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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
カルカス国編

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第23話 街道

 演習場での模擬戦を終えた僕たちは一度、謁見室まで戻ってきた。


「さて。先ほども言ったがお主にはカルカス国の首都ボールドンまで行き、国主アルスカイン特別侯爵と謁見して貰う。もちろんお主に拒否権はないので、これは決定事項だ。

 何用で特別侯爵がお主を求めているかは私にもわからん。だが、ルスト辺境伯からも後押しが届いているので深い理由がお在りなのだろう。召喚状の他にルスト辺境伯からの手紙によれば、これは最重要事項のため正規軍第三部隊に護衛を頼みたいとのことだ。オルレア、頼まれてくれるな。」


「はっ。承知いたしました。して、護衛対象は一人でよろしいでしょうか。」


「うむ。それが、今回の旅にはもう一人、『蒼天の牙』メンバーであるクリスを同行させるように、とある。そのため今回の任務は冒険者二人の護衛だ。」


「……。承知いたしました。」


 オルレアさんは少し戸惑った様子だったが、すぐに承諾をした。

 それもそうだろう。普通、貴族の正規軍が冒険者二人の護衛などあり得ない。そもそも冒険者は護られる対象ではなく、護る側の人間だ。命を賭して護る意味を考えるとこの任務は不可思議だらけなのである。それでも即座に了承したのはルスト辺境伯からの依頼だからに違いない。


「あの、私からもよろしいでしょうか。」


「なんだ、シュウ。申してみよ。」


「アルスカイン特別侯爵様のご命令であれば謹んでお受けしますが、出立に二日ほど頂きたいのです。

 私は普段ボガード伯爵に雇って頂いておりますので、長期で離れるとなれば依頼受注の取り消しをせねばなりません。そのお時間を頂きたいのです。」


「なるほど、もっともであるな。よろしい。では、出立は三日後の朝、二つの鐘がなる頃とする。それまでに準備を終えて正門まで来るように。」


 こうして僕はこの会議からようやく解放されるのだった。


 ◇◇◇


 ――――――ルスト街 外壁正門


 三日後の朝、僕とクリスはルストを覆う城壁の正門まで来ていた。ルストに着いたときとは反対側の門である。何故こちら側が正門と呼ばれるかというと、ボールドンへ行くにはこちら側の道を使うほうが早いからなのだそうだ。


「しかし、クリスが『蒼天の牙』のメンバーだなんて驚いたよ。留守番してるとは聞いていたけど、まさかマスター代理だなんて。」


「すまない。隠すつもりはなかったんだけどね。アッガスが不在のときは僕かダラスが代理を頼まれてるんだ。

 チョボとガジは個人で依頼を受けることなんて滅多にないから、まとめ役のダラスが二人を連れて行くことのほうが圧倒的に多いけどね。」


「じゃあ今回はダラスが街に残るんですか?」


「そうだね。依頼から帰って早々に伝えたら、あからさまに面倒そうな顔で駄々を捏ねていたよ。あれでも事務仕事はできるほうなんだけれど、性分に合わないらしい。」


「ダラスらしいですね。」


 そんな他愛もない話を二人でしていると冒険者風の格好をした三人がこちらへやってきた。


「早かったな。待たせたようですまない。」


 三人のうち一人は女性で皆一様に剣を佩き革鎧を着込んでいる。一見、思い思いの装備のようだが、使い古された形跡がなく所々に揃いのアイテムが使用されていた。三人が同行する正規軍の護衛メンバーなのは間違いないだろう。


「いや、僕らもいま来たところさ。しかし、オルレア隊長自ら出張る必要はなかっただろうに。」


「いえ、これもルスト辺境伯からのご命令ですので。」


 オルレアさんとクリスのやり取りを見ていると、どうやら二人は知り合いみたいだ。普通は冒険者が騎士に対して敬語を使うと思うのだけど、これを突っ込むとプライベートなところを聞くようで悪いと考えて黙ることにした。

 しかし、オルレアさんは声だけでなく素顔も凛々しい。そして緑の瞳に緩やかなウェーブがかかった赤毛の髪がとても似合っている。前回会ったときはプレートメイルを着ていてわからなかったけど、革鎧からはとても女性らしい体つ…いやいや!過去の僕が囁いている!これ以上は身の危険を感じるので止しておこう。


