魔道書契約とギルド強奪事件!!
鬱蒼と草原の生い茂る学院の裏庭で、
俺たちは魔道書を手に悪戦苦闘していた。
あまり人気の無いスポットなのか俺たち以外は誰もいなかった。
ま、好都合だな。
「ハル。魔道書契約についての本はこれだけ?」
「私が見た限りじゃそう」
「了解。広いところでやったほうがいいらしいからここでいいよな。んじゃ始めますか」
ハルがゴクリッと喉を鳴らした。
「え〜と。『まずは魔道書に手を当てて、
《我と共に歩まん・一心同体の理を叶え・血の契約により成り立たむ・我が呼びかけに応え契約となせ・魔道書よ》
と唱える。』か」
よし!
「すぅ〜はぁ〜………。
スッ(魔道書に手を当てる音)
『我と共に歩まん!・一心同体の理を叶え!・血の契約により成り立たむ!・我の呼びかけに応え契約となせ!・魔道書よ!』」
魔道書が紫色に発行し、触れている腕の感覚が一気に鈍くなる。
魔道書の触れている表面から赤い線が張り巡らされて行き、ドクッドクッと脈打っていた。
なるほど。読んで字の如く、血の契約ってことね。
うわぁ〜。手の感覚もうほとんど無いんですけど。
これ貧血になって倒れたりしないよね?
だ、大丈夫だよねっ!
「ユウマ大丈夫?顔色悪いよ」
「今そのこと言わないでお願い!」
意識しないようにしてるんだよ!
まぁ俺の心配もなんとやら。
少したったら発光も終わり俺の体から血が流れ出ていく感覚は無くなった。
うーん。保健室行こうかな。
「次は……あーフラフラする。えっと、『少し大きめの魔法陣を形成し、その中央に魔道書と契約者が立つ。そしてありったけの魔力を魔道書に注ぎー−−−−』」
そして俺はその瞬間契約本を荒々しく閉じた。
「えっ!?どうしたのユウマ!」
「この世のものとは思えない非情な文章が綴られていたんだよ」
俺は頭を抱えてそう答える。
「だって魔力を注ぐだけじゃ無いの?」
「『ありったけ』って書かれてたよね?」
「? そうだね。それがどうかしたの?」
それが俺にとっての死刑宣告だと、何故わからないっ!
「俺はお前らとは違うとだけ、言っておこうかな」
「私たちの違う? あ、そっかぁ。ユウマは勇者だから!」
「気づいてくれたか。察しのいい女の子は俺の好みだぜ。"あーもうどうしようー! 俺はお前らみたいに……」
その瞬間俺の背筋に鋭い悪寒が走った。
「お・ま・え♡?」
「ごめんなさい。……ゴホンッ! あーあー、俺は君たちみたいに魔力が自然に生成できる体をしていないんですよ! 魔道士の一族はいくら魔力を消費しても1日経てば全回復するけど! 俺の場合はそんなこと無いんだ! 一度消費したらその分はもう帰ってこないんだよ〜!」
「また貯めるしか無いね〜」
「気楽に言ってくれるなっ。ありったけって全部じゃないか! んなこと出来るか!」
「じゃあ他の本読んで違う方法探す?」
「その方向で行こう」
10分後
読んでポイしてを繰り返し本が山積みになったところで、
俺たちはぐったりしていた。
「契約の工程長すぎるぞ。なんとか魔力の消費を最小限に抑える方法を見つけたってのに。なぁハル」
「なぁにぃ〜」
「俺今どれくらいの工程クリアした?」
「計、26回?」
もはや疑問系である。
やる気が完全に失せた瞬間だった。
「もう、止めていいかな」
「その場合は私の魔道書を頼むよ?」
「うぐぅ………」
やる気の炎が一粒灯った。
「あともう少しであることに変わりは無いんだし、さっさと終わらせますかぁ〜」
「ちょっと!今ユウマ面倒くさいって思ったでしょ! ねぇ! お願いしますよ!」
ちっ! 勘のいい奴め。
「はっはっはぁ〜。当たり前じゃぁ無いかぁ。俺に任せたまへよ」
あ。
わざとらしすぎた、かな?
「わざとらしすぎて一周回って信用できるように思えてきた。本当に頼むよぉ〜……」
ぐあぁ!
涙目に上目遣いだと!
こんな風にお願いされたらもう断れないじゃ無いか!
