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学園祭・二日目:後編!!



《さぁーさぁー、見てるかーいヤロウドモー!! お目目ギンギンギラギラかーい? やーんヤーラーシーイー!! 滅びろよ変態どもーーー》


会場の熱気が増した。もうこいつら終わってるんじゃなかろうか。


「…………で」

《おおっとー。どうしました解説ミスター・ラギアー。発言はマイクを持って元気ヨックで頼んだはずだずぇ?》

「……なんで俺が解説なんてしなくちゃいけないんだよッ!」


昨日と同じ解説ちゃんに無理やり拉致られてここに座らされているのだ。疑問に思うのも当然だろう。

でも堂々と全体に向かっていうべき話でもないので、解説ちゃんの耳元で声をかすれさせて訴える。


解説ちゃんも察してくれたのか小声で返してくれた。


「なんでって。いまさらなーに言ってんですか女々しーですねー。もっとシャキーッとしてくれよー、ミスター・ラギアに選ばれたなら『全員俺の嫁』ぐらい言ってくださいねー」

「なんで『俺の嫁』だけ無駄にイケボなんだよッ。なんだよ『俺の嫁』って」

「あ、もしかして気に入りました?」

「言うなよ。恥ずかしいだろうが」


ブブゥゥーーーーーーーーー。『会場の皆様。大変長らくお待たせいたしました。ミスコン開始のお時間でございます。本日は存分に盛り上がってくださいませ』


ウォォォォォォォォォォオオォオォオオオ!!!!!


沸きに沸く会場。こいつら最低だ。ふっしぎーとっあったまーがっわーいてーくーるー。




《ミスター・ラギア! ズバリ、今回のミスコンに対するコメントをどうぞ!》

「俺に解説とか、アリにダイアモンドの価値を語らせるようなもんだぞ?」

《イマイチわけのわからない回答ありがとーございまーす》

「喧嘩売ってんのかッ!!」


結構真面目に答えたんですけど!!


《もっとぶっちゃけいいーんです!! さっ! どうぞ!》

「可愛い子達で目の保養したいですね」

《ヨクボー丸出しですねーー。やーん。これだから男はッハート》

「男なんて所詮そんなもんだ」

《酷い偏見を見ましたー!まぁ否定はしないけども〜にっひっひっ! おぉーっと。準備が整ったようなので早速入場していただきましょーエントリーNo. 1、スリュムさーんでーす!!》


そしてミスコンが始まった。


--- --- --- ---


「なっにっよ! ユウマのバカっ! デレデレしちゃってさ」

「……解説やってるみたいだよ?」

「え? じゃあユウマが点数つけるの?」

「……審査員は別の人。変なコメントしてなきゃいいけど……」


……いや、まず間違いなく変なコメントの嵐な気がする。


「だってユウマだからね〜」

「……は、ハルちゃん。この、この服、腕、通らない」


あーもう。ベルちゃん他の服着慣れてないからだよぉ〜。

あぁーあぁー、ココ絡まってる。あ、ここも。ここ、も? あ、こっちも。

逆にどうやったらこんな着方できるのッ!!


「……ユウユウのことばっかじゃなくて。ハルちゃんも着替えたら?」


なんか呆れたような目で見られた。

今助けてあげてるのに! なんて言い草!!


「べ、別にユウマのことばっか考えてるわけじゃないもん」

「…………自分のセリフを省みる……」

「あぁーあぁー! 聞こえなーい聞こえなーい!!」


私も着替えよっと。

でもコレ……


「えー、うー、ごほんっ。もしもしブリューゲルさん? これ何?」

『超ミニ丈浴衣ドレスじゃが。それがどうした?』

「こんな恥ずかしい格好嫌だよ! 風でも吹いたら丸見えじゃんっ!」

『安心せい。【 見えそうで見えない 】ッ! 主が追求して、『想像』でフィルター貼ってあるからの。我が作ったには変わりないが、我にそれを作らせたのは主じゃ。きっと似合うと言っておったぞ』


