第37話 鳥は鳥だろ
―――――翌日 ペリシェ王国郊外
僕たちはカルカス国側の城壁を出て、南西に数キロ行ったあたりにある野営地に来ていた。
野営地では作戦に使う道具の手入れや段取りの確認など、各々が必要と思う作業を熟している。それを横目に見つつ僕たちは天幕がいくつか並ぶ中の一つに入って行った。
「おう、皆集まってたのか。遅くなったようですまない。」
ダラスが天幕の中に主要メンバーが集まっていることを確認して謝罪する。特に遅刻したわけではないし、それが原因でもないのだが、皆の不安が強いのだろう。作戦本部となっているこの天幕の中は重苦しい空気で充満していた。
「いや、問題ない。皆揃ったようなので作戦会議に移りたいと思う。」
リーダー格の人物がそう言うと僕たちを定位置へ手招きする。ダラスを先頭に位置へ付くとリーダーは今回の作戦内容を話し始めた。
「まずは改めて紹介しておこう。この冒険者たちは、かの有名なパーティ『蒼天の牙』の面々だ。そしてこちらがリーダーの英雄ダラス。ダラス、私が今回の作戦指揮を執る王国騎士団長ニコライだ。依頼遂行中の身でありながら引き留めてすまない。どうか力を貸してくれ。」
「あぁ、もちろんだ。そのためにここにいる。皆、俺はダラス、一応蒼天の牙のリーダーだ。仲間たちも頼れるメンバーが揃っているから怪鳥を討伐する手助けになるはずだ。よろしく頼む。」
ダラスがそう言って頭を下げるので、僕らもそれに倣う。集まっている騎士たちは頭を下げる代わりに敬礼で返してくれた。
「よし。では今回の作戦内容を確認しよう。
これまでの襲撃で、敵はナインフォセア王国のリード領とツィワン領の間に跨る山が拠点であると考えられる。そして、奴らはまず斥候としてロックバードを数匹放ち、人のいる場所を見つけると本隊を呼び寄せ襲撃することが判明している。
さらに、二日前からはより人の密集度が高い場所を選んで積極的のそこを狙っているようだ。
そこで我々はその習性を逆手に取る。現在我々がいる場所は、王都と山の直線上に位置している。この場所に野営することで敵は王都まで着く前に我々のことを襲ってくるだろう。
まず斥候に我々のことを認識させ本隊へ知らさせる。そして、本隊が到着したところでこの野営地を中心に張った魔法陣を起動させて結界内に我々ごと敵を封じ込める。」
「要するに自分たち自身が囮ってわけだな。だが、斥候程度であればそれでも良いが、本隊が到着したらどうするんだ?向こうにはロックバードのグレーター級であるギガントロックがいるんだろ?いくら結界内に封じ込めても俺たちも中にいたんじゃ皆殺しにされるだけじゃないのか?」
「そのために結界内には移動式バリスタと魔導師の魔力により出力を高め風魔法を放つ錬金道具を王国内からかき集めた。これでギガントロックを沈黙させ、他のロックバードどもを皆殺しにする。」
「魔導砲というやつか。その錬金道具は使用する際に強風が伴うはずだ。バリスタとは相性が悪いと聞いたことがあるが大丈夫なのか?」
「さすがは三年前の戦争を生き残っただけのことがある。よく特性を理解しているな。
そう、魔導砲は強力な風魔法を放てるが、その周囲に強風を巻くことになるのでバリスタの矢が狙いから逸れてしまう。
だが、今回はその特性が不利にならない様にそれぞれを分けて配置している。これで各兵器の威力を最大限に活かせるはずだ。」
騎士団長は問題ないと肯いているが、実際に戦闘になれば敵味方が入り乱れることになる。そうなるとまず狙うのは巨体であり、群れの長であるギガントロックだろう。バリスタと魔導砲とやらを同時に発射してしまえば結果はダラスが言っていたのと変わらないことになるので、工兵と魔導師にはかなりの意思疎通が要求されるはずだ。
それぞれが離れた場所から上手く連携ができるものなのか。そこに僕たちは引っかかっているのだ。
群れの長がやられれば残った魔物が統率力を失うことは他の魔物の習性と一緒だが、これでは余りにもハイリスクだと言えた。
「団長、余所者の俺が言うと角が立つことではあるが、その作戦の見直しを提言したい。
