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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
カルカス国編

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第27話 続・疑惑

 オルレアたちはランド子爵から借りた馬に乗って東門を南東の方角へ向けて進んでいた。

 本当は甲冑も貸してもらえる予定だったのだが、衛兵から第三部隊の三人は傭兵団に組み込まれるため事前の擦り合わせをさせて欲しいというのでランド子爵とは第一部隊の準備のため城で別れ、革鎧のまま話をしに行くことにしたのだ。しかし、一足先に東門に行ったところを傭兵団に外まで連れ出されてしまったのだった。


「強引な奴らですね。第一部隊だって準備にそうかかるもんでもなし、待てば良いものを。」


 愚痴を吐くのはセズである。セズはこの旅を通して愚痴っぽくなってしまっていた。普段は思慮深さも持ち合わせているのだが、異例の対応尽くめのこの旅が彼をそうさせてしまったとも言える。それは何もセズに限ったことではなかった。


「あぁ、まるで第一部隊に居て貰っては困るかのようだな。隊長の進言も無視して進むなど、身の程を弁えるべきだ。」


 ヤッドはこの旅の最年長である。

 セズは喧嘩っ早いところもあるが、ヤッドは常にオルレアや部隊の体面を意識して発言や行動をしている。その彼でさえ、この状況には不満を募らせているのだ。自分たちまでならまだしも、尊敬するオルレアのことを蔑ろにするなど彼には国主を笑われるのと同じことだった。悪態の一つも吐きたくなるというものである。


「お前たちの気持ちも分からんでもないが、如何せん特別侯爵閣下の命では、な…。」


 第一部隊を待たずにすぐ出発すると聞かされたオルレアは傭兵団の団長へ合同演習の意味を解きつつ、命令書にある通り三つの鐘が鳴るまで第一部隊を待つように進言した。その際に団長は自信満々にオルレアを見下しながら命令書を出してこう言い放った。


『その命令はすでに古い。これはアルスカイン特別侯爵からの特命である。ジェリオ傭兵部隊、並びに第三部隊は速やかに場外にて演習を開始せよ。遅れるものを待つことは不敬とみなすゆえ周知されたし。』


 内容を読んでから団長はオルレアに命令書を渡す。そこには確かに双頭の鷲の紋章が押されていた。


「本物かどうかは置いておくとしても、あのような命令書があってはこちらに分が悪い。ここは従う他にないだろう。ただし油断はするなよ、お前たち。」


 他の者に聞こえないように密集隊形で話をしながら馬を進めているとボールドンから十数キロ離れたあたりで先頭が止まるのが見えた。どうやら奥には林があるようだ。


「よし!集まってるな、野郎ども!これより演習を行う!今回は林を小隊で進み魔物を狩る!一番の大物を仕留めた者には特別侯爵から褒賞がある、心してかかれよ!」


 団長がそう告げると傭兵たちから歓喜とも狂気とも取れる叫びが木霊する。


「第三部隊は三人で一小隊とする。

 これは隊からはぐれた際の他部隊連携を目的としている。国主命令だから仕方なく同行させたが、魔物は危険な生き物だ。精々死なないように気を抜かんことだ。

 よし!野郎ども、行動開始だ!」


 団長の言葉を合図に皆が堰を切ったように林の中へ入って行く。


「褒賞で士気を挙げて演習の意味があるのか。しかも我々のことは幼子のように扱う。礼儀もなくこれで合同演習とは笑わせる。」


 ヤッドは静かに、だが瞳の奥に燃える怒りを称えながら言い放つ。


「ヤッド、落ち着け。これが演習と呼べるものかは分かりかねるが、本来の目的が別にあるようだ。後ろの奴らもこちらを監視している。とにかく我々も林の中へ入ろう。今後のことを話すのはそれからだ。」


「林の中だと馬はキツイですね。置いていくしかなさそうだ。」


 馬が行動するには木々の間隔が狭すぎる。オルレアたちはランド子爵に借りた馬から降りて林の中へと入って行った。





 林の中を進みながらオルレアはあることを考えていた。それは自分たちがボールドンに着く前に襲われた時のことだ。

 あのときはシュウの的確な索敵により難なく返り討ちにできたが、そのあとで死体を調べに行った際に見た野盗の装備が今回の訓練相手が持っているものと酷似しているのだ。

 もちろん全く同じというわけでもないし、どこにでもある装備でもあるからたまたまということもあり得る。しかし、襲われた林の作りと似ていることもあり、何となく嫌な予感がしていた。


「お前たち、もしかしたらこれはあの時と一緒かもしれないぞ。」


 あのときとはもちろん行きの襲撃を指す。


「分かっています。捕虜の言い分ではあいつらの拠点はここら近辺のはず。城に出入りできるなど野盗にしては頭が回る奴がいるようですが、この演習は我々を襲う口実でしょう。セズ、気を抜くなよ。」