え? そ、そう、かな。


「……で、本当は?」

『我は嘘など言っとらんぞ? 本当に見えそうで見えないように作られておるからな。主が『それが一番エロい』と言っていた』

「エロいんじゃん!」


うぅー…………恥ずかしいよぉ……


「……ハルちゃんが出ないなら私の圧勝」

「で、出るよ! わかったよ着るよ! 着ますよっ! うわーーん!!!」


シャッ!! カーテンが閉められた。


--- --- --- ---



《トーリさんありがとーございました〜。ナイスバディなセクシーポーズもありがとーございまーす!! いやー、ミスタギさん。こうゆう時の特別な水着って、グッときますねッ!!》

「妙な略し方はやめてくれ。呼びづらいならユウマでいいよ」


誰のことかわからなくなるからさ。反応が遅れるんだよ。


《ぶーーー! わかりましたけど、ちゃんとコメントもしてください!!》

「あざとい」

《もっと肯定的なコメントをお願いしますッ!!》


なんだよグルメ番組かよ。

さして美味しくもないのに「ウマーーーイ」て言わなくちゃいけない縛り番組だろそれ?

俺は不味かったら、こりゃ俺に合わんとはっきり言う人間だ。


「ま、胸はデカかった―――」

《そのコメントは地雷ですので次いきましょー! えー、お次は、エントリーNo.35、クルミさんでーす!!》


ぶっちゃけトークなんだろ? なんでコメント中断なんだよ……

まぁ我ながらゲスいことを言っていた自覚はあるから言わないけどさ。


《ではクルミさん! じこしょーかいをドーゾッ!》

「はいっ! 私、クルミって言います! よろしくね、お兄ちゃん達っ! キャピッ」


オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


《妹系できましたねー。こりゃ大物だ》

「自分でキャピとか言うやつ、初めて見た……実在したんだ……」


いろんな意味でショックである。

あとお兄ちゃんって、お前どんだけ兄弟いるんだよ。お前の両親お盛んすぎるだろ。

全世界の男の妹になるって息巻いてる少女かお前は。


《会場の盛り上がりすげーなこりゃー。あ、アピールタイムですどぞー》

「お兄ちゃんの皆んな! 皆んな、ダーーイスキーーーー!!!」


うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおとおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!


あいつは魔女かっ!? じゃなきゃ痴女だろ!!

何人好きな人がいるんだよ何又だよ逆ハーかよ!


それ以降も耳を塞ぎたくなるようなあざとすぎるアピールは続いた……


《いやー、会場の沸き具合が素晴らしいねッ!! あの子スッゲー!! お兄ちゃんズとお幸せにーークッソワロタッ!! あ、ユウマさんはどうです? さぁー言っちゃってくださいやっちゃってください身の丈をぶちまけちゃってくださいッ!!! 『クルミは俺の妹だッ』と。さぁッ!!!》

「あぁーそうですね」

《棒読みですかそうですかそうですか》


だってあざといんだもん。特にこいつは酷かった。


うーん。でもこのままだと俺ってただのお邪魔虫だよなー。なんか盛り下げてるみたいで悪いし。

なんだかんだで面白いし、この辺りでいっちょ、フォローしとくか。


「ま、可愛いとは思いますよ」

《クルミさーん! ミスター・ラギアさんが結婚を前提としたおつきあいを申し出てますよー》


あれ? 俺そんなこと言ったっけ。


「言ったところでどうってことないですけどね。どうせフラれておしまいぃッ!!」


これはほぼ、運だった。

少し、ふと右を向いたから気づけた。俺にとんでもない速度で迫ってきた鎖をなんとか捕まえることができたのだ。


「あ、危、ねぇ。少なくともベルのやつ、控え室にいるん、だよな。ここまでオートで動くとか、どんだけ規格外……危険物ぶら下げすぎだろ!」


そのぶんハルさんは平和的……


ん? なんだ? スマホがいやにムームー鳴るな。


「なんだろ。 『魔力ガンガン貯めようぜΩ』から、通知?」


開いてみると魔力メーターのところに直接飛び、メーターの数字がギュンギュン増えているところだった。


「ちょっ、ちょっ、ちょっと、あれ? おかしいよ?」


振動がムームーから、ゔぃん! ゔぃん! に強くなり、メータの色が青から赤に点滅し始める。

警告メッセージがぽんぽん飛んでくる。

ビーッビーッビーッビーッビーッビーッ!!!

