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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アルテディズ国編

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第111話 行きつく先

仕事が立て込み更新が遅くなりました。

 僕たちは商業キャラバンに紛れた檻つきの馬車を追って遂にアルテディズ国の首都まで到着していた。


 このキャラバンは貧民街に住む市民のために配給を行っているようで、繁華街へ向かう馬車群と貧民街へ向かう馬車群に別れて進んでいく。

 貧民街へ向かった馬車が街の外れまで来ると貧民たちが群がってくる。

 アルテディズの貧民街は思いの外広く、配給する馬車をその場に残して他の馬車は奥へ進んでいくことを繰り返すため進行速度は牛歩のように遅い。


 そのおかげで僕たちも余裕を持って跡をつけられるわけだが、夕方過ぎに着いてから日が暮れるまで続けるとは思わなかった。

 人身売買の偽装だとわかっていてもこの配給に助けられている人たちがいることを考えると何ともモヤモヤした気持ちになってしまう。


 こうして最後に残った檻つきの馬車は夜闇に紛れて貧民街でも更に荒廃したエリアへと入っていく。

 そして、屈強そうな男たちが見張りをしている場所で馬車が停まった。


「攫った人々をここに集めているのか。どうにかして中の様子が知りたいところだが…。」


「それなら僕に任せて。」


 ダリアさんの呟きに答えると僕は気配察知を使って建物内を探っていく。

 ボールドンで城内を探ったときは探る場所を限定し切れず情報過多で脳が焼き切れるかと思ったものだが、今は特定の場所だけを探ることができるようになっている。僕も成長しているのだ。


「中には二十人ほど、そのうちの半数は奥の牢屋に閉じ込められています。今回連れてきた人たちで牢屋も一杯みたいだから次のアクションが起きても可笑しくないと思うけど…。」


 言いかけたところで中に動きがある。


「ん?……うーん…。」


「どうした、シュウ。中で何かあったか?」


 唸っている僕にマクマクの問いかける。


「牢屋に囚われていた人たちを外に出していってる。けど、地上に連れて行く様子はない…。

 やっぱり、地下に道が出来てるみたいだ。これはカルカスとテルトーダの国境付近で会った野盗たちのやり方に似てる。もしかしたら道の先が取引場なのかもしれない。」


「では、ここも隠れて跡を追いますか?」


「いや、見張りが動く様子がない。恐らくはアジトの中にいる全員が動くわけではないのだろう。中に人がいれば姿を消していても気配でバレる可能性がある。」


「じゃあ、ここは私と兄さまの出番。」


 ヤンヤンの問いに対して答えたダリアの指摘にマニマニが返す。マクマクと視線を合わせて頷き合うと二人は夜闇に消えていった。


「姫様、あの二人はどこへ?」


「ダリアはマニマニと余り面識がありませんでしたね。ここは二人に任せておけば大丈夫でしょう。」


 首を傾げるダリアであったが、その答えをすぐに目の当たりにする。

 気配を消して見張りに近づいた二人は簡単に背後を取るとそのまま首を絞め落として気絶させてしまった。


「ほう、暗部の者でしたか。あそこまで気配を殺せるとは中々の手練れですね。」


「マニマニは父が認めた手練れです。兄のマクマクもエクロキア大陸の王族に仕えるほどの実力ですからね。

 さぁ、これで道は拓けました。シュウさん、中の様子次第では急いで追いつくほうが良いかもしれませんがどうでしょう。」


 見張りを無力化したことを確かめてからアイリスは僕へ聞いてくる。


「急ぐ必要はないけど、移動を始めたみたいだ。アジトに残る敵を放置して挟み撃ちにになっても面倒だから、アジトの敵を倒してから少し遅れて地下に向かおう。

 大丈夫、少し距離ができたくらいじゃ見失わないよ。なんたって地下道は一本道だからね。」


 ◇◇◇


「おら、とっとと歩け!」


 人攫いたちは商品となる人々を引きずる様に連れて地下道を歩いて行く。


 この地下道を進み続けて二時間ほどが経過していた。碌な食事を与えられていない人々は栄養失調を起こして足取りも重くなっている。それでも人攫いたちに急かされるものだから倒れてしまうものもいた。


