古代魔術(エンシェントスペル)の魔導書捜査中!!
《ギルド:乾坤一擲》
ラギア・マジックに複数存在するギルドの一つ。
ここはラギア魔法学院の存在する町『魔正町』に居を構えているギルドである。
今日も仕事を終えた連中が騒ぎながら酒をかっ喰らうその風景は、酒場そのものであるが。
かくして、好き放題に喚くは歌うはしているオヤジどもの他に、情報交換に勤しむオヤジ達もいるわけで
「なぁ聞いたかよ? 駆け出しソーサラーの男女コンビが、あの魔物『ルグル』の討伐に成功したって話」
「おいおいマジかよ?ルグルって言やぁ、賢者級が1人は欲しいっつうランクD++の魔物じゃねえか。しかも、俺たちのギルドに回ってきたルグルって」
「そうなんだよ。直ぐそこの『冥府の森』。しかもそいつは、森に生息している全種類の魔物を1匹ずつ捕食した森の王。もう『ルーベスト・ルグ』に進化してやがったのさ。セイジ級5人は固いな。何せランクC−にまで上がってやがるんだからな」
「そんな奴をソーサラーが2人で? って、でもおかしくねぇか? いくら腕に自信があったとしても受付の嬢ちゃん、えーと何つったけ、えー、そうそうエレナちゃんがそんなのわかるわけねえし。そもそもクエスト受けるのだって大騒ぎだろう? 何で今まで何の騒ぎも起こってねえんだよ」
「何でも、アルの奴が裏で手を回したって噂だぜ?」
その言葉は潜められ、秘密裏に流す情報のものだった。
「あぁ? あのクソ野郎……。ギルマスが不在なのをいい事に。何かあったらシャレじゃすまねえんだぞ!」
「まぁ落ち着けよアングラ。まだ本当がどうかまではわからない。あくまで噂だ」
「けどよぉ。あいつはこう言っちゃ何だが隠す事に関してはハイレベルだぜ。そう簡単に尻尾を見せるような事は」
「安心しろって。ちゃんと落とし前はつけさせる。あいつは何か企みがあってこう言ったことをしたんだと思う。だとしたら、あいつは必ず再びソーサラーのコンビと接触するはずだ」
「そこを狙うわけだな? よぅし! まずはそのソーサラーのコンビって奴らを探そうぜ!」
豪快に大声を出す男に、慌ててその男の口を押さえ周りを確認する男2人。
「あのなぁ。ソーサラーのコンビがこの国に、もっといやぁこの町に何十いると思ってんだ! アルの奴が細工してその時の映像魔法も無効化されてやがる。どうやって見つけるってんだよ」
「んなこと言ったってよぉ〜」
「大丈夫だ。俺たちが探さなくとも、そのコンビは自らこのギルドに来る。何せあのクエスト依頼書には『魔物が進化したとの事により、討伐に成功した方には追加報酬を差し上げます』と書かれていたからな。追加報酬を受け取るためにこのギルドに来るだろう。そしたら顔が割れる。そいで尾行でもすれば、な?」
「成る程!お前は相変わらず頭がいいな! グリエンド」
「お前はもう少し頭を使え。ま、俺はどっちかっつーとそのソーサラーコンビを見てみてえっつーのが強いんだがな」
深くフードを被った青年のような声色のギルドお抱えの情報屋 グリエンドは、そう言って酒を傾ける。
「はっはっはっ!成る程確かに。どんな奴らか気になりはするよな?」
「だろ?」
カッチョいい髭を生やした齢42歳のベテラン アングラは豪快に笑い、それに被せるようにグリエンドもニヤッとした笑みを浮かべた。
◇◆◇
「ぶえっくし!」
「何ユウマ? 風邪?」
「いや。そんなはずはないんだが」
そう言って俺は鼻をすする。
ここで「どっかのかわいこちゃんが俺の噂を……」などと口走らない辺り、俺の精神反応レベルはこの前の芸術品無料観覧事件で盛大にアップしたと見える。
「こう見ると目の下にクマできてるし。駄目だよ?ちゃんと寝なきゃ」
「とは言うけどなぁ。俺だって忙しいんだぞ?昨日だって色々と……」
「そういえば今日言ってた用事ってなんなの?」
「あぁ、ちょっと自分の強化を」
「自分の強化って、山籠りしてきたとでも?」
訝しむような顔をしてこちらを覗き込むハルに、ついドキッとしてしまう。
いや仕方ないじゃんっ!? よく見ようがそうでなかろうが超絶美少女なのだ! 男として当然であると俺は全力で断固抗議させてもらうよ!!
