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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アヅィール聖法国編

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第73話 小悪党の末路

投稿が遅くなりました。

 シルは帽子を被りミラを連れて町へと向かう。町長は僕がその場で書いた手紙をアルスカイン特別侯爵とツィワン侯爵へ届けるように部下へ指示を出して、衛兵たちと盗賊団『土竜の十爪』のアジトまで駆けていった。


 僕はと言うと、傭兵団『仮面の七人』とともにリード男爵の館へと引き返していた。

 ツィワン領へ行くにはカルカス公国からだとペリシェ王国を通る必要がある。そうなるとツィワン正規軍、もしくは信頼のおける王国兵が館に着くのには数週間はかかるので、その間に証拠隠滅をされかねないと考えたのだ。

 アルスカイン特別国爵の元へ僕の手紙が届けばきっとルスト公爵の耳にも届くはずである。そうなれば何かしらの手を打ってくれるはずだ。


 しかし、それでも時間はかかるだろう。そのためリッチーさんにも同じ内容の手紙を渡し、直接ツィワン侯爵がいる城まで走ってもらうことになった。リッチーさんであればリード領を突っ切ることができるし、足も速いのでそう時間をかけずに届けることができる。


「しかし、シュウさんには驚かされたよ。強いとは思っていたが、まさかあそこまで上級魔法を使いこなすとはな。」


「そうです、そうです!私なんかあの火魔法を見たとき自信失くしちゃいましたもん!」


 館へは歩いていく。駆け抜けた道を戻る形で進むわけだが、キマイラが木々を根こそぎ薙ぎ払ってきたので広い一本道が出来上がっていた。

 その道中に仮面を外した同伴者たちは代わる代わる僕に話しかけてくる。館に着くまでのギスギス感は薄れコニーなどは笑顔で元気よく自信喪失の報告をしてくるほどだ。


「私もあの魔法の数々には驚かされました。風魔法と水魔法は洞窟で見ていましたが、火魔法まで操れるとは思ってませんでしたので。流石はプラチナランクの冒険者と言ったところでしょうか。」


「そうだな。まさか噂の冒険者が目の前にいるとは思いもしなかった。シュウさんは何でテルトーダへ向かってるんだ?」


 ロージが旅の目的を聞いてくる。別に疚しいことがあるわけではないので素直に教えても良いのだが、まだ会って一日程度の付き合いでしかない人たちに個人情報を明かすのは何だか気が引ける。


「詮索はよせ、ロージ。大魔導師殿がお困りだろうが。」


 ジャンがロージを窘める。代表して話をしたり指示を出すことが多いロージだが、こういうときに注意できるところは傭兵団の副長と名乗るだけのことはある。


「すまねぇな。コイツも普段は真面目面してるんだが、気が緩むとすぐ調子に乗りやがる。別にあんたのことを疑ったりしているわけじゃねぇんだ、許してくれ。」


「いえいえ、別に怒ってなんかいませんよ。だけど、皆さん会った時とはだいぶ印象が違いますね。」


「仮面を付けてるときは余所行きだからな。普段はこんなもんだ。コニーとロージなんかは飯屋に入るともっとうるせぇくらいだ。」


 現在『仮面の七人』はそのトレードマークである仮面を外している。林道を歩いて奥地へ向かっているので、しばらくは仮面を外していても問題ないと判断したようだ。戦闘に支障がないような工夫はされているが、ずっと付けていると息苦しいのだという。


「あー、副リーダーが私の事をいじめる!自分だって酔うと直ぐに喧嘩し始めるくせにぃ!」


「そりゃ、俺の耳を馬鹿にする奴らが悪りぃんだろうが!あんな連中は死んだほうが世のためだ。殺されないだけマシだと思ってもらいたいくらいだぜ。それに酔うと一番面倒なのはロージだろ?

 シュウ。コイツはな、酔うと飯屋にいる女と言う女を見境なく口説き始める。端正な顔してやがるから引っかかる女もいるが、大概はコイツの口の悪さにドン引きしちまって怒って帰っていく。たまに平手打ちも飛び出るから見ていて飽きねぇぞ。どうだ、今度一緒に見物しねぇか?」


「ジャン!?シュウさんに何吹きこんでやがんだ!お前こそあんまり馴れ馴れしく話すなよ!シュウさんはお貴族様だぞ?」


「はは、僕は名ばかりですけどね。それにプラチナランクだって貰ったばかりで実感がないからありがたみが良く分かってないんですよね。だから、平民と変わらない扱いの方が嬉しいです。」


