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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アヅィール聖法国編

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第75話 首長の頼み

い、一応毎日更新になってます…。

今回は軽いトーンを意識して書きました。

 僕がこの世界に転生してから一年半ほど経とうとしているが、この世界のお偉いさんに呼ばれて良い出来事があったためしがない。特に僕の目の前にいる従者風の人みたいに『主がお会いしたいと仰せだ。』などといってくる流れはゴマンと体験してきた。呼び出しをする人間が偉ければ偉いほど厄介ごとに巻き込む気なのだ。


 今回は何だって?首長?絶対会っちゃいけないパターン第一位ですよ、これは。


「あのー、僕たちは昨日この街に来たばかりなのですが。」


「えぇ、存じ上げております。」


「この国に入国したのだって片手の親指から中指までで数えられる程度ですよ。」


「関所から来られれば、所要日数はそのあたりになりますね。」


「実は、これから出国手続きをするところでして。」


「えぇ、そのようですね。では早く首長にお会いになりませんと。」


「……。あ、まだご飯を食べていないのでした!そうだそうだ、しかしこの時間だと宿屋の厨房は空いてないかー。いやぁ、仕方がないなー。それじゃあ屋台まで食べに行かないといけないー。」


「そうですか、それでは宮殿までこの街にある屋台全ての料理を届けさせましょう。」


 ………。横暴だ!みなさーん、ここに職権乱用者がいますよー。


「シュウ、どうかしましたか?」


 ここでジルが心配してこちらにやってくる。ただ、ここまで抵抗したものの国主の命令は絶対である。逃げられるはずもないので、話がややこしくなる前にこのやり取りを終わらせることにする。


「あぁ、お城まで呼ばれたみたいだ。ちょっと行ってくるからジルとケーシーはシルと一緒に出国手続きをしておいて。マシューさんももうすぐ来るはずだから。」


「…。わかりました。気を付けて行ってきてください。」


 ジルはチラッとドアの前にいる男を見るが、すぐに了承の返事をする。

 こうして僕は一人、目の前の男性に連れられて宮殿へといくのだった。…ご飯くらい食べさせてくれても良かったのに。


 ◇◇◇


 着いた場所は街の外れ。ここは特別地域と呼ばれる場所で、権力者の中でも上位の者でなければ住むことを許されない場所だ。その特別地域の最奥にある一番目立つ建物、それこそが宮殿である。


 これまで訪れた国の街並みは西洋風だったのに対して、この国の街並みはどこかアジア的な印象の建物が多い。その中でも宮殿は一際豪華な装飾に作られており、塔のような柱や屋根には金色の球体が乗っており、その球体も真ん丸という訳でなく若干楕円で天辺が尖っている。


 門が開かれるとそこから宮殿までは一直線の道が繋がっている。その道は二つあり、道を挟んだ中央には川のように広大な面積の溜め池がある。

 道を真っ直ぐ進んで漸く宮殿に入ると入り組んだ通路を通って広場まで出た。


「こちらでお待ちください。」


 この広場が謁見の間だったようだ。言われてみると奥には地べたに豪華な装飾を施した巨大クッションがあるが、それが首長の席と言うことだろうか。周りを見渡すと椅子がないので、恐らくそう言うことなのだろう。僕は言われるがまま当てがわれた麻の呉座のようなものに座りその時を待つ。


「おぉ、待たせてしまい済まんな。」


 名乗らなくても分かる。広場へ来るなり謝罪をする人間、これこそがこの国の国主であった。その証拠に回りの家臣たちが片手を胸に当てながら軽く頭を下げているし、豪華クッションソファにその人間が腰を落としている。


「儂が首長のテヒトだ。お主がプラチナ冒険者シュウで間違いないか?」


 その男性は初老を迎えており、顎には立派な白髭が蓄えられている。権力者としては珍しいことに華奢な体型をしているが、袖から見える腕の肉付きは悪くないので筋力はそこそこあるのだろう。

 テヒト首長は顎髭を撫でながら僕の答えも待たずに先を続ける。


「冒険者としてはあまり筋肉はないように見えるな。鶏肉は食べておるのか?タンパク質を取らねば良い筋肉は付かんぞ。」


 僕は無表情のまま、『あぁ、やっぱりこの人は転生者なんだな。』と納得してしまう。だって『タンパク質』なんて単語が出てくるのは転生者くらいなものでしょう。


「首長、そのお話はテルトーダに馴染みがある者にしか通じないかと。」


「んん?あぁ、そうか。これはすまんことをした。」


 そう思っていたのだが、どうやらこの国で鶏肉が良質なタンパク質を持っていることは有名らしい。テヒト首長の横で話す、僕をここまで案内してくれた従者の人の言い方から僕はそう推測した。


「さて、冒険者シュウよ。お主の噂は儂の耳まで届いておる。火竜を狩り、ペリシェ王国を救い、キマイラを倒す一助をするとは流石よのぅ。」


 全て成り行きでそうなっただけであるが、他人から聞くとまるで英雄譚を聞いている気分になってくる。僕が弁明しようとするが、口を開く前に首長が話を続けていく。


「しかし、ここまでの道のりは災難であったな。我が国の民もお主の世話になったと聞く。大切な民を救ってくれたこと、礼を言う。」


『キマイラ』という単語が出たのでそんな気はしていたが、やはり直近のことまで把握されているようだ。どこかに密偵がいたのか、情報収集能力が高い人間を抱えているのか。詳しいことは分からないが、まさか僕の気配察知に感知されないとは。