メーターが真っ赤になりながらぐわんぐわん暴れ狂いスマホが揺れまくる。


「待って待ってハルさん!! ありがとう魔力を供給してくれるのは凄く嬉しいでもやりスギィ! ごめんなさいごめんなさい!」


スマホが壊れるぅ!! えぐい。えぐすぎる。


「あああああーーーー! あ? 止まった」


油断させてかーらーのー、追い討ちッ!

なんてことはなく、唐突にぴったりと魔力攻撃は止んだ。


「スマホが無事でよかった」

『主よ。緊急事態じゃ』

「師匠か。どした」


最近緊急事態多いね。

師匠、すっかりメッセンジャーが板について……

どしたー、ハルが倒れたかー?


『ハルカが魔力枯渇でぶっ倒れた』

「おいマジか!」


枯渇して気絶するまで気づかないか普通。

どんだけ夢中で魔力流してたんだよ。


「それにしても……妙だな。加えられた魔力量を考えても、とてもハルが魔力枯渇を起こす量じゃ……」


あ、魔力水晶。


「あのバカ!!」


すぐに控え室に向かう。師匠。道案内よろしく。


《さーって、お次はエントリーNo.36クリスさんでー、って! ちょっ、ユウマさん? どこ行くんですかー!!》

「済まん急用ができた! 悪いけど俺はここで。それじゃ」


待ってくださーいという実況ちゃんの言葉に背中を押され、俺は控え室に急いだ。


「…………ユウマ……さん……」


ステージでマイクを握りしめた少女の寂しげなつぶやきを聞いた者はいなかった……


--- --- --- ---


「すみません。失礼します!」


女性の控え室に入るのに抵抗はあったが、そんなことを気にしている場合ではない。


「あ、君」

「ハルカさんのー、えー、保護者的なもんです。医務室に同行します」

「お、そ、そうかね。それじゃ私はまだ待っている子がいるから、この子は悪いけど君が連れて行ってくれないかね?」

「は、はい。わかりました」


まだ待っている子がいるって。どんだけぶっ倒れてんだよこのミスコン。

あと、少しは疑ったらどうなんだ? 変な男だったらこの時点でアウトだぞ?


「今はそんなことを気にしている場合じゃないか。悪いなハル。失礼」


ハルをお姫様抱っこで抱えて、学院の医務室に運ぶ。


『主よ。ミスコン用に建てられている医務テントがあるが……』

「そこ、人がいっぱいいそうだろ? ハルが休めねぇ」

『……そうか』


学園祭の真っ最中だが、大概の生徒や客はみんなミスコンに行ってる。

今なら、学院の医務室は空いてるんじゃないかってな。


「少し我慢してくれな。すぐに連れてくからさ」


くっそ。腕が痛ぇ。

もっと鍛えたいたいなぁ……


--- --- --- ---


「……う……ん」

「よ。おはよう。いや、おそようだな。おねぼうさん」

「うーん。ゆうまぁ? はっ! ……ここは何処? 私は誰?」

「ここは学院の医務室で、ユーは小寺春花さんだ」

「それは知ってる」

「私は誰って言ったよね君……」


冗談なのに……あ、ユウマも冗談なのか。

お互いふざけ合うのって、なんだかおかしい。


「クスッ」

「そんなに面白いか?」

「うん。今のね、昔お母さんに教えてもらったの」

「……へぇ。お母さん、ね」


本当に昔。私がうんと小さい頃。

お布団の中で話してくれた。

自分が倒れて、そして起きたのだと自覚したのなら、それを見守っていてくれた人がいたのなら、そう言わなければいけないと。

なんで? って聞いたら、お母さんはちょっと考えて、お礼かな? って言ってた。


『お礼が言いたいのに照れ臭くて素直にお礼が言えない時に、こう言って気持ちを伝えるのよ』って、いい笑顔で。


「あれ? この光は?」

「スマホアイテムだ。ハルが寝られないと思って光量弱めてある。電気、つけるか?」

「ううん。いい」


薄ぼんやりとした黄色い光が、優しくゆっくりと、私とユウマだけを包んでる。

なんだか気持ちよくって嬉しくって、なんだか照れ臭い。

そして、ちょっとだけ、もどかしい。


「ユウマ」

「どうした?」

「その、ミスコン、どうなった?」

「あぁ。俺も結果はわからないんだ。ずっとここにいたからな」


ずっと、ここに?

