第22話 召喚状
【エクロキア大陸中央 ナインフォセア王国ツィワン領】
「バカな!」
ジキアスは激昂のあまり、手に持っていたグラスを使用人に投げつけて叫んでいた。
ジキアスはカーンの従者である。勇猛果敢な人物というよりは索敵や策謀に長けており、裏工作が得意というのが自他ともに認めている評価であった。今回のエクロキア大陸進出はカーンの独断であるが、自身の能力を存分に生かせるチャンスとして同行してきたのである。
そんなジキアスは、現在ある策謀をカーンとともに巡らせている。とはいえ、実行部隊はジキアスが統括しているので、ほぼ全てを彼の采配で決めていると言ってもよかった。その中でジキアスは気になる点があった。それはワイバーン二体がフェボーデ山から帰らなかったことだ。
ジキアスは眷属であるワイバーンを自在に操ることができる。それのみならず、自身の魔力でマーキングしておけば、現在地や生死の確認に加えて簡単な命令まで遠隔で伝えることができる、種族の中でも稀有な存在であった。そのためカーンからの信頼も厚く重宝されている。
その彼が操る個体が、今まで何の問題も発生していなかった地域で同時に二体もやられたとなれば気になるのも仕方がないというものであった。そのため、カーンからの命令にはなかったが、ジキアスの独断で索敵隊を編成してフェボーデ山まで差し向けていたのである。
「カーン様には捨て置けと言われはしたが、念のために仕向けてみて正解だったかもしれん。愚鈍なワイバーンでも群れになれば一個中隊を根絶やしにすることも容易い。それが最弱の大陸において、しかもフェボーデ山に着く前に全滅など信じがたい。
最初こそフェンリルが目覚めたかと危惧していたが、やはりおかしい…。あそこの統治国はカルカス国であったな。これは私自ら確かめに行ったほうがよさそうだ。」
ジキアスは頭の回転こそが最大の武器である。ジキアス自身もそのことは十分に承知しているため、熱した頭を何とか冷やし新たな策謀を巡らせるのであった。
◇◇◇
「それで?君が現着したときにはワイバーンが何故か仲間割れを始めていて、物陰に隠れていたら最後の一匹も瀕死寸前だったためトドメを刺した、と。……。シュウ、君は嘘が下手だって言われないかい?」
僕は今、冒険者ギルドのギルドマスターが使う執務室にいる。応接用ソファの向かいに座るのはクリスだ。クリスは副マスターというわけではないのだが、ギルドマスターが不在の際にギルドの取り仕切りを度々任されているのでマスター代理として執務室を使っている。
そのクリスに昨日の顛末を報告しているのだが……。全然信じてくれないのである!
「そ、そんなこと、い、言われたこと、ない、ですねぇ……。」
僕としては真顔で受け答えているつもりなのだが、声が上ずっているので平常心でないことはバレバレだろう。しかし、これも今後の生活のためなので、自分で作ったストーリーを完結させるべく戦っているのである。
「はぁ。シュウ、君のことはダラスからも聞いているし、信用に足る人物だとも思っている。昨日接した際に感じた思いやりも本物であると僕は信じたい。だからこそ、まだ何か僕に報告していないことがあれば今教えてほしいんだ。」
ゔっ!人情で攻めてくるとは……。こやつ、やりおる!時代劇だったら名代官。うんたら山の金ちゃんだよ、クリス君。だが、僕にも引けないわけがあるんだ、許してくれ!クリス君!
「いやぁ、な、何もなぁいですけどねぇ…。…あ!そうだ!あの魔石はどうなったんですか!?」
僕はこの苦しい状況を打破するために話題を逸らす作戦に出た。
「ワイバーンの魔石か。あれはどれも中々の大きさをしていたし、内包している魔力も申し分なかった。内一つはシュウが仕留めたグレートボア並みだったから換金に時間がかかるだろうけど、他の四つだけでもかなりの額になるだろうね。
しかし、討伐したのが君でないのであれば、ボガード伯爵への献上品となるかギルドのプール金になるかな。僕としては一番の功労者へ手渡したいところなんだけど、シュウが討伐していないのなら仕方ないかぁ。あぁ、せっかくの金貨が、なぁ。」
クリスは横目で僕のほうをチラ見しながら甘言を唱えてくる。くっ!?こいつ、金ちゃんのほうだけでなく、悪代官のほうまで熟せるのか…!
