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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
ナインフォセア王国編

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第34話 話し合い

【エクロキア大陸 カルカス国南部 ルスト】


 ルスト郊外にはボガード邸と呼ばれる牧草地が広がり見渡す限りの草原が続いている。その草原の一角で僕は今、泥まみれになっていた。なぜかって?それには海よりも深い訳が存在する。と、いうか何となく想像ができているだろう…。


「ふんふっふふん♪」


 草むしりをしている僕の横でメアリーお嬢様は鼻歌交じりにブローチを付けては外し、外しては眺め、眺めてはまた付けるという動作を繰り返している。

 ボールドンから戻る際に約束通りお土産としてブローチを買ってきたのだ。


 ルストへは辺境伯も一緒だったため馬車で移動することになった。すると、行きの半分の時間で戻って来れてしまった。

 予想よりも早くルストに着いたことを喜びながら早速ボガード邸に向かうとメアリーお嬢様に遅い!と、お叱りをうけてしまったのだ。そこから一週間、草むしりをしながらお嬢様の遊びに付き合っているというわけである。


「あの…。一応、僕は受注取り消しの身なので、働く必要がな…いや、他の冒険者の取り分を奪ってしまうのは忍びないので、そろそろ引き上げてもよろしいでしょうか…。」


「ダメよ。シュウはすぐ帰ってくるって言ったわ。なのに一カ月も待たせるんだもの。レディを待たせたら罰を受けるのは当たり前、そうよね?じい。」


「おっしゃる通りでございます、お嬢様。」


 うぅ…。いつも良識的な発言をしている執事さんが味方になってくれない。僕がルストに戻るまでメアリーお嬢様が散々喚き散らしていたらしいから無理もないか…。

 仕方がないので僕は、まさに労役を真面目に続けるのだった。


「シュウ!そんな黙々と作業をしていたら詰まらないじゃない。お話しなさいな。」


 ……やっぱり理不尽だと思います!


「いったいどのようなお話がよろしいのですか?」


 と、質問をして僕は自身の過ちに気づく。

 メアリーお嬢様は目を輝かせて、いつものおねだりを始めた。


「そうね!今日はワイバーンの群れを撃退したときの話がいいわ!火竜との対決も良いけど、やっぱりワタクシの護衛として戦ったお話の方がワタクシ好きだもの。

 姫の危機に颯爽と現れて、危険を顧みずに体を張って護る姿!強敵の炎を前にしても逃げずに戦う胆力!空に飛ぶ敵を物ともしない知恵!

 迫る炎を斬り裂き、空中へ跳躍して首を落とし、囚われの姫を奪い返し護る!やっぱり素敵だわぁ!」


 メアリーお嬢様の目がハートになっていらっしゃる…。


「お嬢様、私はそんな話をしたことがありませんが…。それに姫って何ですか?」


「あら、いいのよ。ワタクシが吟遊詩人に頼んでそういう内容で歌を作ってもらったんだから。あなたの冒険譚はルストで有名よ。」


「いや、誰の冒険譚ですか、それ。」


「あなたよ。」



 ………。暫しの沈黙。


「まぁ、本当は最後に姫と護衛は結婚することになるのだけれど、姫が王子でもない殿方と結ばれるのは認めないと却下されたわ。じいとお父様に。」


 おいおい!却下するなら全体的にお願いしても良いですかね、執事さん!しかも認めないって絶対ボガード伯爵がいいましたよね!?

 そもそも十二歳になったばかりの女の子の遊びに他人を巻き込むんじゃありません!




 そんな話をしていると館のほうから使用人が走ってくるのを感知した。カッツさんの方ではなく僕たちの方向へ走っているので、用事はメアリーお嬢様だろうか。手には手紙が握られているようだ。


