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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アルテディズ国編

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第101話 コンチェルト

リアクションや評価して頂きありがとうございます!嬉しい!筆者嬉しい!

 すっかりと夜も更けて辺りが静寂に包まれる時間。シュウたちが泊まっている村の隅では夜闇に紛れて野盗たちが一軒の家を取り囲んでいた。


「頭、準備できました。」


「奴らはどうしてる。」


「相変わらずですよ。まぁ、奴らも仕事はしてるみたいです。睡眠薬を仕込んだ食事を平らげたそうなんで、獲物どもは今頃ぐっすりと眠ってまさぁ。」


 部下から報告を受けて頭目が一つ頷く。


「よし、仕事開始だ。」


 頭目のこの言葉を受けて、家を取り囲んでいた野盗たちが一斉に動き出す。


 この家は表口の他に大きな勝手口があり、一見実用性のある造りをしている。しかし、その本来の用途は大人数が雪崩込みやすくするためのものであった。

 一階には台所と居間があり、二階に寝室がある。間取りとしては宿屋に近いが台所と居間は仕切りなどなく、二階は寝室が二部屋と少ない。それでも村の家屋と考えれば十分過ぎる広さと言ってよかった。


 野盗は昼間襲撃した際の倍の人数、総勢二十人で家を囲っている。その全員が雪崩込むのだから家は激しく揺れ階段を駆け上がる度に軋むが、そんなことに構うはずもなく野盗たちは一気に獲物が寝ているはずの部屋まで向かう。


「おらぁ!迎えに来てやったぜ、お嬢……。」


 野盗たちが寝室の扉を勢い良く開けるがそこに寝ているはずの者たちは姿形もない。


「あぁ!?どうなってやがる!」


 頭目は部下を責め立てるがその答えを知るものはいなかった。そうしているうちに、今度は一階が騒がしいことに頭目たちは気づく。


「か、頭!大変だ、家に火がつきやがった!」


「何!?早く消さねぇか!」


「それが火の回りが異常に早くて手がつけられねぇんだ!」


「クソが!仕方ねぇ、ずらかるぞ!」


 頭目はそう言うと一目散に外へと飛び出していく。部下たちも後を追うように次々と家から出てくるが、火の手は一気に拡がり瞬く間に一軒丸ごと赤く燃えていってしまった。


「何の騒ぎだ、これは!」


 ここで村にいた者たちも状況を確認するために外へ出てくる。その中の一人、夜更けだというのに鉄鎧を着た男が野盗たちに近付いていく。『野薔薇の団』団長である彼は何の迷いもなく頭目の傍へ寄っていった。


「おい、てめぇ!これはどういうことだ!まさか裏切ったんじゃねぇだろうな!」


「貴様は何を言っている。私はこれまで通り、きっちりと仕事をしただろうが。中の奴らはどうしたのだ?まさか、この家事で丸焦げにしたのではあるまいな!?」


「白々しいこと言ってんじゃねぇ!俺たちはいつも通り襲ったが、中には誰もいなかった。そのうえ、火までつけやがって。てめぇらがやってねぇなら誰がやったってんだよ!」


「何だと!?いや、そんなはずはない!奴らが家の中に入ったところは見届けたし、家の出入りは終始部下たちに見張らせていた!この私がみすみす逃がすようなヘマをするわけなかろう!」


