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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
ナインフォセア王国編

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第39話 金色の剣士

【ナインフォセア王国 ツィワン領】


 ペリシェ王国を後にした僕たちはついにナインフォセア王国内へと入る。


 ここはツィワン侯爵が治める所領で、古くから国防の最前線となっているとのことだ。

 というのも、ツィワン領はペリシェがまだ大国として力があった頃に主権争いを繰り広げた土地のため、砦や軍事施設が多く建設されたことに由来している。

 ナインフォセア王国が平定した後もその名残として要塞は健在であり、今はナインフォセア王国の軍事力の象徴として諸外国に睨みを利かせているというわけだ。


 この世界の主要都市は大概が城塞都市となっているらしいが、その中でもツィワン侯爵の居城がある要塞都市ツィワンはほぼ完全な軍事要塞として成り立っているとのことだ。

 ペリシェ王国とは違い観光都市になっているわけではないので、今回はそちらには寄らずに真っ直ぐイヴンを目指すとクリスは言っていた。


 そこから僕たちは街道沿いにある村へ立ち寄りながら旅を続ける。



 ◇◇◇



「ペリシェを出てから一週間、王都はいつ着くのかねぇ。」


「兄貴は飽き性ですね。道程としてはまだ半分が過ぎた辺りなんですから、そんなボヤかないでくださいよ。」


「そうは言うがな、チョボ。お前だってこんな何もない平原ばっかり歩かされちゃ辟易してくるだろ?」


「それはそうですけど…。だからって馬車が降ってくるわけでもあるまいし、辛いところに目を向けるよりもチャッチャと歩いて次の町を目指すほうが利口ってもんですよ。」


「だっはっは。ガジ、どうやら今回はお前の負けだな。だがまぁ、確かに野宿にも飽きてきたところだ。そろそろ町が見えてくると助かるんだが。」


 ダラスはそう言うとクリスを見る。


「人の往来も激しくなってきた。もうここはレガート伯爵領とみて良いだろう。そうなれば中継都市レガートも近くにあるはずさ。

 ここまで着くのに時間が掛かってしまったからね。町に着いたら乗り合い馬車でも探してみよう。」


「よし、そうこなくっちゃな!流石はクリス、蒼天の牙の知恵袋だぜ!」


 ガジは元気を取り戻して歩速を速めて進んでいく。ガジの歩幅に合わせるように僕たちの歩くスピードも段々と速くなる。とはいえ、まだまだ街並みが現れる素振りがないためガジは暇つぶしに得意の噂話を始めた。


「そういや、知ってるか?最近『金色の剣士』ってのが出るらしいぜ。」


「はぁ、兄貴はまたどうでもよい噂を鵜呑みにするんですから。どこで聞いてきたんですか、その噂?」


「昨日泊まった村の奴らと酒を飲み交わしているうちに仲良くなってな。そこで聞いてきたんだ。

 何でも見事な剣技でどんな魔物でも一瞬で切り伏せるらしい。魔物は死体が残らねぇから遠目じゃ仕留めた数までは正確にわからねぇが、そいつは少なくとも三十は二分も掛からず倒しちまったそうだぜ。

 そいつの体が金色輝いてたってんで『金色の剣士』なんだそうだ。」


「おいおい、三十体を二分も掛からずか?そいつはすげぇな。」


「リーダーも真に受けないでくださいよ。どうせどこかの冒険者が流したデマに決まってます。それが本当だとしたら王国が放っておかないでしょう?それなのに一週間も王国にいてそんな話一度も聞かないじゃないですか。」


「そりゃ、お前…。あれだ……。魔物が頻繁に出るのはモンドムール山脈のほうだろう?だからそいつの活動拠点がそっちにあるんだろうよ。」


「へぇ、それでここまで噂が流れてきていないという訳か。ガジの言うことも一理あるかもしれないね。」


「おう!そうだろ?クリスはやっぱりわかってんな!どこかのクソガキにも見習ってほしいもんだぜ。」


「あー!言ってはいけないこと言いましたね、兄貴!あっしが気にしてるの知ってるくせに!!もう許さない!シュウ、やっちゃって!」


「何でそこでシュウに振るんだ…。」


 そこは僕も知りたいところです、チョボさん…。お願いだから巻き込まないで。


「はいはい、この話はそろそろやめにしよう。ほら、見えてきたよ。」


 そうしているうちに目的に着いたようだ。クリスが指さす先には遠くのほうに大きな建物が見えてきた。


「これが中継都市レガート…。」


 それは僕が転生してから見てきた中で最も大きい街だった。

 城を建てた後に拡張したのだろうか、城壁の外周を覆うようにして建物が並び立っている。外周地域の外側には簡易的な柵が設けられているが、これは今後も拡張することを前提としているのか、防御よりも街の区画整備を主目的としているような置き方であった。

