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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
ナインフォセア王国編

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第49話 フィフス城奪還戦線・その3

主人公はいつ出てくるのやら。

 クリスたちがイーヴリン王女の伝令文をツィワン侯爵へ届けた頃、イーヴリンがいる砦のほうも開戦の狼煙が上がっていた。

 戦場はすでに混戦の体を成しており、敵味方が入り乱れ各部隊ごとに己の判断で持ち場も保っている。


 ツィワン正規軍との伝令役を任されている蒼天の牙は、次の命令があるまでアルスカイン正規軍とともに遊撃隊として行動することになっていたが、今は前線まで部隊を動かし抜けた部隊の穴埋めをしていた。


「王女殿下に申し上げます。右翼、突破されます。」


「本隊より増援を出しなさい。魔導師の組み込みも行うように。敵は翼竜使い、魔物ではなくの操舵手のほうを狙い撃ち組織的行動を断つのです。」


 イーヴリンは劣勢の中にあった。

 敵七千に対して味方五千で始まった戦いのため数的有利を奪われていたわけだが、それでもクージル軍に比べて王国軍の練兵度は高い。そのため先鋒がぶつかった際は右翼、左翼ともに拮抗、或いは優位に進めることができていた。


 それが今、右翼の空を縦横無尽に飛び回っている翼竜使いによって簡単に崩されてしまったのである。

 翼竜使いは左翼を蹂躙すると味方に押し込みを任せて右翼に向かい、先ほどその右翼の防衛ラインも軽々と突破してしまった。今回違ったのは、そのままイーヴリンのいる本隊へと向かってきたことであった。


「くるぞ!盾、構え!」


「矢は届かん、弓隊は後ろからくる敵を狙え!」


「魔導師部隊、撃てー!」


 本隊は魔導師による攻撃を開始する。操舵手を狙い魔法を放つが、相手はドラゴンを巧みに操りこれを上手く躱していく。


「ガハハハ!そんなチンケな攻撃じゃオレ様に当てることは一生できねぇよ!そら、もっと死ぬ気でやらねぇと燃えちまうぞ!」


 操舵手は高笑いしながらその背に跨るドラゴンへ合図を送る。するとドラゴンの口元が赤く光りだし、荒ぶる炎を噴き出し始めた。


「ぎゃぁああ!?」


 ドラゴンは盾隊がいる場所を敢えて狙いブレスを放つ。盾に隠れることが出来なかった兵士たちはドラゴンのブレスを受け全身を焼かれていき、盾で受け止めた者は盾を溶かされて防御を丸裸にされてしまう。


「おら、避けてみろ!」


 ブレスによって緩んだ防衛ラインへ向けてドラゴンが突進する。ドラゴンのその巨体に加えて鋭い牙と爪により盾を失った兵士たちは文字通り吹き飛ばされていく。


「おらおらぁ!愛しの王女様がぶっ飛んじまうぞ!」


 ドラゴンは勢いそのままにイーヴリンへと向かっていく。そしてドラゴンがその凶悪な顎を開き、王女に喰いつこうと速度を上げた。


「おりゃぁあ!」


 もう一メートルを切った距離まで迫っていたドラゴンであったが、銀色の光に阻まれてその身を仰け反らせる。


「ガハハハ!おうおう、こいつを阻むとは中々骨のあるやつが現れたじゃねぇか!」


 王女への攻撃が失敗に終わったというのにドラゴンの背に乗る男はどこか楽しそうだった。

 ドラゴンという脅威を操るが故の余裕かただの狂気かは不明だが、この男はどこか不気味だとダラスは思う。そう、イーヴリンの窮地に馳せ参じた銀色の光の正体はダラスであった。


「おいおい、こっちがヤバいと思って来てみたらコイツだけでこの有様かよ。見た目通りとんでもない化け物だな。というか、魔物を操るなんてできるもんなのか?」


「どうだかな。その答えをオレ様が知っていたとしててめぇに教えてやる義理はねぇよ。」


「まぁ、そうだな。実際にお前がそのドラゴンの背に乗っている事実だけあれば十分か。時にお前さん、名前は何て言うんだ?」


「はっ!そんな見え透いた時間稼ぎをオレ様が許すとでも思ってんのか?そんなに知りたきゃオレ様を地面に落としてみるこった!」


 男はドラゴンを上昇させると急降下してまたしても王女のほうへと突進を仕掛ける。

 ダラスは身に纏う銀色の闘気を勢いよく増幅させて大剣を下から突き上げるように振り抜いた。ダラスの攻撃を受けたドラゴンは下顎を打ち上げられるように頭を上へと上げる。


「おう、またも吹き飛ばすか!やっぱまぐれじゃなかったな!そんじゃあ次いくぞ!」


 旋回をして体制を立て直し三度突進を仕掛けてくる。同じ攻撃を敢えてしてくるあたり、ドラゴン背に乗る男はやはり狂人だとダラスは心の中で結論付けた。


「おぅりゃあ!」


 ドラゴンの攻撃は、もはや王女ではなく自分を狙っていると確信したダラスは軽やかに横へ逸れると、横薙ぎに大剣を振るう。しかし、敵も学習したのか今度は自分から頭を持ち上げてダラスの攻撃を躱すとそのまま後ろに一回転をして尻尾を鞭のようにしならせるとダラスに直撃させる。