 執事が使用人から手紙を受け取るとメアリーお嬢様のほうに戻ってくる。…と、思ったらお嬢様を通り過ぎて僕に手紙を渡してきた。


「シュウ殿への召喚状ですな。差出人は双頭の鷲の紋章、ルスト辺境伯閣下です。」


「あぁ、ついに来ましたね。」


「何が来たの?」


「ナインフォセア王国への旅立ちの知らせですよ。」



 ◇◇◇



 ―――――ルスト城 謁見室前


 僕が召喚状に従って城までいくと謁見室の前で見たことのあるプレートメイルが目に入った。


「オルレアさん。」


「あぁ、シュウか。よく来たな。元気にしていたか。」


「はい、おかげ様で。その甲冑姿も久しぶりに見ますね。」


「そうか、考えてもみればシュウと初めて会ったのもこの場所だったな。

 正直に言うとあのときはまだシュウの実力も分かっていなかったから、こんな細い腕でワイバーンの群れを倒せるのかと怪しんでいたものだ。そのあとの模擬戦でその実力を見せつけられたわけだがな。」


「そんなこともありましたね。風の噂でメスト子爵は除名処分になったとか。」


「あぁ。本人は謹慎を申し出たらしいが、辺境伯は褫爵する心づもりらしい。王国へ行く際に陛下へ直訴するとおっしゃっていた。クリス様の名を騙った罪はそれほどに重いということだ。」


「そうですか。折角腕は無事だったのに職を首になっちゃいましたか。」


 メスト子爵はクリスが書いたとされる命令書を持っていた。バージェ伯爵の従者が見極められないほどに精巧なものであったが、のちに錬金術の痕跡を辿ることができる道具で筆跡に細工がされていたことが分かったらしい。

 あのとき、メスト子爵へ手紙をさり気なく返さなかったバージェ伯爵の知略勝ちと言ったところだろう。


「シュウ、その話は内緒で頼む…。

 おっと、つい話し込んでしまったな。ルスト辺境伯が中でお待ちだ。今日は公的な召喚ではないから無礼講で良いとのことだ。お前の見知った顔もすでに入っているぞ。」


 オルレアさんはそう言って部下に扉を開かせる。中を覗くと、レッドカーペット先の壇上にある椅子にルスト辺境伯が座り、その横にバージェ伯爵が立っている。フロアには椅子が並んでおり、クリスと見知らぬ兵士が二人、そして蒼天の牙の三人が待っていた。




「ようやく来たか、待っていたぞ。空いている席に座るがよい。」


 ルスト辺境伯は気さくに僕へ着席を促す。まだ跪いてもいないのに城主が率先して話しかけるあたり、本当に無礼講のようだ。僕は空いている二席の内ダラスの横へ座るともう一方へオルレアさんが座った。


「皆の者、それでは今回の遠征について話を始める。先に伝えておくが、これは公式の会議ではない。そのため、ここで決まったことであっても予算、行程、国交の関係で変更となる場合があることは予め頭に入れておいてほしい。

 この場では立場の違う視点、考えを聞いたうえでまとめ、旅程の大枠を固めることを目的としている。各々の活発な意見を期待する。」


 ルスト辺境伯が開会宣言のような口上を話すと横にいるバージェ伯爵が仕切り始めた。


「皆、まずは集まってくれたことに礼を述べたい。そして、簡易的なもてなししかできずすまない。本来であれば会議室のような落ち着いた場所でする話なのだが、如何せん今は立て込んでいてな。せめて無礼講と思って寛いでほしい。」


「ありがとう、バージェ伯爵。僕も蒼天の牙もそんなことは気にしていないから謝らなくて大丈夫さ。それよりも、この会に僕らを呼んでくれたということは、今回は護衛依頼かな?」


「その通りでございます。冒険者シュウのプラチナランク昇格が国の発展に不可欠と首脳陣は判断し、国を挙げて支援することに決めました。

 そして、その後の交渉のためにルスト辺境伯とアルスカイン特別侯爵も、合わせて王都へ向かわれることとなったのです。」


「おい!ってことは今回の依頼は閣下の護衛か!?いくらリーダーがいるとはいえ、それにしちゃ人数不足なんじゃねぇか?」


 ガジが言うことはもっともだ。カルカス国の最重要人物である二人が揃って王都へ向かうなどカルカス国からしたらリスクでしかない。しかも、そんな重要案件を冒険者パーティに頼むというのも違和感がある。


「ガジ、話は最後まで聞いた方がよさそうだよ。ここに騎士団の隊長が揃っているということは、それだけの戦力も期待できるんじゃないかな。」


「さすがはクリス様ですな。実は定期交流遠征の日取りが図らずも同時期となりましてな。今回はルスト正規軍が王国へ向かう役回りとなるため、周期的に第三部隊を王国へ向かわせることとなります。そのため、ルスト辺境伯閣下は第三部隊とともに行動される予定です。」