「ん?顔を顰めているようだけど、どうしたんだい?具合でも良くないのかな。」
この演技派貴公子め!
そんなやり取りをしていると扉をノックする音が聞こえてくる。クリスが返事をすると扉を開けて入ってきたのはセルマさんだった。僕はこのどうしようもない空気をどうにかしてほしくて祈るようにセルマさんを見つめる。助けて、女神様!
当のセルマさんは見つめられる意味がわからず戸惑い顔をしつつ、クリスに報告を始める。
「マスター代理、先ほど城から使いの方がやってきてシュウ様宛にこちらを届けていきました。」
セルマさんが手渡した封筒を確認してクリスがつぶやく。
「…。双頭の鷲の紋章、か。シュウ、すまないが改めるよ。」
クリスは僕が返事をする前にペーパーナイフで開封して中身を読み上げる。クリスが机に置いた封筒には双頭の鷲のシンボルが押された蝋が付いていた。
「……。ふむ。んー。……。うーん。」
クリスが珍しく悩みだす。悩んでから諦めたように口を開いた。
「シュウ、この封筒は間違いなく君宛だ。城からの召喚状だよ。」
「へ?召喚状って貴族が平民を直々に呼び立てる、あれですか?」
「その、あれだね。手紙には明日の三つの鐘が鳴ったら城門前まで出頭するように、ってさ。」
「内容は何なんでしょう…。」
「一つは間違いなく昨日の件だろうね。もしくは他にも用事があるのか…。セルマ、これはどなたの使者が持ってきたのかな。」
「バージェ閣下です。」
「なるほど、僕がいることも織り込み済みなわけだ。
…シュウ、とにかく城からの召喚なら君に拒否権はない。遅れずに出頭することをお勧めするよ。
それよりも、城でもさっきの話をしたらバージェ閣下は激怒するだろうね。そうなったら不敬罪になるかもしれない。あぁ、シュウが本当のことを話してくれれば僕も力になれるのになぁ。」
ううっ…。逃げられないですよね、やっぱり。でも確かに城のお偉いさんにこの話をしても信じてもらえないのは目に見えている。ここは詳細を省くにしてもクリスにはある程度本当のことを言うべきだろう。
「……。わかりました。クリスさんと別れた後に本当は何があったかをお話します。」
その後、上級魔法を使って拘束や攻撃をしたこと、気配察知で相手の行動の予測がたったので上手く立ち回れたことを出来るだけ大袈裟にならないように気をつけながら伝える。
僕の話を確認したあと、クリスはよりシンプルで簡潔、且つ、悪目立ちしない伝え方を教えてくれた。それだけでなく便箋を取り出してサッと手紙を書くと召喚状とともに手渡してくる。
「僕も一応当事者だからね。君の話が事実であると証言する内容を書いておいた。先ほどの内容を話した後にバージェ閣下へ渡せば納得してくれると思うよ。」
そう言って差し出された手紙と召喚状を受け取ると僕は宿まで戻っていった。
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次の日、三つの鐘が鳴る前に僕はルスト街中央にある城まで来ていた。
見た目は元の世界で見たことのある西洋風の城で、さすがは堅牢な作りをしている。城に入るには使用人用の小さな出入口以外に正門があるだけなので、迷わずに城門前まで来ることができた。
三つの鐘がなったと同時に門番へ声をかけると予定が伝わっているようで、すぐに城内に通してくれた。
案内役の衛兵に従って歩いていくと雅びやかな造りをした扉の手前で止まる。扉の前には何名かの衛兵がいて、その中でも中核であろう人物に案内役が報告すると、その人物は僕に声をかけてきた。
「そなたが噂の冒険者か。案外普通の見た目をしているのだな。まぁ、良い。これから謁見するのは、この南部で統治を任されている格式ある由緒正しい身分の方々ばかりだ。決して無礼のないように。」
