表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アヅィール聖法国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/101

第77話 アヅィール聖法国

「な!?なんだ、これは!?」


 ジルが宿の主人とともに戻ってきた。どうやら憲兵を呼びに行っていたらしい。憲兵がこの部屋の状況を見て狼狽えている。


「賊に襲われました。全員を拘束しましたが内一人は絶命しています。何かがきっかけとなり首の錬金道具が作動したようです。」


「……これは内側から棘が突き出ているのか?」


 憲兵が賊たちを跨いで僕のほうへやってくると抱えている遺体を検分する。


「はい。一見装飾品のようにも見えますが、ここに錬金文字と魔法文字が書かれています。どうやら作動すると土魔法によって首全体を串刺しにするよう仕掛けられているようです。」


「お前、錬金文字が読めるのか?この拘束といい、中々やり手の魔導師だな。」


「シュウは特別だからな!」


 シルさん、何故にあなたが胸を張ってるんでしょう…。


「だが、お前たちがコイツ等に襲われる理由は何だ?コイツ等は何処のどいつだ?包み隠さず答えろ。」


「そんなこと僕たちが知りたいですよ。そのことをこの人に聞いていたら急に首の錬金道具が作動したんです。こんなのを見たら他の人たちも委縮して何も喋る気にならないでしょうし、困ってるんです。」


 他の賊たちを見ても皆、首に同じ錬金道具が付いていた。デザインはそれぞれ違い装飾で上手く隠蔽できているが、見る者がみたら直ぐにこれが錬金文字であると気づくだろう。


「うーん…。ちなみにお前たちは何者だ?」


「ジル、書状を。」


 シルが言うとジルは懐からルスト公爵が書いた書状を取り出して憲兵に見せる。


「ほう、カルカス公国から来たのか。アヅィール聖法国へ向かうのだな。ずいぶんとタイミングの悪いことだ。」


「そう言えば、教皇が襲われたと聞きました。何故襲われたのかご存知ですか?」


「まさか。俺のような一市民が知るわけないだろう、そんなこと。

 それよりも書状を見るとプラチナランクの冒険者様が同行しているようだが、その方のほうが独自の情報網を持っているんじゃないか?その方はどこにいるんだ?」


「え?僕にそんな情報網があるはずないじゃありませんか。」


「………。え?お前なの?」


「………。…え?」


 ………。暫しの沈黙。


「んん!ま、まぁ能ある鷹は爪を隠すというからな。見た目はあれでも、この魔法は凄まじいものを感じる、気がする。流石はプラチナ冒険者様だな、うん。」


 何か咳払いしながら誤魔化しているが、誤魔化しきれてませんよ、憲兵さん。完全に顔が『こんな冴えない男がプラチナ冒険者だと!?』と言ってます。


「とにかく死人も出てしまった以上、このまま開放するわけにもいかん。急ぎの旅で申し訳ないが、駐屯所で詳しく話を聞かせていただきたい。ご同行願えるだろうか。」


「わかりました。そのまま出立できるように荷物をまとめますので少々お時間をください。」


 こうして僕たちは身支度をして憲兵たちの駐屯所へ向かい尋問を受ける。尋問と言ってもドラマのように強く追及されるようなこともなく、知る限りの事実を述べたら直ぐに全員解放された。

 生き残った賊たちは駐屯所の牢に入れたので拘束魔法を解いている。だが、下手に尋問をするとまた錬金道具が反応してしまう恐れがあるので、錬金術師を呼び寄せるまでそのままにすると対応してくれた憲兵が教えてくれた。






 そして、僕たちはテルトーダ国境付近の町を後にして関所へと向かっている。


「しかし、あの者たちが言っていたことは疑問だらけだな。

 あの者たちは、あのいけ好かない盗賊団と一緒に雇われたと言っていたが、そうだとすると雇い主はリード男爵ということになる。しかし、死んだ賊が最後に言おうとしていたのはまったく別の人物のように感じた。」