まず、本当に俺たちも結界内に入っていなければならないのか、という点だ。囮が散ればこの作戦が無意味となることは理解しているが、敵とともに結界内に入るのはリスクがデカすぎる。せめて味方を護るための障壁を重ねて準備してはどうだろうか。」
「ダラス。その意見は尤もだが、結界は広範囲に渡るため魔導師をそちらに割かざるを得ない。そして攻撃用の魔導師も残しておく必要があるため、必然的に障壁を常に出せる人材がいないのだ。
かと言って、魔導砲を使用しなければ今度は歩兵や騎馬隊が危険となる。なので、消去法にはなるが、今はこれが最善と言わざるを得んのだ。」
「団長。横からすまないが、僕からも良いだろうか。」
ダラスと団長の会話を割る様にクリスが手を上げる。
「君は?」
「僕はクリス、このパーティの白魔導師だ。結界や障壁の専門家である僕としては周囲に施した魔法陣のほうが不安だ。魔鉱石を砕いて作ったチョークが元となっているのだろうが、あれの持続力はそこまで高くない。倒しきる前に結界を破られてしまえば結果は同じではないだろうか。」
クリスの指摘に皆、苦虫を噛んだような顔を浮かべる。皆、そのことには気づいていたが、他に対処法もないため問題を先送りにしていたのだろう。
「その前に倒しきれば問題なかろうが!」
僕らが話し合っている天幕の外からいきなり声がする。そして、その人物は颯爽と登場した。気配察知でずいぶん前からそこにいたことは知っていたが、どうやら登場のタイミングを見計らっていたようだ。
「こ、これは殿下!なぜこのような場所に?確か陛下から謹慎を言い渡されていたのではありませんか!?」
団長が現れた人物に対して跪いて問いかける。
「父上は分かっていないのだ。この危機的状況で王族が城に引き籠っていれば士気に関わる。私が率先し陣頭に立つことで皆に『ペリシェ王国ここに有り』と見せつけねばならん!」
言っていることは立派だが、とても勇猛果敢に戦えるような印象は受けない。見た目は僕と同じくらいの年だろうか、華奢な身体に似合わない甲冑を着けている。甲冑が大きいので隙間だらけなうえに重そうでとても機敏に陣頭指揮など執れそうもなかった。
「しかし、陛下からイーゴリ殿下に作戦指揮は執らせないように仰せ使っております。それに御身は二つとない貴重な陛下の血族でございます。
この度のことで万が一のことがあれば、それこそペリシェの損失となりましょう。」
どうやらこのイーゴリ君はナイン国王の一人息子みたいだ。年老いた王様、一人しかいない嫡子、とくれば戦場に出したくないのも納得だ。そもそも、この格好からして戦の才覚があるとはとても思えない。
武勇に優れていないことはひと目見ればわかるし、知恵者だと言うのであれば重そうな甲冑を着けないほうが身を守りやすいだろう。
こうしてイーゴリ君と団長があーでもない、こーでもないと言っているうちにそのときが来てしまったようだ。僕がチョボのマントを引っ張るとすぐに意図を察してくれる。チョボはダラスの下まで行くと耳打ちを始めた。
「団長、取り込み中にすまない。どうやら斥候が来たようだ。」
「何?物見からはまだ何も……。」
団長が返事を返し切る前に外から声がかかる。
「申し上げます!斥候と思われるロックバードがこちらへやって参ります。その数、三!」
「なんと!?何故分かった?…いや、そんなことを気にしている時ではないな。皆!戦闘準備だ!奴らは思念で繋がっている故、すぐに本隊もやってくるぞ!」
野営地はいきなり慌ただしくなる。天幕にいた主要メンバーは散り散りになり、自身の持ち場へ向かっていく。僕たちはギガントロックが炙り出てくるまで待機である。そのため、この場には蒼天の牙と団長、そしてイーゴリ君率いる側近たちのみとなった。
「殿下、もはや一刻の猶予もございません。すぐに城へ避難ください。」
団長の最後の勧めにイーゴリ王子は頭を振る。
「先ほども言ったであろう。私はペリシェ王国王子イーゴリであるぞ。
その私が敵前逃亡でもしてみろ。それこそ兵士たちの不満が爆発してしまう。ここは私も先頭へ立ち兵士たちを鼓舞し続けることとしようぞ!」
「いや、しかし…。」
「団長、殿下が仰っていることには一理ある。
敵がいない状況であれば団長の言うことが正しいのだろうが、今となっては最早手遅れだ。ここで引き返しても下手をしたら守りが手薄なところで結界に阻まれる可能性すらある。