「はい、ロージもジャンさんもそこまでです!シュウさんがまた困っているではありませんか。

 ロージは女性関係がだらしなさすぎます。紳士としての教養をもっと学びなさい。ジャンさんは気に喰わないことがあっても手を出さないように忍耐を鍛えてください。コニーは元気の良さだけでなく、もう少し淑女として相応の振舞いを覚えなさい。以上!」


 アリアナが三人を叱ると三人は見る見る背中を丸めて小さくなっていく。コニーは『何で私まで…。』などとぶつくさ言っていたりもするが。


「…。大丈夫ですか、テル?」


 アリアナはテルの様子が気になり声を掛ける。テルは何か思いつめたような表情で歩いていた。寡黙な性格だと思っていたので普段からこういう感じなのだと思っていたが、どうやら仲間からは違和感があるらしい。


「…。あの、シュウさん……。」


 テルは目を泳がせながら僕に話しかける。引っ込み思案なのは本当のようだ。


「なんでしょう、テル君?」


「……。あの、シュウさんは……。」


「はい?」


 声が聞こえず聞き返すとテルは吃驚したようにしながら顔を背ける。


「………。」


 長い沈黙。あんまり注目してしまうのも可哀そうかもしれないと考えて僕が視線をテルから前に戻そうとするとテルが意を決したように顔をこちらへ向けてきた。


「シュウさん、シュウさんはもしかして……。」


「おい、誰か来るぞ!」


 テルの声はダグの大声で消されてしまった。ダグの声を聞いた傭兵団は全員仮面とフードを被る。

 少し遅れて前から三人、馬に乗った者が現れる。全員プレートメイルを着ているが、兜は外していた。


「とまれ!お前たち、何者だ?」


 ここは僕が前に出た方が話がスムーズだろう。僕は代表者として先頭にいる馬上の男へと向かって冒険者登録証を取り出す。


「私の名前はシュウと申します。ナインフォセア王国国王ヌル・アダムズ陛下にご承認いただきプラチナランク冒険者となったものです。」


「ほう、お前が噂の冒険者か。それでは奥にいるのは傭兵団『仮面の七人』で間違いないな?」


「へ?」


 僕の冒険者登録証を確認した男は直ぐに後ろのメンバーが誰なのかを言い当てた。確かに全員が仮面にフードをしている中二病のような恰好はこの世界でもだいぶ目立つし名のある傭兵団と町長も言っていたので風貌だけで十分にわかるとも思えるが、それでも僕の正体を確認しただけで事情が分かっている風なのは不思議であった。


「なんだ、違うのか?」


「あ、いえ。その通りです。しかし、なぜ彼らが傭兵団だとわかったのですか?」


「それは異なことを申すものだ。ツィワン将軍閣下へ手紙を出したのはそなたであろう?」


「え!?じゃあ、もう届いたのですか!?」


「あぁ、要塞都市ツィワンからここまではそれなりに距離があるが、丁度遠征中だった故近くまで本軍が来ていたのだ。そんな折、手紙を背負ったリスが来たのでツィワン将軍のご命令で我々は先行して様子を見に来たというわけだ。

 指示された場所に向かうと館は崩壊しており、大きな何かが通った跡を見つけたためここまで駆けてきたのだが、これは何が起きてこうなったというのだ?」


「それはツィワン将軍閣下に直接お話した方が良いでしょう。あまり大っぴらにできない内容ですから。」


「そうか、ならば我々と共に館跡まで同行せよ。もう少しで閣下も現着される頃だろうからな。」


 斥候の三人に付いていく形で僕たちは館へと向かうと話で聞いていた通り、館は見るも無残な状態となっていた。

 屋根は吹き飛ばされ壁は崩壊し、二階建てだった館の原形はそこになく完全な瓦礫の山と化している。館前にはここを護っていた者たちの亡骸が倒れているが、どれも巨大な何かに食い千切られたような傷跡を残しており五体満足なものは一つとしてなかった。


「おぉ、お主は坊ちゃんと姫様のお気に入りではないか。」


「お久しぶりでございます、ツィワン侯爵閣下。」


 館に着いた僕たちに気付いて近づいてきたのはツィワン侯爵本人であった。僕が貴族への礼儀作法をしながら傅くと、後ろのメンバーもそれに倣ってお辞儀をする。


「よいよい、ワシはそのような形式ばった作法は好まん。それとワシのことは将軍と呼ぶように。そのほうが戦場ばかりのワシにはしっくりくるのでな。」


「はっ、ありがとうございます、将軍閣下。」


 僕たちは居直り改めてツィワン将軍へ話しかける。


「質問をしてもよろしいでしょうか、閣下。」


「ふむ、何じゃ。」


「閣下へ手紙を送ったのは確かに私ですが、現着までには数日かかるものと思っておりました。何故ここまで早く来られることができたのかお聞きしてもよろしいでしょうか。」


「当然の質問じゃな。当方が捕らえた捕虜二名からリード男爵が内通しているという情報を得ての。陛下の勅令でリード領をくまなく調査しておったのだ。そこに賢いリスがやってきたのでこちらまで飛んできたという訳じゃ。先ほど瓦礫の下から地下牢への入り口を見つけたので何かしらの証拠も挙がるじゃろう。そうなればリード男爵は打ち首確定じゃな。」