………………ボンッ

顔が爆発したみたいに真っ赤になってつい俯いてしまう。


私ずっと寝てるとこ見られてたのーーーーー!!!

は、恥ずかしいぃーーー!!!


「師匠から聞いたんだけどさ。俺が反動で寝こけてた時、ハルが世話焼いてくれたんだろ? その時のお礼ちゃんとしてなかったしさ。まぁ、ハルに比べれば期間は短いけど、お返しだ」


キューー…………――――――


そ、そっか。私も同じこと、してたんだっけ。

ユウマのお返しはお礼としての意味なんだろうけど、私にやられたからお返しにみたいに聞こえちゃう。

な、なんか、…………ドキドキする



赤くなってるの、バレてる、かな。

薄暗いから、大丈夫だと思いたいけど…………薄暗い、かぁ。


ずっと、こんな暗くなる時間まで、私のことを、見てくれてたんだ……

誰でもない……ベルちゃんじゃなくて、私のことを……



「ユウマ」

「おう」



「大好き」



「……お、……おう?」


あれ? ユウマが急に挙動不審に。

目を大きく見開いて、口をあんぐり開けて、汗をダラダラ流して。

ほんのり、赤い、かな? あ、椅子から落ちた。


なにをそんなに……動揺……し…………――――――



そして、自分が無意識にはっちゃけた事実に脳が追いついた。



「うわわわわ! な、なしなしなしなしなし!!やっぱなし! ちがっ、その、今のは、違くてっ、今の、今のなし! いや、なしじゃないんだけど、とにかく、とにかく待って! ちょっと、待ってッ!!!」


両手をユウマに突き出してぶんぶん手を振る。


わ、わわわ私は一体にゃにを言っちゃてるのよ!!

む、ムードに惑わされて、つい〜〜……!!

違うの! いや、違わないんだけど。とにかく違うのぉ!!


「あぅぅ……」

「え……えぇっ……とぉ」


ユウマの顔が見られない。

彼は今、どんな顔をしているのだろう。


「そ、その、俺。飲み物でも―――」

「行かないで!」


言ってからまたハッと口を抑える。

か、勝手に口がぁぁ〜!!


でも、引き止められたのはよし。


行って欲しくなかった。ここに、いてほしい。

このままユウマと別れちゃったら、私はきっと……

だから……


「わ、わかった」


ユウマはどこか気まづそうに、目線をそらしながら椅子に座った。

嬉しがっては……残念ながらしてくれていそうにない。

当然か。いきなりだもんね。


勝手なことだけど、少し、いや、凄くショックだ。

理屈じゃなく、泣きたくなってくる。

でも、泣いても助けてくれる人はいない。

先に進みたいなら、自分の背中を自分で押すしかないの。

自分で決めるの。

戦うのか。逃げるのか。


わ、私はっ!


「ねぇ。ゆ、ユウマ」

「ひゃ、ひゃい」

「一度」

「は、はい?」


顔を上げてユウマをまっすぐに見つめる。

声が、ふ、震える。


「も、物凄く恥ずかしいから、たった一度しか言わないから、真剣に聞いて、絶対に聞き返さないで」

「…………わかった」


ユウマは表情を引き締めて返事をしてくれた。


すぅー…………ふぅ…………


深呼吸をして、ばくばくと体を震わせる心臓の音を和らげる。

最後に、思いっきり息を吐いて……短く吸って、息を、止めて……






「貴方が……好きです」






手を胸の前で合わせて。


私は、私の全てで、愛をささやいた。



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