「いえ、わた…。」


「おぉ、そうだ!お主は『クリームシチュー』は堪能したか?あれは美味であろう!…。ん?どうかしたか?」


 厳めしい顔をしているのでてっきり真面目キャラだと思っていたが、随分と奔放な性格をしているようだ。あまりにも話題がコロコロと変わるので付いていけない。


「まぁよい。お主と楽しい会話をするのもこのくらいとして、本題に入ろうか。」


 僕はまだ一言も発していないわけだが、そんなことはお構いなしにテヒト首長は真面目な顔つきに変えて勝手に話を進めていく。


「お主は我が国を経由してアヅィール聖法国へ向かいたいそうだな。何故、彼の国に参りたいのだ。」


 ………。暫しの沈黙。


「いや、喋らんか!?」


「あ、喋ってよかったんですか?」


 てっきりまた独演会が始まるんだと思ってたよ。テヒト首長はというと隣の従者に何故か怒られている。首長の威厳はどこに…。とりあえず僕は気を取り直して質問に答えることにした。


「これは失礼いたしました。改めて私が冒険者シュウでございます。ご質問の答えですが、私の知り合いがアヅィール聖法国に滞在していると頼りを寄越しまして、これも何かの縁と思い赴くことにきめたのです。」


「ほう、頼りとな。ならばそれなりの資金力がある者なのだろうな。そこらの詮索はせんが、最近では彼の国もきな臭い噂が流れておる。十分に気を付けることだな。」


「ご忠告痛み入ります。そのお言葉、重く受け止め用心して旅を続けてまいります。」


「うむ、良い心掛けだ。

 お主をここへ呼んだのはその忠告だけではない。実は首都テルトーダからアヅィール聖法国へ向かう街道で野盗が多発しておってな。」


 これは良くない流れである。このあとに続く言葉はどうせ討伐依頼だろう。これ以上寄り道もしたくないので何とか理由を付けて断ってやる!


「野盗自体は我が国の憲兵が十分に抑え込んでいる。そのため現在、街道は正常に機能しておる。」


 …。あれ?討伐しなくていいの?


「だが、どうしても野盗どもの元締めにまで辿り着けん。」


 そら見ろ!案の定だ。この後はその元締めの居場所を探せ、か?それとも元締めのいる地域にいる野盗の殲滅か?どちらにしても先を急ぐことを理由に断るのが得策だろう。テヒト首長には返さなければならない恩もないのだ。


「そこで、冒険者シュウに儂直々の依頼だ。元締めがいると思われるアヅィール聖法国へ赴き、儂の協力者とともにアヅィール聖法国内の様子を探ってくれんか。」


 …。あれ?それって簡単に言い換えると僕の目的地へ行って街を見てくればいいだけ?

 何だか身構えていただけに肩透かしを食らった気分だ。


「あの、それは何を以て依頼達成となるのでしょうか。」


「何、帰り際にアヅィールの街の様子をレポートしてくれればそれでよい。儂の協力者もアヅィール聖法国へ向かっている最中なので、街に着いたら冒険者ギルドへ行くといい。そのうち向こうから声をかけてくるはずだ。」


 今までの依頼に比べると良心的である。断る気満々であったが、話を聞く限り断る理由が思い浮かばない。


「わかりました。そのくらいで良ければお受けいたしましょう。ただ、野盗どもに関する有力な情報が手に入らない場合もございます。その場合でも依頼達成とみなしていただけるのでしょうか?」


「うむ、その情報の重要度に関わらず褒美は取らせよう。よろしく頼むぞ。

 あぁ、言い忘れていたが、アヅィール聖法国というのは国主である月下聖教教皇の住まいである大聖堂の中も指すのでくまなく探るのだぞ。」


 …。騙された!!


 こうして楽な依頼だと安請け合いをしてしまった自分を呪いつつ、僕は宿屋へと戻っていくのだった。



 ◇◇◇


 ――――その日の夜。


「あんたの目から見て、シュウさんはどうだった?」


 ここは宮殿内にある首長の寝室。テヒトは寝間着姿で窓辺に座り酒を仰ぐ。そして、窓の外には物陰に隠れつつ話しかける仮面の男が一人。


「実に真っ直ぐな青年だ。初めてテルと出会った頃を思い出す。」


「そのテルがあの人は転生者だと言うんだが、実際はどうなんだ?」


「テルから教わった『向こうの世界』の知識をいくつか話題に出したが、大きく反応したものはなかったな。だが、それが逆に違和感に感じたのぅ。まるで儂が出した単語の全てを理解しているようにも感じた。」


 テヒトはシュウとの謁見で、わざと無駄な会話を多く挟み入れその反応を伺っていた。


「アヅィール聖法国に知り合いがいるらしいが、あの者が裏で手引きしている可能性はないのか?」


「あのシュウさんが?敵対していた俺たちにだって心を許すような甘ちゃんだぜ?それはねぇよ。」


「うむ、それなら良いがな。お前たちが持ち込んだ暗号文ももう少しで解読が終わる。そうすれば少しは前進するだろう。」


「流石は傭兵団『仮面の七人』のブレーンだ。期待してるぜ、テヒト首長。」


「ロージ、お前に期待されなくとも儂はテルのためならば、どんな労力も厭わんよ。テルトーダ初代首長の御心に従うことこそ我が本分なのでな。」


「はいはい、初代首長の家臣であるあんたの言葉は重みが違うねぇ。

 三日後、リッチー先生をこちらへ送る。それまでに情報の整理を頼む。」


「あぁ、わかった。それよりお主もたまには飲んでいかんか?今日は侍女を全て休ませているが、最高級の…。まったく、現金な奴だ。」


 仮面の男はテヒトが全てを言い切る前に影の中に消えていった。

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