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第十六話:修羅場は最強を凌駕する!?~異世界帰りの洗礼~

ハルトとの「そっと」した異世界ボランティアを終え、凛が自分たちの世界(ダイヤモンドの宮殿)へ帰還した瞬間。そこに待っていたのは、温かい出迎え……ではなく、絶対零度の空気と、太陽すら焼き尽くさんとする魔圧でした。

「ただいまー! ハルトさんの世界、すごく屋根が直しやすくて――」

凛の言葉が凍りつきました。

目の前には、腕を組んで仁王立ちする紅と、漆黒の微笑みを浮かべた聖女クラリスがいたからです。

二人の「静かなる怒り」

「……お帰りなさいませ、あるじ。異世界での『密会』、さぞかし楽しまれたようですね?」

紅の背後から、実体化したドラゴンの業火がゴォォォ……と燃え上がります。その温度は、凛の魔力を受けてさらに進化しており、空間そのものをドロドロに溶かし始めていました。

「凛様。異世界の屋根を直すお時間はあっても、このクラリスが夜通し編み上げた『凛様専用・聖なる手編み靴下』を受け取るお時間はなかった……ということでしょうか?」

クラリスが持つ聖典からは、どす黒い「粛清」の光が溢れ出し、神殿の床にピキピキと亀裂が入っていきます。

「あ、あれ……? 二人とも、どうしたの? なんだかすごく強そう……あ、いや、怖そうな顔をしてるけど」

凛はガクガクと震えながら後退りしました。

(女神様! ハルトさんの世界の魔王軍より、二人の方がよっぽど迫力があるんですけど!?)

最強勇者ハルト、戦慄する

凛の背後にいたハルトも、その異常な殺気に思わず聖剣に手をかけました。

「な……なんだ、この女たちは!? 凛、これが君の世界の魔王なのか!? どっちも俺の世界のラスボスより数倍ヤバいぞ!」

その言葉が、火に油を注ぎました。

「『女たち』……? あるじ、この黒い男は、あるじを連れ去っただけでなく、私たちを同類扱いする不届き者のようですね」

「凛様。浮気の証拠隠滅は、この男を消し去ることから始めましょう。聖なる裁き(物理)を下しますわ」

「待ってぇぇぇ!!!」

凛は慌てて二人の間に飛び込みました。

「浮気じゃないよ! ハルトさんは、僕と同じで『ドアノブを壊しちゃう』ことに悩んでる仲間なんだ! 僕たち、一緒に屋根を直したり、川を撫でたりしてただけなんだよ!」

凛の「天然」による強制鎮圧

凛は必死に、紅とクラリスの手を握りしめました。

「二人にお土産もあるんだ! ハルトさんの世界で見つけた、絶対に壊れない(※凛の魔力がこもった)特別なリボンと髪飾り。……ねえ、怒らないで? 二人に似合うと思って、一生懸命選んだんだ」

ポワァァァァァッ!!

凛の「申し訳なさ」が純粋な魔力となって放たれ、二人の怒りを優しく包み込みました。

最強のドラゴンも、狂信的な聖女も、凛の「上目遣いの謝罪」には勝てません。

「……リボン。あるじが、紅のために……」

「一生懸命……選んでくださった……。ああ、凛様、なんて罪深い慈愛……」

二人の殺気が一瞬で霧散し、代わりに「あるじ大好きオーラ」が全開になりました。

その様子を見て、ハルトは呆然と立ち尽くしました。

「……凛。君は、腕力だけでなく、女心の制御レベルも『無限』なのか?」

「えっ? よく分からないけど、仲直りできてよかったぁ!」

女神の独り言

「凛……。あなたが今やったのは、世界を滅ぼしかねない二つの『特異点』を、安物のリボン(に見える神具)一つで手懐けるという、史上最大の博打ですよ。……まあ、あなたの天然ぶりは、どんな魔王の呪いよりも強力ですからね」

「ハルトさん、せっかくだから二人に紹介するね! みんなで一緒に、お庭でイチゴを食べよう!」

「……ああ。だが、俺はそっと食べることに集中するよ。あの二人の視線が、まだ俺の鎧を貫通しそうだからな」

こうして、史上最強の「修羅場」は、凛の天然パワーによって、穏やかな(?)ティータイムへと姿を変えたのでした。

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