お願いなんでも一つ聞いてくれたらおじさんがお小遣いあげるよ げへへ。
「猫耳ありのメイド服のミルクぶっかけで微妙にあともう少しのスカートの中の桃源郷がチラっの様なネクタイなしの上ボタン二つ明けの涙目に上目遣い 御主人様呼びだったら完璧なんだが(ブツブツ)」
「ん?何か言った?」
「"えっ!あ、いや、別に何もぉ〜あは、あはははは」
いかんいかん。
つい本音が。
こういうのは自重せねば。
「さてと。真面目に取り掛かりますか。次はー」
そして俺の魔道書契約が終わった頃には、もう昼になっていた。
「ふぅ〜。あー、ようやく終わったな。んじゃ今度はハルの魔道書を……」
「ねぇユウマ」
急に裾を引っ張られ体制が崩れる
「おっととと。ん?何だ?」
「その、ユウマが探してくれるっていうのはすごく嬉しいんだけど。やっぱりいいよ」
「どうした急に」
「だって! その、ちょっと考えたら、迷惑かな、なんて」
あれ?
ハルってこんな事言う子だったけ?
「別にそんな事ねぇよ。今んとこ俺とハルはコンビ組んでるわけだし」
「ふえっ!」
「え? だって俺たち取り敢えずは二人でクエスト受けただろ?そうなると俺たちはコンビって事で登録されているはずだ」
「あぁ、そ、そういう事」
他にどういう事があるの?
まぁそれはまた今度でいいか。
「だから別に迷惑なんかじゃ無い。逆に当たり前の事だ」
「当たり前って……」
「コンビってお互いに助け合うもんだろ?」
「そうだけど、私は助け合うどころか、助けてもらってばっかだし。それに……」
「はぁ……」
思わずため息が出た。
「助けてもらってばっかり? 何バカな事言ってんだ」
「……え?」
「俺はハルに助けてもらったよ。それも途轍もなくでかい事をだ」
そうまるで。
暗い暗い底の中で一人、膝を抱えて泣いていた俺を、そっと包み込んで、手をとって、再び立ち上がらせてくれた。
天から舞い降りた天使のように。
「だから。俺はお前のためなら努力を惜しまないよ。正直なところ、今すぐ正式にコンビを組みたいと思ってる」
「へ? ……ふえぇっ!!」
ボッとハルの顔が一気に耳まで真っ赤になる。
あ、あれ?何か恥ずかしがらせる要因があったかな。
何だろう。
見当がつかん。
「え? え? その、それはどういう……」
もじもじと。指をツンツンしながら真っ赤な顔で俺を見てくる。
その潤んだ目で。
別に恥ずかしい事は何も無いというのにこっちまで顔が赤くなりそうだ。
どうしよう。
心臓爆発しそう。
「そ、そりゃぁ勿論。いざって時俺が駆けつけられる様にだな。まぁ俺なんかに何ができるんだって事でもあるんだが、出来る限り手助けしてやりたいから」
その答えにハルは一瞬キョトンッとした表情になり。
顔の赤みが薄れ半眼になり唇を尖らせ、プイッとそっぽを向いてしまった。
「……そういうわけじゃ無いのに……………バカ………………(ボソッ)」
「え?何か言った?聞こえなかったんだけど」
「別に何でも無いよ! もうっ!」
あらら。
怒らせちったよ。
やれやれ。女心というものはわからんものだ。
「じゃあユウマ。私の魔道書。お願いね」
くるっと振り向いたハルの顔はどんな言葉でも言い表せない様な美しい笑顔の花を咲かせていた。
あれ?さっきまで怒ってなかったけ?
