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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アルテディズ国編

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第100話 野薔薇の団

祝、第100話!パチパチパチパチ。

 水上都市を後にした僕たちはルインルスアルテ大陸の内陸にあるロズロ国の国境を越えるため街道を歩いている。この街道は河川と並行しており、常に川のせせらぎが聞こえてくる何とも涼やかな街道となっていた。

 マニマニは行きの船で体験した釣りが気に入ったようで、感情表現の乏しい彼女には珍しく目を輝かせて川にいる魚を見ていた。ヤンヤンも普段と変わらぬ様子であったが、アイリスだけはやはりどこか気だるそうにしている。


「アイリス、これを受け取って。」


 僕はアイリスに水上都市で見つけたものを手渡す。


「シュウさん、これは?」


「日傘だよ。アイリスって日差しに弱いみたいだから気休め程度にはなるかと思って。」


 都市を離れる前にちょっとした自由行動の時間があったのだが、そのときに偶然売っているのを発見したのだ。


「ありがとうございます。ですが、貰ってしまって良いのでしょうか。私は何もお返しできるものがありません。」


「気にしなくていいよ。この後も旅は続くわけだし、依頼料はルスト様から貰うことになってる。言うなれば必要経費さ。あ、でも勝手に選んじゃったから気に入らないようなら別の場所で違う物を探すよ。」


「いえ…嬉しいです。大切にします。」


 アイリスはそう言うと早速傘を開く。青や紫の花が描かれた日傘はアイリスの髪の色にとても似合っている。

 アイリスも嬉しそうに笑いながら傘をクルクルと回しているので、どうやら気に入ってくれたみたいで一安心だ。


「あら、シュウ様。女性陣はアイリス様だけではないのですよ?私たちには何もないのですか?」


「う…。次の町で探します。」


 ルナの鋭い指摘に僕は一瞬固まってしまう。冗談だと分かっていてもそう言われると買わなければならないと考えてしまうのは男の性だろうか。


「よろしいのですか!?シュウ様、私は普段から身に着けられる小物が欲しいですね。」


「では、私はたこ焼きが食べたいです。」


「…釣り竿。」


「妹へ贈る服を所望する。」


 思いの外ルナが驚いていたように見えたが、それを皮切りに女性陣が欲しいものを挙げていく。

 たこ焼きはこの地方の名物なのだそうで、この先も売っている可能性は高い。ただし、水上都市ではタコが入っていたが、内陸ではその土地で捕れるものを入れる風習があるそうなので何が入っているかはお楽しみなのだとか。ちなみに味付けは勿論塩である。

 釣り竿は川にも魚がいるので、川沿いを歩いているうちは使えるかもしれない。だが、魔界の海は魔物がいると言っていたはずである。故郷に戻ったらいつ使うつもりなんだろうか。あとマクマク、妹の贈り物は自分で買いなさい!





 他愛もない会話をしながら暫く川沿いの街道を進んでいると林が隣接するようになってきた。


「いるね。十人ってところかな。」


「林の中で待つとはベタな展開ですね。」


「けど、商人でもない僕たちが何で狙われているんだろう。」


「それは恐らくシュウ様が持っている方位磁針を見たせいでしょう。それに日傘を即決で購入する資金力もあると知ったのですから、女連れの集団は良いカモに見えたのでしょうね。」


「なるほど、僕が作った面倒事なら僕が解決しなきゃいけないね。マクマクとルナはアイリスたちの警護を頼む。」


「今更お前の実力は疑わないが、一人でやるつもりか?」


「うん。こういうのは徹底的に叩いて戦意を喪失させるほうが後々襲われずに済みそうだからね。」


 僕たちは小声で立ち回りを決めると一つ頷く。すると、それを見計らったように林の中から野盗たちが現れた。


「おやおや。何処かにお出掛けかな、お嬢様方。見たところ護衛は二人のようだが、そんなか細い男どもじゃ不安だろう。ここは俺たちが護衛してやるよ。」


 野盗たちはすでに武器を抜き、臨戦態勢である。さらには僕たちを逃さないように挟む形で分散している。


「僕たちは先を急ぐのでそこを退いて頂けませんか?」


「バカか、てめぇは。この優位な状況でハイそうですかと引き下がるわけねぇだろうが。」


 はいはい、そう言うと思いましたよ。これで言質は取れたので心置きなく叩けるというものである。


「そうですか。では残念ですが……ん?」


 野盗を懲らしめようと動き出そうとするが、後ろから凄い勢いでコチラへ向かって一団がくる。


「ヤバい、頭!()()だ!」


「クソ!ずらかるぞ、てめぇら!」


 後ろの集団に気付いた野盗たちが急に慌て出して四散していく。僕たちが呆気に取られていると後ろの集団はコチラへ近づいてくる。


「危ないところであったな。我々は自警団『野薔薇の団』だ。お主たちは旅の者のようだが、どちらへ向かっている?」


 リーダーらしき人物に馬上から声をかけられて思わず僕が答える。


「僕たちはエクロキア大陸から来ました。今はジルダート王国へ向かう途中です。」


「なんと、エクロキア大陸から!それでは知らぬのも無理ないな。この街道は近頃、野盗どもが住み着いて商人たちを襲っていくのだ。お主たちのように不用心な者たちは良いカモというわけだな。