殿下の隣にはシュウを付けよう。彼は俺たちが認める一流の冒険者だ。殿下と側近たちの安全は保証する。
やってくれるな、シュウ?」
「ダラスの頼みなら断らないよ。殿下、守りはお任せください。」
「よし、よくぞ言った!ニコライ、この期に及んで反対はすまいな?」
団長はこの状況を打破できないことを悟り、半ば諦めた顔をしながら頷く。
「仕方ありません。では、せめて前線には出ず、必ず私の指示に従うと約束してください。その御身は我が身命を賭してお守りすると誓います故。」
「その覚悟や良し!だが、命は粗末にするものではない。必ず皆で帰ろうぞ!」
そう言うと王子は側近を連れて颯爽と天幕を出ていく。残った団長はストレスで剥げてしまいそうなほど思い詰めた顔をしていた。
◇◇◇
「きたぞ!盾、構え!」
斥候のロックバード三体がついに陣内の先頭とぶつかる。
この陣内は精々二百人程度しかいないためシュウも気配察知はできる。そのため各所の状況はチョボを通じてダラスへと知らせるようにしていた。これはシュウを前面に出さないための配慮である。
斥候のロックバードは二匹が突貫して気を引き、一匹が思念伝達で本隊に場所を知らせている。
本来は思念伝達をしている一匹から叩くことで増援を防ぐことが定石なのだが、今回の目的は本隊にある。本命を引きずり出すために皆、敢えて放置をしていた。
「おぉ!上手くやっているではないか、我が軍は!だが、まだ甘い。早いところ上空にいる奴を叩かねばすぐに増援がくるぞ!バリスタは使わんのか?何のために集めたと思っている!」
イーゴリはこれまで会議から離されていたため作戦の内容を知らない。そのため今の状況が不思議で仕方がなかった。
「殿下、これは作戦のうちです。今回の目的は群れの長であるギガントロック。彼らはギガントロックがいる本隊を炙り出すために敢えて上空の個体を狙っていないのです。」
ニコライが教えることでイーゴリは一人納得する。独善的な態度が目立つが、決して柔軟な思考がないわけではない。この場に来たことも真に自国のことを想っての行動であった。
時は少し過ぎ、騎士団は斥候の一体を討ち取ることに成功する。このまま二体目も倒してできる限り数を減らしたい騎士団であったが、ついにその時がきてしまう。
「チョボ。」
シュウがチョボに話しかけるとチョボも頷く。そしてダラスからニコライへ報告しているうちに物見が早馬を出してきた。
『キャェェェエアァァ!』
ついに本命が現れた。
ギガントロック。正式名称をギガントロックバードと言い、翼を広げた全長は四メートルを超す巨大な怪鳥である。ロックバードが呼んだ本隊はギガントロックを中心にロックバードが三体、ベビーバードが五体で一塊で行動していた。
ギガントロックが一鳴きするとロックバードとベビーバードが突貫を仕掛けてくる。バード系の攻撃は、この硬い嘴を使った突貫と風魔法を纏った特殊な鳴き声になる。
嘴も風魔法を纏っており、貫通力も増すうえ嘴に直接当たっていなくともその周囲にいれば切り裂くことができる。
ギガントロックはまだ上空で様子を見ているが、ロックバードの攻撃を守る守備隊の一部が瓦解し始めていた。
「遊撃隊、行くぞ!」
ニコライが騎乗して声を上げると機動力の優れた騎馬隊を引き連れて守りが薄くなった場所の援護に向かう。
騎馬隊の援護を受けた場所は態勢を立て直し、見事ロックバードを討ち取る。他の場所も一進一退の攻防を繰り広げつつも着実に敵の数を減らしていく。
そして、四体目のベビーバードを討ち取ったところで事態が動き始めた。
『キャェェェエアァァ!』
ギガントロックは大きく鳴くと一気に上空から滑空し、盾を集めて守りを固めた守備隊をアッサリと喰い破ってしまった。
手痛い損失は受けたが、上空から降りてきたことは騎士団の作戦通りである。
「結界展開!」
ニコライが叫ぶと周囲が淡い光に包まれて、半透明のドーム状の壁が生まれた。
ドームから抜け出ようとロックバードの一体が突っ込むが、壁に阻まれただけでなく爆発音が鳴り響きその身体を焦がしながら弾き飛ばされてしまった。これはドームに火属性を付与した『リジェクト』が仕掛けられているためだった。
