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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
カルカス国編

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第24話 続・街道

 一つ目の宿場町を立ってから一週間が過ぎた現在、僕たちは林の中に引かれた街道を歩いている。


 街道には八つの宿場町があり昨日は農村に泊まったものの、すでに五つの宿場町を過ぎているので道のりは順調そのものと言っていい。

 言っていいのだが、一つ問題があった。


「やっぱり林に入ってから積極的に動くようになってきました。」


「あぁ。僕でもわかる距離まで近づいてきているね。」


「しかし、あからさま過ぎる。囮か?」


「えぇ。本命は六百メートルほど離れた先でこちらを狙っている狙撃手でしょう。矢先に毒が仕込まれていますので避ける際は気を付けてください。」


 今朝、農村を出てからしばらくして尾けられていることがわかったのだ。林に入るまでは道が開けていたこともあり目視できる距離にはいなかったが、僕の気配察知にはしっかりと一定の距離を保って進んでくる一団が映っていた。僕らが林の中へ入るとしばらくして彼らも林の中を走り始めたのである。


「ここまでは魔物に会うこともなく来れていたからツイていると思っていたけれど、その運もここまでのようだね。人は魔物よりもタチが悪い。」


「シュウ、お前は人を殺したことはあるか?」


「藪から棒ですね、ヤッドさん。もちろんありませんよ。」


「そうか。ならばお前は敵の位置を教えてくれるだけでいい。手を汚すのは職業軍人である我々の仕事だ。」


 そう言いながらヤッドさんは手をだらけさせて、尾行者にバレないようにいつでも抜剣できる備えをし始める。オルレアさんとセズさんも殺気が漏れないように気を配りながら相手が襲ってくるタイミングを見計らっていた。


「先行している一人が弓を構え始めました。矢先を見るに、狙っているのは……。クリスさんですね。」


「そうか。狙いがわかれば躱すのは容易だ。オルレア、刺客の対処を頼む。」


 僕が情報を伝えると一呼吸の間をおいて矢が放たれた。しかし、狙いがわかっていれば冒険者であるクリスが避けられないはずものなく、これを難なく躱してみせる。

 それを合図に三人が駆け出す。

 人数と位置は事前に伝えていたので躊躇うことなく詰め寄っていき、それぞれ剣を抜き放つ。オルレアさんは二人を相手に剣を振るうと一瞬で片が付いた。二回素振りをしたかと見間違えるほどの鮮やかな剣閃が描かれると刺客たちは地に伏していたのである。剣の腹で打ち据えて気絶させたので鮮血は出ていない。

 セズさんとヤッドさんも、ほどなくして一人ずつ討ち取る。残るは先行している一人と後方で待機している一人だけだ。


「〈アイスバインド〉」


 僕は二人の刺客に対して『アイスバインド』を唱える。

 見えないとはいえ気配察知で正確な位置が把握できている以上、機動力が大したことのない相手であれば拘束できる。この場を離脱しようとしていた二人はまさか魔法を仕掛けられてくるとは考えていなかったようで簡単に氷のお縄につくこととなった。





「隊長、こいつら冒険者じゃありませんね。俺たちと同じ軍人だ。しかもアルスカイン正規軍の奴です。」


 遺体を調べていたセズさんがオルレアさんに伝える。装備が真新しいこと、剣技が冒険者のそれではなかったことに加えて、うち一人が認識票をつけていたのである。扮装してまで身元を隠したいはずなのにこれでは本末転倒と言わざるを得ない。


「名はシシセッツ・デ・モルドー。そうか、言われてみれば見たことある顔だ。こいつ、モルドー男爵家の次男か。」


 この世界ではファミリーネームを持つ者は限られている。それは貴族の次期当主となる者だけが持たされる特権みたいなものだ。当主は代々使われている名前を受け継ぐが、そうでないものは親から与えられた名前を名乗る。だが、次期当主となるものについてはどこの家の者かわかるようにファミリーネームが与えられるのである。今回のように、次男でも優れていれば長男を差し置いて次期当主とされることは少なくないらしい。


「モルドー男爵といえばメスト子爵が懇意にしていたね。そういえばシュウが召喚状で呼び出されたときメスト子爵が突っかかってきたそうじゃないか。そのときオルレア隊長の技が目と鼻の先まで迫っていたと聞いたけれど。」


「あれはただの脅しです。」


 なんで城の中の出来事を知ってるんだよ……。

 クリスの情報網の広さに恐れ慄くと同時にオルレアさんがさらっととんでもないことを言ったことに愕然とする。脅しだったんですか?僕が防いでなかったら彼の腕、吹っ飛んでましたよ?