「まだ二つの鐘は鳴っていないけれど、揃ったようだし出発しようか。」


 クリスはそう言うと見届人であるバージェ伯爵の従者に声を掛けてから門をくぐっていく。僕たちもクリスに続いて首都ボールドンへ向けて出発した。


 ◇◇◇


 それから歩き始めて少し経った頃、僕は暇つぶしにクリスへ話しかける。


「そういえば、ボールドンへの道のりはこの街道を進めばよいと聞きましたが、ルストからはどのくらいの距離になるんですか?」


「ルストからボールドンまではこの街道を歩いて二週間程度の距離になるかな。馬を使えばもう少し早く着くこともできるけど、今回は特に時間指定もないからのんびり行こう、っていうわけさ。

 街道にはいくつか宿場町があるから体を休めながら行くとしよう。ただ、ときには農村で間借りするときもあるから全てが快適な旅とはいかないだろうけどね。」


「バーグ村には宿屋がありましたが、他の村にはないんですか?」


「バーグ村は特別さ。あの村は醤油や砂糖の原料を仕入れるために大店の使用人がやってくる。だから村人のために開いていた飲食店を女将さんが宿屋にしたんだよ。ただ、その使用人も滅多に来ないから使い方としては以前とさほど変わらないらしいけどね。」


 確かに僕たちが泊まっていたとき、他の宿泊客はいないようだった。まぁ、あれだけ村人たちに使われていれば問題ないということだろう。


「そうそう。最初に泊まることになる宿場町には大浴場があるんだ。この先には無い施設だから堪能しておくと良いよ。」


 大浴場!ついに久しぶりのお風呂にありつける!


 実は帰着の里でもお風呂には入っていた。何を隠そう、僕が作ったのだ。

『クレイウォール』を応用して小さい湯船を作って、その中にお湯を張る。水を張ってから火魔法を使っていては効率が悪いので、火と水の混合魔法で始めからお湯を入れて出来上がりである。僕が旅立つときに解体するか迷っていたら里の皆からぜひ残してほしいと懇願されたほどの出来だ。

 混合魔法ありきで設計したので、皆では水を張ることはできても火魔法で温めることができない。そのため薪でも湯を沸かせるように一部改良しておいた。これならばオーベロンでなくても使えているはずだ。


 と、まぁそんなわけで、里にいるときは風呂にも入れていたものの、旅に出てからすでに一カ月以上が過ぎている。ルストの宿屋ではこっそり混合魔法でお湯を使用していたが、湯気が出るので多用はできずにいたし湯船自体がないのでお湯も張れなかったのだ。


「それは楽しみですね!その宿場町にはいつ頃着く予定なんですか?急いだほうが良いのではないですか!?」


 僕の食いつきように対して引き気味の四人。え?皆楽しみじゃないの?


「ふふふ。シュウは珍しいものが好きなのだな。私も何度か使ったことがあるが、浴場とは良いものだぞ。楽しみにしているといい。」


 オルレアさんに続いて他の三人も賛同の声を上げる。

 そうですか、皆さん体験済みということですね。どうせ僕は田舎者ですよーだ。






 僕が年甲斐もなく不貞腐れていると今度はクリスが僕に話しかけてきた。


「それはそうと、ボガード伯爵はよくシュウの受注取り消しに応じたね。娘一筋の彼のことだから受注休止扱いにしてボールドンから戻ってきたらまた働かせるのだと思っていたけれど。メアリー嬢を上手く丸め込んだのかな。」


「うーん。丸め込んだってわけじゃないんですが…。クリスさんの言う通りボガード伯爵からは最初、戻ってきても無理に働く必要はないから籍だけは置いてくれと言われました。

 ボガード伯爵としては僕のことを束縛するようなことはしたくなかったみたいですが、僕が町から離れることを知ったメアリーお嬢様が泣きわめいて部屋から出てこなくなってしまったんです。だからボガード伯爵に雇われている事実を作っておくことでいつでも会える、とメアリーお嬢様に納得してもらおうと思ったようです。

 僕はメアリーお嬢様の部屋まで行って宥めることにしたんですが、これが思いの外大変で…。一日かけて機嫌を直すようにお願いして、お土産を持って必ず会いにいくことを約束することで漸く納得してくれました。しかし、何であんなに懐かれたのか僕にも良くわからないんですよね。」


