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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
カルカス国編

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第14話 冒険者

 刻は草原にいた二人が驚き慄く少し前に遡る。


 ダラスは一人リトルボアを追いかけ草原を走っていた。

 筋骨隆々とした体躯であるダラスだが、片手に身の丈ほどの大剣を肩で担ぐようにして持ちながらも走る速度は突進を得意とするリトルボアの速度に負けていない。

 負けてはいないが同時に追いつけてもいなかった。


「この、ちょこまかと逃げやがって!」


 このままでは埒が明かないと踏んだダラスは大剣を両手持ちに切り替え、頭の位置から振りかぶるようにして薙いだ。

 すると、大剣から発せられた光が剣の軌道を辿るように線を作り、そのまま真っ直ぐに飛んでいく。その光の線は的確にリトルボアを捉え、リトルボアの後ろ足に直撃するに至った。


 後ろからの脅威に気づいていたものの避けきれずに手傷を追ってしまったリトルボアは、前に転がるようにして移動を止める。

 ダラスは好機と見てすかさずリトルボアに近づいていき一気にトドメを刺そうとするが、リトルボアもタダでは殺られまいと上体を持ち上げ咆哮とともに魔法陣を作り出す。リトルボアの目の前に現れた魔法陣から拳大の礫がいくつも飛び出てダラスへと襲いかかった。


「こんなもんが効くかよ!」


 思わぬ反撃を受けるもののダラスは大剣を一振りして礫を弾くと速度を弛めることなく突進していく。

 そしてリトルボアの頭上へと飛び上がり渾身の力を込めて大剣を振り切った。


「どぉりゃ!!」


 大剣は的確にリトルボアの眉間に突き刺さりそのままリトルボアを真っ二つにする。ダラスの腕力が常人よりも優れていることもあるが、硬い頭蓋骨を綺麗な断面ができるほど鮮やかに斬ることができたのは大剣の斬れ味とダラスの剣士としての技術が高いものであったが故だった。


 命を絶たれたリトルボアはというとその体を塵へと変え消えていき、後には魔石だけが残った。ダラスはその魔石を拾い近くにあった岩に腰掛け一休みすることにする。


「ふぅ。これで依頼も完了だな。しかし、あいつら全然追ってこねぇんだもんな。まったく薄情な奴らだ。帰ったら焼きでも入れてやろうか。……ん?」


 ()()()()とはここから少し先に置いてきた軽装備の剣士とマント姿の冒険者のことである。あの二人とて立派な冒険者なのだからリトルボア程度であれば引けは取らない実力を持っている。

 しかし、ここ数日タフな依頼が立て込んでいたこともあり疲弊しているのも確かだった。口では愚痴を垂れているが、今日の依頼内容くらいならサボりも許してやろうと考えていたのである。


 だが、その思惑とは裏腹にその二人がこちらに全力疾走してくるのが見えたのでダラスは首を傾げた。


「「り、リーダー!!!」」


「おいおい、どうした。そんなに血相変えて走ってきて。強力な魔物でも出てきたってのか?」


 ダラスは仲間の慌てぶりに嫌な予感がしていた。

 このエクロキア大陸は比較的魔物の数も少なく他の大陸に比べると平和であるが、それでも強い力を持った魔物がいないわけではない。それが突然現れたとなればギルド経由で国に通達する義務も冒険者にはあった。自身の予感が当たったとしたら『まずいこと』になる。そう考えて仲間に事情を尋ねてみる。


「いや、魔物なんかじゃねーよ、リーダー。もっとやばい奴だ。あ、あれはきっと『悪魔』だ!」


「はぁ!?」


「そうです。きっとそうに違いありません。あっしらは見たんです。奴が森のほうからやってくるのを!」


 ダラスは悪魔という単語に耳を疑う。

 それもそのはず。このエクロキア大陸で悪魔が最後に目撃されたのは数百年も前の話だったのだから。

 仲間の言うことなので頭ごなしに否定はしたくないものの、到底信じられる話ではなかった。だが、森のほうから歩いてくるというのは確かに変だった。

 森には極力近づくな、というのがこの大陸の住人に広まっている常識だ。そのため行商人だろうが旅人だろうがこの地域でいえばバーグ村から先に進むことはあり得ない。他の大陸から訪れた商人にしても取引ができる町など存在しないのだからここまでくる必要性がない。