「異論はあるか、オルレアよ。」


 ルスト辺境伯がオルレアさんへ確認を取る。高圧的な態度は微塵もなく、これが率直な意見を聞きたいのだということが良く分かる優しい声色をしていた。


「いえ、移動については異論ございません。ただ、遠征先についた後はどうなるのでしょうか。王都へ迂回してから演習地へ向かったとして、我々が離れている間の警護がいなくなります。第三部隊の隊員を残すこともできますが、それではあまりに不安が残るかと。」


「じゃあ、そのための僕らというわけかい?」


「なるほどな、紅騎士が離れている間の護衛を俺たちが請け負うってことならまだ頷けるな。

 しかし、俺たちは冒険者だぜ?本当にそれで構わないのか?他の部隊からだって志願者はいそうだが。」


 ダラスはそう言いながらレッドカーペット越しに座る騎士たちを見やる。

 兜を外しているので今回はしっかりと顔が伺える。一人は初老に差し掛かったばかりの見た目をしており、意志の強さがその目に現れている。

 もう一人はそれよりも二十は歳が下に見える。ダラスとそこまで変わらない年齢に見えるが、顔立ちが良いので実際より若く見えているのかもしれない。なお、髪型は元の世界基準でいう所の前髪ぱっつんボブカットだ。


 ダラスの問いに初老の男性のほうが答える。


「まぁ、思う所がない訳でもないがな。ルスト閣下が決められたことだというのであれば、異論はござらん。お前はどうだ、ダリアン。」


 初老の男性は後ろに座る青年に話を振ると悩むことなく青年は答える。受け答え一つでも彼が聡明であることがよくわかった。


「私はいささか不安です。横におられるのが音に聞こえた英雄ダラス殿ということは良く分かっていますが、それでも四名では閣下の護衛は難しいでしょう。

 特に、閣下が入城された際に同伴できる人材がクリスチャーノ様だけでは、万が一の備えが足りていません。ここは正式な騎士を伴につけるべきだと思います。」


「それについては俺も同意見だな。ルスト辺境伯閣下が許可しても、王国貴族が俺たちの入城を快く思うはずがない。

 辺境伯閣下の力で伴を出来たとしても、これで敵を増やす結果となったら護衛としては失敗だ。俺たちへ依頼する明確な理由が知りたい。」


「それは……。」


 そこまで言ってバージェ伯爵はルスト辺境伯を横目で見る。すると、ルスト辺境伯が引き継ぐように話し始めた。


「ダラス、ダリアン。お前たちの言うことは一々尤もだ。だが、お前たちはいくつか勘違いをしている。

 まず、私と第三部隊が出発するのは明後日だ。そして、ボールドンでアルとその護衛である近衛隊と合流する。

 その後、王都イヴンへ着くまでは二個大隊で行動し、第三部隊と別れた後は近衛隊が私の護衛も兼務する形となる。そして、シュウと蒼天の牙は二週間遅れで出発をし、到着するまでの間に私とアルが陛下と話を付けてシュウをプラチナランクに昇格させる準備を整える。

 シュウがプラチナ冒険者となれば準男爵となるので、私の護衛も可能となる寸法だ。」


「あれ?それだとあっしらの役割は何ですか?今の話だと結局あっしらは護衛ができませんよね。」


 チョボが当然の疑問を投げかける。というか、僕は王都に着いたら辺境伯の護衛をすることが前提の話だったんですね…。


「冒険者よ、そなたら蒼天の牙に頼みたいのは王都への案内役だ。」


 バージェ伯爵が答えるとクリスが意図を察したようだ。


「なるほど、土地勘の無いシュウを連れていくために僕らが必要なわけか。

 確かに僕らは依頼で王都まで行くこともあるし、僕なら父上の元までシュウを案内できる。父上と一緒に行かないのは、王都へ着いた後でシュウが孤立することを避けるためだね。」


