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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
ナインフォセア王国編

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第43話 宣戦布告

 僕たちはクリスへ手紙を運んできた従者とともに貴族街へと向かう。

 蒼天の牙と僕を連れて行く前提だったので馬車は二台用意されていた。蒼天の牙メンバーと帰着の里組に分かれる予定だったが、エリーがこちらに乗るというので帰着の里組にエリーを加えたメンバーで乗ることになった。


 アルスカイン特別侯爵の馬車は四人乗り程度の広さで内装が豪華である。座席にはクッションが敷いてあり、レースのカーテンが付いている。乗り合い馬車にはどちらも付いていないものなので、シルとエリーが目を輝かせながらクッションの柔らかさを確認していた。


 暫くすると馬車はアルスカイン特別侯爵邸へと着く。

 僕たちの荷物は執事たちに任せ、直接アルスカイン特別侯爵の部屋に案内されるとアルスカイン特別侯爵が笑顔で出迎えてくれた。


「アルスカイン特別侯爵閣下、この度はお招き頂き感謝いたします。同行者が二人増えてしまい申し訳ございません。」


「気にするな。二人くらいは許容範囲内だ。しかし、エルフとは珍しいな。

 …いや、他意はないのでそう睨むな。

 私はカルカス国国主を務めるアルスカイン特別侯爵である。手狭な場所だが、ごゆるりとなさるが良い。

 とはいえ、そなたたちにはこの後すぐにナインフォートへと向ってもらう。私は城内まで同行できないが、案内は付ける故すんなりと通されるだろう。終わったら一度屋敷へ戻ってくるといい。」


「ありがとうございます。ただ、シュウの友人である彼らは城内に入ることができません。よければ滞在のお許しをいただきたいのですが。」


「それには及ばん。お前たちが来る前に兄上のところへ従者を走らせたが、そこの二人も連れてくるように、とのことだった。」


「そうですか、父上が。承知しました。」


 アルスカイン特別侯爵に礼を言うと僕たちは従者を先頭に貴族街を歩いていく。周りの目が冷たいのは僕たちが冒険者然とした格好だからというのもあるが、エルフである二人が同行していたためだろう。


 エルフは他種族との交流を嫌うため、いつの間にか悪いイメージが蔓延している。古文書にはエルフに似た悪魔の存在の記述もあったため、悪魔の血族と本気で考えている人間もいるほどなのだという。


 シルがつい威圧的になってしまうのも無理はなかった。


 僕とジルでシルを宥めつつ城門に着くと、アルスカイン特別侯爵が言っていたようにすんなりと城内へ通された。


 案内された部屋は応接室とのことで素人目で見ても高価と分かる調度品で出来上がった一室だった。ホテルのようなふかふかの絨毯は歩くだけで心地よさを感じ、椅子など座るのも躊躇われるほどに見事なものだ。

