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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
ナインフォセア王国編

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第36話 かつての大国

【ペリシェ王国】

 かつてエクロキア大陸は一つの王家が最大派閥として絶対的な権力により独立支配していた。

 その王家の名は『ナイン王家』。ナイン国王はエクロキア大陸の中心である場所に王都を築き、そこをペリシェと呼び経済の心臓部としていた。


 しかし、その支配はある娘により突然瓦解することになる。

 ときの国王にできた娘の中に他の息子たちでは到底太刀打ちできないほどの麒麟児が生まれたのである。

 その娘は知性的なうえに揺るぎない志を持ち、それでいて誰であろうと公平な態度を崩さない。そのうえ剣術までもが一流の騎士並みの腕前を持っていた。

 また、偶然か否か、姫が表舞台に立つようになってから小麦の収穫量が上がっていき、国力も次第に盤石なものとなる。そのうえ容姿も優れていたことが後押しとなり、人民から『豊穣の姫』と呼ばれるようになっていた。


 だが、そのことを喜ぶはずの国王は焦っていた。当時の王国では女性に王位継承権が与えられていなかったにも関わらず、法の改正を進言する臣下たちが現れたからだ。このまま娘を野放しにしていたら、いざ息子が王位を継ぐ際に足枷となってしまいかねない。

 そう考えた国王は領地を授けるという名目で豊穣の姫を北の山岳地帯へと追いやってしまう。そこは山以外にこれといって何の特色もなく、荒れ果てた土地ばかりが広がっていた。

 これで、王位継承争いを回避できたと考えていた国王であったが、それが甘い考えであったことをすぐに知ることとなる。


 不毛の土地へ追いやったはずの娘の領地から小麦やジャガイモといった生産物が次々と生み出されていき、城が建ち、街が広がり、人口を増やして、いつしか自身のいる王都よりも豊かとなっていたのである。それはまさに豊穣の姫にふさわしい奇跡であった。


 だが、これに反発したのは他の子どもたちである。


 豊穣の姫には三人の兄と一人の姉、そして一人の弟がいる。姉は最年長であるものの、弟たちに頭が上がらないうえ異国へ嫁いでしまっている。それでも姉に懐いていたためか自然と兄たちから姫は嫌われていた。


 そんな兄たちの中で嫡子である王子は国王に黙って城を建てるなど謀反であると罵った挙句、あろうことか挙兵して豊穣の姫のいる土地を攻め込んでしまう。しかし、山岳地帯が天然の要塞となり、城が落ちるどころか王子は圧倒的大敗を期してしまう。


 このことで見限ったのは姫本人よりも家臣や町に住む人民たちであった。皆、一丸となり王国を打倒しようと言い始めたのである。初めは激昂する周りを抑え込んでいた姫であったが、ある日を境に完全な決別を果たすこととなる。


 決定的な事件が起こったのは大敗を期した王子とその弟たちによる、国王暗殺からだった。

 国王は胸に持病を抱えており、定期的な薬を飲んでいた。そこを毒とすり替えて毒殺したのだ。すべては嫡子が国王になるためであった。


 次のナイン国王となった嫡子は直ぐ様、姫に領地を明け渡すように勧告する。


 しかし、姫は決してその地を動こうとはしなかった。それどころか、意趣返しをするかのように新しい王国の建国を宣言したのである。


 その名は『ナインフォセア王国』。豊穣の姫イヴンが初代女王として成った瞬間であった。


 このことに激怒したナイン国王はナインフォセアへ向けて軍団を派遣する。全軍で以て押し潰そうと考えたのだ。


 しかし、そこからは一方的であった。初めは物量で押していたナイン国王であったが、次第にその兵の数も減らしていき、いつしか完全に形成は逆転してしまっていた。

 イヴン女王は敵国から奪った土地を回復させることに尽力し、人民への支援も惜しまなかったため完全に人心がイヴン女王へと傾いていたためである。


 そして、ついには王都ペリシェを落としたイヴン女王は、先代ナイン国王を殺した罪で兄たちを極刑とする。ただ一人、先代国王暗殺に異を唱えて幽閉されていたイヴン女王の弟を除いて。


 イヴン女王とその弟は正室の子供ではない。互いに母は違えど分かり合えるものがあった。

 しばらくして、手元に弟を置いて様子を窺っていたイヴン女王は弟をナイン国王と認め、ペリシェに国を持つことを許したのである。

 それは姉の家族愛から来たものか、自身が勝手に王国を築いた罪滅ぼしか。それは本人にしか分からないことであったが、こうして、かつて大国の王都として名高かったペリシェはその町のみを所領として、ナインフォセア王国に服従を誓い再び国として蘇ったのである。


