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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
ナインフォセア王国編

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第52話 輪舞曲

上手く投稿出来てませんでした。

「皆、俺のわがままに付き合わせちまってすまない。」


「もう決まったことだ。気にすることねぇよ、リーダー。」


「そうです。あっしらはリーダーが決めたことに文句を言わないって約束したじゃないですか。」


 ダラスは歩きながら皆に謝る。


 一行はクージル国にある貧民街から首都ハマンへ向けて歩いていた。

 敵の罠とも取れる招待状を受け取り引き返すか議論をしていたが、結局はダラスの決断でこの誘いに乗ることにしたのだ。

 理由は単純明快、自分のせいで抗うこともできない人々が虐殺されていくことが許せなかったのだ。


 ただし、イーヴリンは引き返すように説得したのだが、二つの理由に断られた。

 一つは監視されている疑いがある状態で二手に分かれるのは愚策であること。

 もう一つは、今回の旅に同行した目的についてである。


 ◆◆◆


「真面目な話をしましょう。ワタクシはこの旅が一つの天機だと考えています。

 我が王国は今、後継者争いが重大な問題となっています。兄妹同士だけの話であれば穏便に済むことも、臣下が加われば小さな出来事が大きな火種となり波及していくのがナインフォートなのです。

 ラウノお兄様は真面目に公務を熟されていますが、他の王子よりも劣っていることは明白。しかし、ラウノお兄様は正室の嫡子ですから血の繋がりを重視する臣下と能力を重視する臣下で対立ができているのです。

 さらには、お父様もご年齢を重ねられ公務もお辛いご様子。兄弟の支持も拮抗しているため、ここで引き合いに上がるのがルストお兄様とワタクシになります。

 二人とも正室の子の上、ルストお兄様はどの王子よりも武芸に優れ治世にも明るい。そして、自画自賛するようですがワタクシに至っては豊穣の姫の生まれ変わりと呼ばれ、民に最も信頼されています。

 ラウノお兄様と比べてもワタクシたちは優れていますが、ルストお兄様はすでに王子であることを辞退された身。ここでもルストお兄様を王太子としてナインフォートへ向かえるべきだという臣下がいるので、さらに後継者争いが抉れる原因となっています。

 だからこそ、ワタクシが王座へ上り、この不毛な争いを一刻も早く終わらせて王国を正しく導かねばなりません。ルストお兄様とはすでに約束もできているので、あとは他の兄妹とそれを後押しする臣下を黙らせる口実を作るだけ。

 この旅で成果を出せばワタクシの能力も正しく評価されるだけでなく、カルカス国国主が指名した冒険者が解決に一役買うことでカルカス国は無視できない存在となります。そうなればカルカス国完全独立の道も開けるでしょう。

 これにより、ナインフォート内だけでなく完全独立を果たしたカルカス国国主となるルストお兄様からの後押しでワタクシは女王となることができるのです。

 どうですか。これがワタクシの真の目的です。ワタクシは皆を利用してでも王位を得ます。」


 イーヴリンは揺らぐことのない決意をその言葉に込めて言い放つ。話が壮大過ぎるためガジなどは黙ることしかできなかったが、イーヴリンの意志だけは伝わっていた。


「ですが、危険と分かっていて無理強いすることはできません。だから私は冒険者イヴとしてみんなにお願いしたいんです。

 どうか私に力を貸してください。」


 イーヴリン、いや、冒険者イヴは同行した皆に深々と頭を下げる。これから向かうのは死地かもしれない。それを己の目的のために行こうと言っているのだ。イヴにとって人に頭を下げることなど初めてのことである。それでも命を懸ける彼らに自分の意志を明確に伝えたかったのである。


 これに対して、反対する者はこの旅のメンバーにはいなかった。


 ◆◆◆


「お待ちしておりました。」


 クージル国の首都ハマンに着くと城壁門は開放されており、使用人らしき人物が一行を出迎えた。


「あんたが案内役か?」


「はい、我が主より首都をご案内するように仰せつかっております。それでは早速ですが参りましょう。」


 案内人はそう告げるとさっさと中へ入って行く。

 街は民家を中心に屋台のような出店が多く展開していたようだ。なぜ過去形かというと、普段であれば行き交う人々で賑わっているはずの大通りでさえも誰一人いないためである。

 徴兵により男手は兵士として城へ連れていかれ、戦力とならない者は貧民街へ追い出されていることを知っていたためこの状況は想定内ではある。ただし、街並みがそのまま残っていることは良いとしても兵器の一つもないというのは一行としては想定外のことであった。危惧していた通り要塞化されているのであれば、もう少しそれらしい施設があって然るべきなのである。


 ダラス達は案内されるがままに街を歩いて行くが、見落としがないように伏兵にも気を配りながら見て回る。案内人は名所へ着くたびに見所や歴史を教えてくれるが、その声はどこか緊張しているようだった。