そんな疑問もさっきの笑顔を見てしまうともうどうでもよくなる。
本当に、女心ってわからん………。
俺の感想はそれだけだった。
◇◆◇
「それで?私の分はどうやって見つけてくれるの?」
「うむ。これからハルには俺の言いなりになってもらう」
「は!?」
なんか物凄い勢いで胸元を隠されたんだけど。
泣きそうかも。
「悪い。言い方が悪かったな。え〜と、俺の指示に従ってもらうぞ」
「それも同じ様なものじゃない!」
「あぁーもう! 違うから! これから俺がアイテム出してくからそれを俺の言う通りにバシバシ使ってけって事!」
「あ、そういう事。なら最初からそう言ってよ」
何だと思ってたんだよお前は……。
「まぁいいや。ワード入力! 『良好草』!」
手に持ったスマホの画面から、薄ぼんやりと光る球体が出現し
一つの草になった。
「? それは?」
「良好草っていう物事を良好な方向にアシストしてくれる効果を持ってる草、らしい」
「へ〜。でもこれ、食べるの?」
「俺も今そう思った。なんか不味そうだな……。特に色が。ま、味はしないって書いてあるし、大丈夫でしょ」
「ちょ、ちょっと! 軽いって! 食べるの私なのに!」
「ええい!つべこべいまずに食べなさい!」
グイっとハルの口に草を叩き込んだ。
「むぐぅ……モゴモゴ……………ゴックンッ………味はしなかったけど、なんか気分悪い」
「気のせい気のせい。さてとぉー、ワード入力!『賭博立方六面鏡』!」
ガラスの様に透き通ったキラキラと輝くサイコロが一つ、スマホの中から排出された。
○●○
『賭博立方六面鏡(使い捨て)』
レア度:☆☆☆☆☆★★★★★
道具
効果:聖十神獣の一匹『ペガスス』の涙により作られたサイコロ。振る時に出る目を決めその目が出ると願いを叶える事ができる。
制限:あまりに大きな願い事は叶える事ができない
○●○
「うわぁ綺麗。これはサイコロ?」
「ああ。ギャンブル・ダイスって言ってな、出目を決めて振る。決めた出目が出たら些細な願いを一つ叶えられるらしい」
「わぁ〜。それ凄ーい! あぁ! だから良好草を食べさせたのね」
「その通り」
因みに、『賭博立法六面鏡』とは、『最強ギャンブラーの運瓶』を使った時に隠れて鬼ガチャを引いて出たレアアイテムである。
時間が最後まで間に合わずに3つしか出なかったけどね。
レアアイテム。
「後は、お前の運しだいだ。出目はどうする?」
「『6』で!」
ハルの手からこぼれたサイコロはコロコロと図書館の机の上を転がり、
『5』の数字を表し動きを止めた。
「あ……」
ブッブゥー!という効果音がなり、サイコロはパリンッと消滅した。
「はあ〜………」
「ま、こればっかりはなぁ。運がなかったって事か。しゃあねえ」
「うん」
「自力で見つけるっきゃないですね」
「え?」
「ここまできたら乗り掛かった船。他に何かいいアイテムあったかなぁ〜……」
「ねぇ。ユウマ」
「何かな?」
「もうお昼だけど、ギルドの方には行かなくていいの?」
「う〜〜ん。今日午後行くつもりだったけど、別に明日でもいいし」
「行かないといけないって言ってたけど」
「……別にいいよ」
「私の事気にしてるなら大丈夫だよ。それに私もポイント欲しいし」
「う、ん。そうか? んじゃギルドに行って、ポイント貰ってから、またここに来る事にすっか」
「うん。了解」
うーん。
後回しにするのが面倒くさかっただけだから、別にいいんだがなぁ。
◇◆◇
酒場の様な木でできた扉を押してギルドの中へと入る。
あそこがカウンターかな?
「そこのお嬢さん。ここは乾坤一擲のカウンターでいいんですか?」
「はい。ここはヘビーファイティング ギルドカウンターでございます。ご用件は……」
「俺の名前はユウマと言います。以後お見知り置きを」
「はぁ。ユウマ様でございますね。クエストの受注でございましたら……あらぁ……」
「はい。今確認していただいた通り、魔物ルグルの討伐追加報酬を受け取りに来ました」
ざわっとした感じで視線がこちらに集まってくる。
なんだってんだ。
「失礼ながらユウマ様の一族のランクをお教えいただけますか?」
「え〜と。今のところはソーサラーって事になってます」
俺の言い方に疑問を持ったのか訝しむような表情をするカウンターのお嬢さんだったが、すぐに取り繕うように元に戻した。
「クエストを受注したのはユウマ様で間違いございませんか?」
「いえ。受注したのは俺では無く、ここにいる俺の相方。小寺春花です」
何か思いっきり殴られた。
ちょっと?ハルさん?何故殴るんですかね?
その途端に周りからはヒューヒューピーピー拍手喝采が巻き起こった。
はぁ……
なんとなく分かった。
なんなの? ここだと男性と女性のコンビは恋人みたいな感覚なのか?