 城が中心にあるのは他の街と変わらないが、丘の上に城が建っているのでとても目立つ。城自体も白い外壁は美しく青い屋根がその美しさを際立たせるもので、まさにこの街の象徴と言っても過言ではないだろうと思える見事なものだった。


 街道から城壁まで続く道は広く、馬車が二台横並びですれ違ってもまだ余裕があるほどである。

 外周地域には検閲所が設けられていないようなので僕たちはそのまま街の中へと入っていった。


「シュウはこの街のことは知らないだろうから教えておこう。

 レガート街はさっき遠目で見た通り、城壁の周りにも街がある。これはナインフォセア王国の王都と他の主要都市を結ぶ中継地として交易が盛んなために近年凄まじい勢いで発展してきたからなんだ。

 だから街の防衛よりも拡張を優先している節がある。

 ただ、急激な発展は弊害もあって、多くの人たちが流入したは良いけれど街の変動に追いつけず資産を失う者や野盗まがいな連中も出てきてしまった。

 そうして、街の中ではそれぞれが住む区域を明確に分けるようになっていったんだ。」


 なるほど、城壁まで検閲がなかったのもそのためか。街の中にヒエラルキーみたいなものが生まれてしまうと何かと管理する側も難しいんだろうな。


「僕らがいる南側は工業地区、西側は商業地区だ。北側に居住区や出店が並んでいて、東側に貧民街がある。それぞれに宿屋や飲食店もあるけれど、料金もそれぞれに違う。今回僕らが泊まるのは南側地区だよ。」


「あれ?じゃあ、城壁の中はどうなってるの?」


「城壁の中は貴族や大富豪が暮らす富裕層のための居住区になっているのさ。あの中の物価は同じ街とは思えないほどに高いよ。」


「へぇ、結構あからさまに違うんだな。ボールドンではそういう事もなかったと思ってたけど。」


「そうだね。ボールドンというよりはカルカス国自体がボールドン辺境伯の統治に影響を受けていることもあって、余り大々的に身分の格差を出さないようにしているんだ。

 それにこの街だって仕方なく、という面もあるはずだよ。住民にここまでの格差ができてしまうと管理するために住み分けを余儀なくされる。

 簡単にいうとそれぞれの地域で住むために納める税金が違うのさ。

 だから平民でも城壁の中で暮らせるし、貴族だからといって北側地区に住むしかないものもいる。

 さっき言っていた料金の違いはそういうところにもあるのさ。」


 その後、僕はクリスにレクチャーを受けながらこの街の知識を増やしつつ、僕たちは南側地区の宿屋で一夜を過ごすのだった。



 ========================



 次の日、僕たちは乗り合い馬車を探すために北側地区へ行く。

 城壁内は検閲があり、審査が厳しいうえに時間がかかる。そのため今回は西側地区に迂回して行くことにした。


 西側地区は南側地区よりも活気に満ちていた。

 これはレガートの西方面に主要都市が集まっているためだとクリスに聞いた。北側地区もナインフォセア王国の最大産業都市であるスリースンとの交易があるわけだが、西側地区に比べると落ち着いたもので、南側地区のように親方の怒号や木材、石材といった資材を加工する音などの騒音は響いてこない。


 ちなみに東側は不帰の森があるため交易する町がないそうだ。そのために税金が他に比べて安いので自然と貧民街となっていったのだという。

 ただ、こういった街の造りは大都市ではよくあることだとクリス先生に教えられた。


 僕はクリスから教わった知識と街の様子を答え合わせのように照らし合わせながら進んでいくと西側地区の広場に着いた。

 普段は出店を出して取引を持ちかける商人で溢れているそうだが、今日は全ての出店が店を畳んでいる。その代わりに兵士を中心にして若い男たちが集まっていた。


「なんだなんだ?ずいぶんとむさ苦しい集まりだな。」


「あまり良い予感はしないね。

 ……。あ、そこのご老人。いきなり話しかけてしまってすまない。私たちはこの街に来たばかりの冒険者なのだが、この集まりは何なんだい?ここでは出店が出ていると聞いていたのだが。」