「だが、実際に狙われたのは僕だ。この中で一番狙いやすいと思ったのか、それとも……。」


「しかし、わざわざ農村で我々を待ち受けていた理由はなんだ?クリスが目当てであればもっと首都寄りの街道を狙った方が早い。旅の疲れが出る頃合いであるし、準備時間もその分確保できる。」


「さてね。それは捕虜に聞いてみるしかない、か。」


「……。すいません。僕が捕らえた二人ですが、死にました。」


「何?」


「口に毒を仕込んでいたみたいです。急に苦しみながら泡を吹いていましたから。」


「…そうか。ならば、やはり残るこいつらに聞くしかないな。」


 オルレアさんは自身が打ち据えた二人を睨みつけながら冷たく言い放った。


 ◇◇◇


 しばらくして僕たちは再び街道を歩き始めている。


 捕虜の二人からは大した話は聞きだせなかった。

 自分たちがアルスカイン正規軍の兵士であることは認めたものの、詳しいことはすべてシシセッツが握っていて自分たちは賄賂をもらう代わりに言われるがまま手伝うことを約束しただけだという。

 毒を盛って自害した二人をセズさんとヤッドさんが調べたところ、粗悪な装備品が多いのでおそらく野盗だろうということだった。この二人についてもシシセッツが連れてきたので詳しいことは知らないと捕虜は言っていた。

 唯一、この近辺で襲ってきた理由については、その野盗たちの隠れ家が近くにあり、もしもの場合はそこに逃げ込むか増援でもって僕たちを襲うかする計画だと聞いていたそうだ。


「しかし、あの捕虜たち。生かしておいてよかったのですか?」


 街道に死体が転がっていては不便この上ない。本来は次の宿場町まで捕虜と共に運ぶべきなのだろうが、生憎とこちらにはその足がない。加えて、今回の敵はアルスカイン正規軍の兵士だったこともあり、宿場町に駐留している兵士に引き渡して万が一結託したうえで仕返しをしてきては面倒なだけだった。そのため、街道を十分に外れたあたりまで死体を運び集めて傍の木に猿轡を食めた捕虜を括り付けてきたのだ。


「あの状態なら首都まで着いた後に処理しても問題ないだろう。それまで彼らが生きていればの話だけどね。

 それに万が一仲間の野盗が助けたとしても彼らでは組織的な動きはできないと思うよ。そんな連中なら相手にしていても時間の無駄さ。」


「ですが、捕虜が最後に言っていたことは気になります。」


 オルレアさんがクリスにそう言うとクリスは真剣な表情で受け答える。


「農村に着く前に野盗と共にシシセッツが何かを仕掛けているようだった、というやつか。確かに不気味な話だが如何せん情報が少な過ぎる。せめて何を仕掛けていたのかでも分かれば対策のしようもあるのだけれどね。」


 何か、というのは侮れないものだ。仕掛けた事実はあっても手段が見えないので打てる事前策がない。そのうえ目的が分からない以上、警戒を強めるしかないため精神を削られる。捕虜たちからしたら出来る限りの情報を渡すことで見逃してもらおうとしたのだろうが、こんな爆弾を落としていくなんてあの捕虜たちも中々性根が悪いと見える。

 とりあえず僕も気配察知を普段よりも敏感にしつつ警戒に当たることにした。


「……。え?」


「どうした?し…」


『『グガゴゴゴオゥ!!!』』


「な!?こいつはなんだ!?」


「そんな!急に現れるなんて…!」


 いきなり目の前に現れた二体は恐竜のような見た目の魔物だった。ワイバーンにも似ているが鳴き声と形状が違う。翼はなく前足はそこまで大きくないものの後ろ足が異常に発達しており、地を駆けることに長けているようであった。


 僕は動転している中でも皆の位置を把握しつつ小声で〈ルックアップ〉を唱える。


「これは……。アースドラゴン。」


「アースドラゴンだと!?いよいよ以てどうかしているな、この大陸は。こんなのが二匹もいるということはこの近辺は竜の巣でもあるのか?」


「今はそれよりもこいつの対処が先だ。僕とシュウは全員のバックアップに回る。前衛はオルレアに任せる。」


「承知した!ヤッド、セズ。いくぞ!」


 オルレアさんの合図で三人が散開しつつ二体に仕掛けていく。セズさんは左、ヤッドさんは右のアースドラゴンに向かっていき、オルレアさんは少し手前で止まり闘気を練り上げると二体を狙って攻撃を仕掛ける。