 大回りをしつつも街の中心へと向かっていく途中でダラスが案内人に話しかける。


「どこも竜の装飾が施されているな。」


「わが国には宝竜伝説というものがありまして、遥か昔にこの地には竜が住んでいたと言い伝えられております。その竜は、とある宝剣をいたく愛でていたため宝竜と呼ばれていました。その竜は普段は大人しいのですが、野盗が盗みに入ると激怒してその度に暴れまわったそうです。

 そこに現れたのが旅の勇者でして、三日三晩の激戦を繰り広げた竜と勇者は互いを認め合い、友好の証として宝剣を勇者へ贈りました。そして、勇者との約束により自ら封印されたと言います。

『厄災があるとき竜は目覚める』。この伝説からそのように言い伝えられ今日にはその竜の加護を得るためにどの家にも竜の置物を祀っているのです。」


「なるほどな。通りで貧民街でも竜の彫り物を持っている奴がいたわけだ。」


 ダラスは口にはしないが、現状が厄災であると皆が考えているのだと心の中で納得していた。


 一行は案内に従い観光名所を巡り、中心にある大広場へと辿り着く。案内人の説明ではこの広場にある噴水は恋愛成就のご利益があるそうで休日は沢山の人々で賑わっているらしい。

 そして、城から布告がある際に住人が集まり元首の言葉を聞く場所もこの広場だという。そのため広場の隅には高さのある演説台が鎮座していた。その演説台に人影があることに気づいたのは案内人に演説台の説明を受けたときだった。


「御機嫌よう、諸君。良く御出で下さった。私の自己紹介をしておこう。私はヴィクター、カーン様よりこの国の運営を任されているどこにでもいる悪魔だよ。」


 ヴィクターは爽やかな笑顔を向け一行に話しかける。


「私は少々あなた方のことを見くびっておりました。せっかく観光ツアーへご招待したのに王国へお帰りになってしまうのではないかと心配していたのです。ですが!まさか王女殿下までご参加いただけるとは。光栄至極とはまさにこのこと。このヴィクター、ツアーのクライマックスは全身全霊を以てご期待にお答えしようと思う。」


 ヴィクターは恭しく頭を下げる。それはどこか道化のように見える人を小馬鹿にした態度であった。


「俺たちを呼んだのは国家元首だろう。何で最後の出迎えがあんたなんだ?」


 ダラスが話しかけるとヴィクターは『やれやれ』と言った風に頭を横に振りながらこめかみを手で抑えてこの問いに答える。


「カーン様はお忙しいうえに気高く高貴なお方。あなた方のような下賤な者は会うに値しないしないのですよ。ですから、仕方なく私が遊んで差し上げようと言っているのです。」


「ずいぶんな言い方だね。こちらに王女がいると言ったのは君なのに、王女も会う資格がないと言うのかい?」


「あなたは確かカルカス国辺境伯のご子息ですね。そうです。人間社会での優劣など、我々悪魔からすれば考慮に値しません。地面を這う虫をみてどちらが偉いかなど、あなたは考えたこともないでしょう?私からすればあなた方の地位など団栗の背比べでしかないのですよ。」


「それはどうもご丁寧な言い方ですね。私たちは別に地位を誇示したいわけではありませんが、日々人民のことを憂い考え行動をしています。カーンという悪魔がどんな存在かは知りませんが、あなたの言った高貴な身分はその責務も果たせない無能なのでしょう?」


「はん!虫如きが偉そうなことを。一国の王女程度が粋がると後々痛い目に合いますよ。

 そう、こんな風に、ね。」


 ヴィクターがそう言うと視線の先には案内人がナイフを手にしてイヴへ襲い掛かろうとしていた。しかし、隣にいるセズは虚ろな眼差しをして動く様子がない。


「〈エアロブラスト〉」


 イヴは鉄線を懐から出して呪文を唱える。鉄線を構えた方向に発生した範囲を線のように限定させた突風により案内人は吹き飛ばされる。鳩尾に凝縮された突風を喰らった案内人はそのまま気絶してしまった。


「ほう、やりますね。では、これではどうですか。」


 そう言うと今度はガジとセズが重むろに剣を抜く。クリスとイヴは何が起こったのか分からず戸惑いつつ身構える。


 無言のまま剣を構えたガジとセズは標的をイヴに定めて襲い掛かる。クリスは魔法で防ごうとするが、あるものを見てそれを止めるのだった。


「まったく、こんなもので私たちエルフを縛ろうとは片腹痛い。詠唱もなくあっさりと魅了させた技術は褒めてやるが、打ち破れないとでも思ったか?」


 ガジとセズの攻撃を止めたのはシルフィードとジルベスターであった。二人は刀を抜き放ちガジとセズの剣を払いのけると五人を思いきり殴りつけた。ダラスに至っては刀の峰で打ち付けるオマケつきである。