さっきのハルの反応といい、今の事状況から見たらそんなとこだろう。
面倒くせぇ。
さっさと本題に戻すぞ。
「で。何か問題でもございますかお嬢さん。ないのでしたら早くポイントを下さい。こちらも暇を持て余しているわけではありませんので」
俺の挑発的な口調にむっとした顔をするお嬢さん。
ふぅ。やれやれなってないねぇ。
こんなあからさまな挑発にのっているようじゃ営業成績は伸びないぜ。
お嬢さん。
「まぁそう言うなよ坊主。こちとら中々お前らに興味があるんだぜ?なんせ ソーサラー二人だけでC−の魔物を狩ってきたってんだからなぁ」
「? そりゃぁどうも」
「だけどなぁ〜。そうなると疑問なんだよ。そんな強い魔物をソーサラーが、ねぇ」
「まぁ言いたい事はわかりますよヒゲのおっさん。あれでしょう?どんなイカサマ使ったんだこのクソガキ共って感じに言いたいんでしょ?」
「はっはっはっぁ!話が早くて結構」
「悪いけど。ちゃんと狩ってきたのは俺たちですよ? あと、微妙に話があってない。俺たちは『弱い魔物』と聞いてこのクエストを受けたんですが?」
「だがお前達。正規なルートを踏まずにそのクエストを受けたんだろう?」
「なに?」
ちっ!
何なんだよ。酒瓶片手に圧力かけてくるこの酔っ払いオヤジは。
「ハル。どういうことだ?」
「クエストはしっかり受けた筈だけど、正規のルートとかそうじゃないとかはわかんない。初めてだったから色々試そうとした時に変なおじさんが『クエスト受けるのは初めてかな? よし、僕が君にいいクエストを選んであげよう。うーんそうだなぁ。これなんてどうかな? この魔物は弱いけど報酬が凄くいい、初めてやるんだったらオススメだよ?』とか言ってカウンターの方で受付の人とゴソゴソした後私に渡したの」
「だ、そうですが? これは俺たちの責任じゃないですよね」
気丈に振る舞ってはいるが俺の制服の裾をつかんで、微かだが震えている。
くそったれめ。
ハルを怖がらせてくれましたねおっさん。
とりあえず後で一発ぶん殴る!
「成る程、そういう訳だったのか。悪かったな坊主達。どうして記録に無い者が達成報酬を受け取ったのか知りたかっただけなんだ。悪気があった訳じゃ無い」
「なら一発殴らせてもらえますかね?」
一瞬で場の空気が凍りついた。
周りは冷や汗を流しながらこちらを心配そうに見て、ハルは……うん。めっちゃ怖がってる。
「う、うむ。分かったいいだろう」
え?
いいの?
マジで?
ガチでいくよ?
俺手加減とかしないよ?
本当にいいんだな?
よーし。男に二言は無いからな?
……殴った後殴り返したりしてくんなよ?
やめろよ?
本当にすんなよ!?
「お前らの力が知りたかったのも事実だ。ま、ここだとギルドに被害が及ばないとも言えないから、外でいいか?」
なんかワイルドなおっさんだな。
うん。
ちょっとは手加減してやっても……
「ま、お前みたいな坊主の力じゃ。俺にダメージを与えるなんて無理だろうがな」
前言撤回。
ぶっ飛ばすっ!?
「ちょっと止めなよユウマ!」
そこで初めて制止の声が投げられた。
「何だよハル。止めるなよ」
「ここに来た目的忘れてる! ポイントもらうためでしょ! それにこの後の予定もあるし! 早くしようよ」
「う、ごもっとも。んじゃもういいやおっさん。殴る代わりにそこらへんで土下座で許すよ」
「何だ予定って? この後二人で宿でもとって夜の運動か?」
俺の言葉を無視してニヤニヤしながらそんなふざけたことを吐きやがった。
ほあぉぁ〜〜。な〜ぐりてぇ〜〜。
「何だよ。そんな怒るな坊主。おいエレナちゃん、だっけ?こいつらにポイントを」
「はい。わかりましたよアングラ。では学生証かポイントカードをお見せ下さい」
どっかのお店みたいだな。
そしてふむ。あのお嬢さんはエレナというのか。
メモメモ。
「はい。確かに受け取りました。ユウマ様・ハルカ様クエスト達成おめでとうございます。追加報酬のポイント50ポイントを25ポイントずつ振り込みました」
「どうも」
そう言ってポイントカードを受け取った時
ギルドの照明が全て暗転した。
「おい!どうなってやがる!」
「わからねぇが、ブレーカーが落ちたみてぇだな」
「じゃあさっさと元に戻せ」
「そうしたいが暗くて、 あいたっ!」
そんな馬鹿げたコントが開催されている中、確かに聞こえた。
俺の隣に微かな音を立て近づいてくる足音が。
とっさにポイントカードをポケットに隠すと舌打ちの音が聞こえた。
「そこだぁ!」
すぐ横から声が響き俺の顔面の前を何かがかすった。
この声はおっさん?アングラっとか言ってたな。
そうこうしているうちに照明がついた。そこには長めのローブを羽織った人物がおり、俺のポケットの方に手を伸ばしていた。
「チッ!」
顔を覆っていたその人はその場から走ってギルドから逃げていった。
「「逃がすかっ!」」
なんか知らんがおっさんとハモった。
おっさんは 何で? みたいな顔をしているが、あいつは俺のポイントを奪おうとしやがった。断じて許せん!