「やあぁぁ!!」


 剣先に闘気を集中させて勢いよく薙ぐと横一線の光の刃を走らせる。僕との模擬戦の時に見せた『一閃』である。そのときよりも規模が桁違いで二体が互いに別方向へ逸れても余りあるほど巨大なものだった。


『『ゴルガァァ!?』』


 攻撃は見事二体に命中したものの、そこまでの痛手は与えられていない。どうやら皮膚が相当に硬いらしい。その証拠に次に仕掛けたセズさんとヤッドさんの剣は軽々と弾かれてしまう。攻撃を仕掛けるためにアースドラゴンの足元まできていた二人は剣を弾かれたことで無防備な姿となっていた。そこをアースドラゴンは見逃さず一体は前足で払うようにセズさんを、一体は尻尾を打ちつけるようにヤッドさんをそれぞれ攻撃してくる。


「〈ホーリーシェル〉!」


 クリスが唱えた魔法の効果で二人の周りに半円形の壁が生まれる。聞いたことのない魔法だが、おそらく白魔法というものだろう。オーベロンも僕も使えない魔法なので実物を見るのは初めてだ。


 クリスが作った障壁はヤッドさん側のアースドラゴンの攻撃を弾くことに成功するが、セズさん側のほうは勢いが強かったためか防ぎきれずに割れてしまう。そのままセズさんは林の中まで飛ばされていってしまった。


「はあぁぁぁ!!」


 セズさんが飛ばされたことによりフリーになったアースドラゴンへオルレアさんが仕掛けていく。大振りに振り落とした闘気を纏った剣はアースドラゴンを傷つけることに成功するが、やはり浅い。


「オルレアさん、ヤッドさん立て直しましょう!こちらへ来てください!」


 僕が声をかけると〈ストーム〉を唱えてアースドラゴンを包み込む。アースドラゴンが怯んだ隙に二人は攻撃を避けながらこちらへやってきて迎撃の構えを取る。


「硬いな。私の渾身の一撃でようやくかすり傷とは……。」


「これでは攻める手立てがない。ここは林の中に入って何とか撤退する外ないだろう。シュウ、セズの様子はわかるかい?」


「セズさんは自力で動けないようですが意識はあります。それよりも撤退は避けるべきです。」


「何?だが、あの頑強さをみただろう。倒せない以上は逃げるしか道はない。」


「おそらくあの二体の足は相当の馬力が出るんじゃないでしょうか。仮に林が障害物となって遮ったとしても苦しい撤退戦になると思います。それにこのまま逃げたらセズさんを諦めることになります。」


「セズを諦めるとしても今は護衛対象の安全が最優先だ!私情を捨てねば助かる命も助からん!!」


 ヤッドさんとしてもセズさんを残して逃げるのは不本意なのだろう。興奮とともに哀愁に似た声が聞こえた気がした。


「……皆さん。今から見ることは忘れてください。そしたらきっと僕がこの場を収めて見せます。だから……。お願いします、約束してください。」


「な、なんだというんだ。いったい……。」


 ヤッドさんは混乱しているようでこちらを見てくる。オルレアさんはアースドラゴンの様子を窺いながら何か考え込んでいた。そしてクリスは……。


「……。シュウが頼み事とは珍しいね。こんな真剣にお願いされてしまっては断れないな。それにそんな約束一つでこの危機を抜けられるならいくらでも約束するさ。」


 クリスがそう言うと二人も納得したようで肯いて返してきた。


「ありがとうございます。それではクリスさんはセズさんの治療をお願いします。オルレアさんとヤッドさんはクリスさんの支援を。二体は僕が相手します。」


「何?二匹同時に!?……。いや、目の前にいるのはワイバーン五匹を一人で落とした男だ。飛竜狩りの言うことを信じるとしよう。」


 オルレアさんが聞きなれない単語を口にした気がしたが、気にしている暇はない。アースドラゴンがこちらへ向けて駆け出そうとしていたからだ。


「よし!各自行動開始だ!」


 クリスの一言で全員が動く。それを見たアースドラゴンは二手に分かれて突進してきた。やはり見立て通り地を駆けるスピードは相当のものだ。一体は三人に、一体は僕へと向かってくる。