 もっともシルとクリスは躊躇う素振りもなく、馴れ親しんだ道具のようにドカッと座るわけだが。


「ここで遠慮していても仕方がない。どんな話が待っているかもわからないし、父上が来るまではとりあえずリラックスして待っていよう。」


 クリスの一言で、残ったメンバーもちょこんと椅子に浅く座る。リラックスするどころかガチガチになってしまった…。


 僕が緊張で固まっていると入り口が徐ろに開く。ドアの向こうにはルスト辺境伯その人が立っていた。


「急な呼び出しですまない。皆、よく来てくれた。私への礼儀作法は捨て置いて構わん。すぐにでも陛下がお会いになるとのことだ。

 詳しく説明している時間はないため簡潔に述べるが、皆を呼んだのはシュウに関わることだ。

 それと、先に謝罪をさせてくれ。すまなかった。」


 ルスト辺境伯が頭を下げたので、蒼天の牙の面々は驚きを隠すことができずに動揺する。これに対して口を開くのはクリスであった。


「父上、何があったのですか?」


「それは陛下と謁見すれば分かる。それでは私が同行する故、玉座の間へ向かおう。」


 ルスト辺境伯の後を追うように歩いて行くとペリシェ王国でナイン国王と謁見した部屋に似た扉が見えてくる。

 もうこの景色にも慣れたもので感動は薄くなったが、扉の装飾はペリシェ王国よりも華やかなものになっていた。


「ルスト辺境伯閣下、並びに冒険者一行が参りました。」


 衛兵が石突を床に打ち付け来訪を告げると内側から扉が開かれる。中に入るとやはりペリシェ王国で見たような装飾が施されていた。

 ルスト辺境伯は途中で道を逸れるが、クリスが前へ進んで行くので僕たちもそれに従う。

 そして、レッドカーペットの中腹で僕たちは立ち止まり跪くと壇上に立っていた代官風の男が声を張り上げる。


「国王陛下、ご入室である。」


 男の言葉とともに壇上横にある扉が開き、威厳のある格好をした男女と壮年期の男性が入ってくる。

 国王の横の付いた男性は鎧姿に兜を外した姿をしていた。


 国王から声がかかるまでは顔を上げないようにするのがこの世界の仕来りだが、僕は気配察知をこの部屋内に限定することで周囲を確認できる。

 国王は今年で七十歳になるとのことだったが年齢通りの容姿をしており、顎には白く整えられた髭を蓄えている。

 王妃は国王よりも十歳ほどは若く見える。後で聞いた話だが、第一王妃は第二王女の出産で亡くなってしまったらしい。そのため壇上にいるのはルスト辺境伯の実の母親ではなく、第二王妃になる。


「無礼を許す、面を上げよ。」


 国王の一言で僕たちは視線を上げる。

 貴族への礼儀作法としてはここで招いてくれた事に対する感謝をこちらが述べるのだが、国王の許しなくして発言することは不敬である。そのため僕たちは何も言わずにジッとその場で国王の次の句を待った。


「久しぶりだな、クリス。大きくなったものだ。若い頃のルストによく似ておる。息災であったか。」


「はっ、陛下より賜りました御慈悲のもと、父上やアルスカイン特別侯爵閣下とともに領地繁栄に尽力しております。」


「お前のような孫を持てて余は嬉しい。これからもルストとともにカルカス国の手助けをしてやってくれ。」


「はっ、精進いたします。」


「して、その方たちが冒険者シュウと英雄ダラス率いる蒼天の牙か。シュウはどの者か。」


 国王は僕を見ながら問うてくる。本当は知っているが形式として聞かないと僕から話すことが出来ない以上、会話が成り立たなくなるのだ。


「お初にお目にかかります、国王陛下。私が冒険者シュウでございます。」


「ほう、お主か。自己紹介をしておこう、余がナインフォセア王国国王、ヌル・アダムズである。

 此度は我が息子ルストからお主をプラチナランクへ昇格させたいと聞いておる。まずはお主にその意志があるか聞きたい。」


「私はカルカス国国主であるアルスカイン特別侯爵閣下、並びにルスト辺境伯閣下よりお話を伺った際に覚悟を決めております。

 多大な特権だけでなく、その代償についても理解しております。ルスト辺境伯閣下には個人的な恩義もございますので、是非ともそのご恩を返したく存じます。」


「そうか。お主がカルカス国付きのプラチナ冒険者となれば、戦時に於いて招集を受けた際は拒否権を持たぬことも理解しているわけだな。

 だが、お主はアッガスのように恵まれた体躯ではないように見える。話していても他の猛者に比べて覇気が薄くも感じる。本当にプラチナに見合った実力を持っておるのか。」


「国王陛下に申し上げます。私の実力は確かに発展途上ですので一人で全てを守り切るほどの実力までは至っておりません。

 しかし、それを補うための仲間たちに恵まれております。加えてドラゴン程度の相手であれば退けることは造作もございません。」


「ほう、謙遜しておるようで実に豪胆なことだ。

 お主は確か『飛竜狩り』の二つ名を持っておるそうだな。その名に恥じぬ働きができると申すか。」


「飛竜とは数度対峙しておりますが、脅威と思えるのは火竜が放った高密度のブレス程度でしたので問題なく対処できるかと存じます。」


「最近カルカス国からやってくる吟遊詩人がドラゴン退治の歌を多く持ってくるようになったが、それと同じようなことを言うとはな。

 余がプラチナ冒険者に認めるということは、爵位を与えることと同義である。カルカス国は他国扱いとなるとはいえ、我が臣下たちもこのことには敏感に反応するのでな。疑うわけではないが、今一度その実力を示して貰えるだろうか。」


 何やら不穏な空気である。しかし、ドラゴン退治の歌ってメアリーお嬢様が作った歌のことじゃないよな。あれは姫と護衛の恋物語に脚色されているから僕個人の特定はできないはずだけど、ナインフォセア王国にまで広まると大変困る。僕の心情的に…。


