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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アルテディズ国編

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第104話 竜の誘い

 王都に着いた僕たちは、受付嬢に紹介された五つ星の宿屋に泊まることになった。

 そのホテルでは何と一人一部屋割り当てられ、中が恐ろしいほどに広い。寝具に至っては天蓋付きのベッドで、ふかふかのマットレスや枕は前の世界基準でも高級な部類の寝具といってよかった。天蓋なんて初めて見たよ…。


 とはいえ、この宿に泊まれるのも僕が依頼を熟すことを前提としているため、次の日には皆を残して僕だけ討伐依頼を出した村へと向かうことになり、現在は馬車に揺られている真っ最中というわけである。


「いやぁ、何度も言っちまうが、旦那が来てくださって助かりました。」


 彼の名前はベン。ギルドが僕たちの世話役に宛がってくれた青年で、彼自身もシルバー冒険者である。

 依頼先へは僕一人で飛んで行く予定だったのだが、ベンも同行することになったため馬車に揺られて早二日が立とうとしていた。馬に乗って早駆けすればもう少し早く到着できるのだが、僕に乗馬技術などは皆無なためベンが御者を務めてくれている。そんなベンとの二人旅なので、ベンが饒舌になるのも時間はかからなかった。


「旦那が向かわれている村はあっしの故郷なんですがね、あそこは良質な小麦が取れるんでさぁ。あの小麦で作るパスタは逸品で、旦那がお泊りの宿でも人気のメニューなんですぜ。」


「それは帰るのが楽しみですね。一刻も早く帰りたいです。」


「はははっ!旦那はやっぱり面白いお人だ!そんなに食い意地が張るってのもプラチナ冒険者ならでは、ってわけですかね。まぁ、旦那のお力なら翼竜なんて相手じゃありやせんわな。なんせ旦那の二つ名は…。」


「ベンさん、それよりも翼竜がいる場所のことを教えて貰えますか?故郷なんですよね?」


 僕は面倒なドラゴン退治なんて早く切り上げて帰りたいと言ったつもりなのだが、ベンは僕がパスタを食べたくて仕方がないと捉えたようだ。僕はせめて依頼に役立つ情報を得ようと話題をすり替える。


「そうですねぇ。翼竜は村近くの『竜の巣』と呼ばれる山に住み着いてるんですがね、滅多なことじゃ人里にやってくることはねぇんですよ。それがここ最近、頻繁に山から下りてくるようになったもんだから討伐隊が編成されて対応してるんで。

 だけど、あまりにも出現頻度が高いもんだから討伐隊も疲弊しちまって、対応しきれなくなっちまった。だから冒険者ギルドに依頼が回ったってわけなんでさ。」


「じゃあ今は村も無防備な状態なんですか?」


「いやぁ、ソイツはどうだろうな。討伐隊は栄誉あるジルダート軍なんで、そう好き勝手はさせてねぇと思いやすぜ。」


 この国の住人たちはジルダート軍の精強さを疑うことがない。あれだけ激しい演習を目の当たりにすれば頷けることではあるが、常に翼竜を相手にしていれば動きも鈍ってくるだろう。


「そうですか。ですが、やはり村のことが気になります。揺れても問題ないのでもう少し速度を上げられませんか。」


「旦那がそう言うんなら喜んで!」


 ベンはそう言うと馬に鞭を打って駆けさせる。こうして、その日の夕暮れが訪れる前に僕たちは村へ到着することができた。






「ようこそお越しくださいました、閣下。プラチナ冒険者である閣下にご助力いただけること、村を代表して深くお礼申し上げます。」


 僕が到着するとすぐに村長が現れて深々と頭を下げる。そんなに困った状況なのだろうか。


「状況はどうですか。確か討伐隊の方々が駐留してくださっているという話でしたが。」


「はい。討伐隊は村はずれに野営地を作り、いつでも出動できるように構えてくださっています。ですが、数日のうちには一度引き上げなければならないと隊長は申しておりました。軍の維持にもお金がかかりますから。」


「被害のほうは?」


「それは一軒、倉庫が壊され貯蔵していた食料が盗られた程度で済んでおります。翼竜はどうやら我々を襲うというよりも食料を求めているようでして、食糧庫を中心に荒らしているのです。」