 そのため私が発起人となり自警団を結成し、商人たちの安全を守っているのだ。

 お主たちはジルダート王国へ向かっていると申したな。この街道の町村はすでに奴ら荒らされておる。

 我々もずっと付いているわけにはいかぬが、ここで会ったのも何かの縁だ。良ければ安全に泊まれる村まで案内しよう。」


「え、いや、それには及び……。」


「ありがとうございます、騎士様。是非お願いできますでしょうか。」


 僕が断ろうとすると横からルナが割り込み結局自警団『野薔薇の団』に案内してもらうことになった。ルナは軽く僕に視線を送ってくるが、口角を不敵に上げたその顔は何か企んでいることが直ぐに分かったのでこの場では何も聞かないことにするのだった。


「それにしても騎士様は高潔なお方なのですね。私どものような庶民が見返りもなく助けて頂けるなどエクロキア大陸では考えられないことです。

 その振る舞いと良い、溢れる気品と良い、どこか名門貴族の出ではないのですか?」


「なに、既に捨て去った過去故、語るほどのものではない。ただ、そうだな。一つ言えるとすればこうして自警団を起ち上げられたのも昔取った杵柄のおかげということか。この装備然り、な。」


『野薔薇の団』は自警団と言うだけあって装備がマチマチである。その中でも団長風のこの男はプレートメイルを着ていた。胸元にはどこかの家紋が付いているので騎士団に所属していたのかもしれない。


「街道を外れて林の中を進んでいますが、この先に村があるのですか?」


「あぁ。先ほども言ったように街道沿いの村は野盗どもの縄張りになっていてアジトにしている場所も近い。仮に襲って来た者たちを返り討ちにしたとしても、あのまま進んでいたら蜘蛛の巣に絡め取られたように全て奪われておっただろう。勿論お主らの命を含めて、な。」


「それは大変危ないところを助けて頂きました。これは是非お返しをさせて頂かねばなりませんね。」


「良い良い、そのように畏まるな。そら、着いたぞ。」


 ルナと団長が話しているうちに僕たちは村へと辿り着く。『野薔薇の団』が来たことを知った村民たちは一団に群がり諸手を挙げて歓迎する。


「すごい人気ですね。」


「そりゃそうさ。野薔薇の団といえばこの辺じゃ有名な解放軍だぜ?」


 僕がポロっと呟くと隣にいた村民が得意気に教えてくれた。


「解放軍?自警団じゃないんですか?」


「そう言ってんのは本人たちだけさ。あの方たちは自主的にこの近辺を見回っては襲われている商人を助けてるんだ。ときには村を占拠した奴らも退治してくれる。こんな素晴らしいお人は中々いねぇ。」


「なるほど、それで解放軍。」


 その後も如何に野薔薇の団が崇高な使命をもって自警団をしているのかを聞きながら僕たちは村で一泊する運びとなるのだった。


 ◇◇◇


 ――――街道沿いのとある場所


「頭、どうするんです?また取り分が減っちまいますぜ?」


 ここは昼間シュウたちを狙った野盗の拠点である。

 獲物を取り損ねた野盗たちは酒を煽りながら愚痴を言い合っている。それは頭目も同じであった。


「まったく、出しゃばりな野郎がいると仕事がしづらくてねぇな。あんな上玉そういねぇってのによ。」


「けど、アイツらってそんなに金持ってんですかい?あっしにゃそこいらの平民と何ら見分けがつかねぇよ、頭。」


「バカが。格好は平凡だが、所作から察するにあの女二人はそれなりに高い地位にいるに違いねぇ。どんなに隠そうが染みついた癖ってのは抜けねぇもんだ。

 それに奴隷を三人も囲ってやがんだ。あれが金持ってなくて誰が金持ってるってんだ。」


「流石は頭、そんなとこまで見てたのかよ。そんじゃあみすみす金山を逃しちまったってことですかい、あっしらは。」


「ふん、そう諦められるか。護衛もあんなヒョロヒョロした従者が一人だ。力で押さえつけちまえばこっちのもんなんだ。

 ……。あぁ、こいつぁそろそろ潮時かもな。」


 頭目がそう呟くと奥から部下が叫ぶ。


「頭ぁ、報告がきたぜ!至って順調、定刻で襲えってよ!」


「…そうか。くっくっくっ、調子乗んのもいい加減にしねぇと痛い目に遭うってのをあの貴族気取りのクソに教えてやるとするか。」


 頭目は不敵に嗤うと手元にある酒を一気に飲み干し号令をかけるのだった。

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