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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アヅィール聖法国編

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第67話 続・邪魔者

 僕とシルはケーシーに隠し扉の場所を教えて貰うと町から離れてから周辺を探り始めた。町から少し離れさえすれば僕の気配察知が使えるので捜索はグッと楽になる。そして、近くの林の地下に怪しい空間があるのを発見。さらに、その空間から真っ直ぐ北に延びる道を辿ってみると二十人ほどの大人と手枷を填められた子供たちが北上しているところを見つけて全速力でここまできたのだ。

 地下には崩れにくくする土魔法がかかっていたけど、僕の魔法が上回っていたのですぐに砂へ還すことができたという訳だ。


「なんだ、てめぇら!」


 ホビット種と思われる男が何か叫んでいるが、彼がリーダーなのだろうか。他に比べると高い魔力を感じる。


「あなたに名乗る必要なんてないでしょう。それよりも、これってもしかしなくても人身売買をしようとしてますよね?」


 このエクロキア大陸では、どの国も人身売買は認めていない。ルインルスアルテ大陸の一部地域では奴隷制度が適用されているが、その管理は厳しく身元を証明する書類と取引をした証となる契約書を政府に提出しなければならないとオーベロンは言っていた。


 ということは、後ろの子供たちはどういうルートを通るのかは不明だが、ルインルスアルテ大陸に運ばれて身分証と契約書を偽造させられるのだろう。


「はんっ、それこそてめぇには関係のねぇ話だろうが!たまたま崩れやすくなっていた場所から落ちてきたのは不運だったが、俺たちは急いでてね。悪いがサクッと殺して行かせてもらうぜ。〈ロックジャベリン〉!」


 ホビットは小さい杖を前に出して魔法を唱えると魔法陣が浮き出て尖った岩が二つ、僕たちへと襲い掛かってきた。だが、岩は二つともシルの抜刀術であっさりと細切れになってしまった。


「な!?ま、まさか闘気使い!?」


 シルは現在闘気や魔法は使っていない。純粋に技術を以てして斬り裂いただけだ。まぁ、シルの持っている刀が帰着の里で打たれた特別製であるということと、自然の流れを感じられるエルフの眼力により脆い所を的確に狙えたということもあるのだが、そんなことを一々説明してやる義理もない。


「ミラとナッシュもいるな。どうする、手っ取り早く全員切り伏せるか?」


「いや、子供たちもいるんだ。あまり刺激的なことはしたくない。とりあえず僕の方で拘束しよう。〈アイスバインド〉」


 僕は見るからに小悪党な彼らに氷の鎖を嗾けて拘束していく。


「なんだ、こりゃ!?硬すぎて動けねぇ!?」


「あとは全員気絶させて子供たちを救出すれば解決だ。シル、手分けしていこう。」


「あぁ、子供たちも衰弱しているうえに怪我人もいるようだ。早く開放してやったほうが……!?」


 シルが急に前へ出ると硬い金属音が洞窟内に響き渡る。なんと僕の拘束を斬り裂いて仕掛けてきた者がいたのだ。シルと鍔迫り合いをしている人物は大柄ではないものの、その体格から男だと分かる。だが、仮面をしており表情までは読み取ることができなかった。


「ほう、これを見切るか。」


「お前、強いな。野蛮人どもの仲間にしては実力差があり過ぎる。何者だ?」


「先ほどお前たちが言った言葉をそのまま返そう。初対面の敵に名乗る名など持ち合わせてはいない。」


「おい!!てめぇら、それでも用心棒か!早いところこの忌まわしい氷を外しやがれ!」


「……。はぁ、まったく。今回の仕事はとことん貧乏くじだな。ダグ!」


「おぉ!ぅおりゃあ!」


 仮面の男がそう言うと後ろに控えている仮面を付けている者の中でも一際大柄な男が僕の拘束を破る。なんとワイバーンでも砕けなかった氷を筋力だけで砕いてしまった。

 男はそのまま仮面を付けた仲間の鎖を引き千切り、五人が動けるようになる。シルと対峙していた男は一度下がるとホビットの鎖を斬り裂いて自由にしてやった。そして、仮面の仲間たちも次々と野盗たちの拘束を破っていく。


「ここは俺たちが引き受けよう。お前たちは先に行け。」


「驚かせやがって…。おら、てめぇら!さっさと行くぞ!」


「僕たちが逃がすとでも?〈クアッグマイア〉」


「ぎゃあああ!?か、体が沈んでいく!?た、助けてくれぇ!!」


 僕は野盗の足元に底なし沼を発生させて体を沈めていく。これで一気に終わらせるつもりで唱えた魔法は敵の大半を飲み込んでいくが、仮面の男たちは全員が避けてホビットを含めた数人を沼から救い出す。子供たちを巻き込まない様に範囲を限定したというのもあるが、この仮面たちはやはりやり手のようだ。