「あぁ、そうか。今のシュウは王都の人間からしたら、ただのブロンズ冒険者である小市民と変わらないからな。城壁をくぐれたとしても城内へ入ることはまず無理だろう。

 ですが、そうなると近衛隊の負担が大きのでは?」


 オルレアさんが辺境伯へ確認すると辺境伯は悩ましい表情を浮かべながらも答えた。


「確かに、そのことは危惧するところではあるが…。まぁ、私も城にある自室から出来る限り動かないようにすれば何とかなるであろうよ。それにシュウさえ城に入れればもしもの備えとしては万全だ。

 あとはシュウとの連携も取りやすい蒼天の牙が外で待機していれば、護衛としては盤石と言える。」


 辺境伯の答えに違和感を持ったのは先ほどの青年、ダリアンであった。


「今の口ぶりですとシュウ殿が準男爵として入城したら、近衛隊の護衛は解くとおっしゃっているように聞こえますが…。」


「その通りだ。私はそのように言ったつもりだ。」


「なんと!そこまでこのシュウと言う冒険者を信頼されておいでなのか、閣下は。」


 初老の騎士が驚き声を上げる。僕だって上げたい。


「その信頼を得るだけのことがボールドンであったのだ。

 お前たちには正直に話すが、ボールドンで悪魔が暗躍していた。」



 火竜は目撃者が多すぎるため隠せないが、悪魔の姿であれば目撃者もいないため、こちらから無意味に広める必要もない。

 そのため現在、悪魔の件は余計な混乱を招くとして機密事項となっていた。


 皆の驚きを代表するかのようにダラスが声を上げる。


「なっ!?悪魔が!?巷じゃ魔王の復活がどうとか根も葉もない噂が流れちゃいたが、このエクロキア大陸に悪魔が出るってことは本当に復活しちまったのか…?」


「そこまでは分からない。けれど僕やオルレアも当事者としてその場にいたんだ。ジェリオと名乗っていた見た目は人間の男にアルスカイン特別侯爵は操られて、僕らを殺そうとドラゴンまで嗾けてきた。

 アッガスの話では人間の見た目からドラゴンのような見た目の怪物に変化したと言っていたし、最後は火竜がシュウと戦っていた場所から飛び出してきたくらいだ。これは古文書に記載があった通り、悪魔だと考えて間違いないよ。思えばワイバーンが立て続けに現れたのだってその悪魔が絡んでいたからだろう。」


「そのうえジェリオ、本当の名はジキアスというらしいが、あの男はボールドンの貴族を使い様々な企てを仕込んでいたようだ。さらに周辺の野盗を使って印象操作まで行っていた。

 我々エクロキア大陸の住人は直接悪魔と対峙したことがない。そのため想像でしかものを語れないが、どうやら奴らは思った以上に狡猾なようだ。ルストも油断はできん。

 だからこそ、信頼にたるバージェや第一部隊、第二部隊の隊長であるお前たちには城に残ってもらい、不穏分子を炙り出してもらいたいと考えている。」


 初老の騎士やダリアンは暫し辺境伯が語った話を吟味したあと、それぞれ口を開く。


「儂は初めより閣下が下される命令に反目するつもりは毛頭ござらん。はっきりと申せば炙り出しなど、細かいことは不得意な故、せめて有事の際は我が身命を賭してこの城と街を護ると誓いましょうぞ。」


「このルスト正規軍第二部隊隊長、ダリアン。必ずやその信頼に応えてみせるとお約束いたします。」


「よく言ってくれた。蒼天の牙の四人はどうか。」


 四人は顔を見合わせて少し考えた後、リーダーのダラスが代表で答える。


「俺たち四人も異論はない。シュウは必ず王都へ連れていく。」


「報酬は弾む故、よろしく頼むぞ。

 オルレア、そういうことであるからして、まだまだお前には負担をかける。すまないが付き合ってくれ。」


「私はもとより閣下に仕える騎士です。ご命令であれば海も山も越えて見せましょう。」


 ルスト辺境伯はその力強い言葉に深々と肯いた。この場にいる者たちの心が一つになったようだ。

 …って完全に締めに入ってますけど一人忘れてません!?


「あ、あの…。僕の意見は……?」


「あぁ、シュウに拒否権はない故、しっかりやるように。王都で待っておるぞ。」


 やっぱりそうなりますよね……。

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