 頭目と団長は言い合い、お互いの主張を曲げることはなかった。このまま水掛け論か続くかと思われたとき、遂に動いたのは頭目であった。


「もういい、てめぇらとの取引もここまでだ!いつもいつも好き勝手取り分を絞り取りやがって!」


 そう言うと頭目は腰に差していた短剣を取り出した。これを見ていた互いの部下たちからは張り詰めた空気が流れ出す。


「ふん、私の計画に乗ってきたのは貴様らであろうが。金品の横流し先と攫った奴隷の売買を斡旋したのは誰か忘れたとは言わせんぞ!」


「はん!これだからお坊っちゃんはタチが悪りぃ。親のコネでやってきたことをさも自分の手柄みたく言いやがる。てめぇの頭の中はお花畑にでもなってんじゃねぇのか?」


「き、貴様ぁ!侮辱は許さんぞ!」


 ここで団長は佩いていた剣を抜き放つ。それを見て自警団の団員たちはもちろん、村人の格好をしていた者たちまで洩れなく武器を手にして臨戦態勢に入っていく。


「野郎ども!!」


 頭目の一声で野盗たちも武器を手に取り、この場は一触即発の睨み合いとなる。


「死ねや!」


 頭目が大声で叫び団長へ襲い掛かろうとするが、武器がぶつかり合うその瞬間、大気が揺れるほどの雷鳴とともに辺りが眩く光る。





「まったく、こういう人間不信になるようなことするの止めてくださいよ。」


 轟音のあとに訪れた静けさを切り裂いたのはシュウであった。後ろには他一行の姿もある。


「どうせこんなことだろうとは思ってたから別に驚きはしないけど、村丸ごと人攫いに加担してたなんて。」


 シュウは溜め息を吐きつつ人攫いたちの注目を一身に浴びる。


「お主、まさか見抜いていたのか?しかし、睡眠薬入りのスープは確かに食したはず。何故動ける?」


「さぁね。液体の操作が得意な人がいた、とでも言っておきましょうか。」


「そのような戯けた言い分を信じるわけなかろう!」


 団長の問いに惚けてみせたシュウであるが、液体を操作したのは事実である。アイリスの能力により毒素だけを取り除いたスープを一行は食していた。


「そんなことよりも団長さん。僕たちを何処へ売り払いに行こうとしてたんです?」


「貴様に答える義理などないわ!まぁ、良い。わざわざ全員が顔を出してくるとは嬉しい誤算だ。この人数を相手に逃げられると思ったか、馬鹿共め。」


 団長は気付いていなかった。雲もかかっていない夜更けに雷が鳴るはずもなく、ましてやそれが目の前の男の仕業であったなどとは想像することさえできなかったのである。


「団長、あなた方『野薔薇の団』はジルダート王国の出奔者ですね?」


 ルナーリアが問いかけると団長を初め村人たちもざわめき始める。


「何故それを知っている!?」


「わざと言ってますか、それ?あなたの着ている鎧はジルダート王国の下級騎士が着るものでしょう。それにジルダート王家の家紋は薔薇、これだけあからさまにしていれば誰でも気付きます。

 余りにも堂々とされていたので敢えてそのように装っていると思っていたのですが、そこの頭目との会話をみてもあなたの出身はジルダート王国で間違いないと判断しました。

 そうなると、攫った人々の行く先も自ずと見えてくるというものです。エクロキア大陸の人攫いが向かう先と一致しますからね。」


 ルナーリアが向こうの策略にわざの乗ってみせたのは、エクロキア大陸で起きている人攫いの流れを追うためであった。『仮面の七人』の調査報告も合わせて、ルナーリアはその流れがジルダート王国で集約されていることを確信していた。


「さて、小悪党と話してもこれ以上の情報はないでしょう。シュウ様、あとはお任せいたします。」


「了解。ルナはアイリスたちを護ってて。」


「シュウさん、それでは私の気分が収まりません。彼らは私の大切な友人たちを物のようにしか見ていません。私はそれが我慢できないのです。どうか私たちも戦わせてください。」