その人物は腰に佩いている剣の柄をグッと握りながら僕に注意を促す。無礼があれば即刻斬る、ということですね、これは…。
しかしこの人、兜を被っているのでわからなかったけど、声からして女性だ。
この場を取り仕切ることが名誉なことなのかは知らないが、現代男子の僕からすると女騎士など憧れそのものである。強く凛々しい女性ってそれだけで魅力的ですよね。
ゲームやアニメでしか存在しないものかと思っていたけど、実際に目の前にいるのだからこの世界ではポピュラーなことなのかもしれない。そういえばシルフィードも剣術の達人だったし。里の皆、元気かな…。
「呆けた顔をしてどうした?そろそろ時間だ。中に入るぞ。」
女騎士はそう言って僕を扉の前に連れていく。
「ルスト正規軍第三部隊部隊長オルレアです。冒険者シュウを連れてまいりました。」
扉の前で待機していた衛兵が手に持った長槍をノック代わりに二回床へ打ちつけたあとにオルレアさんが宣言すると扉の内側にいた衛兵たちが扉を開く。中にはレッドカーペットのような絨毯が奥まで続き、その横を十名ほどの文官らしき人物たちが挟む形で並んでいる。突き当りには如何にもな椅子が置いてあるが座っている者はいない。
オルレアさんとともにレッドカーペットを通っていくと一番奥に立っていた人物が立ちはだかる様に前に出てきた。
「待っておったぞ、シュウ。私はルスト市政執行官バージェ伯爵である。よくぞ召喚状に応じてくれたな、感謝する。」
オルレアさんが途中で止まり跪いたので僕も倣うと、バージェ伯爵が話し始めたので、昨日クリスさんから習った礼儀作法通りに僕も自己紹介をする。
「冒険者シュウ、召喚状に応じ馳せ参じました。この度は、私のような下賤な者にご配慮くださり、深謝いたします。斯くなる上は詳述する所存故、何なりとお申し付けくださいませ。」
「うむ。礼儀もできているようだな。どなたかに教わったのかな。」
バージェ伯爵はその厳つい顔立ちに似合わず、そこまで威圧的ではない。しかし、この後のことを考えると和やかなままとは思えないので油断なく答える。
「はい。私には勿体ないことに、頼りになる友人たちに恵まれているものでして。この作法もその友人から指導していただきました。」
「ふむ。それは良い巡り合わせであったな。良朋は大事にされるがよい。」
「はっ。ありがとうございます。」
「して、本日お主を呼んだ理由だが、一昨日のボガード伯爵邸での出来事を聞きたい。すでにボガード伯爵からも報告は受けているが、何分信じがたい報告も多い。このエクロキア大陸でワイバーンの群れなど私の知る限り五百年前の資料にも残っていないことだ。
なので、当事者であるお主から直接聞く必要ができたということだ。話してくれるな、シュウ。」
「はい、もちろんでございます。」
そこから僕はクリスに添削してもらった内容をバージェ伯爵へと伝える。終始無言で聞いていたバージェ伯爵だが、僕が話し終わった際に手紙を手渡すとサッとその場で読んでから一つ肯いて口を開いた。
「うむ。仔細よく分かった。しかし、お主の言うことを疑うわけではないが、話に出た通りの実力があることを証明せねばこの場にいるものも納得はできまい。
気配察知でワイバーンの攻撃をかわし、一瞬でも魔法で拘束するとは駆け出しの冒険者では出来すぎた話だ。しかも、聞けばお主はブロンズになってまだひと月も経っていないという。皆が納得できるように手っ取り早くこの場で実演してもらいたいが…。どうだろうか、シュウ。」
「承知いたしました、バージェ伯爵閣下。それでは本日城に務めておいでの皆様のご昼食がラドの香草焼きであることを言い当てればよろしいですか。それとも、財務局の一番右上にある部屋をお使いの方が今しがた金板を懐に入れたことのご報告がよいでしょうか。