 人攫いたちに捕まった人々の大半は魔人である。褐色肌が特徴的な彼らはルインルスアルテ大陸でエルフと並び奴隷の代表格として知られていた。ただし、普段から警戒心が強く滅多に森から出ることのないエルフたちが奴隷として売られることは稀であり、この一団にも捕まっているものはいない。

 そのため、魔人以外にいるのは身分の低い貴族の令嬢くらいのものである。男女合わせて十人いる彼らのほとんどは子供であるが、前述の通り栄養失調と日頃からの運動不足により真っ先に音を上げたのは成人となったばかりの貴族令嬢であった。


「もう、歩けませんわ…。」


「クソが、出口はもうすぐだってのに!鞭で打たれたくなけりゃ立ちやがれ!」


 人攫いの一人が鞭を床に打ち付けて威嚇する。振るわれた鞭からはバチンッと破裂音が発せられ地下道に木霊していく。その反響が捕らわれの彼らに恐怖を与え、意識が朦朧とする中でも必死に足を動かし続けていた。その場にしゃがみ込んだ貴族令嬢も鞭を打たれる恐怖に抗うことができず、立ち上がっては足を引きずるように歩きはじめる。


「まったく、手間かけさせやがって。」


「おい、あんまり商品を傷つけるなよ。落ち目とはいえ貴族令嬢は高値で売れるんだ。」


「わかってるよ。あぁ、エルフの一人でもいりゃあ今頃はこんな地下暮らしからおさらばできるんだがな。」


「夢見てんじゃねぇよ。仮に見つかったとしても俺たちにそこまでの分け前が出るはずねぇだろ。戦闘能力の高い奴らを相手するくらいなら、この悪魔どもを売り払うほうが現実的ってもんだ。」


「悪魔、ね。エルフも悪魔の血筋だって言われちゃいるが、元々コイツ等魔人どもは悪魔とのハーフなんだろ?同じ悪魔の血筋だってのに、どうしてこうも値段に差がついちまったのかね。」


「ばーか。エルフが悪魔だってのはデマだって知らねぇのか。もしもエルフが悪魔だったらあんなに高値は付いちゃいねぇよ。誰もおっかなくて手元になんか置きたがらねぇだろ?」


「なるほどな、そりゃそうだ。だが、その考えでいくとコイツ等はどうなんだ?魔人が悪魔とのハーフってのは本当の事なんだろ?」


「そりゃあ長い歴史の中で魔人どもの血が薄まって悪魔の力を失ったって学説があるらしいからな。今じゃ奴隷としての存在意義を確立させてんだから、恐がるだけ無意味だって気づいたんだろ。コイツ等の中にも黒魔法とかいう能力に目覚める奴もいるが、それも他の魔法に比べれば脆弱な力だからな。」


「流石は黄魔導師様、博識だねぇ。」


「てめぇが物を知らなすぎるだけだ。そら、出口に着いたぞ。さっさと仕事を終わらせて帰ろうぜ。眠くてしょうがねぇよ。」


 男はそう言いながら突き当たった壁に手を置く。よく見ると壁には魔石が埋め込まれており、そこに魔力を流し込むと錬金文字が浮かびあがって壁が動き出す。壁の奥は外に繋がっており、どこかの裏庭のようであった。空は日が昇り始めているため薄っすらと明るい。


「さぁ、いくぞ。黙ってついて…。」


 黄魔導師と言われていた男が振り向くと言いかけた言葉を飲み込む。後ろに控えているはずの仲間は床に倒れ込んでおり、目の前には見知らぬ一団が捕らわれた人々を守るようにして立ち塞がっていたためである。