「それはきっとメアリー嬢が君と兄上とを重ねているからだろうね。」


「メアリーお嬢様ってお兄さんがいるんですか。」


「あぁ。三年前の戦争で亡くなってしまったけどね。

 メアリー嬢は兄上のことを大変慕っていたが、兄上が家に戻ってくることはできなかった。だから余計にシュウが離れていくことを嫌がったんだと思うよ。」


 戦争に行って帰ってこなかったお兄さんと重ねたわけか。

 現代っ子の僕としては経験したことのない気持ちだから全てわかるとは言えない。けれど、例えば不慮の事故で親しい人が急死してしまったと思えば、メアリーお嬢様の気持ちも少しは想像できる。


「そうですか。それじゃあ、絶対に会いに帰ってあげないといけませんね!何をお土産にすればいいか、今から考えておかないと。」


 仕方なしに約束したことだったけど、絶対に違えるわけにはいかないと決意を新たに僕は街道を進んでいく。


 そして、日が暮れかけたところで一つ目の宿場町に着いた。


 宿場町は柵や外壁がなく、建物が道に沿って隙間なく並び立っていた。何となく時代劇に出てきそうな作りをしている。クリスが言うにはこの並んでいる建物すべてが食事処を兼ねた宿屋なのだそうだ。そして、道を進んでいくと一際大きい建物が見えてきた。


「さぁ、シュウ。お待ちかねの大浴場はここだ。」


 その建物は軒並みから少し外れた形で建っており、屋根には煙突がある。煙を上げているということは営業中ということだろう。

 僕たちはとりあえず宿の確保を済ますと、それぞれ自由行動をすることになった。そうなれば行くところは一つ!風呂に入ろう!


 ◇◇◇


「いらっしゃいませ。入浴料はお一人様、銅貨五枚になります。」


 建物に入るとすぐにカウンターがあったのでそちらへ行くと受付の人が教えてくれる。この世界にはレンタルタオルのようなサービスはなく、単純に入浴するだけでかかる値段が銅貨五枚なのだとか。先ほど宿屋で宿泊料を聞いたときは一泊二食付きで銅貨六枚と言われたので、それと同等の価値がこの風呂屋にはある、ということだ。

 それとこの世界の風呂は必ず裸になる必要はなく衣服を身に着けたまま入っても問題ないとのことだ。ただし、衣服は必ず洗濯をして、清潔な状態のものと店員が判断したものに限るという。だから利用者は入浴用の服を持参する場合が多く、無い場合は裸で入る人もいるらしい。ちなみに入浴用の服は買うこともできる。


「色々と教えてくださりありがとうございます。それで男湯はどちらですか?」


 見たところ入口が一つしかないので確認する。


「おとこ、ゆ…ですか?申し訳ありませんがここにはそのような施設はありません。」


「へ?じゃあ時間帯で男女が入れるタイミングが違うとか?」


「いえ、ここは一般的な大衆浴場ですので、そういったルールはありません。」


 つまり……。混浴ですか!?もしかして、だから着衣ありっていうこと?

 いや、帰着の里でも皆薄い浴衣みたいな恰好をして入ってたし、これがこの世界のスタンダードっていうことか。しかし、危なかった…。知らないまま裸で入っていたら赤っ恥をかくところだった。


 ここまできて引き返すこともできず、とりあえず入浴用の服を買って入ることにした。服だけで銅貨五枚取られたよ……。


 タイミングがよかったようで脱衣所には誰もいない。さっさと着替えてちゃっちゃと風呂に入ってしまおうということで、僕はこの世界にきてから最速となる早着替えを行い浴場のほうまでいく。

 さすがに利用客がいない、ということはなく大浴場にはそれなりの人数が浸かっていた。まだ着衣状態なのが救いだが、濡れた衣服は肌に張り付くので目のやり場に困ることに変わりはない……。できるだけ視界へ入れないように俯きながら浴槽に入るとすぐに誰かが声をかけてきた。


「あれ?あなたはオルレアさんのところの……。」


「あぁ、自己紹介が遅れたな。俺の名前はセズだ。よろしく頼む。」


「お願いします。確かオルレアさんは少し鍛錬するって言ってましたが、セズさんは一緒じゃないんですね。」


「任務中の鍛錬は基本的に一人でやるんだ。オルレア隊長が鍛錬で俺が休息をしているから今はヤッドが任務に付いてる。三人揃って任務から離れちゃ、いざ護衛しなきゃならないときに役に立たないからな。野営や宿場町では分担して体を休めておくようにしてるんだ。」