もしくは…。バージェ伯爵の後ろにある奥の間で、弓を構えながら私の一挙手一投足を見ておられる方がいらっしゃることをお伝えすれば満足いただけますでしょうか。」
僕が鋭く指摘するとバージェ伯爵はハッとした顔を見せた。
それを見た文官の一人が弾けたように部屋を飛び出していく。もしかしたら財務局のお偉いさんなのかもしれない。
「なんと…。隠密のスペシャリストであるマクマクまで見抜くのか。……。マクマク、ご苦労であった。もう下がってもよいぞ。」
バージェ伯爵がそう言うと奥の間にあった気配が遠のいていく。移動速度も中々のものだ。
「それだけの察知スキルがあれば、ワイバーンの攻撃を避けられたというのも納得だ。シュウ、試すようなことをしてすまなかったな。これでお主への質疑は終了とする。」
「お待ちください、バージェ伯爵。」
バージェ伯爵がこの場を締めようとすると、おそらくは末席の位置に当たるだろう後方から声が上がる。
「どうなされた、メスト子爵。」
メスト子爵は丁度僕の後ろに位置するように前に出て進言を始める。
「この者が言っていることは、まだ信用に足るとは言えません。食事は厨房からの香りで推測できることですし、財務局のことは口から出まかせの可能性もあります。それに奥の間の隠密にしても運よく言い当てただけということもあり得ます。
この者は自分で言ったではありませんか。ワイバーンの攻撃を察知スキルで躱した、と。で、あれば、こちらのオルレア嬢の攻撃も難なく躱せるのが道理。どうでしょう、ここは検証のためにも死合ってみては。」
メスト子爵は僕とオルレアさんに見えない位置にいることを言いことに腹黒く歪んだ笑みを浮かべながら殺し合いを進言する。だから見えてるんだってば!
「しかし、オルレアはルスト正規軍の中でも指折りの使い手だ。シュウの調子如何では万が一もあり得る。それに辺境伯が不在の今、そのような決定を我々でする権利はない。」
「そこは問題ございません。辺境伯が不在の際のご裁量は、ご子息のクリスチャーノ様が決断されるのが習わし。こんなこともあるのでは、と危惧されたご子息様よりこちらを預かっております。」
そう言ってメスト子爵は懐から封筒を取り出し従者へ渡す。互いの従者経由で受け取ったバージェ伯爵はあからさまに不愉快そうな顔で中身を読んでいった。
「おい!」
読み終わった伯爵が声を上げるとどこからか別の従者が現れる。そして手紙を改めてバージェ伯爵へ報告する。
「こちらの筆跡は間違いなくクリスチャーノ様のものかと。」
「そうか…。ご苦労であった。」
バージェ伯爵は従者を下がらせると封筒を改める。封筒には双頭の鷲の紋章が封蝋に押されていた。
「この手紙にはメスト子爵の進言を重んじること、とある。」
「それでは私の進言、聞き届けていただけますな。本日これから、冒険者シュウの実力を測ると致しましょう。」
バージェ伯爵は渋い顔をしているが、どうやら覆ることはなさそうだ。日を改めて、ということならよかったが、これからとなると面倒だったりする。今は絶賛昼飯時なのだ。あぁ、お腹減ったな…。
◇◇◇
結局メスト子爵の進言が覆ることはなく、演習場へ移った僕はオルレアさんと対峙している。
オルレアさんもいきなりのことで戸惑っている様子だったが、いざ剣を抜くとその迷いはさっぱりと消え去り油断のない構えを取っている。
「シュウ。こうなっては不本意だが、せめて互いに悔いのない戦いをしよう。」
オルレアさんはそう言うと殺気を隠すことなく僕へと放ってくる。僕としてはこんなどうでも良いことで命を失うのも殺すのもごめんだ。
「バージェ伯爵、メスト子爵。試合を行う前に一つ提案があるのですが、よろしいでしょうか。」
「良い、申してみよ。」
バージェ伯爵はメスト子爵が反応する前にすぐさま答える。