 アダムズ国王も独自のルートでリード男爵を疑っていたようだ。リード男爵がルインルスアルテ大陸へ人身売買を行っていたとすれば向こうの大陸にある国家と繋がっている可能性もある。内通者として決めつけたように扱われているのもこの可能性が高い、もしくは確信しているためだろう。


「して、この荒れ果てようは何事かシュウ準男爵にはお分かりかな。」


「準男爵など私には勿体なき爵位でございます。どうか冒険者シュウとお呼びください、閣下。

 これはキマイラが暴れた跡かと思われます。手紙にも記しましたが、私どもは子供たちを救うべくこの館まで辿り着きました。最後の一人を助け出し林道を駆けていたところ、キマイラとリード男爵が私どもを追ってきたのです。

 キマイラはすでに仕留めております。リード男爵の身柄は適切な留置所がなかったため、一時カルカス公国の町へ預けております。」


「相分かった。ではあちらにある魔法陣は禁忌の魔法ということになるかもしれんな。あまり多くの者の目に触れては厄介だ。早々に破棄してしまうとしよう。」


「ご配慮痛み入ります。閣下、もう一つよろしいでしょうか。」


「申してみよ。」


「リード男爵ですが、背後で何かと繋がっていた節がございます。その者に何かお心当たりはございませんでしょうか。」


 これは先ほどの話の続きをしてほしい、と暗に頼んでいるのだ。ナインフォセア王国で知っていることを聞ければアヅィール聖法国の大物とやらも分かるかもしれない。


「ふむ、それはこの場で話す内容ではない。だが、お主には世話になったことでもあるし、今回の手柄もあることだ。一つだけ開示してやろう。

 あ奴、子供を中心に攫っておったようだ。自領の集積所と呼んでいる場所に集めた子供らを眠らせてから箱詰めすると、行商人に扮した部下が何度かに分けて交易船の積み荷に紛れ込ませていると言っておった。しかも、テルトーダ首長国を経由せずにアヅィール聖法国まで運んでいたらしい。

 どんな手を使っているかまでは不明だが、ここが集積所と呼ばれる場所であればそのルートも割り出せるかもしれん。ワシから言えるのはここまでじゃ。」


 これだけでも十分な情報だ。もしかしたらテル達はすでに掴んでいる内容かもしれないが、それでも答え合わせにはなったはずである。アヅィール聖法国にいる黒幕を暴かねば同じ被害が出るかもしれない。奴隷制度は悪だと教え込まれた現代人の僕としてもどうにかしてあげたい問題だ。


「お心遣い感謝いたします。」


 そのあとは、『仮面の七人』の紹介とリード男爵の身柄の引き渡しについてルスト公爵と話してほしいということを伝えたあとに、少しだけ取り留めのない会話してツィワン将軍と別れる。しかし、あのおじいちゃん『姫様の婿候補として名乗りを上げぬか?』など良く言えたものである。僕が言っていれば間違いなく不敬罪で捕らえられるところだよ、まったく……。


「シュウさんはこれからどうするんですか?」


 テルが僕の方に近付いて聞いてくる。テルの肩にはいつの間にかリッチーさんが乗っていた。


「僕は当初の予定通り、友人たちの元へ戻ってテルトーダ首長国へ向かいます。テル君たちは?」


「僕たちはもう一人の仲間と合流して今回得た情報を整理します。暗号解読などは彼の領分なので、何か掴めるかもしれませんし。」


 当初あれだけ嫌っていた仮面の集団であるが、テルや仲間たちの人となりを知るとどうしても憎めない自分がいる。ツィワン将軍へ地下金庫で見つけた手紙の存在を伏せていたのもそのためである。


「……。また会えるでしょうか。」


 僕へ尋ねるテルの声はどこか寂しそうに感じる。


「僕も乗り掛かった舟ですし、今回の件は気にしておきたいと思います。だから、何か摘めたら良ければ教えてください。リッチーさんなら僕たちのことを見つけることもできるでしょ?」


「おう!例え海へ渡ろうが、仲間たちを総動員して探してやる!」


「ふふふ。ありがとう、リッチー。シュウさんもそれまでお元気で。」


「テル君たちも。」


 僕たちは最終的にグッと互いの手を握り締めて別れを告げた。

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