 アイリスの怒気を含んだ声にシュウは一瞬戸惑うが、その決意を目の当たりにして深く頷く。


「わかった。それじゃあ一緒に懲らしめてやるとしよう。」


「おい。いい感じのところ悪りぃが、ヒョロガキと女が二人に奴隷三人で何ができるって?」


「そうやって褐色肌を見ればすぐ奴隷などと宣うあなた方は、全くもって救いようがありませんね。その命を以て後悔なさい。」


「なめんのもいい加減にしろよ!もういい、野郎ども全員殺せ!」


 頭目の怒号が飛ぶと弾けるように総勢五十名の敵がシュウたちへ襲いかかってくる。


「〈エアーリジェクト〉」


 シュウが魔法を唱えると触れたものを吹き飛ばす風の壁が現れる。突然目の前に出現した壁を回避出来ず、次々と野盗たちが後方へと吹き飛ばされていく。

 ある者は後ろにいた者を道連れにして家屋へ激突していき、ある者は受け止める壁がないばかりに遥か彼方へと飛ばされる。


 勿論シュウだけならもっと確実且つ一瞬で勝負を決めることもできたが、アイリスたちの意気込みに水を差さないように敢えて敵が対策できる魔法を仕掛けたのだった。


「〈アクアショット〉」


 敵は風の壁に触れることを恐れてその場に立ち止まり攻略法を探り始める。しかし、その隙を突いてアイリスが追い討ちをかけていく。

『アクアショット』は水を圧縮させて鉛玉のように前方へ放つ魔法である。立ち止まったことで格好の餌食となった野盗たちはアイリスの魔法に撃たれてその場に倒れていった。


「一処に留まるんじゃねぇ!動き回って拡散しろ!」


「数の利を使え!近づけさえすれば、あのような下賤な者ども恐るるに足らんわ!」


 頭目と団長は冷静に部下へ指示を出していく。怒りに任せて責め立てないところは腐ってもリーダーだと言えた。

 尤も、この指示はシュウたちが接近戦に弱いと見込んでのものである。そのため次の瞬間には頭目と団長は口をあんぐりと開く羽目になる。

 二人の予想に反して、マクマクたちが接近戦を仕掛け始めたのだ。


 マクマクとマニマニは大きく跳躍すると敵の集団の中へと飛び込む。それを見た敵は二人に群がろうとするが、着地すると同時に数人の敵が血飛沫を挙げて倒れていく。


「な!?なんだ、コイツら!」


 その質問に答える代わりにマクマクは敵の喉元を掻き斬る。二人はその後も無表情のまま淡々と的確に急所を狙って短剣を突き立てていった。


「バカが!前ばっかり気にしやがって、後ろがガラ空きだ!」


 マクマクたちが暴れる前方の影に隠れて数人が大きく回り込み背後から襲いかかってくる。

 後方はルナーリアとヤンヤンが待機していたため、敵も侮っていたのだろう。大きく振り上げた剣を勢い良く振り抜こうとするが、何かに引っ掛かり微動だにできなくなってしまった。


「後ろへ回ったのは良い判断でしたが、糸に気付かないとは間が抜けていますね。私の両手首に着けているブレスレットは錬金道具でして。魔力を通すと内包されている糸を自在に操れるようになるのですよ。

 そして、さらに魔力を込めると細く鋭い糸にすることも可能なのです。丁度こんなふうに。」


 ヤンヤンは説明しながら捕らわれた敵の首に糸を絡めると、釣り糸の如く細くした糸で徐々に締め付けていく。そして、ヤンヤンが両腕をグッと胸元に寄せると大した力も使わずに敵の首は胴体から離れていくのだった。





「な、ななな、何なんだってんだ!?コイツらバケモンか!?」


「化け物とは失礼ですね。人を人とも思えないあなたのほうがよっぽど化け物でしょうに。まぁ、近からずも遠からず。

 私もあなたなら気兼ねなく殺せそうですから、間違ってはいないのかもしれませんね。」


 慌てふためく頭目に近付いてきたのはアイリスである。先ほどまでは接近戦を仕掛ければ優位だと考えていた頭目も、マクマク兄妹やヤンヤンの戦闘をみて自信を喪失していた。


「ま、待て!話せば分かる!そ、そうだ。俺はもう足を洗う!攫った奴らが何処に連れて行かれるのかも教える!だから、だから見逃してくれ!」


「そうですか。では、今すぐに言いなさい。攫われた方々は何処へ連れて行かれるのですか?さぁ、早くしなさいな。今の私はとても気が短いですよ?」


 アイリスは落ち着いた声色の中に冷徹な響きを効かせて頭目へ迫る。事実、今のアイリスは汚物を見るかのような冷たい目で頭目を見つめていた。


「俺たちが攫った奴らはあっちの嬢ちゃんが言ってた通り、ジルダート王国、王都のスラム街へ連れて行くことになってる。スラム街にある酒場のマスターに引き渡すのが決まりだ。どうだ、有益な情報だっただろ!?」


「マスターに預けられた後はどうなるのですか?」


「い、いや、俺たちはマスターから金を貰って終わりだからその後のことは知らねぇ…。だ、だが、マスターの名前なら知ってる!セダールだ!マスターの名はセダール、なぁいい情報だろ?た、助けてくれよ…。」