 辛うじて大剣で受け止めたダラスであったが、抑え込むことができずに吹き飛ばされてしまう。地面を転がり何とか体制を立て直そうと立った場所はイーヴリンの真横であった。


「おら、こいつで仕舞だ!」


 地面スレスレまで降りてきたドラゴンの口の中からはまたしても赤く光るものがあった。

 その光は男の合図で解き放たれダラスとイーヴリンの逃げる隙間もなく炎の壁として迫ってくる。


「〈ウォーターフォール・リバース〉」


 炎の壁と瀑布が逆立ちしたような水の壁がぶつかり合い、激しい水蒸気が発生する。

 水蒸気が収まるとそこに立っていたのは、白金髪に金色の瞳をした耳の尖った人間。エルフの美女であった。


「ダラス、遅くなってすまない。よく持ちこたえてくれたな。」


「いや、ナイスタイミングだ。これ以上は俺の手に負えないところだった。」


「なんだ、てめぇは?オレ様はそこの銀色と楽しい殺し合いをしてたところなんだ。魔導師風情が邪魔してんじゃねぇぞ。」


 男はあからさまに不機嫌な態度を取りながらエルフの美女を睨みつける。しかし、美女が動じる素振りは微塵もなかった。


「なるほどな。これはダラスでは些か負担だったか。しかし、態度ばかりデカいやつだな。駄竜を乗りこなしたところで強くなったと勘違いでもしたか。」


「何?お前、オレ様を侮辱してやがんのか。それとも揺さぶりのつもりか?いずれにしても口でしか語れない奴に用はねぇよ。オレ様は魔導師が嫌いなんだ、さっさと死にやがれ!」


 男はドラゴンを上昇させると旋回して様子を窺い、一気に急降下していく。今回は先ほどのように正面から突っ込むのではなく、背後を取って隙をついた格好となる。


「おらぁ!」


 ドラゴンは敵に当たる直前で頭を振り、そのまま横回転をすると尻尾を叩きつけた。


 いや、実際には叩きつけたと思っていたものは影でそこにはすでに彼女はいなかった。では、彼女はどこへ行ったのか。その答えはドラゴン自身が身をもって知ることになる。


「〈アクティブ〉」


 透き通るような声がドラゴンの腹の下から聞こえたと思った瞬間には、ドラゴンは腹から首へ向かい斬り裂かれていき、そのまま急所を貫かれていた。


 鮮血が降り注ぐと同時に地響きを轟かせてドラゴンは崩れ落ちていった。


「ほう。オレ様の相棒を返り血一つ浴びずに斬り伏せるか。お前、名は何という?お前の実力を認めて名乗ることを許してやる。」


「ありがた迷惑も甚だしい。お前に認められて何の得があるというのだ?人に名乗ってほしければ、まずは自分で名乗るのが礼儀だとは思わんのか?」


「うん?……。ガハハハ!確かにな。では、名乗ろう。オレ様は龍王軍騎竜隊のバルバドスだ!さぁ、名乗ってやったぞ、お前も名乗れ!」


「断る。お前に教えてやるほど私の名は安くはない。」


「な!?話がちげぇじゃねぇか!!」


「勝手にお前が名乗ったのだろうが。」


「はぁ!?なんだ、この理不尽な女は!銀色の、てめぇの知り合いだろ。しっかり教育しとけ!」


 急に話を振られたダラスはあからさまに嫌そうな顔を向ける。


「まったく、一々やかましい奴だな。時間の無駄だ。それでやるのか?やらないのか?」


「……。(殺して)やるよ!」


 バルバドスは背負っていた大斧を両手で持つと腰を屈めて戦闘態勢に入る。エルフの美女、シルフィードも正眼の構えを取り隙の無い体勢となる。互いに殺意の籠った視線をぶつけ合うと一気にその場の空気が重くなっていくのがダラスにも分かった。


 張り詰めた空気が膨れ上がり弾け飛ぶ、その数舜前に左翼より鬨の声が聞こえた。それに気を取られたバルバドスは思わず視線をそちらへ移してしまう。

 気づいたときにはシルフィードに一瞬で懐まで潜り込まれ、鋭い一太刀を浴びてしまう。深くはないが、片腕を傷つけられたバルバドスはその後のシルフィードの連撃をやっとの思いで受けていく。


「ぐっ!?くっそ!」


 刀と大斧ではその間合いは異なる。懐に入られれば、そこはシルフィードの間合いであった。


「う、うぅ……。な、めるな、よぉぉぉおお!!」


 劣勢が続くバルバドスは何とか後方へ飛び間合いを開けると、黒い靄のようなものを身に纏い始めた。それは体中を駆け巡り前進を包むと光と共に突風を起こし霧散していく。そして、そこにいたのは顔や体型は人間のまま、硬質な鱗と翼を纏った人ならざる者の姿だった。