「なるほど。合理的に考えられてるんですね。

 しかし、失礼かもしれませんが、セズさんはあまり貴族らしくないんですね。貴族の方と話すと大抵は壁みたいなものを感じますが、セズさんやオルレアさんは初対面でも親しくしてくださるので。」


「それは俺が貴族じゃないからな。」


「え?騎士団に所属してるのに?」


「俺だけじゃない。ヤッドやオルレア隊長も平民の出だ。俺たちが所属する第三部隊は平民を集めた新設部隊でな、オルレア隊長が手柄を立てたときに設立されたんだ。」


「へぇ。それってもしかして三年前の戦争のときですか?」


「そうだ。元々騎士団には平民でも入団できる規約があるから平民出身の奴もそこそこいる。だが、これまで昇進できるのは貴族出身の奴だけだった。そんなわけで、三年前に魔導連邦国に属していた小国がカルカス国に攻めてきたときは俺たち三人もそれぞれ別の隊に所属して貴族の隊長の指揮で戦っていたんだ。

 だが、戦争の内容はあまり芳しくなかった。特にアルスカイン正規軍の奴らは動きが悪くてな。すぐに圧されて孤立状態になっちまった。救援に向かったのがオルレア隊長が当時所属していた部隊だったんだが、そこでもアルスカイン正規軍の奴らが足を引っ張ったもんだからオルレア隊長がいる部隊も窮地に追いやられたんだ。

 しかし、類稀な才能を持つオルレア隊長は諦めなかった。一人で敵を圧倒すると、押し返すどころか敵の大将格と一騎打ちまで持ち込んで討ち取っちまった。そして、この出来事が終戦のきっかけを作ったんだ。その功績が認められてオルレア隊長は騎士爵を得た。そして平民を中心とした部隊が新設されたってわけだな。」


「すごい人物なんですね、オルレアさんは。」


「そうさ。そのときもう一人活躍したダラスとともに英雄と言われてるくらいだからな。」


「ダラスもその戦争に参加していたんですか。」


「あぁ。そのときは冒険者と農夫たちをかき集めたアルスカイン従軍兵団って部隊に所属していたんだが、守っていた地域も激戦区だったうえに隊長を務めていた奴がよろしくなかった。所謂、野盗上がりの奴で守るべき自国の民家を襲って盗みや人攫いをしていたのさ。

 それに激怒したダラスが隊長の首を刎ねたことで、さらに敵軍に押し込められると予想されたが、その予想を裏切りダラス指揮のもと敵軍を押し留めて援軍がくるまで耐え抜いたんだ。本来は軍法会議ものだが、そもそもダラスは軍人じゃないことと、隊の規律を整えて自国民の安全を確立させたことで人民からの信頼も厚かった。

 結局、ルスト辺境伯からの進言もあってお咎めなしになり、それ以来、ダラスはカルカス国民から英雄と呼ばれてるってわけだ。もっとも北部じゃ軍人と冒険者に嫌われてるみたいだがな。」


 そんな話があったなんて知らなかった。だからバーグ村であんなに人気だったのか。


「なんだ、ずいぶん懐かしい話をしているな。」


 ザバっと湯舟に浸かる音と共に凛々しい声がする。なんと、オルレアさんが入浴にやってきたのだ。


「隊長、鍛錬は終わったんですか。」


「あぁ、今ヤッドが待機中だ。お前もそろそろ任務に戻れ。」


「了解です。それじゃあな、シュウ。明日からもよろしく頼む。」


 そう言ってセズさんは出ていくが、これは非常にまずい!他にも客がいるとはいえ、オルレアさんと二人で入浴など小心者の僕には色々と耐えられない……。だから待って、セズさん!!


「ん?どうした。顔が赤いようだが逆上せたか?」


 そう言ってオルレアさんが近づいてくる。湯に浸かったことで体のラインが……!これはいよいよもって不味い!!


「す、すいません。ち、ちょっとくく、クラクラするのぉでこの辺で、し、失礼しまぁす!!」


 僕は声を上擦らせながら弾けるようにその場から逃げ出すのだった。

本日2:00amに次回【第24話 続・街道】を投稿します。

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