ぱーてぃ?
がやがや……
僕らはそっと、スライス邸の様子を伺った。
大きなお屋敷に、大きな庭。
大きな庭には人だかりが複数できていて、たくさん馬車も停まっている。
絢爛豪華な衣装に身を包んだ老若男女が、談笑しながら屋敷へ向かっている。
「まさか本当にやっているとは思いませんでした。いかにも暗殺されそうですけど。こんな腑抜けた場所。」
後ろのフューが毒を吐いた。うへえ。
「それがそうでもないのよ?警備は厳重だし、怪しい動きをしたら痛い目にあうわ。」
えいっえいっとサンクがしゃどーぼくしんぐのマネをした。じょうず!
「とりあえず行こうよ〜!僕お腹すいたーー!」
「馬鹿らいう!黙れ!静かにしろ!いいか、目的を見失うな。パーティに遊びに来たわけじゃない!飯を食いに来たわけでもない!目立たないように紛れ込むんだぞ!」
うう……ジュンの拳が僕の脳天をゆらして、ぐあんぐわんするよう。いいじゃんお約束じゃんパーティ来たらまず食べ物漁りは鉄板じゃん……。全部見透かされてる……なんでえ…?
それにしても、五人一組のパーティと、大宴会の方のパーティで紛らわしいなー…。片方はこう、ほら、こう、ずんちゃずんちゃとか、美味しい方とか、付ければいいのに。
僕らはもう一度茂みの中に戻っていって、最後の確認をした。
サンクが一つずつ、パーティーにいるものを言っていく。
「まず、招待状ね。」
「偽造済み、ですね。」
うん。そこら辺の身なりがいい人を捕まえて、招待状を奪って、名前を書き換えた。
悪いことしてるなー。悪いことしたなー。悪かったなー……。あとでパーティのご飯持ってきてあげよう。きっと食べたかったに違いないから。
「次に、ドレス。」
僕らは全員ドレスアップしていた。
サンクは、薄紫色のショートヘアを編み込み、にして、リップやチークをつけて美しさに更に磨きをかけ、ハイヒールを履き、薄紫色のマーメイドドレスを着ていた。薄紫色の薔薇がモチーフのようだ。似合う〜!というか、サンクは多分、何着ても似合うと思う!
フューは、メガネを外し、金装飾が多く入った黒いタキシードを着て、なんか、香水をつけてる。何つけてんのー?って聞いたら、ジンジャーだって言ってたけども。……あれかな。緊張をほぐす的な。生姜湯的なあれかな。
そして僕は!
なんと!サンクの粋なはからいにより!
ドレスを着ることができたのだった!……えーっと、これがどれだけすごいことかというと、僕は防御力?とやらがちょっとでも衣装を着て上がろうものなら、弾かれてしまうので普通のドレスは着れないし、おしゃれも楽しめなかった。今までは!今まではね!
僕だってドレス着たかったのだ。一応これでもレディなのでね。ふふん。
そこでサンクのおしゃれテクがキラリと光り、一枚の、防御力もテクニックも付いてないただ布を上手に僕に巻き、ドレスっぽくしてくれた。……いやもう、これはドレスだ!めいっくあっぷだ!そして髪を降ろさせて、暑いハサミでこてこてして、立派なしゅくじょたぬきがこうして完成したのだよ!
そうして仕上げに僕がたぬきのヘアゴムは腕につけると、やめて……らいうちゃん…台無しだから…と言われたので、渋々スマホの中にしまった。ざんねんむねん。
……サンクのスマホのリュックアプリの中は、ほとんど服なのかなあ?ただ、そんなに服を持っていても、なんにも効果が無い服というものはなかったらしい。サンク曰く、ドリーマーズワールドにあるお洋服っていうのは、裁縫師系のマジックを持っている人が作るそうなんだけど、大体ふかこうか?が付いてしまうんだとか。普通の人にとってはそれはとってもありがたいらしいけど〜僕にとっては良くない、良くない効果だなあ。[軽量化]や[ダンス中の会心率高]とかが付くんだって。ふしぎ。ふかひれ……
とりあえずふかひれは置いておいて、問題は、ジュンだ。徹底的に似合わない。すごく似合わない。髪をオールバックにし、紺を基調にしたフロックコートを着て、腰の方にちゃらちゃらとチェーンをつけている。ちなみに、そのチェーンの先には懐中時計がついている。
サンクの着こなしは流石で、僕は完璧に違いなくて、フューの着こなしは何故かすごいんだけども、ジュンがもうめちゃくちゃモヤっとする。
「ジュンくんはもう少し和装に近い方がいいと思うのだけれど……でもTPO的に問題よね。」
「洋服の正装似合わないですね、ジュンさん。」
「全部聞こえてるぞー。」
ひえ。……どちらかというとオールバックが似合わないような。
「しっかし、サンク、よくこんなにお洋服持ってたね〜?」
「俺を無視するな!俺を!」
「ええ。こんなこともあろうかと思って!」
サンクは少しばかり嬉しそうに笑った。サンクおしゃれ好きだものね〜。
「それで、最後に、武器、ね。」
サンクが真剣な顔になって、言った。
ふっ……暗殺用の、ね!
