上げられる形で体を揺らす……とそのうち、体がパターンってやつ?を覚えてきたのか、時々床に足がついても、サンクの足とぶつからなくなってきた。
そうやって、サンクが僕を持ち上げなくても良くなった頃、サンクが声を潜めて言った。
「……以外ね。もう少し視線が集まるものかと思っていたけれど。」
「それって、さっきのたぬきダンスのこと!?」
サンクがしーっと言って、困った顔をした。
「今の私達よ。私とらいうちゃんって、その、傍から見ると……」
「釣り合わないー?」
「ええ……って、違う、違うのよそうじゃなくて」
何を焦ってるのさーサンク?
「あーえーっと、月とスッポン?」
「違うわよ!あんまり一緒にいるようなタイプじゃないわねって意味!らいうちゃんはらいうちゃんで素敵なところがあるの!」
そうサンクがばーっとまくし立てた。そして、はっと口を抑えた。
「ごめんなさい、大きな声出しちゃったわね……」
「周りの人たちは気づいてないみたいだよ?なんかいっぱい人いるもんねー」
皆、思い思いにくるくると踊っている。……思い思い、だと思ったのは気のせいかも。皆同じ踊りだ。決まった動き、決まった顔。
隅っこの方に、ジュンとフューが見えた。ジュンはひたすらフューの後ろに隠れている……うーん、僕と一緒にエアサルさんに会った時みたいだ。情けないってこういう事を言うのかも。
そのままサンクにリードされたまま、僕はその場でくるくるとターンした。布ドレスの裾がふわあっと広がる。……ほどけたりしないよね?
「サンク。なんか心がごちゃごちゃしてる?僕に話したら、楽になるかも。」
僕は言葉を選びつつ、サンクに問いかけた。サンクはずーっと難しい顔をしていて、うーん、心に余裕がない、ようにみえる。その状態って、えーっと、給食ワゴンの後ろに乗って廊下を走るみたいな……ともかくとっても危険だ。
「……そうね。」
サンクはそう一言言って、僕とゆらゆら揺れた。
「あのね、らいうちゃん。私は、ジャック様にね、命を狙われているのよ。」
僕は思わずサンクの足を踏みそうになった。えっ!?えっ!?
「ジャック様はね、何人もの人を殺したの。……たぶん。証拠は、無いけれど。」
サンクは僕を抱き寄せる。
「私は見てはいけないものを見てしまったの。」
サンクは僕を離す。
「私は思わず話してしまったわ。仲良くしていた警備員さんに。そしたら、その時起こっていた連続殺人事件の次の被害者は……彼女だった。」
確かに彼女は一連の被害者の特徴に合致していたけれど。それを知ったのは随分あとだった、とサンクは続け、そして、くるくるとサンクは僕を回す。
「もう、私は誰にも言えなかった。だって、そんなことしたら私の周りの人たちがみんな殺されちゃうもの。……ううん、そう思って、逃げたかっただけなのかも。」
もう一度サンクは僕を抱き寄せる。
元々、彼の事は苦手だったと。私を、価格がつり上がっているから価値がある絵画の様に扱う人だったから、と。
「だから、私は黙って逃げたの。ついてきてくれたお母様は何も聞かなかったわ。」
僕は反り返る。
「その後、彼は交通事故にあって死んじゃった。そういう話を、人伝に聞いたわ。新聞にも、載ってた。」
サンクが、僕を持ち上げる。
「本当は人の死にほっとしちゃいけないのだけれど、でも、やっと、眠れたのよ。」
もう一度元の形に戻って、僕らはゆらゆら揺れる。
「そのはずなのにね、何故か、居るのよ。あそこに。」
サンクの肩の上から、ステージの上にいる、不健康そうな青年が見えた。まるで死人みたいだ。
「どうやって逃れたかは分からない。そもそも交通事故で死んだっていうのも嘘だったのかも。」
サンクは少しばかり踊りを止めて、言った。
「でも、私、向き合わなきゃ、いけないわよね。」
サンクのSUN値ピンチ。