 だとすれば、森からやってきたと考えるのが自然ではあるが不帰の森から生還できるなどあり得るのか。もし可能だったとするならば只者でないことだけは確かだった。


「よし、わかった。じゃあ確かめに行くぞ。」


「「えぇっ!?」」


「そんな嫌そうな顔して見つめるなよ。俺だって嫌なんだ。

 しかし、本当に脅威が迫っているのであれば報告が必要だ。できるだけ情報を集めてから持ち帰って対策を練るんだよ。」


 二人は先ほどまで自分たちが話していた内容が現実になるなど想定していなかったため落胆と驚きを同時に表したような顔つきをするが、当のダラスは意に返さず行動に移るため立ちあがり支度を始めた。


 こうして半ば人生をあきらめたような二人を連れてダラス率いる『蒼天の牙』は真偽を確かめるために目撃した場所まで戻っていくのであった。



 ◇◇◇


 僕はバーグ村を目指して一人草原を歩いていた。

 本当は先ほど出会った二人に話しかけたかったが、声をかける前に慌てて走り出していったので今も孤独そのものである。


「はぁ。話し相手がいないのってこんなに寂しかったっけ。」


 森の出口までは帰着の里で仲良くなったジルが案内してくれた。

 ジルは僕と年齢が近かったので割と早めに仲良くなれた異世界最初の友人だ。普段は奥さんの尻に敷かれているが、戦闘訓練ではその勇ましさが存分に出ている。なんでも里でシルフィードの次に剣技が達者なんだとか。何回か僕も戦ったけど確かにその洗練された動きは鮮やかなものだった。剣の訓練では魔法は『アクティブ』などの身体補助のみで行うため、それはそれはメタメタに伸されたものだ……。


 そんなジルと別れを惜しみながら森から出ていくと、そこから先は一人バーグ村へ真っ直ぐと歩いているというわけである。


 里を出ていく際、オーベロンや里のみんなは僕のために色々と準備をしてくれていた。その一つが方位磁針だ。何でも魔石が埋め込まれており、行きたい場所をイメージするとその方角を示してくれる優れものなのだとか。これで迷うことなく歩くことができる。


 他にも衣服や道中で食べる保存食などを入れた鞄も用意してくれた。

 服装は帰着の里で過ごしていたときの恰好では目立つとのことでシャツとベストにズボンといった西洋的なものだ。これが他の町では一般的な格好なのだとオーベロンは教えてくれた。


『ボックス』のスキルがあるのにも拘らず鞄を持っているのは『ボックス』を使うと悪目立ちするためだ。

 一般教養の授業でここら辺は押さえているので、里にいるときから転生者特有の魔法は人前では極力出さないようにしている。ふとした瞬間にばれて今後の生活が窮屈になるのを防ぐためであった。そんなわけで鑑定眼はこっそりと使うものの、どうしても動作が大きくなる『ボックス』は使用制限を自分なりに設けているのである。


「里のみんな、元気かな。」


 里を出てから一晩しか経っていないが、すでにホームシック気味になっている。山小屋では二週間を一人で過ごしていたがそんな感情は起きなかった。それどころではなかったということもあるが、帰着の里が故郷のように感じているのが一番の原因だろう。さらに、先ほど話せなかったことも相まって『一回帰ろうかな』なんて考えが頭を過ぎるが、鋼の意志でそれを何とか踏み留まっていた。


 そうしてしばらく歩いていると寂しがり屋に近づいてくる者たちがいることに気づいた。まだ視界には入っていないが、気配察知で感じ取っているので間違いないだろう。

 人数は三人。一人は大柄な男、あとの二人はさっき離れていった二人組か。オーベロンとシルフィードの訓練で向上した気配察知は、数や形などが何となくわかるようになったのである。


「なんで戻ってきたんだろう。まさか!カツアゲ!?」


 一人増えたことだし、子分が親分を連れて身ぐるみを剥がそうとしているのかもしれない。路銀はオーベロンから少し貰ったけどそこまで多くないし、他の貴重品は『ボックス』の中にあるから大丈夫。あとは魔導杖代わりにしている短刀か。これ盗られるとまずいな。オーベロンが特注品だって言ってたもんな。あぁどうしましょう……。