「翼竜はワイバーンだけですか?」


「えぇ、討伐隊はそのように申しておりました。尤も、彼らも追い払うことはできても討伐までは成せていないので、毎回違う個体なのかは分からないそうです。」


 ワイバーンが一体だけだからとしても、その程度の被害で済ませられるとはジルダート軍は噂通り精強なのかもしれない。しかし、食糧庫を狙うというのは少し引っ掛かる。


「村長、そちらがギルドが寄越したプラチナ冒険者か?」


「これは隊長。その通りです。こちらがプラチナ冒険者のシュウ準男爵閣下でございます。」


 現れたのはプレートメイルを着た兵士であった。鎧全体のデザインは似ていないが、胸についた紋章は『野薔薇の団』の団長が着ていた鎧についていたものと似ている。


「冒険者シュウです。あなたが討伐隊の隊長さんですか。」


「いかにも。身分は私が上であるが我々は強き者に敬意を払う。卿にも肩書に相応しい活躍を期待する。」


 隊長さんは中々の堅物のようだが、独善的な印象は受けない。


「善処します。それよりもワイバーンの襲撃頻度はどのくらいなんですか。」


「奴は一週間に一度ほどの割合で襲ってきていたが、最近はその頻度も増えて三日に一度はちょっかいを掛けてきているな。明日は丁度その周期に当てはまる日なので、奴が来ることも十分に考えられる。」


「なるほど。では本日は早めに休んで明日の朝に備えるとしましょう。」


「ですが閣下、夜に襲ってくることも考えられるのでは?」


 村長が不安そうに僕へ聞いてくる。夜眼が利かないワイバーンが夜襲を仕掛けることはほぼないと言っていい。そのことを知らなければ夜は寝ましょう、などと暢気なことを言っている僕を疑うのは無理ないことだろう。


「村長さん、ワイバーンが襲ってきてから夜に被害があったことはありますか?」


「それはありませんが…。」


「でしたら問題ないでしょう。僕の経験上、ワイバーンは日中にしか行動しませんから。」


「なんと!卿はワイバーンと対峙したことがおありか。」


 今度は隊長が驚きながら聞いてくる。竜の巣などと呼ばれる場所があるのに、この国の人たちはワイバーンと対峙したことがないのだろうかと逆に不思議に思ってしまった。


「隊長、村長。旦那に任しときゃなぁんも問題ねぇよ!なんたって旦那の二つ名は…。」


「とにかく!今夜は問題ありませんからゆっくり休みましょう。僕には気配察知のスキルもあるので、何か不審なことがあればすぐにお知らせします。」


 ベンが余計なことを言ってハードルを上げようとしていたので、僕は強引に話を終わらせる。隊長たちも最低限の警戒はしつつ明日に備えて休むことで合意するのだった。


 ========================


 まだ朝霧が残る早朝、僕は山が望める村の出入り口の前に立って体を伸ばしていた。ナインフォセア王国での依頼時は朝日が昇るとともにワイバーンの群れが現れたので、まだ暗がりの中を待つことにしたのだ。


「卿も目が覚めたのか。」


 話しかけてきたのは隊長である。討伐隊の野営地はこちらの出入り口横に作っているので、僕が立っていたことにすぐ気づいたのだろう。


「来るとしたらもう少しかと思いまして。」


「ほう、それも経験値というものか?」


「えぇ、何だかんだとドラゴンには縁があるようでして。全く以て要らない縁ですが…。」


「はっはっは!卿も中々不運なのだな!」


 堅物かと思っていたが、隊長は意外と柔軟なところもあるようだ。僕のいうことを素直に受け入れる度量もある。


「卿の意見を聞きたい。なぜ翼竜は村の食糧を狙うのだと思う?」


 これは僕も気になっていたことだ。ワイバーンほどの巨体ならば村の食糧庫をわざわざ襲うよりも野生動物や家畜を狙ったほうが効率が良いはずである。

 それをしないのは何か理由があるのか。口が利けるものならワイバーンに聞いてみたいものである。


「はっきりと言いますが、全くわかりません。非効率なことをする理由があるのであれば、それは山の中にあるのかもしれません。」


「そうか。『竜の巣』に入山するなどとは自殺行為に等しい。やはりこの場は奴の興味が失せるまで待つ他にないかもしれんな。」


 隊長はひどく落胆したような表情を浮かべる。と、同時に僕の気配察知にワイバーンが引っかかった。


「隊長、どうやら来たようですよ。」


「何?まだ何も見えんが…………。」


『ギャオオオゥゥウ』


 それは竜の咆哮。静かだった朝の空を割るような轟音に村人たちも飛び起きてくる。


「そんな馬鹿な!?一匹ではないのか!?」


 隊長は思わず叫んでしまう。それもそのはず。今まで対峙していたのはワイバーン一体であったが、今日に限っては違っていたのだ。

 僕たちの目の前にワイバーンが三体と、後ろに見慣れないドラゴンが一体の群れが現れたのである。


「総員、戦闘態勢!!今までの填め技は使えん、臨機応変に対応せよ!」


 隊長の怒号が飛ぶ。ただ、この慌てようでは、ブレスを吐かれただけで一溜りもないだろう。僕は黙って前へ出ると一人で対峙する状況を作る。


「おい、無茶はよせ!」


「大丈夫です、隊長さん。まぁ、見ていてください。」


 僕はドラゴンたちを睨んで佇むと、ワイバーンの群れも臨戦態勢に入る。ただし、後ろのドラゴンは清閑を決め込み襲ってくる様子はない。しかしあのドラゴン、どこかで見たような…。


