学園祭・二日目:中編!!
「…………す、凄まじい……」
師匠に呼ばれるがままについて来て。トレーニング室の一つに入場しての第一声がそれだった。
「屍累々…………おっとまた一人積まれたぞ?」
屍の塔の奥には、今尚、勇敢なる挑戦者をわざとらしく高笑いしながら相手取っている彼女の姿があった。
「つうかお前かよッ!! ハルッ!!」
「はぁっはっはっはぁ!! 次は誰かなぁ」
「もうやめたげてぇ! 会場のライフはもうゼロよ!!」
「あ、ユウマ! おかえ……あ、挑戦者さん? ちょっと待っててねユウマ」
そう、いい笑顔で。そのいい笑顔の屍量産機に、俺は素早く目をそらしながら「…………お、おう」と小さい声で呟くことしかできなかった。
ギャァァァァアアア…………、うわぁぁぁああああ…………
「ししょうぉおお!! 一体何の競技なのコレッ! 断末魔の叫びで耳が痛いよ!! それをハルがやってるから心が痛いよ!!!」
『何これも何も。単なる魔力の量はどちらが多いかを競うものじゃよ』
「そんな緩い競技にはとても見えない! 俺には屍の塔しか見えないッ!!!」
『魔力枯渇を起こしておるだけじゃ。医療班の回復魔法が行き渡ればすぐに治るじゃろうて」
負けた方が必ず魔力枯渇を起こすって……どんな危険な……
『魔力を貯めることのできる水晶玉にお互いノンストップで魔力を流しあって。相手より長く水晶玉に魔力を流しておいた方の勝ちじゃ』
「そんな恐ろしい競技が、この世に……? アレ、なら枯渇する前にギブアップすればいいんじゃ。何でみんな枯渇するまで頑張るんだ?」
『この塔が男ばかりなのはわかるな?』
お、おう。確かにその通りだ。
流石にこれはやりすぎ……
『ハルカを魔力枯渇させて、医務室に連れててってとか、そんな邪な考えを抱くものが多すぎてのう』
「ざまあねぇぜ」
いいぞいいぞハルもっとやれ〜!!
『惚れ惚れするほどの手の平返し』
「おっとハル。圧勝のようですね」
『ちゃんと聞こえておったよな?』
「え? 何のこと? ちょっと僕にはわからな」
「ユウマ〜、おっかえりー」
終わった瞬間俺の方に突っ込んで来て。
ぴょんぴょん飛び跳ねながら「すごい? すごい? 褒めて褒めて」とこちらを見るハルの姿はウサギのようだった。
「凄かったなぁ。よーしよしよし」
「…………そ、そうゆうんじゃないんだけど…………ま、これでもいっか。……んふふ……」
『お二人。微笑ましいのはわかったから、少しは周りの目を気にしようかの』
周りの目? そんなにおかしくないと思うけどな。別に頭を撫でるくらい……
と思ったら赤面したハルは手を払いのけて離れてしまった。あらら。難しいお年頃ってやつか?
「あのー、彼氏さん。ちょっとお話が」
「あー、別に彼氏ってわけじゃないですけど、何です?」
平静は保った。ちょっと顔が赤くなるのは仕方がないのではないだろうか。
「では、使用した魔力水晶の代金なんですけど……」
「人違いです」
俺は青くなりながらそっぽを向いた。
--- --- ---
「えぇー、そんなのないよー。参加費を払ってくれれば水晶玉は無料だーって言ったじゃない!」
「そ、それは……」
「他の人からは取ってるの? 私だけなんて不公平だー」
司会さんもあの様子じゃ。ハルの方が正しいっぽいけど。
(師匠。どうゆう感じなんですかね)
『参加費を払えば魔力水晶の代金は無し。使用した魔力水晶は持って帰ってよし。という触れ込みの競技じゃ。普通ならば、一人で使用する魔力水晶の数などたかが知れておるからな。参加費を平均以上にとっておけば黒字、となるんじゃろうが。ハルが一人で魔力水晶をばかすか使うせいで思いっきり損をしておるのじゃろう。だから、ちょっとでも儲けを戻そうと何も知らなそうな主に話を持ちかけた、というわけじゃな」
(なんじゃそりゃ。納得できるか)
でもまぁハルが魔力おばけって知らないとそうなるわな。
よかったなハル。これでお前の魔力おばけが初めて他人に認知されたぞ。
「それでも、司会さんもかわいそうだしな。ハル、水晶玉少し返してあげれば?」