墜落したロックバードはすかさず騎士団が討ち取り、同時に別の場所ではベビーバードも討ち取ることに成功する。これで残すはギガントロックとロックバード一体のみである。
「このまま押し潰すぞ!バリスタ、撃てーーー!」
ニコライの一声でギガントロックへ向けて一斉射撃が行われる。しかし、ギガントロックはニコライたちの予想しない動きを見せた。
『キャェァァア!』
なんと、その大きな翼を羽ばたくと旋風が発生してバリスタの矢が全て届く前に落とされてしまったのだ。それだけに留まらず、旋風は移動式バリスタをまるで竜巻に飲み込まれた民家の如く簡単に破壊し、その周囲にも被害をもたらしていた。
「くっ!?まだだ!魔導砲、撃てーーー!」
風魔法である『ウィンドカッター』の特色を伴った渦巻く風を砲身から発射し、特定の範囲をえぐり切り裂く錬金道具である。大砲一つにつき最低でも五名の魔導師が必要とされるがその威力は凄まじく、低級魔導師を同じ数集めたとしても直接放つよりもよほど高い効果が期待できる代物であった。
しかし、今回については話が異なる。
ギガントロックは再び翼を大きく羽ばたかせて旋風を巻き起こすと、風魔法もろとも吸収して大砲とその周囲を飲み込んでいく。
今回、バリスタと違う点は風魔法を吸収した点だ。魔導砲から放たれた風の刃たちは大砲のみならず魔導師たちも切り裂き、風が収まる頃には辺り一面見るも無残な姿へと変貌していた。
「な…!?そ、そんな、バカな……。」
この場にいる誰も予想できなかった攻撃にニコライは放心状態となる。
ギガントロックが行動を起こしただけで、すでに半数がやられていた。そのうえ虎の子であったバリスタと魔導砲も破壊されたとなれば、完全な作戦失敗と認めざるを得ない。
遠距離攻撃の要である魔導師はまだ残っているが、結界の維持で皆の疲労はピークにきているのでこれも期待できない。
総崩れとなった騎士団を眺めながらギガントロックは悠々と地上へ降り立つ。総崩れとはいえまだ半数が残っており、結界もそのままなのだ。
少しずつヒビ割れてきているため結界の崩壊も時間はかからないようにように見えるが、敵はそれを待つほど優しい相手ではなかった。
『キェェエ!』
ギガントロックの嘴が薄く緑色に染まったかと思えばいきなり奇声を上げ始める。
それはニコライが当初から警戒していた攻撃。奇声に乗って伝播する振動は身体の内部へと響き渡り内臓を破壊する。
この攻撃を防ぐには魔法で障壁を作るか、身体を屈めて出来る限り振動を行き渡らないようにするしかない。
この攻撃により結界を張っていた魔導師は全てやられ、立っていた騎士たちの半数が血を吹き出しながら倒れていった。
ニコライは考える。何をどこで間違えてしまったのか、と。
作戦は上手くいっていた。そのはずだった。
誤ったのはギガントロックの異常さ。歯車を狂わせたのはロックバードでは到底考えられない攻撃だった。
全てを吹き飛ばす威力を、それもあんな上空から放てるなど誰が予想できたのか。
もはや結界もなくなり完全に制空権を得たギガントロックはロックバードを伴い再び舞い上がるとある一点に狙いを定める。そして、ニコライへ向けて急降下を始めた。
ニコライが引き連れていたのは騎士団の中でも精鋭たちである。恐らくは自分の後ろに生き残っており、一塊になっている自分たちを狙っているのだろうとニコライは思った。しかし、耐えたとはいえ身体は満身創痍となり振り返ることも号令を出す気力さえも失っている。
全てを諦め目を閉じるとニコライは流れに身を任せることにした。物凄い向かい風を感じながら。
「おりゃぁぁあああ!!」
金属と金属で叩き合うような激しい衝突音とともに鼓膜が破けるかと思うほどの怒声が聞こえてニコライは弾けるように顔を上げる。
そこには銀色の闘気を纏い、大剣を振り被り怪鳥を退かせる戦士が立っていた。その背中は実際より数倍は大きく見えて、無条件に安心感を与えるものだった。
「まだだ!まだ諦めるな、ニコライ!お前の後ろには何があるか思い出せ!」
振り返らずにダラスはニコライへと叫ぶ。