「な、なんだ、てめぇらは!?」


「お前に名乗る名などない。この外道どもが。」


 眼帯をつけた女性は黄魔導師を睨みつけながら言い放つ。その顔は心の底から嫌悪している表情を浮かべていた。


「ちっ!なめんじゃねぇ!〈ロックバレット〉」


「〈クレイウォール〉」


 黄魔導師が放った礫は一見冴えない見た目の男により防がれる。


「あぁ!?何なんだ、その魔法は!?」


 見たことのない魔法に黄魔導師は戸惑いを隠せない。尤もこれに驚いたのは眼帯を付けた女性も同様であった。


「まさか、これは複合魔法か?姿を消す魔法といい、お前は何者なんだ、シュウ。」


「それは長くなるのでいずれまた。それよりも早いところ彼をひっ捕らえて黒幕の元まで案内してもらいましょう。〈アイスバインド〉」


 シュウの魔法により黄魔導師は氷の鎖によって簀巻き状態にされてしまった。ついでに猿轡までしてしまうオマケつきである。


「ひゃ、ひゃんはほへは!?」


 黄魔導師は何か叫んでいるが、それを解読できるものはいなかった。そもそも聞く耳を持つ者もいなかったわけだが。


「ここは…。まさか、アルテディズ城の裏庭!?人身売買が違法なこの国で国の中枢が人を買っているというの?」


 通路を抜けて外を確かめると青髪の女性、アイリスは青い瞳を潤ませながら愕然となる。


「姫様、どうかお気を確かに。」


 ヤンヤンはアイリスの傍に寄り添いそっと肩を支える。これを見たシュウは不思議そうな表情を浮かべるが、あえて疑問を口にすることはなかった。


「出口が城内だとすると彼らを連れて歩くことはできんな。一部の人間の仕業かもしれんが、どこにコイツ等の仲間がいるか分からん以上は我々の足枷になりかねん。姫様、ここは戻り彼らを開放することを優先いたしましょう。」


 ダリアは引き返すことをアイリスへ進言する。アイリスが捕らわれた彼らをこの場において先に進む決断をできるとは思えなかったためだ。だが、そんなダリアの予想に反してアイリスは首を横に振る。


「いいえ、ここは進みましょう。この人攫いたちの到着が遅いことに主犯格もすぐに気づくでしょう。そうなれば警戒を強めてこれ以上主犯に迫る機会を得ることが難しくなります。

 とはいえ彼らをここに放置もできません。マニマニ、マクマクと共に彼らを安全な場所まで護送してもらえないかしら。」


「ご命令とあらば喜んで。」


「妹が了承するのならば俺も異論はない。」


 マニマニとマクマクはそう言うと捕まった人々を連れて引き返そうとする。


「あ、待って。衰弱がひどいみたいだからこれを持って行って道中に食べさせてあげて。」


「これは食糧と水…。いったいどこから取り出したんだ?」


「マクマクさん、それは企業秘密です。」


「きぎょ…?まぁいい。確かに受け取った。ありがたく使わせてもらおう。」


 疑問だらけのマクマクであるが、もはやシュウのやることを一々問い質したところで時間の無駄だと悟りシュウから食糧を受け取ると人々と歩き出していった。


「さて、では我々は黒幕の元まで行くとするか。シュウ、この魔導師の猿轡を外してくれ。彼らをどこまで連れて行く気だったのか問い質す。」


 ダリアの指示を受けてシュウは猿轡にしていた氷だけを解く。外した途端に叫び出すことを予想して身構えていたシュウであったが、黄魔導師は思いの外冷静であった。


「さぁ、お前の雇い主を答えてもらうぞ。」


「………。それは言えん。」


「この期に及んで沈黙がまかり通ると思うな。お前たちが持っている鞭を使ってやってもいいんだぞ?」


「…ダリアさん。」


 シュウは黄魔導師の首元を指さす。そこには無骨は首輪が付けられていた。


「これは製作者に対する裏切りや特定の魔力に反応する錬金道具です。一連の騒動に関わる主要な人物には皆これが付けられていました。同じように尋問した際に白状しようとした人はこの首輪から飛び出た石の棘に首を串刺しにされていましたから、恐らく同じようなことが起こるんだと思います。」


「それは厄介だな。………。では、お前にはこのまま仕事をしてもらうとしよう。」


 そう言うとダリアは不敵な笑みを浮かべるのだった。

段々と確信に迫ってきた感が出てますでしょうか。

ここまで引っ張ってきた黒幕とのご対面ももう少しで出来そうです。

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