その俺の言葉に司会さんが救いを見たような顔になり、ハルが何故だか、大量の水晶玉が収納されてパンパンになっているカバンを抱えて、すごく悲しそうな顔でこちらを見ていた。
『主よ。ちなみに言っておくと。水晶玉に補充されている魔力は勿論主にも使えて……』
「オーケーハルよっ! 全回収だ!!」
司会さんは絶望に埋もれ、ハルは嬉しそうに「うん!」と笑顔を作った。
◇◆◇
「ユ、ユウマ? ちょっと、どこ行くの?」
「へ? ベルと合流するだろ?」
「あ、え、う、うん? い、い、いい、いや、も、ももももう、もうちょっと、その、二人で、いませんか? なんて……」
語尾に近づくに連れ言葉はごにょごにょと小さくなっていき、最後はよく聞こえなかった。
「あぁ、いいぞ」
ぱぁぁぁ〜〜とハルの表情が明るくなる。
「学園祭デートか。ふむ。ごちそうさまです」
「ふぇっ!! で、でで、デート? そっか、デートなんだ……えへへ……」
だんだんこいつ好意を隠そうをしなくなって来たな。
俺は鈍感ではないが女心がわからない。そうゆうのに敏感ではあるけど鋭くはないのだ。
そんな俺でも少しは気づく。恥ずかしく無いのか?
いや、恥ずかしく無いわけがない。そうやって気持ちを我慢しながらアピールしてくれているのだ。
少なくともそのことに俺は喜びを感じている。プラス方向に向いているのだ。
「あ。おーい、そういや師匠。ハル達のとこに行って欲しいって行ってたけど、達? ベルも?」
『あー、その、なんだ。行く必要はないぞ主よ』
「なんで」
『後ろにいるからの』
ポンッ…………するするする……
「き、気のせいかな。肩を叩いたものがやけに金属質っていうか、その、するする巻きついてるというか。ほら、ね? こうゆう時はさ、お茶目に後ろから肩をポンポンしてさ、俺が振り返ったらほっぺたをプニッと」
「……お望み通りにしてあげようか?」
「いやぁーー!! それはとてもプニッなんて可愛らしい擬音が出る代物じゃない! グサリだよ! ぶっ刺さっちゃうよ!!」
キラーンと光鋭く尖った先端。それが俺のほおのすぐ隣に移動し、体は鎖でロックされている。
「……私、が、困ってる時、に、放置、で、自分、は、ハルちゃん、と、楽しくッ!!」
「わー! わかったわかった! わかったから接続詞を強調するのは辞めて! 怖いから! その度に先端がピクピク動いて刺さりそうだからッ!!!」
「べ、ベルちゃん! 酷いよぉ〜」
ハルの言葉にベルの放出する負のオーラが目に見えて緩んだ。
「……で、でも。だって、……ずるい……」
「ベルちゃんだってユウマとお買い物行ったことがあるんでしょ? 私だっていいじゃーん」
「……う……それ、は」
鎖も緩んだのでコンマ0秒の間に脱出を――――――
――――――ビィィィイン!!
「…………」
「……甘い」
いつの間にか右腕に装着されていた手枷本当に気づかなかったそれにつながっていた鎖が振動し、無言で振り向く。
そんな何かを求めるような顔をする俺に与えられたのは、ベルの勝ち誇ったようなドヤ顔だった。
こんな時だけ無駄に感情現してんじゃないよ!
「ハルゥ……」
「…………」
「お前もかッ!!」
頬を赤くさせながらちょこんと隣から横目でこちらを見てくるハルが
何も言わずに俺の左手首へ薄い緑色に光る光輪をはめた。
「だってベルちゃんが独占しようとしてるんだもん。黙ってられないよ」
「じゃあハルの魔力で破壊してくれればよかったのでは。なぜ余計に危険物がはめられてるんですかね」
「え? あ、あははは」
可愛らしく笑ってもダメ!
「たくっ。どんな装飾品だよこれ。…………装備品?」
両手首を見てるとなんだか虚しい気分になってくる。
光の輪はともかく、この鎖握られた手枷は勘弁してほしい。
「俺は犬じゃないぞ」
「……逃げない?」
「逃げないッ!」
「……嘘。信じない」
「えぇ〜…………」
我ながらなかなか説得力ある即答だったと思うんだけど……
早すぎたか……わざとらしすぎたか……?