「そうだね。それに賊は僕たちを狙った理由があの盗賊団を壊滅させたからと言っていたけど、リード男爵はすでに捕らえられている。なら、この命令をしたのは誰だ、ということになるんだけど…。」


「頭文字が『せ』から始まるものなど、そこら中にいますからね。八方塞がりですか。」


「それにもう一つ疑問があるんだ。賊が付けていた錬金道具。あれは恐らくリード男爵が付けていた『隷属の腕輪』と同じ作者だと思う。錬金道具は錬金文字と魔法文字を組み合わせることで発動するけど、その組み合わせ方は人によって微妙な個性が出るんだ。

 チラッとしか見れていないけど、リード男爵が付けていたものと賊が付けていたものの癖が似ていた。もしそうだとすると、リード男爵が言っていた『あの方』っていうのは賊の言おうとしていた人物と同一人物なのかもしれない。」


「それだけじゃないわ。あの賊は私たちを特定した理由をアヅィール聖法国へ向かうからと言っていたでしょ。だけど、私たちが盗賊団を壊滅させたうえアヅィール聖法国へ向かうことを知っている人間なんて限られてるわ。その者から横流しされて襲われたとすれば行きに知り合った人物にも協力者がいるのかもしれないわ。」


「シーの言う全てを知っている人物、考えられるのはカルカス公国最後の町の町長かテヒト首長、あとはマシュー親子くらいか。ただ、マシューたちは実害を受けているし、町長が黒幕だったとしてもテルトーダまで根回しできるほどの人物とも思えん。この感覚を信じた場合、最も怪しいのはテヒト首長になるがシュウはどう見た?」


「テヒト首長は掴み所がない人のように感じた。その分、裏で工作することに長けていると言われれば納得できるけど…。」


 その感覚さえも誰かに誘導されているような気がするのは考えすぎだろうか。


「やはり、我々だけでは議論は平行線のままですね。とにかくアヅィール聖法国に向かい内情を確かめてみましょう。」


「ジルの言う通りだな。だが、教皇が襲われて警備が厳重になったと言っていたが入国できるのか?」


「姉さま、そこはご心配ありません。私が編み出した『ねっこワーク』でアヅィール聖法国を見てみましたが、国境は正常に機能しているようです。ただ、検問が厳しく武器の類は全て没収となっていますね。」


「ね、っこワーク!?もしかして猫とネットワークを掛けてるの?」


「何よ、文句あるの?」


 シーちゃんが『シャー』と威嚇してくる。怖い!!


「ふふ、私はシーのネーミングセンス、好きだぞ。可愛いじゃないか。」


「流石は姉さま!この奥深さに気付かれるとは!」


 今度はシルに『ゴロゴロ』言いながらすり寄っていく。僕の態度とは雲泥の差だ…。


「話を戻すが、検問で私たちの武器が没収されるのは避けたいな。シュウ、悪いが預かってくれるか?」


「もちろんだよ。けど、冒険者が武器の一つもないってのは逆に怪しいからダミーのものを持っておこう。」


 僕たちは普段使っている武器を『ボックス』に入れて、適当なものをそれぞれ持ち関所へと向かう。

 僕やシル達が持っている武器は少々特殊なのでこの地域ではとても目立つ。そのため普段シルとジルは刀を袋に入れて持ち歩いているのだが、今回のようなときには隠すことができない。そのためお金に余裕ができたところでルストの武器屋で調達しておいたのだ。


 ◇◇◇


「よし、ここから先がアヅィール聖法国だ。向こう側で何が起ころうと我々は手出しできんから気を付けて行けよ。」


 二日後、僕たちは無事テルトーダの関所を抜けてアヅィール聖法国へと入る。アヅィール聖法国は現在、テルトーダ以上に厳しい検問があるので商人たちも疎遠気味になっているらしい。そのため関所は列らしい列もなく、すんなりと通ることができた。