僕はいつもどおりのボロボログローブ。うん。もともとはピッカピカのきれいなグローブだったんだけどなー……革がなー……はげてきちゃった。……しまっとこうかな……ドレスに似合わないしな……。
サンクもいつも通り、自分の手のひらの二倍くらいある、杖。
まあ、僕とサンクは割と隠せるんだけども。
問題はジュンとフューだ。
ジュンは足の長さと同じくらいの剣を持ってるし、フューに至っては、フューの身長くらいある杖だ。
フューはリュックの中にしまうと言って、ぽんっとしまってしまった。すぐ出せるのかなあ……?
ジュンはこれが俺らしさだから!と言い張って剣を離そうとしない。
「ジュンさん。どこの世界に、隠密行動の時に武器をおおっぴらに持ち込む馬鹿がいるんですか。……ああ、ここにいるということを教えてくださっているのですね。新たな知見ですね。」
「お前……いや、こればかりは何と言われようと、いいか!俺はこの氷剣エクス・カリバア〜勇者の剣〜を片時も放す気はないからな!」
ひょうけんえくすかりばあゆうしゃのつるぎ!?強そう!
「ジュンくん。その剣って、氷結竜フィシゴンスワードよね?」
「氷剣エクス・カリバア〜勇者の剣〜、だ。」
ジュンは強く強く抱きしめた。剣を。これがなー、なんかー、再会した幼馴染とかだったら絵になるのにいなあ。もったいないなあ〜。ちゃららら〜。ちゃら〜。
「いいか、武器は心の友だ。防具はかけがえのない仲間だ。自ら手放すやつがいるか!?」
なんか言われたことある気がするセリフ……。
「らいうちゃん!?納得しちゃだめよ!うんうんって頷いてちゃだめ!一緒にジュンくんを説得してちょうだい。」
「ん?んー……分かった!」
サンクが言うならしょうがないなあ。
「ジュン、いいかい、特別にたぬき先生が教えてやるぞいたぬき。僕は今、もーれつにお腹が空いている。まず、ここまでは、いいね?」
「たぬき先生というところがとても引っかかるが……まあいいだろう。」
「たぬきについては引っからないんですか?」
講義は静かに聞くべきだよ、フュー。
「だからご飯を召し上がりたい。分かるね?」
「あ、ああ……」
「じゃあ、僕が言いたいことは分かるね?」
「……腹が減った、のか?」
「そーう!そのとおりー!なんか持ってない?」
お腹減ったーーー!!!ジュン、おにぎりとか持ってないかなあ?
「らいうさん!敬語がしっちゃかめっちゃかとはいえ、途中までは上手く……とにかく、何故そこで流されているのですか!……はあ。ジュンさん。」
「何も持ってないぞ。」
えええええええええええええ!?
「ジュンのドケチ!とーへんぼく!あんぽんたん!すっかららからんからからあんのぱんぴー!」
噛んだ。重要なとこで噛んだー。お腹が空いているからだな。それもこれも全部ジュンのせい……。
「……はあ。ほら、らいうさんが暴れるので、早く剣を離して、パーティ会場に潜り込み、らいうさんを放し飼いにしましょう。」
「……そうだな。未来の勇者として、パーティメンバーが人様に迷惑をかけるような真似を助長したくはないからな。」
「わ、らいうちゃん!えーっと……功労者よ!」
こうろう、しゃ?がんばったぬき、ってこと?
「わーい!」
ジュンの説得に成功。