「……。やはり悪魔だったか。」


「悪魔…。そうだな、オレ様は悪魔。誇り高きドラゴノイド種だ!」


 その瞬間イーヴリンを含むその場にいる全ての者が冷たい汗を背中から流し固まってしまう。言葉の意味を理解したと言うこともあるが、バルバドスの放つ殺気が先ほど以上に凄まじいものであったのだ。それは思わず息をすることを忘れてしまうほどであった。


「この姿になった以上、てめぇがオレ様に勝てる道理はねぇ。潔く死にやがれ。」


「…。確かにこのままでは分が悪いな。ならば私も本気になろう。」


 シルフィードはそう言うと一度全身を脱力させる。そして、両足を大きく開いて屈み、刃を背中で隠すようにして刀を構えると凄まじい集中力で相手を睨みつけながら鋭い殺気を放ち始めた。ダラスには、二人の間で一瞬の隙が死に直結するほどの見えないやり取りが行われていることを感じ取っていた。


「…。面白れぇ、やってやろうじゃねぇか!」


 バルバドスが意を決して突進しようとしたその時、頭上からけたたましい咆哮が聞こえる。はるか上空にいたために気づくのが遅れたが、一匹のドラゴンがこの戦場に再び現れたのである。


「まったく、あなたは何をやっているのやら。」


 ため息交じりに言ったのはドラゴンの背に乗る男だった。

 ドラゴンは旋回しながら下降するとバルバドスの横に降り立つ。


「ヴィクターか、何しに来た。今いいところだったんだ。邪魔すんじゃねぇよ。」


「そんなことは知りません。それよりも、私がここに来たのはあなたの無計画さに呆れてです。

カーン様のご命令でフィフス城に赴きましたが、なんですか、あの惨状は。町は半壊して城も使い物にならないではありませんか。しかも、大事な駒を碌な使い方もせずに使い捨てるなど言語道断です。

 あまりにも無謀だったので仕方なく私が細工をしてきました。そのせいで貴重な方陣粉を使い切ってしまった。あなたが置いていった三千の人間は贄となってもらいましたよ。」


「なんだ、別にあんな城いいだろうが。これからもっと良い城を手に入れるためにこうして人数集めて攻めてんだから。」


「だからあなたは無計画だというのです。たかだか七千程度で城攻めをして保存状態の良いまま奪い取れるはず無いではありませんか。それに、そこに転がっているものを見るに、あなたの乗っていた竜はやられてしまったのでしょう?こんな体たらくでは、まともな働きなど期待できません。ここは一旦退きますよ。」


「何!?せっかくこの姿になったってのにか!?」


「勝手にその姿になることさえもカーン様の御心に反していることがわかりませんか?まぁ、最低限の成果はあったのですから情状酌量の余地はあるでしょう。さぁ行きますよ。」


 ヴィクターと呼ばれた男はバルバドスの首根っこを掴むとさっさとドラゴンに乗って飛び上がってしまう。


「お邪魔をしました。あぁ、そう言えば左翼で戦っていたお味方は勝ったようですね。くく、おめでとうございます。いずれまた王女殿下のご尊顔を拝見できるときを楽しみにしていますよ。それでは御機嫌よう。」


 一方的に話を締めるとヴィクターはドラゴンに合図を送り、バルバドスを捕まえた状態で西の方へと飛び立っていった。


「…。なんとか助かったみたいだな。」


「あのヴィクターとかいう男、バルバドスよりも数段実力が上だな。あれも悪魔だとすれば、ここで二人を相手にしていたら皆殺しになっていたかもしれん。」


「ダラス、よくぞ離れた左翼から駆けつけてくれました。」


 ダラスがシルフィードの言うことを思案気に聞いていると、イーヴリン王女が近寄ってきた。


「王女殿下、お心使いに感謝いたします。私はこの身を盾にするだけで精一杯でした。」


「それでもワタクシの命の危機に駆けつけ救ってくれたことは事実です。それに、シルフィードの武勇も素晴らしいものでした。まさか、あれほどあっさりとドラゴンを倒せるとは見事なものです。まだ掃討戦が残ってますが、あなたが居てくれたおかげでこの戦争に終戦の糸口を見出すことができました。」


 イーヴリンの言葉にシルフィードは声を出さずではあったが、礼儀作法に則ったお辞儀で返事をする。

 それを見て肯くとイーヴリンは軍の指揮へと戻っていく。




 その後、大将を失ったクージル軍は大した抵抗をせず皆、投降を選択していく。局地的な敗北はあったものの、敵本陣をこちら側へ釘付けにしてその間に城を奪還するというイーヴリンの作戦は結果的に成功だと言ってよい。完全に退路を断たれた敵本陣は敗走していくこともできずに板挟みにされたのだ。投降したクージル軍の数はなんと二千近くにも上った。


 こうして、フィフス城奪還戦線はツィワン、イーヴリン両軍の完勝で幕を閉じるのであった。

次回【第50話 クージル国内部調査隊】を投稿します。

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