「させないよ。〈リジェクト〉〈アイスバインド〉」


 僕はリジェクトで突進してきた二体を拒絶すると後方へ弾かれた二体を同時に展開した氷の鎖で封じる。


「やっぱり力はワイバーンよりも強いな。」


 アースドラゴンたちは氷の鎖を引き千切ろうと力を加えていく。そして、間もなくして氷は砕かれ拘束がやぶれてしまう。


「なら力技じゃどうにもならないようにするだけだ。〈クァッグマイア〉」


 拘束が外れたタイミングで今度は足元に泥沼を展開させる。水と土の混合魔法で今考えた技だ。そのまま泥沼とは我ながらネームングセンスは皆無だが、これならば足掻けば足掻くほど深みにハマっていき拘束から抜け出せなくなるはずだった。


『『グッゴォ…!』』


 僕が考案した魔法は思った通りの効果が出ているようで、二体は足を取られて身動きが取れずにいた。


「それじゃあ終わらせてもらうよ。〈ピアッシングファイア〉」


 皮膚が硬いことは見ていたので、念のため貫通力の高い火魔法でトドメを刺す。極太の針を二本生成した僕は狙いを定めて……超スピードで飛ばす。


 見事炎の針が突き刺さった二体はそれぞれ眉間に小さな穴を空けて動きを止めると、そのまま灰になっていく。僕は魔石が沈まないように泥沼を解除すると魔石を拾っておかしなところがないか見てみることにした。


「信じられん……。あの二匹をこうもあっさりと…。」


「隊長、私は夢でも見ているのでしょうか…。シュウが最後に唱えた魔法は裁縫針程度の大きさにしかならないと聞かされていたのですが、その百倍はあるようでした。」


「あぁ、夢ならば覚めてほしいと私も心から願っているよ。あんな規格外の魔法を見せられたうえ、本人は至って平常通りなのだからな。下手をしたらシュウ一人で国家を揺るがすことができるほどかもしれん。」


「そんな!そんなことができるとすれば……。」


「これがシュウの実力ってだけさ。」


 物陰からセズに肩を貸しながらクリスが歩いてきた。セズの怪我は粗方治療が済んだものの、まだ本調子ではないようだ。

 しかし、やっぱり想定通りの反応だな。聞こえないふりして魔石を改めているけど、このままだとこの国を出ていかなくちゃならないかもしれない。どうやってメアリーに謝ろうか…。


「彼がアースドラゴンの拘束に使った魔法はおよそ一般的なものではないね。おそらくは水と土を混ぜたものだと思うよ。そんなことができるのは魔導王とその弟子くらいだと物語には書かれていたけれどね。

 だけど、僕はシュウがどこの誰なのかはあまり気にしていないんだ。僕の仲間も信用しているし、これまで接してきて彼の人となりも何となく分かってきたからね。

 それに彼は冒険者だ。これ以上の詮索はやめて約束通り今見たことを忘れようじゃないか。そうしないと彼、怒って帰っちゃうかもしれないよ。オルレア隊長もこんなことで任務失敗したくないだろう?」


 クリスがそう言うと皆は肯いてこの話をすることを止めた。心の中ではそれぞれ想いがあるのだろうけど、何となくまだここに居ていいと思えて心が幾分か軽くなった気がする。ありがとう、クリス。


「それはそうと魔石を見つめてどうしたんだい?」


「それが、この二体の出現の仕方が変だったんです。表現が難しいんですが、それまで正常に反応していた気配察知にいきなり二体が飛び出してきたような…。召喚されたような感じだったんです。

 それで魔石を調べてみたんですが、見たところおかしな点は見つからなくて。」


「ふむ。魔石が正常となれば疑うべきはその周辺かもしれん。シュウ、二体が出現した位置を教えてくれ。皆で周辺を探ってみるとしよう。」


 オルレアさんの提案で僕は二体の出現場所へと案内する。するとそこには薄っすらとだが魔法陣のような跡が見つかった。


「これは錬金術で使われる魔法文字とは少し違うな。これが転移装置か何かの機能になっているかもしれない。内容を描き写したあとは念のため消してしまおう。

 だが、これをシシセッツが仕掛けたとすると首都も油断できないかもしれない。こういってしまうのは酷だが、認識票も外し忘れるような間抜けにこんな高等な魔法陣を作れるとは思えない。これを授けた人間がいるはずだ。この先はさらに警戒を強めながら進もう。」


 当初クリスが計画していた『のんびり首都巡り』もここにきて不穏な空気を帯び始めていた。

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