「アヅィールまではこの谷間を通って向かうことになるのだそうです。アヅィールの近くは不思議と魔物が寄り付かないそうですが、テルトーダ付近には出没するそうなので気を付けてまいりましょう。」


 ジルが要点をおさらいしてくれる。なぜわざわざそのようなことを口にするのかと言うと、僕たちは普段使っていない武器を持っている。

 シルとジルが細い刀身のバスターソード、僕が魔導杖とナイフである。どうせアヅィールに入るとき没収されるので魔導杖だけでも良いのだが、何となく刃物があったほうが便利なので帯剣していた。要するに使い慣れない武器を使うことになるので油断しないようにしよう、と言うことである。


「まぁ、アヅィールで愛用の武器が使えるとも限らん。何があるか分からない以上、こういった武器にも慣れておきたいところだな。」


「シルがそんなこと言ってるからこっちにやってくる魔物がいるみたいだよ。」


「丁度良いではないか。この武器の調子も確かめられる。」


 僕たちが構えた直後にバトルボアが二頭現れるが、武器の良し悪しを確かめる前に瞬殺されてしまったのは言うまでもない。


 ◇◇◇


 そこからさらに一週間歩いて、ついにアヅィール聖法国の首都となる都市、聖都アヅィールへと辿り着く。

 噂通り検問は厳しく、手持ちの武器や薬の類は全て没収されているようだ。僕たちも武器を没収されたが、その他に特質すべき持ち物もないのですぐに門を通してくれた。

 ただし、魔導杖だけは取られなかった。理由を聞くと魔導関連の品は装飾品と見た目が類似している物が多くしっかりと調べるには錬金術師が丁寧に鑑定する必要があるのだそうだ。僕の『ルックアップ』を使えば一発なのだが、転生者以外にこの魔法は使えない。

 実はステータスを確認する錬金道具は存在するが、調べられる内容が限定されるのでこういった道具の鑑定は専門家が目で見て知識を活用する外になかった。

 また、最近では杖の小型化が主流になっていて指輪型のものが人気だったりする。魔石の大きさにより得られる恩恵も変わってくるのだが、戦争や大型の魔物を相手にしない限りはその程度で十分という訳だ。

 それに、魔導師は杖がなくても魔法を発動できる者もいる。杖はあくまでも補助機能であるし、完全に止められないばかりでなく誤って本当の宝飾類を没収してしまっては後々言いがかりをつけられる可能性もある。それなら杖くらいは目を瞑ろうという考えらしい。





 そう言ったわけで、僕たちは特に足止めされることなく街中へと入っていく。


 聖都アヅィールは山肌に沿って作られた港町だ。その景色は清潔感のある白色の建物が立ち並び、青い海を表現するかのような青色の屋根が印象的である。そして一際目立つ建物、山間にある街の中でも最も高い位置に建てられた大きな建物が大聖堂である。大聖堂には敬虔な教徒が数多く訪れ洗礼を受けていると宿屋の店主が教えてくれた。


 アヅィールには二通りの入り口があり、僕たちが通ったのは山の麓から入る道。もう一つは山の頂に繋がる道でこれは北の小国と繋がっており、国外に住んでいる教徒のほとんどがこちら側から訪れるのだそうだ。

 僕たちは着いて早々、山の麓となる港に近い宿を取ったので大聖堂までは遠いが、麓に住む市民は漁業関連や商業関連、頂上に向かって教徒が多く住んでいるのだとも教えてくれた。


「さて、それじゃあまずは港付近から見て回ってみようか。」


 僕たちはとりあえず港の様子を確かめることにした。商人や漁師が多いためか、教皇が襲われたという割にこの近辺は混乱しているようには見えない。それどころか早朝から漁に出ていた船が戻ってきているので、今は市場が活気づいていた。


「商売の時間が限定されていると言っていたが、随分と活気があるのだな。」


「もしかしたら余所者には厳しいけど、古くからいる住人には制限を設けていないのかもいれない。」


「そうですね。よくよく考えてみたら国民にまで制限を付けてしまっては経済に影響します。いくら厳戒態勢であっても、そんなことをする必要性はないということでしょう。宿屋の店主みたいに利用客がめっきり減ってしまった店は大変なようですが。」