 そんなことを考えているうちに三人が視界に入るようになる。三人は少し手前で止まりリーダー格らしき男が話しかけてきた。


「そこの旅の方、待たれよ。我々は冒険者ギルド所属のパーティ『蒼天の牙』である。この先はバーグ村という寂れた村しかないが、何用で来られたかお尋ねしてもよいだろうか。」


 冒険者!ついに会えました!異世界の定番職業!

 と、喜んだは良いものの、丁寧な言い方ではあるが決して警戒は解いていない目を向けて話しかけてくる。返事を間違うと大変なことになるのは明らかだろう。


「僕は魔導師を志し修行の旅に出ているものです。この辺りは修行のために寄ったのですが、森の魔力に充てられてしまい近くの村か町へ避難しようとしていたところなのです。」


 これはオーベロンが予め伝えてくれていた嘘だ。

 不帰の森自体は精霊の魔力が籠っているものの、森を害する意思がないものに対して敵意を向けることはしない。だが、この大陸では畏怖の対象となっている森なのでこんな嘘でも十分信じ込ませることができると言っていた。


 三人はお互いに顔を見合わせたあとリーダー格の男が再び口を開く。


「なるほど。そういうことであれば問題ない。

 ただ、我々もこの地域で活動している身だ。もし差支えなければ名前と身分を教えて貰えないだろうか。」


「僕の名前はシュウです。元は魔導連邦国の生まれで幼い頃にエクロキア大陸に来ました。

 父が少なからず魔法の知識があったので教わりながら各地を点々としておりましたが、その父も亡くなり、以来一人で宛のない放浪の旅に出ています。」


「そうか。魔導連邦国から。移民は定住することが難しいからな。しかし、それならばこの森がどんな場所かも知っておられるわけだな。」


「はい、もちろんです。ですが、実際に目の当たりにしなければ魔導の深淵を覗くことはできないというのが父の言い草でして。その言葉を信じていざここまできたものの、僕には些か手に余るものでした。まったく我ながら無茶なことをしたものです。」


 オーベロン作の真っ赤な嘘を聞いたリーダー格の男はしばらく悩んだあと、再び口を開いた。


「なるほどな。それは確かに無謀だったとしか言いようがないな。だが、そういう無茶をする奴は嫌いじゃない。

 悪かったな、疑うような真似をして。こいつらがお前が悪魔だと言い張っていてな、つい警戒してしまったわけだ。」


 ぶっちゃけ話をされた子分たちは驚きのあまり変な声を出しながら「まだ信用できない」やら「悪魔の甘言だ」などと喚いているが、それをリーダーは一蹴する。


「お前らの言うこともわかるが、あいつは大丈夫だ。

 仮にあいつが悪魔だとして、人間社会に溶け込む任務や拠点づくりのための甘言だったとしてもこんなド田舎でやるメリットがない。人間社会に溶け込みたいならもっとお偉いさんが住んでいるような場所を狙うべきだし、森を背負っているこんな場所じゃ防衛拠点として脆弱だしな。」


 なるほど。さすがは冒険者。なかなかどうして、地理をしっかりと把握しているものだとつい感心してしまう。


「改めて名乗らせてもらおう。

 俺が冒険者パーティ『蒼天の牙』でリーダーをしているダラスだ。こっちの剣士がガジでマントを羽織っているのがチョボという。疑り深いところがあるが根はいい奴らだから安心してくれ。」


 差し詰めダラスが重戦士でガジが軽剣士、チョボがシーフといったところか。そんな職業があるかは知らないけど。


「たしか近くの村か町へ行くんだったな。良ければバーグ村まで案内しよう。先ほど言った通り寂れた村だが宿屋の飯はなかなかイケるぞ。それにここからなら一番近いしな。」


「ありがとうございます。実は一人でどちらに向かえばよいか悩んでいたところだったのです。」


 こうして僕は思わぬ同伴者を得て、ともにバーグ村へ向かっていくのだった。

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