「……行こ」
「お、おい。行くってどこに」
「……少なくともユウユウは来いって言われているやつ」
俺が、行くべきやつなんて、あったっけ?
招待状は貰ったけど、それって明日だったような気がする。
「……ミスコン。ミスター・ラギアさんは興味ない?」
「え? …………ベル、出るの?」
「……………………うん」
「私も出るよー」
『昨日主が優勝してから、この二人がミスコンは絶対に自分が優勝すると意気込んでおってな』
ミスコンか……はっきり言おう。興味ある。
それにベルと、ハルが出るって? 超興味ある。
見過ごすわけには行くまい。
「……昨日と違って、完全にオープンのステージ型トレーニングルーム」
「なんでこの学院トレーニングルーム施設ばっか無駄にあるんだ……」
「……授業とかない学院だし。色々な仕掛けがあるからステージにはぴったり」
設定すればどんなものにも作り変えてくれるっていうシステムは素晴らしい思う。
アレはトレーニング以外にも、今回のような娯楽にも使えて一石二鳥だ。
「何時から?」
「二時から」
「あと一時間はあるな。なんか食ってからにするか?」
「……やめとく」
「食べるー」
◇◆◇
「混み合ってんなぁ〜」
「……中の方はもっと混んでそう。……ふぅ……行こ、ハルちゃん」
「うん。じゃあユウマまた後で……」
「あのッ!」
割り込んできた女の子の声に手を挙げていたハルとベルの動きがピタリと止まる。
「は、はい。俺でしょうか?」
「あの、荒杭 勇魔、さんですよね。昨日優勝した」
「まぁ、そうですね」
「わぁ。あ、あの。おめでとうございます!」
お、おう。なんだこの子。なんでそんな嬉しそうな顔をするんだ。勘違いしちゃうだろうが。
「あ、うん。ありがとう」
「あの、握手いいですか?」
「あくしゅっ!!!」
「あ、私一年のクリス、クリス・フルーメンっていいます。私ミスコンでるんです。その、見てくれたら、嬉しいです」
ギリギリギリギリギリギリギリギリ
(おぉぉぉ………………お? おぉぉぉおおおお!!!)
右では鎖につながった手枷が遠慮容赦なくそのサイズを狭めて行き、左では光輪が激しく点滅しながら俺の手首を締め上げる。
(ぉぉぉ…………あぁぁぁぁああああ!!! ちぎれるー! ちぎれちゃうーーー!! あぁぁあああああ!!)
必死で痛みに耐えながらハルとベルの方に視線を送ると、二人は非常に冷たい半眼で じっとぉ〜〜 とこちらを睨んでいた。
「う、うん。頑張、って、ね!」
「はい! ありがとうございます。ではまた」
はぁ……はぁ……はぁ……
「………………あの、二人とも―――」
「ばか!!!!」
「……女たらし」
「ちょっと待っ――――がふッ!!!」
赤くした頬を膨らませながらハルが水晶玉を一つベルにパスし、それをベルが俺の顔面目掛けて鎖シュート。
見事顔面にクリーンヒットした俺は情けない声を漏らしてぶっ倒れる。
ハルとベルはそんな俺を見ることすらなく、フンッと鼻を鳴らしてとっとと行ってしまった。
なんなのよ…………
「ちょっと、じぃ。今の見まして?」
「フォッフォッ。若いですのう。私目にも、そんな時期がありました」
「ふぅん……」
赤色のドレスを着た一人の少女が、影からユウマたちの掛け合いを見ていた。
そして、じぃと呼ばれた燕尾服を着た老人は、どこからともなく現れて自分の昔を語っている。
「面白そう、ですわね」
少女は実に楽しそうに上品に口を押さえた。歪められた口の端からチラリと、ちょっぴり長く伸びた牙がキラリと光るのだった。
更新遅れました申し訳ありません。
もう一作を完結させたことで気が緩んでしまって……
だが、止まってなどはいられない!!
新作を作っている途中なのですが、まだしばらくはこっちに忙しいので、多分投稿は無理ですかね。
次はできるだけ更新早くしますッ!!
頑張りますッ!!