 その後、僕たちは手分けして街の中を散策していくことになった。


 シーちゃんはシルと、ジルと僕は一人でそれぞれ別の方向へ歩いて行く。

 僕はとりあえず港を深堀していくことにした。市場は新鮮な魚介類が乱立しており、どの店も客が店主と値引き交渉をしている。

 さらに市場を見ていて吃驚したのが野菜の値段である。相場の二倍近い値段で売り出されているのだ。値切ることが前提にしてもこれは流石にやり過ぎとも思ったが、この付近は畑を多く作れないのかもしれない。そうなると輸入に頼らざるを得ないので値段が上がってしまうのも無理はない。イヴン以上に急な斜面に作られたこの街では輸送コストも馬鹿にならないのだろう。


 そう思いながら次に海のほうを眺めてみる。港には漁船がひしめき合っているが、大きな船は見当たらない。だが、すれ違った人に聞いたら中型船以上の船は別の船着き場に停泊しているのだそうだ。ここは所謂漁港という訳である。


 一人で勝手に納得しつつ露店で販売していたサザエのつぼ焼きを堪能した僕は、今度は内陸を見てみることにする。内陸は段々畑のような階層が出来ており、各階層に大通りが存在する。大通り沿いには路面店が軒並みあるものの、少し路地に入ると全て住宅地のようであった。路地を進むとどこも直ぐに上り坂へと突き当たる。試しに一つを昇ってみると一階分を昇ったあとに少しズレてまた別の階段が出てくる。そうして複数の階層を昇っていくと大きな広場へと出てきた。


「ここはボールドンの断頭台広場に似てるな。」


 そう言ったものの、別に断頭台があるわけではない。ただ、大きな噴水があり、その噴水を囲うように円形の広場が作られていたのが似ていると感じただけである。奥の方に小さな演説台のようなものが置かれているのもそう思った理由の一つかもしれない。


 広場の周りには小さな出店やベンチが置かれており、子供たちが噴水で遊びまわったりカップルがイチャコラしていたりする。クソッ!

 おっと、僕としたことが見知らぬ男女に悪態をついてしまった。心の中だけどごめんなさい。


「お、やっぱお前も来たか。あの掲示板を見てきたんだろ?」


 お、ベタな展開が来ましたね。これは新情報を貰える絶好のチャンス!僕はしれっと男性二人が話しているほうへ聞き耳を立ててみる。


「当たり前だ。聖女様が直接声明を出されるってんなら来るに決まってる。他の奴らも徐々に集まってきてるはずだぜ。」


 言われてみれば先ほどよりも人が多くなってきている。


「しかし、何のお話をされるんだろうな。」


「そりゃあお前、教皇様が襲撃された件だろ?」


「じゃあ犯人が分かったのか?」


「そこまでは知らねぇよ。だからその話を聖女様がするんだろ、ってことだ。」


「まぁ何にしても俺は聖女様のご尊顔を拝めれば満足だけどな。」


「あぁ、それには激しく同意するな。あの女神のようなお姿に穢れが一切ない眼差し。考えるだけで涙が出てきそうだ。…。あれ?なんか目が熱く…。」


 これ以上の情報は得られそうにないな。人目も憚らずに二人して男泣きし始めちゃったし。でも、そんなに言うなら見てみたいです、聖女様!


「そこのあなた、旅の方ですか。」


 後ろから声を掛けられて振り向くと武装した一団が目の前にいた。


「そうですが、あなた方は?」


「我々はこのアヅィール聖法国に使える聖騎士団の者です。その風貌、その杖。報告の通りだな。」


「へ?何です、藪から棒に。一体何のご用件なんですか?」


「あなたには教皇猊下襲撃を指示した容疑がかかっています。無駄な抵抗はせず、速やかに投降しなさい。」


 ………。何ですと!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