「お前はまだ終わっちゃいない!部下がいる、仲間がいる、そして守るべき王都がある!お前は一人じゃない、俺たちもいるんだ!だからまだ命を、生きることを諦めるな!!」
「ダ、ラス…。だが、あれは最早災害だ。こんなものに抗うなど……。」
「知るか!よく見てみろ、あれが何か!魔物だろうが何だろうが、鳥は鳥だろうが!あんな鳥畜生にいい気にされて溜まるかよ!!」
この言葉を聞いたニコライは騎士としての誇り、矜持を思い出し、次第に瞳から光が戻ってくる。
目の前の怪物は恐ろしい。それは変わらないが、寄り添える者があることで、こんなにも心が救われるとは思っても見なかったのだ。
「ダラス、すまない…。私はまだ足掻くぞ。泥臭くとも惨めだとしても、足掻き、足掻きまくって、生き残ってやる!」
「よし!その言葉、忘れるなよ!」
ダラスは叫ぶと同時に前へ踊り出す。ギガントロックは態勢を崩されたものの、いまだ健在。迫るダラスの攻撃を空中に行くことでやり過ごし、そのまま突貫の構えを取ると急降下していく。
今度は風魔法を極限まで高めた突貫である。まともに受ければさすがのダラスでも一溜まりもなかった。
「〈ホーリーシェル〉!」
ギガントロックがダラスへ届く前に光の障壁が道を塞ぐ。クリスのホーリーシェルはアースドラゴンの攻撃さえも防ぐ頑強なものだ。そこにヒビを入れることができるあたり、さすがと言えるのだがギガントロックの攻撃は危なげなく躱される結果となる。
ダラスはギガントロックの直線上から逸れて近づくと横から横薙ぎの一撃を与える。
『ギギャァァア!』
翼に手痛い反撃を受けたギガントロックは形振り構わず暴れ狂うが、そんなことで巻き込まれるような迂闊者はこの場に立ってはいなかった。
「ぬぅぅうあ!」
ダラスは銀色の闘気を大剣に溜め込み気合いの一声とともに振りかぶると、剣閃ができるとともに一筋の光がそのまま刃となってギガントロックへ直撃する。
オルレアが得意とする『一閃』である。
傷付いた翼にさらに一撃を加えられ、荒れ狂うギガントロックは嘴を淡く光らせる。
先ほど見せた音波攻撃である。が、危険と分かっていてやらせるほど冒険者パーティ『蒼天の牙』の面々は優しい相手ではない。
「〈ホーリーレイ〉」
クリスの光の矢がギガントロックの片目を潰し、怯ませることに成功する。追い討ちにチョボが魔石を投げ込もうとするが、ここでロックバードが間に割って入って来た。
「させねぇよ!」
ロックバードは突貫でクリスとチョボを狙うが、これをガジがタイミングを合わせて横から斬りつけることで難を逃れる。そして、そこを見計らいチョボが魔石を投げつける。
この魔石は昨日シュウが手渡しておいた特別製である。要するにシュウの唱えた『ファイアーボール』が籠められているのだ。
「だぁ!?なんだ、この威力は!?」
事情を知っているダラスでさえもその凄まじい威力に驚愕してしまう。魔石を受けたロックバードは苦しむ間もなく灰となっていった。
「は、はは。さすがシュウだね。」
「マジかよ、こいつは…。」
「投げたあっしでさえ吃驚しましたよ…。」
「だっはっは!最高だな、シュウ!」
予期せぬ演出に驚きつつも勢いに乗る四人はギガントロックへ畳み掛けていく。
「〈ブライトチェーン〉」
クリスが光の鎖でギガントロックを拘束するとダラスとガジが斬り込んでいく。チョボは通常の爆発石を使いギガントロックの気を逸らして二人を援護していく。
しかし、手負いの獣ほど恐ろしいものはない。
自身の死期を悟ったギガントロックは傷付いた翼を急に羽ばたかせて驚愕のスピードでクリスの鎖を引き千切り、奥の方へ突進していく。その先には、なんとイーゴリ王子が立ち竦んでいたのである。
ダラスはすぐに切り返し後を追うが、勢いが凄まじい。間に合わないと直感したが、それでも追う速度は緩めなかった。何故ならイーゴリの横には……。
『ギギャェェアァ!』
その嘴がイーゴリを貫く一歩手前でギガントロックは凄まじい爆発に包まれて弾かれてしまう。
それでもまだ形を保っているのはさすがと言えただろう。仰け反り後方へ倒れていく身体を銀色の光が横切っていく。
あれほど猛威を振るっていたギガントロックの頭はダラスの最後の一撃により落とされて灰となり、消えていった。