「ほう、旅の方か。これは面倒な時期に来なすったもんだ。

 あれは徴兵さな。近頃、魔物が活発化したとかで若い男衆を集めて討伐隊を作っているらしい。街の周辺にある村や集落は一通り徴兵された後でな、ついにレガートにもお役が回ってきたってことさな。」


「魔物討伐ですか。王国軍は徴兵しなければならないほど人員に困っているのでしょうか。」


「さぁの。そんなことは一介の老骨には分かりゃせんよ。

 ただ、噂じゃ魔物討伐に参加させることで実戦経験を積ませることが目的なんだという。この徴兵自体も各所持ち回りで送ることになっているから、近々大きな戦があるのかもしれんの。

 と、言う訳じゃからお主らも巻き込まれる前に早く西側地区から出ていくことじゃな。南と北にはまだ徴兵令が出されておらんが、それもいつまで続くかわからん。目的地がここじゃないならさっさと次の町を目指すことさな。」


「あぁ、そうするよ。ありがとな、じいさん。」


 ダラスは広場に集まる若者たちを見やりながら老人にお礼を言う。

 僕たちが広場を後にしようとしたその時、集団の中から黄金に輝く騎士が現れた。


「え?まさか、彼が『金色の剣士』?」


「いやぁ、どうだかな。少なくとも俺の想像とはかけ離れている。」


 僕とダラスが懐疑的な視線で見てしまうのも無理ないだろう。

 彼は文字通り、黄金を使用して作られた鎧を着ていたのだから。

 全身が金色になっているといえばそうなのだが、あの格好で超絶剣技を振るっている姿があまり思い浮かばないためしっくり来ていないのだ。

 その彼はといえば、僕たちに失礼なことを言われているとはつゆ知れず、スピーチを始めていた。


「諸君!ここに集ってくれたことに礼を言う。私はナインフォセア王国軍、第二師団で小隊長を任されているミハエル・デ・レガートである!諸君らは勇猛たる我らが王国軍の仲間入りを果たした。その勇気を、愛国心を共に示そうではないか!諸君らの今後の活躍に期待するものである。以上!」


「ありゃ戦前に指揮官が鼓舞するのに使う言葉じゃねぇのか?こんな場所で言ったってこれから訓練を受ける連中には響かないと思うんだが…。」


「好きなようにさせてあげよう、彼はそういう性格だからね。目立ちたくて仕方がないんだろう。」


「ん?何だ、クリス。知ってるような言い方だな。」


「まぁ、ちょっとね。それよりもご老人のおっしゃった通り、彼に見つかる前にさっさとこの場を離れよう。」


 クリスがそう言うよりも早く、黄金の彼はこちらを凝視してきた。そして、ヅカヅカと近づいてくると隣の老人に話しかけた。


「区長、東側地区が徴兵義務を果たされたこと、このミハエルが確かに見届けた。彼らは私が責任をもってツィワンへ連れていくので安心されるがよい。」


「未来のご領主様より直々にお言葉を賜れたこと、恐縮でございます。どうか未来ある彼らのこと、よろしくお願い申し上げます。」


 そういうと老人は深々と頭を下げる。どうやらこの東側地区の区長だったようだ。街の若者が戦場に追いやられるかもしれないと考えたら見送らずにはいられなかったのだろう。

 僕がそんなことを考えながら二人のやり取りを見ていると今度こそ黄金の彼はこちらへやってきて、まじまじと僕たちを全身を舐めるように観察する。


「お前たち。見たところ冒険者のようだが、この街のものではないな。どこの出身だ。」


「次期伯爵閣下。私どもは『蒼天の牙』という冒険者パーティでして、ルストより参りました。」


「ほう、ルストとはまた田舎から来たものだ。お前たちも王国軍への志願が目的か?」


「いえ、こちらへは依頼遂行中に立ち寄っただけでございます。イヴン行きの馬車を探しに北側地区へ行く途中、たまたま居合わせただけのこと。他に御用がないようでしたらこちらで失礼いたします。」