「陛下がお望みでしたら。」


「よく言った。それでは余が直々にお前たちへ依頼を出したいと思う。お主の話ではそこにいる我が孫を含めた蒼天の牙もお主の手足になるということであったな。

 この場でクリスのことを挙げて不敬罪などとは言わんので安心せよ。それよりも、その者たちも含めての依頼達成を認めるほうが内容を見ても妥当だと判断しておる。

 まさか二名メンバーが増えていることは想定外であったが、それもまた認めよう。」


 国王はシルフィードたちのことを見ながら僕たち全員をパーティメンバーとして認めた。軽蔑の目で見られることも多いエルフだが、国王の眼差しにその気配はなかった。


「これよりする話は国家機密に触れる故、他言無用である。これを犯せば極刑となること努々忘れるでない。」


 国王は僕たち全員の目を鋭い目で見つめながら釘を差す。目元からも言葉からも、凡そ七十歳とは思えない覇気を感じる。


「ここ数週間のうちに北東の山間でワイバーンの群れが度々目撃されるようになった。

 数日前も人里のほうへと現れた情報を受けて騎士団で討伐に向かったが、抑え込むのが精一杯なのだという。

 正規軍から討伐隊を編成してそちらへ差し向ける予定だったが、つい先日、隣国のクージルが我がナインフォセア王国へ宣戦布告をしてきおった。

 元々軍事力どころか国力も周辺国家に比べ劣っていた彼の国が我が王国へ攻め入ったところで一蹴して終わるはずであったが、現在三つの砦を抑えられ近くの城を包囲されておる。

 そうなっては討伐隊を含めた軍をそちらに割かねばならん。城下町やその他の都市で徴兵を行っているのも万が一を考えてのことだ。そのため、お主たちにワイバーン討伐を依頼したいのだ。」