「あのなぁ。たった数時間山籠りしただけで強くなれるんだったら。ここは今頃仙人の星と化してるよ」
「ふぅーん。まぁ別にいいけどね。ん? なんかユウマのスマホ光ってるよ?」
「あ? あぁ。これはオートモードにしてる状態でな。勝手に残っているスタミナ使ってダンジョンに潜ってくれるんだよ。スタミナが無駄にならないから使おうかなって」
「? でも昨日は光ってなかったよね?」
「ああ。でも今日から始めたってわけじゃないぞ? 2週間以上やってなかっただけ。お。さて、もう直ぐ図書館だな。そういえばハル。お前は……」
「そのお前っていうの気分悪いんですけど!」
「え?」
「何か微妙に傷つく!その言い方変えて」
「ええと……。うーっと……。あーーーー……。んじゃぁ、一人称は、おのれ?」
「却下!」
ちょっとしたふざけ心によるユーモア溢れる俺のギャグを腹パンをかますとともにバッサリ切り捨てやがった!
痛てぇ!
「冗談だろうが……つうか一人称変えるって、今更」
「いいから」
「だって『お前』が嫌なんだろ? うーん。でもなぁ。こういうの俺のガラじゃないし、でも変えて欲しいって言うしなぁ」
「何?何か思いついたなら言って」
「あー……何だ『君』でどう?」
「…………」
沈黙ですかっ!?泣けるっすね!
「まぁユウマがいいなら」
「んじゃそれでいいや。話戻すけど、おま……じゃねえやハルはまだ魔導書とは契約してないよな」
「うん。何で?」
「いや。なんか魔導書と契約している状態で他の魔導書と契約するととんでもないことになると聞いたことがあってな」
「それなら大丈夫だけど、とんでもないことって?」
「それは俺もわからん。体がバラバラになるとか、一生治らない呪いをかけられるとか、その後食べたものが全て同じ味になるとか、いろいろ噂があるけど。さて、午後にはヘビーファイティングとかいうギルドにも行かないといけないし、午前中に済ませますかね」
「あれ?なんか用事あるの?」
「追加報酬。ちゃんと最後まで紙読む癖つけろよ」
「……ごめんなさい」
「まぁいいや。さてついたな、コンパスよ、頼む」
ググッとコンパスの針が力み(そういう風に見えた)、グリンっと方角を示した。
「あっちか」
「えーと。あっちは確か……」
「F-32・剣術関係の本棚だな」
「ほぇ〜〜」
「だてに3週間こもってねぇよ」
「さいですか」
そういってコンパスの指し示す方向へと歩みを始めた。
コンパスの指す方向を注意深く観察すると、本棚と本棚の間に約1センチくらいの溝があると判明した。
その間に長めの薄い棒を差し込むとカチリッというような音がなり、本棚に幾つか空いていた本一冊分の隙間の一つに本が出てきた。
「ビンゴっ!」
「うっ〜わぁ〜なんか詐欺臭」
「何を言ってくれるかなこのお嬢さんはっ!れっきとした俺自身の力じゃないか!言いがかりはやめてくれたまへよ」
「はいはい」
「んじゃ早速鑑定してみるか」
スマホを起動し設定の『鑑定』を選択する。
○●○
『魔導書・言語』
古代魔術
○●○
ふむ、簡単な説明だな。初っ端から古代魔術が来るとは思ってなかったが好都合だ。
「よし早速契約しちゃいましょう」
「えー私の魔導書わぁ〜」
「後でちゃんと探してやるよ」
さてと、ちゃっちゃと終わらせちゃいますか。