 仮面を付けた敵の近くにいた者以外は全員が沼の中へ沈んでいったので僕は魔法を解いて元の土へと戻す。これで先ほどの怪力の持ち主でもない限りはどうしようもないはずである。


「なんなんだ、今の魔法は。土魔法のエキスパートの俺でも知らねぇ魔法だった…。」


「無駄話をしている暇はないぞ。我々が仕掛けたら例の少女を連れて駆け抜けろ。」


「な!?他のガキどもを諦めろって言いてぇのか!?」


「そうだ。そんな余裕がないことはお前も分かっていると思うが?それにお前が痛めつけなかったら少年のほうも連れていけただろうにな。自業自得だ。」


「く…。チッ、仕方ねぇ。おい、計画のガキを連れてこい!女の方だけでいい!」


 ホビットがそう言うと子分がミラを連れてきた。どうやらミラだけを連れて逃げるようである。だが、それをみすみす逃がすほど僕たちは甘くない。


 シルが何も言わずに駆け出すとすぐに先ほど対峙した男が立ちはだかった。シルに合わせて僕も駆け出そうとするが、僕の方は敵が先に仕掛けてきたためそちらを受けざるを得ない。


「君は僕が止めます。」


 仮面の下から発せられた声は少年のようにも聞こえるが、しっかりとした意思を感じられるものだった。ただし、この少年は強い。それが証拠に短刀を引き抜いて攻撃を受けた手応えが凄まじいものであった。


「ダグ、テルのほうを手伝ってやれ!他は俺と一緒に奴さんの相手だ!」


 仮面の集団は二手に分かれて僕たちと対峙する。シルのほうは槍使いとレイピア使いにリーダー格の男。僕の方は先ほどの怪力男と目の前の少年である。


「お兄ちゃん!」


「ミラー!!」


「くっ!?」


 敵が猛攻を仕掛けてくるので、受けに手一杯となった隙を突かれてミラを連れていかれてしまった。

 僕とシルは敵の追撃を受け流しつつ一度下がり合流する。敵と場所が入れ替わり、追う立場となった僕たちの前に仮面の男たちが立ち塞がる形となってしまった。これでは文字通り形勢逆転である。


「シル、敵を一層しつつ後を追える?」


「いや、厳しいな。この者たちは連携がしっかりと取れている。隙を作るのは骨が折れそうだ。シュウ、そっちは?」


「こっちも同じく。恐らく巨漢のほうはドワーフ種だね。ただ、それよりも少年のほうが不気味だよ。彼からは得体の知れない実力みたいなのを感じるんだ。」


「そうなるとこの者たちの相手をしていること自体が時間の無駄だな。とはいえ、素直に通してくれるとも思えない。さて、どうしたものか。」


 僕がシルと相談していると仮面の男がこちらへ話しかけてきた。


「お前たち、何者なんだ。ここに落ちてきたのは偶然じゃないんだろう?そこの子供たちの中に知り合いがいるのなら子供たちは返してやってもいいが?」


 用心棒と呼ばれていたのでてっきり子供たちは手放さないと考えていたが、意外な取引を持ち掛けてきたものだ。だが、僕たちの目的が遠ざかっている以上、この取引も僕たちを引き留めておく時間稼ぎとしか思えない。


「分かっているんでしょう?僕たちはあの少女も救わなきゃならないんです。あなたたちこそ見逃してあげますからこの場は退いてくれませんか?」


「ふっ、それこそできない相談だ。俺たちはあの下衆に雇われたわけじゃないが、雇い主から下衆共を護る様に言われている。このままお前たちどちらかを逃がしたら下衆は直ぐに殺されるのがオチだからな。悪いが、このまま俺たちと遊んでいてもらう。」