 ◇◇◇


「ここがペリシェか。何だかルストやボールドンとはまた趣が違うな。」


「あぁ。何ていやいいか、古風な感じがするよな。」


 ペリシェの街並みは木造や石積みの建物が目立つ。ルストでも城など石造りの建物もあるし木造だって建っているが、その作りは洗練されたものになっていた。そこと比べるとペリシェの建物は作りが粗くデザインもどこか素朴なように感じる。


「ペリシェはこの大陸を支配していた大国が元となった国だからね。この建築様式もその頃の名残なのだろう。それに古めかしい見た目だからといっても機能的ではあるし、観光地としても賑わっているようだよ。」


 確かにクリスの言う通り商人だけでなく、身なりの良い恰好をした人たちが建物を眺めながら歩いていたりする。きっと豪商の娘や貴族の旅行先として人気なのだろう。


「まぁ、俺たちには長期間の滞在許可は下りてないから無縁だがな。早いところナインフォセア王国への入国申請書を出して宿を探そう。申請期間を確認しなきゃ滞在日数も決まらないからな。」


 ダラスはそう言うとさっさと歩いていくので、僕たちも珍しい街並みを横目にダラスに付いていく。


 すると後ろから兵士に声を掛けられた。


「暫し待たれよ、異国の方。その恰好からして冒険者と見受けられるが、そなたたちが『蒼天の牙』で間違いないか。」


「えぇ、私たちはカルカス国出身の冒険者『蒼天の牙』のメンバーです。お忙しいでしょうにお声がけいただき感謝します。私たちの入国に不手際でもありましたでしょうか。」


 クリスは話しかけてきた兵士に感謝を述べつつ要件を聞く。本来、怪訝な態度を示しても問題ない流れであるが、謝辞から会話に入ることで相手の心の隙を広げることができる。所施術や交渉術で良く使う手法だ。


「さすがは噂に名高い冒険者だな。別に入国の不備などではないから安心してくれ。実は、そなたたちとお会いになりたいと国王陛下直々のお申し出だ。申し訳ないが、城までご同行いただけないだろうか。」


「国王陛下が?それは我々に何かお話があると捉えても差支えありませんか?」


「それは一兵卒の私では答えることはできん。だが、そなたたちのことは丁重に扱うようにとの陛下からのお達しもある。おそらくは悪い話ではないのだろう。」


「よし、わかった。俺は蒼天の牙のリーダーでダラスと言う。他でもない陛下からのお申し出だ、謹んでお受けしよう。ただ、我々も先を急ぐ身だ。できれば謁見までにあまり時間が空かない様に配慮していただけると嬉しいのだが。」


「それならば問題ない。命令は『蒼天の牙を発見次第、玉座の間まで案内せよ』というものだからな。城門で止められることもないだろうから、すぐに陛下との謁見になるはずだ。」


「そうか、それを聞いて安心した。では、行こう。」


 こうして、僕たちは兵士たちの先導でペリシェの国王と会うために城へ向かうこととなった。城門では兵士が言っていた通り、特に待たされることなく城の中へと通される。そして真っ直ぐに僕たちを大きな扉の前まで連れていった。


 案内役の兵士が扉の前にいた衛兵に声を掛けると業務を引き継いだのか互いに敬礼をした後、ここまで案内した兵士は下がっていく。


 扉の作りはどことなくルスト城の謁見室に似ている。だが、こちらのほうが作りが豪華なうえに倍ほど大きかった。こういう場所は権力の見せどころなので、相当に気合が入っているのだろう。


「カルカス国は冒険者パーティ『蒼天の牙』一行を連れてまいりました。」


 扉の前にいた衛兵が槍の尻を床に打ちつけて中にいる者に要件を伝える。すると中に待機していた衛兵が大きな扉を開き、僕たちを招き入れた。


 中の造りは扉同様にルストの謁見室を丸々拡大させて煌びやかな装飾を施したイメージだ。レッドカーペットさえ、このまま踏んでも良いのかと戸惑うほどに綺麗なものが敷かれていた。


 とはいえ、ここで道を逸れると不敬となるため僕たちは真っ直ぐに進みレッドカーペットの中央まで来たところで跪く。


「ようこそ参られた、旅の者たちよ。儂がこのペリシェ王国を統べる王、ナインである。」


「お初にお目にかかります、陛下。冒険者パーティ『蒼天の牙』、陛下の召喚に応じ馳せ参じました。この度は私どものような下賤な者を招いていただき恐悦至極にございます。皆を代表し、このダラスが感謝を述べさせていただきたく存じます。」


「おぉ、そなたが噂に名高い英雄ダラスか。そう恐縮せんでもよい、表を上げることを許す。少し儂と話をしないか。」


 国王が表を上げることを許すというのは、暗に心を許す、と言っているものである。初対面の相手に向かってそのようなことを言うとは、この王は器が大きいのか、それともダラスの名声に目が眩んでいるのか。