「ありがとうございます。
こちらの試合は私がワイバーンの攻撃を躱すことができたのかを確かめるもの。それであれば、私からオルレア様に危害を与える必要はございません。オルレア様の攻撃を五分間、傷一つなく躱しきれれば私の話が偽りでないとお認めいただけませんでしょうか。」
「ほう。ルスト正規軍の秘蔵っ子を相手に傷一つなくとは。その条件であればルスト軍にも痛手はなかろう。メスト子爵もそれで問題ないな。」
「はっ。もちろんでございます。ただし、シュウよ。かすり傷一つでも付けば偽りを騙ったとして極刑は免れぬことはわかっているな。」
「重々承知いたしております。」
「それならば良し。では、両者。はじめ!」
バージェ伯爵が始まりの合図をすると同時にオルレアさんが突っ込んできた。
オルレアさんは身体強化の補助魔法はしていない。それでも常人では出せないスピードで僕の懐へ入ろうとしていた。
「やぁっ!」
気合とともに振り上げた剣は鈍い光を伴って僕の銅を二つに割ろうとする。しかし、それを僕は後方へ飛びのいてスレスレで躱す。正直に言えばもっと余裕で避けられるのだが、こういった演出がないと喜ばない人物が約一名見ているので仕方がない。
その後もオルレアさんの猛攻を寸でのところで躱していく。そして始まってから四分が経ったところでオルレアさんは最後の一撃を繰り出すために構えを取った。
腰を捻り、両腕を高く上げて背中で剣を隠すと、橙色のモヤみたいなものが体から立ち上っていく。これはジルが使っていたので知っている。所謂、闘気というやつだ。
魔導師は生命エネルギーを魔力に変換してトリガーとなる呪文と共に魔法を発動する。それに比べ、魔法が使えない剣士や闘士といった戦士業のものは生命エネルギーの使い方を魔導師のそれとは少し変化させて己の身体強化や身に着ける道具への付与効果として使っている。
例えば木の盾があるとして、闘気を操れる者が持てば鋼の剣でも盾を傷つけることなく跳ね返すことができる。例えば闘気を操る者が剣で斬りつければ豆腐のように対象を切り裂く。そして、これを応用すると魔法のように闘気を飛ばすことができるという。
魔法と違う点は詠唱が要らないことと燃費が頗る良いことだろう。もちろん込める闘気によっても異なるが、魔導師は魔力を魔法に変換する際、どうしても魔力の余剰分が出る。この余剰分は次の魔法に回すことができない法則のため、魔導師は余剰分を失くし、出来る限り効率の良い魔法を繰り出せるように修練を重ねるのである。
オルレアさんは十分に闘気を練りこむと剣に集中させていき、一気に振り払った。
「一閃!」
刃のように鋭い光を放った極太の闘気が迫ってくる。距離が近かったため、わざとでなくても避けるのがギリギリになってしまった。しまったが、これも難なく躱しきる。
しかし、極太の闘気は衰えることなく観衆のほうへと向かっていく。
「〈マジックウォール〉」
僕は咄嗟にこれを障壁で防ぐ。障壁の前にはメスト子爵がおり、切り裂かれそうになった彼は涙目になって腰を抜かしていた。
「そこまで!五分が経った。見たところシュウは傷はおろか、服さえも綺麗そのものだ。これでシュウの言葉が偽りでないことは証明されたな。
以上でこの件は決着とする。両者ご苦労であった。」
オルレアさんと僕は頭を下げてその場を去ろうとする。しかし、バージェ伯爵は僕を呼び止めて他にも用事があると言い始めた。
「実はお主を呼んだ理由は、どちらかというとこちらが本命なのだ。
冒険者シュウよ。お主にはカルカス国国主アルスカイン特別侯爵から首都ボールドンまで出頭するよう召集命令が出ている。」
…。あぁ、これはまた厄介ごとな予感……。
気配察知は便利機能のようですが、これはシュウの習熟度が他よりも優れているためです。