 仮面の男たちの意志は固そうだ。となれば、力押しする外にない。


「それなら仕方ありませんね。〈クアッグマイア〉」


 僕は再び敵の足元に底なし沼を作り出す。ただし、今回は範囲を広げて飛びのいても逃げられない様にしている。


「え?…えぇ!?」


 槍使いが後ろに下がろうとしてそのまま沼に呑まれていく。巨漢は僕が空けた穴まで飛んで端を掴み垂れ下がる形となる。レイピア使いはその巨漢に捕まり難を逃れた。

 残りの二人は壁を使って回避する。リーダー格の男は壁の凹凸を利用して後ろへ下がると懐から分銅のついた鎖を取り出して沼の中へ沈んでいく槍使いを沼から引き抜いていく。

 そして残る一人は何と壁走りをしてこちらへと仕掛けてきた。


「シュウ!」


 少年の速さはシルも目を見張るもので、魔法をかけていない僕では受けるのに精一杯である。シルが思わず助けに入ろうとするが、穴にぶら下がっていた巨漢が振り子のようにしてこちら側へと飛び降りるとレイピア使いと共にシルの前に立ち塞がり二対一の状況を作り出す。


「アリアナ、この嬢ちゃんはお前より強い。勇み足で踏み込み過ぎるなよ。」


「分かっています。それでは…行きます!」


 レイピア使いは真っ直ぐにシルへ突っ込んでいくが、シルに対して直線的な攻撃は命取りである。シルはヒラリと攻撃を躱すと側面から刀を振り下ろそうとする。しかし、怪力男の攻撃により刀が降ろされることはなかった。

 巨漢なため動きは鈍いかと思っていたが、これが中々に素早い。コンパクトに拳を次々と突き出していき、間合いを見極めて大振りの一撃を喰らわせようとする。さながらボクシングのような戦い方でシルに猛攻を仕掛けるが、シルは悉く避けて刀を繰り出す隙を伺う。ただ、レイピア使いが巨漢の隙となるタイミングを見計らって加勢するのでシルは上手く攻められないようだった。


 僕の方はというと少年の素早さにも段々と慣れてきて、多少は見応えのある攻防ができるようになっていた。少年の手数は凄まじいものであるが見切れないものでもない。ただ、何というか…。手を抜かれているような気分になるの何故だろうか。


「テル、待たせた!」


 僕が考えながら少年と戦っているとリーダー格の男が参戦してくる。槍使いとともに鎖を穴の上にある木の枝に括り付けて底なし沼を渡ってきたようだ。槍使いはシルの方へ加勢に行っている。

 リーダー格の男が加わったこちら側はさらに厳しい攻撃を繰り出すようになる。二人の連携は先ほど相手にした巨漢とのもの以上に卓越したもので余計に隙がない。シルの方も少し苦しくなっているようだった。


 段々と追い込まれていく僕たちは、やがて一か所に誘われていく。攻め立てる仮面の集団は僕たちが揃ったところで大きな一撃を狙っているのだろうが、これは僕たちに対しては悪手である。

 僕とシルが追い込まれて背中合わせになったところで、少年とリーダー格の男は闘気を出して剣へ集めていく。反対側の三人も同じように闘気を練りこみ必殺の一撃をまさに繰り出そうとしていた。だが、気配察知のある僕にはこれは予想の範囲内だ。


「シル!!〈フラッシュ〉」


「ぐっ!?」


 僕は真上に極小の雷を発生させて強烈な光を生み出す。所謂、目眩ましである。ただし、子供たちもいるので手加減はしている。

 僕の意図を理解していたシルは僕が叫ぶとともに目を瞑りこれを回避する。そして、一瞬の隙を作った僕たちは一気に駆け出すのだった。


 ――――――――――――――――――――――――――――


「くそっ!こんな手があるとは…!奴らはどこへ?」


「ん…逃げられたみたいだ……。」


 仮面の男たちが段々と視界を取り戻していく中で状況を確認していく。彼らは自分たちの目が使えないうちに敵の猛攻があると思い、いつでも迎撃できる体制を取っていたのだ。しかし、彼らの考え通りにはならなかった。なんと、シュウとシルフィードの姿はその場になかったのである。


「えぇ!?子供たちを置いて行っちゃったの!?」


「コニー、驚いている場合じゃない!アイツ等の足じゃ野盗どもが地上へ着く前に追いついちまう!アリアナとコニーは子供たちを頼む。野郎どもは追いかけるぞ!」


 五人は女性陣を子供の世話役にして、男性陣で追いかけようと駆け出そうとする。しかし、ある魔法がそんな彼らの行方を阻んだ。


「〈アトモスフィア・プリズン〉」


「んな!?なんだ、見えない壁?」


「風の…牢獄……。」


 彼らは大気を折り重ねて作られた魔法に阻まれてしまったのである。そして、何もなかった場所から一人の男が現れる。


「またまた、形勢逆転ですね。シルの後は追わせないよ。」


 シュウが再び立ち塞がるのだった。

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