「〈ウィンドカッター〉」


 僕が考えているとワイバーンの群れがブレスの構えを取ったので魔法で牽制する。ヒラリと躱されるものとばかり思っていたが、なんと一体はクリティカルヒットしてそのまま真っ二つになってしまった。


 流石に二体と後ろのドラゴンは難なく避けるが、機先を削がれたワイバーンたちはブレスを放つことは諦めてこちらへと突進を仕掛けてくる。


「〈アイスバインド〉〈ウィンドカッター〉」


 だが正直なところ、この手の攻防は慣れたものである。攻略法が分かっていれば何も恐れるものはないので、僕は躊躇なく魔法を放ち、忽ちのうちにワイバーンの群れを一掃する。


「さて、君はどうするのかな?」


 残ったドラゴンは未だに空中に留まりこちらを見ている。やはり、僕はあのドラゴンを見たことがある。あれは確か………。


『ゴギャアオオオゥ』


 ドラゴンは鋭い咆哮を上げて僕の方へ突進してくる。僕は先ほどと同じく魔法で対処しようとするが、ドラゴンはその前に進路を変えて威嚇するだけに留めたようだ。そのままドラゴンは山へと去っていった。






「「「「うおぉぉぉ!!やったぞ!!」」」」


 ドラゴンの脅威が去ると後方で待機していた人々から歓喜の叫び声が上がる。兵士も村人も関係なく喜ぶ姿を見ながら、僕は隊長と村長が握手を交わすところへと向かう。


「ありがとうございます、閣下。この御恩は一生忘れません。」


「まったく以て大した御仁だ。閣下のことは必ずやこの国の語り草となりましょうぞ。」


「あれ?隊長さん、何だか口調が変わりました?」


「はっはっは!出会いがしらで言ったでしょう。我々は強き者に敬意を表すのです。閣下は私よりも遥かに強い。であれば、先ほどまでのように接するのは我が流儀に反しますのでな。」


「そんなものですか。僕は先ほどまでの口調でも構いませんが…。まぁ、そのことは置いておいて、僕はこれから山へ入ろうと思います。」


 僕の言葉を聞いた全員が一気に固まっていく。割れんばかりの歓喜の声は消え失せ、嘘のように静まり返ってしまった。………何か不味いことを言っただろうか。


「な、ななな、なんと?今、何とおっしゃいましたか、閣下?」


「え?いや、ですからこれから『竜の巣』の調査をしようと思います。」


「そんな!?先ほども申しましたが、あの山に入ることは自殺行為ですぞ!?調査を行うにしても、それ相応の準備をするべきです!」


「い、いや、でもそこまで強い気配は感じないのでたぶん大丈夫だと………。」


「「絶対になりません!!」」


 二人の勢いに負けて僕は口をあんぐりと開けてしまう。僕としては確かめることがあるので入山したいのだが、さて、どうしたものか。


「旦那だったら問題ねぇよ、村長。」


 僕が困っていると口を挟んできたのはベンであった。


「ベンか。お前も『竜の巣』の恐ろしさは知らぬわけではあるまい。なぜそう言い切れる?」


「何だよ、プラチナランクの旦那を低く見積もりすぎなんじゃねぇか?旦那はドラゴン退治のエキスパートなんだぜ?」


「何?エキスパートだと?」


 これには隊長も興味を持ったようだ。というか、ベンさん、あんた何を言ってんの?


「そうさ、なんたって旦那の二つ名は『飛竜狩り』なんだからな!聞いたことあんだろ?エクロキア大陸の英雄譚!」


「なんと、あれは創作ではないのか!?ワイバーンの群れを一掃し火竜をも手玉に取る騎士。あれのモデルが閣下であったとは!」


「それであれば私も聞いたことがある。そうか、確かに閣下のあの強さであれば真実と言われても肯ける。それならば『竜の巣』へ入山してもみすみすやられることはないだろう。」


「やっとわかって貰えたようだな!旦那の強さは本物だ!旦那に任しときゃ万事解決ってやつさ!」


 何だかよく分からないがベンのおかげで入山許可は下りるのだった。僕に対する評価が物凄いことになっているが、お願いだから期待する目をこちらへ向けないでください………。

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