 やはりそう言うことか、と内心溜め息を吐くが表情には出さない。まぁ、依頼先が戦場でなくてよかったと思うことにしよう。


「承知いたしました。そのご依頼謹んでお受け致します。ワイバーンの群れは現在何体ほどになりますでしょうか。」


「大臣。」


 国王がそう言うと大臣は一歩前に出て報告する。


「はっ、二日前の報告ではその数、三とのこと。現在群れを引き剥がす作戦に出ており、その報告は本日中に届く予定でございます。」


「シュウよ、三匹は重荷か。」


「いえ、三体でしたら私一人で問題ございません。」


 本当は悪目立ちしたくはないが、無駄に皆を危険な場所へ連れて行く必要もない。僕がやれば済むのであればそちらのほうが気が楽だった。


「ほう、大胆な宣言だ。『粘り腰』ダラスの力を借りずに倒せるとは、些か功を欲張り過ぎたのではないか。」


「え?」


「ん、何か申したか。」


「あ、いえ。功を欲しての発言では決してございません。見事ワイバーンの魔石を持ち帰ってご覧にいれましょう。」


 何やら他メンバーの視線が突き刺さってくるが、ここは譲れない。大言壮語と言われても僕は一人で行くと決めたのだ。


「うむ、よかろう。この依頼、王命により冒険者シュウに任せるものとする。励んで参れ。」


 国王が宣言するのと被るように後ろの扉が勢い良く開く。

 全員が振り向くと衛兵が血相を変えて走ってきた。


「何事だ!ここは国王陛下の御前であるぞ!」


「申し訳ございません!火急の知らせ故、馳せ参じました!」


「良い、軍団長。おい、何事か申してみよ。」


「はっ、申し上げます!先日挙兵したクージル軍ですが、フィフス城を落とし、ここイヴンに向けて進軍しております!」


「なんと!もうあの要塞を落としたのか!」


「フィフス伯爵は討死、その嫡子が難民を連れて最寄りの町へと避難しております。」


「武勇を誇るフィフス伯爵が討死とは。敵は如何ほどか。」


「凡そ一万。その中にはドラゴンを見たという者もおります。」


「な!?ドラゴンを従えているとでもいうのか!?」


「落ち着け大臣。一万などクージル国の総人口だぞ。これで進軍が成ったとして本国はどうする気なのだ。

 陛下、この進軍は何か裏があるように感じます。」


「うむ、団長の言う通りだな。もし本当にドラゴンを従えているのだとすれば、悪魔の存在も考えねばなるまい。」


 悪魔という単語を聞いてその場にいる全員が固唾を飲む。国王は恐らくカルカス国で起こったことも耳に入っているのだろう。その表情に変化はなく、淡々と続ける。


「東のワイバーンは陽動だったのかもしれんが捨て置く訳にもいかん。冒険者シュウには速やかに現地へ向ってもらう。

 団長は対クージル軍への防衛の強化と正規軍の前線派遣の準備を急げ。真っ直ぐに向かうとすれば次に通るのはイーヴリンが治める直轄地だ。

 イーヴリン、速やかに支配地へ戻り敵の進軍に備えよ。」


「承知致しました、お父様。」


 呼ばれた女性はスカートの両裾を摘み、所謂カーテシーで恭しくお辞儀をしてから部屋を出ていく。


「陛下、発言をお許し頂けますでしょうか。」


「ルストか。良い、申してみよ。」


「はっ、恐れながら申し上げます。今、我がルスト正規軍第三部隊がツィワンで演習を行っております。

 ツィワン軍と第三部隊でフィフス城を攻めてはいかがでしょうか。一万の軍勢であれば兵站は伸びるはずです。上手く行けばイーヴリンの率いる隊との挟撃も見込めます。

 奪還が難しかったとして、そちらにも戦力を割かねばならない敵は軍を分けざるを得ません。そうなれば物量で勝る味方が有利な状況で戦えるでしょう。」


「うむ、その方の案を受け入れよう。団長、ツィワン侯爵へ連絡を頼む。」


「はっ、承りました。」


「それと、現在イヴンに駐屯しているアルスカイン正規軍近衛隊にも派遣要請をされることを進言いたします。アルスカイン特別侯爵も快く手を貸してくれるでしょう。」


「なるほどな。良いだろう、特別侯爵へ書状を送るとしよう。」


「聞き届けて頂き感謝いたします。」


 ルストは頭を下げて一歩下がる。


「陛下、恐れながら私からも上申いたしたく存じますが、よろしいでしょうか。」


 クリスが頭を下げながら口を開く。その語気には先ほど話し合ったときのような決意の色が見えた気がした。


「クリス、申してみよ。」


「はっ、恐れながら申し上げます。アルスカイン特別侯爵が派兵を決められた際は我々蒼天の牙も共に参じることをお許し頂けますでしょうか。」


「え!?クリス!?」


 僕は驚きのあまり大声を出してしまう。折角危険な場所へ行かなくて済んだのに自分から顔を突っ込むなど思ってもいなかったのだ。


「シュウ、陛下の御前だ。言葉は慎め。」


 ダラスから小声で窘められる。見れば他のメンバーも何か決意に満ちた目をしていた。


「シュウは我々の仲間です。そのシュウが討伐へ向かうというのであれば、我々も手を拱いていることはできません。

 シュウであればワイバーンを倒すことは容易でしょう。で、あれば、西の憂いは我々で中和したいのです。

 陛下からのご命令があれば正規の傭兵として我々も動くことができます。どうかお許しくださいませ。」


 クリスが代表してそう言うと後ろの皆も頭を下げる。

 本来なら止めるべきなのだが、先ほど皆を信頼すると約束したばかりだ。皆の意志が固い以上、僕から何も言うことはできなかった。


「うむ、良いだろう。しかし、お主らはカルカス国の人間だ。余の依頼としてお主たちへ言い渡すが、現地での差配はアルスカイン特別侯爵に任せることとする。」


 こうして、この後の行動が決まった面々は陛下の許しを得て玉座の間を後にする。


「皆、本当によかったの?わざわざ危ない場所へ向かう必要もなかったのに。」


「はっ、何を今更!シュウ、お前が先に独断専行したんじゃねぇか!」


「そうですよ。あっしらのことを置いて一人で行くなんて抜け駆けも良いところです。」


「オルレアたちとの挟撃となるなら尚更僕らがここに留まっている訳にはいかないさ。彼らだってカルカス国の一市民なんだ。」


「クリス、皆…。」


「そういうことだから俺たちのことは心配するな。こう見えて生への執着は人一倍の面子だからな。それに、もしかしたらお前が一仕事終えるまでに全部片付けちまってるかもしれねぇぜ。」


「シュウ、私とジルも付いている。こいつらのことは任せておけ。」


「えぇ、全員が無事この戦いを終えることを約束しましょう。」


「……。ありがとう、皆。僕は東の討伐をすぐに終わらせてそっちに行くからそれまで頼んだよ。」


 僕たちは必ず生き残ることを約束しながらアルスカイン特別侯爵邸へと戻り戦に備え始めるのだった。

アダムズ国王の文頭にある『ヌル』は王様だよ、という意味合いです。何故そんなものが付いているかは機会があれば説明します。

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