「これでも俺はオルレア隊長からこの旅に選抜された人間ですよ。野盗如きに後れを取るようなマネは死んでもしません。」


 三人は林の奥へ行きすぎないように注意しながら進んでいく。傍目からは魔物を探しているように映るが、その実、野盗の狙撃手を警戒していた。


 そうして林を歩いていると急にウェアウルフの群れが現れる。ウェアウルフは三体。オルレアはこの林を住処にしている魔物たちがこちらへ逃げるように仕向けられたように感じた。

 しかし、魔物は遭遇してしまえば問答無用で襲い掛かってくる生き物だ。例にもれずウェアウルフたちもオルレアたちへ襲い掛かってきた。


「抜剣!」


 オルレアの一言で三人は背中合わせになりながら剣を抜く。それには構わずウェアウルフは襲い掛かってくるが、オルレアたち第三部隊には恐れるような相手ではなかった。前足の爪で攻撃しようとするウェアウルフたちの攻撃を巧みに躱しセズは横薙ぎに剣を振り見事ウェアウルフを仕留めてみせる。

 だが、そのとき光る何かがセズの背後を狙ってすごい勢いで飛んできたのである。


「セズ!」


 セズは背中に目があるかのように自身の背中からくる物体を叩き落とす。改めるとそれは弓矢であった。

 飛んできた方角を睨むと遠くに弓を構えた何者かがいるのが見える。しかし、距離があるため走ってもすぐ逃げられてしまうだろう。

 ウェアウルフを片付けた三人は、この演習が自分たちを暗殺するためのものだと確信して言葉を交わすことなく林の出口へと駆け出していた。


 しかし、それを阻むように今度は傭兵たちが現れる。


「ヤッド、セズ!」


 現れるが、お構いなしにオルレアたちは斬り伏せて走る速度を緩めずに進む。

 すると逃がすわけにはいかない、とばかりに傭兵たちが群がってきた。そのうちに遠くで狙撃の構えをしていた野盗も仲間が邪魔をして撃てなくなったのか近づいてくるようになる。そこを見逃すオルレアではなかった。


「せぃっ!」


 オルレアは『一閃』を放つと目の前の傭兵たちを巻き込んで狙撃手を討ち取っていく。そうして確実に敵を減らしていくオルレアたちだが、数が違い過ぎた。

 敵は拠点からも人員を出してきたのか、減るどころか増えていく一方のように感じるのである。


「これではジリ貧だ!何とか突破するぞ!」


 敵を斬り伏せながらオルレアが叫ぶとセズは狙撃手が持っていた弓と矢を奪い、奥の敵へと射放つ。セズの矢は百発百中の精度で敵を確実に屠っていき、空いた隙間をオルレアが『一閃』でこじ開ける。そして、ヤッドを殿として三人は林の外へと駆け出していく。


「くっ!馬をやられたか…。」


 林を抜けた三人であったが、乗ってきた馬はすでに殺されていた。それどころか、出てくるのを待ち構えていたように傭兵たちが出口で群がっていたのである。そこには傭兵団の団長も姿を見せていた。


「これは、万事休す、ですかね。」


「こうなれば、我が命の灯が消えるまで敵を屠り、隊長を一瞬でも長く生き延びさせるまでのこと!」


「ふん!部下に庇ってもらうほど私は落ちぶれていないぞ。自分が助かることだけを考えろ、これは命令だ、いいな!」


 再度、背中を合わせて円形に構えを取る三人。それに対して野盗たちは五十はいるだろうか。すでに決着がついているかのように皆口元に笑みを浮かべながら武器を構えている。


「やれ!」


 団長の一声で一気に野盗どもが襲い掛かってくる!…かのように、思えたが、衝突する直前で騎馬隊が現れ間を駆け抜けていく。旗にはアルスカイン正規軍第一部隊を象徴する紋章が掲げられていた。


「無事か、オルレア!」


「ランド隊長!救援、感謝いたします!」


 ランド子爵は馬を疾駆させてオルレアたちを追ってきたようだ。馬の息は荒く心なしか疲れているように見える。


「よい。状況を見れば一目瞭然だな。傭兵団は野盗の集まりだったという訳だ。」


「林で襲われたところを何とか抜けてきたのですが、馬がやられてしまい囲まれていたのです。こいつらはボールドンへの往路で襲ってきた野盗と同じ装備をしています。おそらくは仲間でしょう。」