「おっさん。多分あいつが」
「あぁそうだ。あいつの名前はアルベス。お前らにクエストを受けさせた張本人だろうよ!」
「今すぐ追います? おっさん」
「当然!」
「んじゃ俺も行かせてもらいますわ! あいつは俺らを利用しようとした挙句ポイントを奪おうともしてくれやがった。この落とし前はつけさせる!」
「えっ? ちょっとユウマ」
「悪いハル。魔道書、お前の分今日中に見つけてやれそうに無い」
「え? あ、いや別に大丈夫だけど」
「後もう6時だ。そろそろ暗くなるし、ハルは早く寮に戻った方がいい」
「う、うん。分かった。ユウマはどうするの?」
「おらさっさと行くぞ坊主!」
「はいよぉ! ハルを騙した分もまとめて償わせるから安心しろ!」
「わかった。無理しないでね」
「おうよ!」
そう言って俺たちはギルドから飛び出した。
「おっさん!」
「何だ!」
「あいつが今どこにいるかわかってんの?」
「ああ、今俺の仲間の情報屋が追跡しているところだ。そしてその情報は常に俺のところに来るようになってる」
「伝達魔法ですか?」
「そんなとこだ!」
ただひたすら俺らは走っていた。
体力はある方じゃないが、アイテムの補助で、ね。
時折おっさんが耳元に目をやってはブツブツと喋り、方向を指示してもらった。
そしてある角にさしあたったところで
「坊主」
「何です?」
「ちょっとそこの横道に向かってワンパンかましてみろ」
「……ん? …………! はいよ!」
おっさんのニヤリッとした笑みで察した。
本当に居るんだろうな?
角を通り過ぎようとした瞬間、腰をひねり思いっきり拳を握り振り抜いてみると、確かに何か人肌のような感触のする何かを吹っ飛ばした感覚があった。
「ナイスだ小僧。にしても、お前腕力ねぇなぁ。1メートルぐらいしか飛んでねぇぞ」
うっせ! 仕方ねぇだろ!
「さてと。こいつがアルベスですか?おっさん」
「あぁそうだ」
顔の部分のローブを剥ぎ取ると、顎長の青年が目を回してた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はっ! ここは!」
「お? おーいおっさん。ようやくお目覚めみたいですよー?」
「よぅ〜アルベス。元気か?」
おっさんに話しかけられ木に縛っておいた青年アルベスは目に見えて狼狽していた。
「ア、アングラ! 待て! 違うんだ!」
「おい」
「ヒッ! ってお前は」
「俺はユウマというものです。初めましてアルベスさん。早速なのですが、何で俺たちを利用するような真似をしたのかご説明頂けます?」
「ふ、フハ、フハハハハッ!何故俺がお前なんぞにそんな事を–––」
「……アルベス」
「ヒッ! アングラ……」
地の底から響いてくるような声にアルベスが震えだす。
「何もかも吐け。まずはそこからだ」
「な! 何を言って」
「吐けと言っているんだ!」
「………………………………わ、わかった」
諦めたのかアルベスはガクッと顔を落としてそう返事をした。
アルベスの話は要領をえなかったが、簡潔に言うとこういうことだった。
アルベスには一人の弟がいるのだという。
頑張ってはいるのだが魔力量が少なく魔力切れをよく起こし、あまり効率よくポイントを手に入れられなかった。
見てられなかったアルベスは弟のために俺たちにクエストをクリアさせ報酬をポイントにし、そのポイントを奪おうとしたのだと言う。
俺たちみたいな生徒じゃ無いと報酬はポイントにならないからな。
アルベスはその後ギルドから(主にアングラから)きつい罰を与えられ、もうこんなことはしないと誓っていた。
こうしてギルドでの一件は無事幕を閉じた。
そんなこんなで1日は終わり、ハルの魔道書を手に入れさせてやれなかった訳なのだが。
まさか次の日。
そのことを激しく後悔することになろうとは。
全く思いもしなかった…………