 僕たちが顔を上げると、そこには白い髪と髭を長く伸ばした老人と言って差し支えない見た目の人物が玉座に座っていた。まぁ、入るとき視界に入っていたし、気配察知を極端に限定してこの部屋の様子も窺っていたから分かってはいたのだけれど。


「して、そなたらを呼び立てた理由だが。どうだ、この国で一つ依頼を受けて貰えないだろうか。」


「依頼とはどのような内容でしょうか。」


「うむ。実は数日前に魔物が群れを成してこの街周辺を襲ってくるようになってな。日増しに数を増やしてこの城まで迫ってきておる。この分では幾日もしないうちに魔物どもはこの街を襲ってくるだろう。

 そこで、その魔物どもの討伐を手伝ってほしいのだ。」


 なるほど。この国に入ってからやけに物々しいと思っていたが、そういう理由か。街防衛の準備をするために兵士たちが各所を駆けまわっているわけだ。


「そういうことでしたか。しかし、我々はすでに依頼を遂行中の身です。一刻も早くナインフォセア王国の王都へ向かわねばなりません。」


「そのことは承知の上での依頼だ。あの鳥どもは群れだけであればそこまで脅威ではない。しかし、その群れを束ねるのが『ギガントロック』となれば話は別だ。あれに対抗できるほどの人材はわが国にはおらんでな。集団で罠を張ろうとはしているが、彼奴らは賢い。中々上手くいっておらんのだ。」


「ギガントロックとはまた、物騒ですな。あいつらは確か標高の高い山に巣を作ると聞いていますが、グレーター級がこの平原に現れる理由は何かお分かりなのでしょうか。」


「いや、調査はしておるものの未だに彼奴らが怒る理由がわからん。彼奴らは仲間意識が強いと聞く。ともすれば、どこかの旅人が襲われたところを殺めたのかもしれん。」


「「「「「あ。」」」」」


「ん?何か申したか?」


「い、いえ、何も。それよりも、そのギガントロックは野放しにできる相手ではありませんね。いいでしょう。我々がどこまでお役に立てるかは分かりませんが、この蒼天の牙が討伐のお手伝いをさせていただきます。」


 ダラスが、コロっと手の平を返す。本来なら全員で文句を垂れるところだが、今回は誰一人として文句を言う者はいない。だって…。


「おぉ、そうか!引き受けてくれるか!討伐完了の暁には褒美を弾む故、頼むぞ。この後、兵舎にて討伐会議を開く予定だ。そこにそなたらも参加してもらいたい。滞在中の宿はこちらで手配する故、重ねて頼む。この街を、この国を救ってくれ。」





 王様に懇願されながら僕たちはその場を後にしていく。部屋を出るとそのまま兵舎へと案内されて討伐会議に参加して、用意された宿に着いたのは五つの鐘がとっくに鳴り止み、時計塔の針がもうすぐ十二を指しかけている頃だった。


「いやぁ、参ったぜ。まさか、こんなことになるとは…。」


「シュウが勢いで鳥なんか仕留めちゃうからだよ。狙ってたのがベビーバードだって知ってたら止めたのに。」


「……ごめんなさい…。」


「まぁまぁ、チョボの言いたいことも分かるけれど、シュウだって悪気があってそうしたわけではないんだ。

 バード系は仲間意識が高いって陛下が言っていただろう?あれは、ベビーを不用意に殺すと群れが報復にくる習性があるからそう言われているんだ。グレーター級が出てくるってことは、シュウが仕留めたベビーの群れの長がギガントロックだったんだろう。

 ここまで厄介なことになるとは想定外だけれど、乗りかかった舟でもあるし、逆に国が滅んでしまう前に対処できることを喜ぶようにしよう。」


「そうだな。俺たちが原因で国が無くなっちゃ洒落にならん。イヴンに着くのが遅れたとしても、この依頼は確実にこなさなきゃならねぇ。とりあえず明日は兵舎で聞いた通り、隊長の下へ向かおう。」


「しかし、あの作戦は少し不安が残るね。人員も限られる中、上手くいくとは考えづらい。となると、僕たちの個人能力を期待されていると見た方が良いかもしれないな。」


「あぁ、英雄なんて大層な称号のせいでとんだ災難だ。

 それよりもシュウ、お前はあまり目立たない様にしていてくれ。お前の能力を十全に使えれば話は早いんだろうが、この国にまで目を付けられちゃ最悪の場合、出国させてもらえないかもしれん。」


「わかった。皆がピンチにならない限りは補助に徹するよ。」


 僕としてもこの国に軟禁された挙句、人間兵器みたいな扱いを受けるのはごめんだ。ダラスたちの配慮に感謝しながら僕は僕のやれる範囲をしっかり見極めることにした。


 そうして、僕たちは兵舎で聞いた内容を元に独自の取り決めと作戦を立てて就寝することにした。明日はいざ大鳥退治である。

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