「なるほどな。それよりも、ここは数で我々が勝っている。馬も貸してやるからお前たちは急いでボールドンへ戻った方がいい。首都では今大変なことになっている。」


「大変?この場よりも急を要することですか。」


 オルレアがランド子爵のほうへ顔を向けると子爵は焦りの色を隠すことなく言い放つ。


「あぁ、ルスト辺境伯が暗殺未遂で投獄され、本日四つの鐘で処刑されることが決まった。」


 その答えは誰も予想することができないものであった。


 ◆◆◆


 シュウたちは北門側から裏通りを使い、教会周辺まで来ていた。

 教会は南門から真っ直ぐに走っている大通りの突き当りに位置している。その後ろには城があり、裏庭を挟んで建つ形となる。

 ボールドン辺境伯が統治していた時代に建てられたこの教会は、警戒が薄くなってしまう城の裏手部分の睨みを補うために当初、軍の駐留所として作られた。そのため裏庭は広い敷地となっており、軍隊が駐屯できるようになっている。

 時代が進むにつれて駐留所は教会へと変わっていくが、その頃までは城との行き来ができる門が存在した。だが、アルスカイン特別侯爵が治めている現在は教会との結びつきも次第に弱まり、門は完全に封鎖されて今は教会自体が孤立状態となっている。


「さて、ここまで来たはいいが、どうしたものか。」


「今のところ僕たちには気づいてないみたいだけど、監視っぽい人たちが教会の出入りを観察してるみたいだ。堂々と正面から入ることは難しそうだね。」


「なら、裏手へ回るか。まずは大通りを渡って城の方へ近付こう。」


 クリスが先導して教会から少し離れた場所まで来ると馬車や荷車の影に上手く隠れながら大通りを渡る。

 そして裏路地を進んでいき教会の塀が見えてきたところで二人は止まる。


「クリス、見張りが二人。僕らと同じように路地から教会の戸口を監視してるみたいだ。」


「二人なら何とかなるかな。お二人さんには悪いけれど、暫くの間眠っていて貰おうか。」


 そう言うとクリスは見張りの二人へ近づいていき、少し距離をとって呪文を唱える。


「〈スリープ〉」


 クリスが嵌めている指輪の石が白い光りを放つと魔法をかけられた二人は段々と脱力していき、最終的には地面に完全に寝付してしまった。


「安眠魔法さ。本来は不眠症の人にかける魔法なのだけれどね。今のうちに入ってしまおう。」


 シュウたちは塀まで近づいていき戸口に手をかける。ゆっくりと開くが中には誰もいなかった。

 広大な裏庭を走り抜けて教会の裏口に辿り着くと二人は警戒しつつ中に入っていく。


「ここは聖職者たちの生活スペースのようだね。奥に食堂が見える。僕もここまでは入ったことがなかったけれど、司教とは知り合いだ。シュウ、気配察知の調子はどうかな?」


「ここなら範囲も絞れるし大丈夫だと思う。」


 シュウはそう言うと早速周囲の状況を探ってみる。

 だが、シュウが状況を掴む前に食堂とは別の出入口からいきなり大きな影が現れた。


「おぅっ!」


 大男がシュウに殴りかかろうとするが、シュウはこれを寸でのところ躱す。しかし、頬に掠ったようですぐに血が滴ってきた。


「〈アクティブ〉!」


 大男は構わずにシュウに掴みかかり抑え込もうとする。シュウは補助魔法で筋力を上げるが、それでも大男の力がまだ上回っていた。揉み合いながら床を転がっていき、気づけば大男が馬乗りでシュウに覆い被さる体勢となっていた。

 シュウのことを抑え込んだ男が必殺の拳を振り降ろそうとしたところで横から声がする。


「アッガス!?」


「何!?」


 クリスの声に反応した男はシュウの顔面スレスレで拳を止めると、恐る恐るといった具合にゆっくりと顔を横に向ける。


「…クリス?クリスか!久しぶりじゃねぇか。来てくれたんだな!」


「父上からの召喚状もあったからね。それよりもこの状況を説明してほしいんだ。」


「あぁ、何から説明すればいいか。…司教と落ち合おう。あいつのほうが説明が上手いから話もスムーズに進むだろう。とにかくお前が無事でよかった。」


「あの…僕は全然無事じゃないんですけど……。」


 アッガスは下から声が聞こえて訝しむような顔で見おろす。


「おっと、すまねぇな。忘れてた。こいつはお前の知り合いか、クリス?」


「彼はシュウ。アルスカイン特別侯爵が召集命令を出して彼をここに呼んだんだ。謂わば僕はその付き添いだよ。」


 訝しむ顔をしていたアッガスだったが、シュウのことを聞くと一層真剣な表情となり、シュウを睨みつける。


「あ、あの…まだ何か…?」


「そうか、お前が…。お前が幸瀬柊ゆきせしゅうか。」

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