「いったぁ!?何しやがる!?」


「皆さん、起きましたか。あなたたちは今、あの不届き者に魅了の魔法で操られていたのですよ。」


「何?そんな素振りは見えなかったが。」


「あっしの危機察知は何かを感じた気もしますが、よく覚えてません。」


「察知した瞬間、虜にされただけのことだろう。あれは恐らく『テンプテーション』。悪魔の使う精神魔法の中でも特に厄介なものだ。まぁ、精神魔法は看破してしまえば効きが大幅に悪くなるのが特徴だから、もう簡単に掛かることもあるまいよ。」


 シルフィードの説明を聞いて一瞬眉間に皺を寄せたヴィクターだが、すぐに嫌味な笑顔を向けて演説を始める。


「いやはや、物知りなものだ。感心しました。引きこもりも役に立つときがあるとは驚きです。だが、それが分かったところであなたたちが私に勝てる道理は一つもないのですよ。」


「それはどうかな。私は言わずもがなだが、他も中々骨のある奴ばかりだ。お前が勝てる道理が私には見当たらないがな。」


「エルフも虚言癖があるとは初めて知りましたよ。それではその勝てる道理をお見せしようではありませんか。」


 ヴィクターが指を鳴らすと民家の影から続々と兵士たちが現れる。皆、どこか虚ろな眼差しを浮かべながら武器を持ち号令を待つ構えを取る。


「魅了の次は数押しか。何が何でも自分が動くのは嫌みてぇだな。」


「皆、円陣を取ろう。後方支援は僕とチョボ、イヴに任せてくれ。」


「ふん!こんなもので怯むとでも思ったか。大方お前が操っているのだろう?根源を叩けば終わりだ!」


「お前の相手はこのオレ様だぁ!!」


 シルフィードが陣から離れてヴィクター目掛けて駆け出そうとすると、空からドラゴンが舞い降りてシルフィードを足で掴み、そのまま遥か城壁外へと投げ飛ばしてしまった。


「オレ様はあいつと決着をつける!邪魔すんじゃねぇぞ、ヴィクター!」


「えぇ、あれはあなたに差し上げますよ。せいぜい楽しんでください。」


 バルバドスはヴィクターに叫びつつドラゴンを駆りシルフィードを投げた方向へと飛んでいった。


「さぁ、せいぜい踊り狂って、死ね!」


 ヴィクターの言葉を皮切りに兵士たちが襲い掛かる。

 ダラスとガジ、ジルベスター、オルレアの四人がクリス達を中心にして四方へ展開する。後方支援組は防御や攻撃の支援を行い、前衛が襲い掛かる兵士たちを退けていく。セズは万が一前衛を突破した敵がいた場合の保険としてクリス達とともに中心に残る。


「くそ!操られているせいか一人一人は大したことないが、数が多い。一個中隊はいるんじゃねぇか?」


「嘆く暇はないぞ!我々が倒れれば後ろにいる皆が危うくなる!」


「だぁ!だからってどうにかなんねぇのかよ、この数はよ!」


「……。皆さん、私が半分を請け負いましょう。他をお願いできますか?」


 ジルベスターはそう言うと敵を捌きつつ集中し始める。そして、集中力がピークに達した瞬間に橙色の闘気が煌々と輝き出した。


「行きます!」


 ジルベスターが叫ぶとともに駆け出すと皆の目には橙色の残像だけが残る。


 ジルベスターは驚異的な速度で敵を打ち据えていく。何とか反応できても攻撃は軽々と避けられ、逆にやられていくのである。

 その光景を見ることができたとすればその者の目には美しく舞踏を舞うように見えていたことだろう。実際には残像が通ったあとに敵が成すすべもなく倒れていく光景だけが皆の目に映るだけだった。


 橙色の光は螺旋を描きながら範囲を広げていき、大広場に群がってた敵を全て倒して元の位置へと戻ってくる。


「はぁはぁ……。これで少しは楽になるでしょう…。」


 戻ってきたジルベスターは明らかに疲弊していた。体に負担がかかるようなので、恐らく同じことはもうできないだろうとダラスは考える。


「良し!この間にこの広場から抜けるぞ!」


 ダラスの号令で全員が大通りに向けて駆け出す。

 ヴィクターはというと余裕を崩さずに、ただそれを見てほくそ笑んでいた。


「くく、無駄なあがきをすることだ。倒そうが、こいつらはまだまだいる。それに……。まぁ、今はけなげにも踊っている様を愉しもうではないか。」


 ヴィクターは不敵な笑顔を浮かべてダラス達が足掻く様をただただ見つめていた。

すいません、出てこなかったです。主人公……。

あ、明日こそは……!?

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