 ダラスが頭を下げるので僕たちも倣って頭を下げる。そして、そのまま立ち去ろうとするが、そこに待ったをかけられてしまった。


「待て!『蒼天の牙』か、そういえば聞いたことがあるな。確か英雄と呼ばれる男がいたはずだ。名は何といったか…。思い出せぬが、お前たちのいずれかで間違いはあるまい。面を上げてこちらを向くがよい。」


 最初から面は上げているのだが、そんな細かいことは気にしていないようなので触れずにおく。こんなことに付き合う必要性は感じないが、さらに面倒事になることを避けるため僕たちは言葉通り従うことにした。


「ふむ。厳つい顔の男が二人と優男が二人。いや、三人か。一人は少年だが、なかなか顔立ちが良いな。男にしておくのが勿体ないほどだ。

 さて、どいつが英雄か……。このミハエルが見極めてやろう。」


 本当にどうでもいいから早くしてくれないかな…。広場の若者たちも戸惑ってますよ。部下も『またか』みたいなリアクションしてますよー。


「ふぅむ。中々難しいものだな。うーん。……。ん?お前、どこかで見たような顔だな。」


「は、はは。まさか、高貴なあなた様とお会いするなど…。他人の空似というものでしょう。」


 クリスが思わず視線を逸らしながら返事をするが、これがいけなかったらしい。黄金の彼はハッと驚いた顔を見せると掌を返すように態度を改め始める。


「ま、まさか…。あなたはクリスチャーノ様ではございませんか?いや、間違いない、クリスチャーノ・デ・ルスト様でございますね!私をお忘れですか、ミハエルです。ミハエル・デ・レガートですよ!」


「お、おい。いきなり態度が変わったぞ。クリス、やっぱり知り合いだったのか。」


「はぁ…。あぁ、彼とは貴族学校で同じ学年にいたのさ。久しぶりだね、ミハエル。」


「そんな!連れない物言いは止めていただきたい!青春を共にした仲ではございませんか。当時のようにミカとお呼びください。」


「ミハエル、僕は君のことを愛称で呼んだことなんてないよ。それよりも僕らは旅を急いでいるんだ。もう行っても良いかな。」


「あぁ、何という不幸か!私に使命さえなければお供しましたものを!そちらの頼りない冒険者に頼らずとも私一人がいれば十分でございましたのに…。

 しかし、これは国王陛下からの勅命でございますゆえ、放棄できないこと、平にご容赦ください。

 せめてものお詫びとしまして、馬車は我が伯爵家のものをお使いください。…おい!」


 ミハエルが後ろに声を掛けると兵士とは違う恰好の人物が現れた。見たところ彼の従僕のようだ。

 ミハエルは従僕に命令を出すと従僕を置いてこの場を後にしていく。


「それでは、クリスチャーノ様。この場で会えたことも何かの運命。またお困り事があればこのミハエルをお頼りくださいませ。いずれまたお会いできることを心より願っております、さらば!」


「勝手にやってきて勝手に恩を着せて勝手に去っていったな。何だったんだ、あいつは?」


「彼は自己顕示欲が強くてね。それでいて目上には気に入られる努力を惜しまない性格だった。貴族学校時代は辺境伯である父上を僕の背中に見ながら事あるごとに僕へ接触してきていたよ。キャラクターが強烈だったから覚えていたものの、別に仲良くしたことはなかったんだけれどね。」


 要するに長い物には巻かれろタイプの人間という訳か。意外とそういう人間のほうが社会では出世しやすいが、その分ストレスも溜まるはずだ。彼も実は苦労人なのかもしれない。


「で?あいつが噂の『金色の剣士』なのか?」


「「「それは絶対にない。」」」


 …………。暫しの沈黙。


 しばらくして沈黙を破ったのはクリスだった。


「まぁ、せっかくの彼の好意だ。ありがたく受け取ることにして僕らは早いところイヴンを目指そう。」


 思わぬところで足を手に入れた僕らは、こうしてイヴンへの旅路を急ぎ進んでいくのだった。

重めのエピソード続きで、のほほんエピソードを書きたい欲が…。

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