零の今
「さて、これからどうするか。」
「どうしましょうね……」
サンクが困ったわーと言いながら幸せそうに頬に手を当てた。
ああ、わかるわかる。水中のモンスターのちいちゃなイカ、フューに焼いてもらったら美味しかったもんね。
フューは本当にすごい。ジュンがイカのモンスターを獲って来るやいなや、リュックから薪取り出してきたもんなあ。サンクの[ファイアボール]で火をつけてもらってさあ……。
そこに、ガスバーナー用の三脚のちょっと大きいやつセットして、どこからか出てきた串でイカを刺して焼き始めんだもの。もう我慢できないよー。お腹空いたよー!ってお腹が言ってるところに、思っていたとおりのものが放り込まれる この感覚よー。
最高。
フューも満足そうに、よくやったって感じでジュンの背中に手を回していたし。食べ物は正義だねえ!
「おいサンク。ちょっと正座しろ。」
サンクは、どことなく不機嫌そうなジュンにそう言われて、はてなを顔の周りに浮かべながら正座した。
ん?なんで?焼きイカ美味しい。
「俺は、お前に説明する義務があると思うぞ?」
「どゆことー?ジュンがサンクに何を説明すんの?ねんかんそうしょとくがく?」
僕は頭をぺしっとジュンに叩かれた。ちょっ。焼きイカの串が喉に刺さるかもしれないじゃん! 食事中に人を叩くのはどうかと思う! たとえ僕がたぬきだったとしてもね!
「俺じゃない!サンクが、俺達に、色々と説明するべきだということを言っている!話の流れから察しろよ!」
はーん。僕に察しろと。空気を読むのが苦手な僕に察しろと。ほほう。
僕がジュンを非難的な目で見ていると、ジュンが頭を抱えて言った。
「お嬢様とは何なのか、だとか、なぜ追いかけられたのか、だとか。説明しなければいけないことが今のサンクには多くあるだろ?
それを説明されないと、今後の予定の立てようがないだろう?分かるか?」
ふーん。確かに。そうかも。
「ただなんとなく神殿に行ってフラウ倒してこっから離れればいいんじゃないの?」
「そうですね……そうしたいですね……ちなみにらいうさんは神殿がどこにあるのか知ってますか?」
知ってるよ?フラウに来る途中でみんなで調べたもん。
確かね、エッフェル塔(仮)の下のガラスのところで職員さんの許可を得るとフラウと戦えるとかなんとか書いてあったよーな気がする〜。
だから、僕達はエッフェル塔(仮)のところに行って、フラウと戦いますって言おうと思って入り口を探してて……。
あれ?
僕が突っ切ったガラスって、エッフェル塔(仮)の下だったな?
あれ?
「気が付きました?」
「気が付きました!」
「ああ。神殿は俺らがぶっこわした。」
……しょうがないよ!神殿と言うにはモダニズム的な感じだったじゃん?
僕のイメージでは、神殿というと、ギリシャ風な?ローマ風な?未来風な?なんか、古い感じの?神聖な感じの?変な感じの?異常な感じの?そんな感じの?石造りとか謎のまてりあるで作ってある感じの?ね?
……あんまり思い出したくないデスヘルの神殿は、天守閣のあるお城だったけどね!
「つまり、あの神殿は、下手したらしばらくは使えない、ということですね。」
「僕には……あれの美術的価値は分からないんだけど、賠償とか言われたりする?」
「以前、らいうさんが壊した神殿、デスヘル神殿は一時間後にはもう直っていたらしいですから、スマホで情報を受け取ればいいと思われます。
問題はですね。そこまでの時間をどう潰すか、ということですよ。」
スルーされた。
「……革命よ。」
いきなりサンクが暗い声で言った。
「革命よ!革命をするのよ!ラストベルト家を文字通りラストにしてあげるわ!スライス家に至っては一家全員ギロチンにかけてやるわ!そうよっ!スライサーにかけてやるわ!」
あ、さっき水ん中潜ってた時に唯一聞き取れた単語だ。スライス。
「おいらいう!のどかな平原で日光浴をするたぬきの顔をしてないで一緒にサンクを止めろ!」
ふぇいふぇーい。ご乱心ご乱心。
「まあまあサンクどうどうどう。革命は失敗すると打ち首にされたりするから。僕、打ち首の中身よく知らんけど、なんか怖そうだから。だから、よく考えてから取り組もう?」
「おい。」
「そ、そうね。そのとおりだわ。じゃあ、その用意をしましょう。必要なのは何かしら。」
「おい。」
何が必要かなあ?
「ダイナマイト……とか?」
「威力で言えばC4のほうが上と言われています。まあ、ものによりますけど。あ、C4というのはプラスチック爆弾のことですよ。」
「おい。」
ほほーん。そうなのか。
「じゃあプラスチック爆弾をありったけ集めてラストベルト家とスライス家の家に詰め込みましょう。とどめは私がさすわ。」
「おい。お前ら。」
ジュンが僕とサンクとフューの頭に順番に鞘に入った剣をびしっばしっげしっと叩きつけた。……?なにをするうううう!?
僕は僕らを叩くために立ち上がったジュンを恨みをこめた目で見つめた。
「そういう話で盛り上がるな。誰が聞いてるか分からんし、第一倫理的にまずいだろう。」
りんりかー。どうとくかー。
「……娘の気持ちも考えずに、利益のために婚約を勝手にさせたお父様のほうが倫理的に問題だわ。」
僕がそう言うサンクに目を向けると、サンクは目に涙を浮かべていた。
ジュンがはあっと息を吐いた。
「例えそうだったとしても、俺達は、少なくとも俺はお前の過去を知らない。スライスといえば、有名な貿易会社だが、ラストベルトはよく分からんし知らん。知らなかったら、同情も、協力もできない。リスクのある何かをしようと思うなら、きちんと説明をして、仲間に、協力を仰げ。」
ジュンがもう一度しゃがみ、サンクの肩に手を置いた。
ジュンがもう一回口を開こうとしたとき、
「えいっ。」
とフューが気の抜けた掛け声と共にジュンを押した。
おー!楽しそー!え、僕も混ざろうかな!?
「った!おい!フュー、何をする!?」
「サンクさんに気安く触れないで下さい。まったく。この鈍感男。サンクさん、」
「うへーい!へいへーい!」
僕は何かを言いかけたフューを突き飛ばした。
「わっ!何するんですからいうさん!」
「おいフュー!俺を下敷きにするな!どけ!」
フューとジュンが僕の下でぎゃーすぎゃーす騒いでいる。鳥みたいだ!やーい鳥!チキン!わーい!ドミノだーー!
「……ふふっ」
サンクが吹き出した。
「ありがとう。みんな。私、ちゃんと説明するわね。」
……なんでお礼言われたんだろ?
サンクは皆のことが大好き。