「確かにこれ以上は何も出てこないようですね。もう興味が失せました。」


 アイリスはそう言うと頭目に背を向けて歩き出す。これを見た頭目は懐からナイフを出してアイリスに襲いかかろうとする。


「〈アクア〉」


 アイリスが唱えた魔法は水を出すだけの所謂、生活魔法である。シュウが加減を間違えると滝のような水が溢れ出すが、一般的には蛇口を捻った程度の水量しか出てこない。

 アイリスもその例に洩れず大した水量しか出すことはなかったが、アイリスは液体を自在に操ることができる。


 そのため頭目がナイフを背中に突き立てる前にアイリスが出した水が視界を奪い鼻と口を塞いでいく。


『ガ、グバッ』


 頭目は藻掻くが水を引き剥がすどころか掴むことも出来ず、その場にのた打ち回る。そうして、暫く狂ったように藻掻き苦しむとそれまでが嘘だったかのように頭目は動かなくなってしまった。


「これもあなたの業が招いた結果です。輪廻の先で悔い改めなさい。」


 チラッと倒れ伏した頭目を見下すとアイリスはさっさとその場をあとにするのだった。





「くっ…何故だ。何故こうなった…。」


『野薔薇の団』団長は物陰に隠れ一人震えていた。

 野盗と野薔薇の団を合わせた五十名に上る味方はすでに大半が制圧されてしまっていた。それも団長が相手取る敵方は全員が無傷な状態である。


 ここまでの実力差に気付けなかったことこそが敗因であるのだが、団長はそれを認めたくなかった。


 気位が高く傲慢、故に騎士団を解雇され王国を追われた団長であるが、その性格は直ることはなかった。

 親は王国の名門貴族にして王国の財政を担う重要な役職に就いている。そんな彼の親もまた密売を行い至福を肥やしているわけだが、団長はそんな親の密売ルートを使い人攫いを行っていたのだった。


 これが明るみに出れば彼の立ち場は地に落ちてしまう。親の立ち場が危うくなることよりも彼自分の身が心配でならない。そうして彼の中で一つの答えが出ようとしていた。


 この場を切り抜けるには人質しかない。

 そう浅慮しながら収束しかけている戦場を覗くと、か弱そうな娘が一人離れて立っているではないか。


(この娘を売り払えばまだ立て直せる。人など金さえあればいくらでも補充可能なのだからな。やはり私はこんな場所で朽ちる男ではなかったのだ。)


 そこからは深く考えもせず、その女性に飛びつき剣を首筋に突き立てていた。


「動くな!貴様らは腕に覚えがあるようだが、後ろを疎かにするのは二流のやることであるぞ、この間抜けどもめ。この娘を助けたくば私が無事にこの場を離れるまで何もするな。追撃も許さん。

 いいな、一歩でも動けばこの娘の命はないからな!」


 そう言いつつ、団長は女性を連れてジリジリと下がっていく。


「はぁ…。何でわざわざ捕まるかな。どうしたいの、ルナ。」


「ふふ、それは勿論助けてほしいのです。格好良くお願いしますね、シュウ様♪」


 人質にされたはずのルナーリアは何故か楽しそうにシュウと会話をする。まるで後ろの団長も首元に付けられた剣も無いもののようである。


 自尊心を傷付けられた団長はそれが許せなかった。


「貴様ぁ!私を無視するか、この不届き者共がぁ!!」


 完全に箍が外れてしまった団長は人質であるはずのルナーリアを殺そうと剣を大きく引こうとする。


「〈アイスバレット〉」


 シュウが放った雹ほどの大きさしかない極小の氷の礫は一瞬で団長の眉間を捉える。礫を受けた団長はそのまま気を失い、その場に倒れ込んでしまった。


「お見事です、シュウ様。」


「怒りに任せて簡単に目的を忘れちゃうようじゃ三流のやることですよ、団長さん。

ふぅ、魔法を弱めるほうが集中力を使うから疲れちゃった。」


「休んでいる暇はありませんよ。生きている者たちは縛り上げて町に引き渡さねばなりません。

 ということで、シュウ様。ひとっ飛び街道沿いの町へ行って警邏隊を連れてきてくださいな♪」


 ルナーリアの弾ける営業スマイルを見て複雑な心境になるシュウなのであった。

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