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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アルテディズ国編

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第99話 水上都市

切り良く第100話でルインルスアルテ大陸に上陸させればよかったと、この話を書いてから気付きました。

【ロズロ国】

 この国は元々帝国貴族の別荘地として栄えた町である。それが魔導連邦国と帝国の戦争が始まると町の収入源であった貴族たちは忽ち立ち退いていき、滅多に人が寄り付かない場所へとなっていった。

 当時国境沿いにあった小国は日々変わっていく国境線に国力が追い付かず次々と滅亡していったため、帝国も魔導連邦国も自分たちの土地であると主張しあっては法の整備も儘ならない状態になっていったのだった。そのため国境に接している土地は所属が定まらない地域が多発していき、ロズロもまたどこにも属さない都市へと変貌していく。


 ロズロは別荘地であったこともあり、その街の美観は周辺の都市とは比べ物にならないほど優れていた。

 そこに目を付けたのが当時、いち早く湾岸都市として成功を収めていたセザルデル出身の商人たちである。

 商人たちの多くはセザルデルでの事業参入に失敗した者たちが中心となっていたが、ロズロの海に繋がる運河を上手く利用した都市機能とその景観美を巧みに使いこなし、敢えて中州に町を拡張することで現在の水上都市の形を作り上げた。


 そして、時は進み魔導連邦国と帝国の戦争が停戦を迎えると周辺国家が帝国の一部となっていたロズロも帝国へと帰属し、小国として自治権を認められるようになる。その後もロズロ国は躍進していき、現在では港町としてセザルデルを抜くほどの知名度と支持を世界各国から受けるに至るのだった。


 ◇◇◇


 船に乗ってから早三週間と少し、僕たちはついにロズロ国の港へと辿り着いた。本来は二週間ちょっとで到着する予定だったのだが、大時化に捕まってしまい遅れてしまったのだ。


 この世界でも干し肉や乾パンなどの保存食を使えば三週間程度なら日持ちする食材はある。そのため食料は船の備蓄で賄えるのだが、問題は水分のほうがギリギリだった。僕が魔法で水を出すことで何とか凌いだが、それがなければかなり苦しい航海となっていただろう。

 ちなみにこれにはアイリスも協力してくれた。彼女は水魔法の適正があるらしく流体を操ることに長けていた。生成した水を操作して遠くにいる船乗りのコップへ注ぐなどといった曲芸チックなことも披露しクルーたちを大いに喜ばせていた。


 途中、乾パンに飽きたクルーたちが騒ぎ出したので、フラストレーションを発散するために釣り大会を催したのだが、なんと優勝したのはマニマニであった。その日の晩ご飯はマニマニのおかげで久しぶりに食卓が華やかになっていたのを覚えている。ヤンヤンが捌いた刺身を食べたのも記憶に新しい。塩だけでしか刺身を食べたことのなかった船乗りたちに、ルナが持参していた醤油を分け与えた時の盛り上がり様は異常であった。


「シュウ様、ついに新大陸へ上陸しますが、今の心境はいかがですか?」


 ルナが僕へ問いかけてくる。


「正直に言うと船に乗ったときはどんな場所なのかちょっと怖かったんだ。けど、遠くから見える景色を眺めていたら早く上陸したくて仕方ないよ。ワクワクする気持ちが止められないって感じだ。」


「ふふふ、シュウ様も案外子供っぽいところがあるのですね。」


 ふん、男たるもの童心忘れるべからずというではないか。ロマンを追いかけずして何が男か。こればっかりは流石のルナにも分かりはすまいよ。

 などと、心の中で反論する僕であるが、実際の所は苦笑いをしながら照れるだけなのであった。


「おし!着港完了だ!野郎ども、下船準備にかかれ!」


 船長が一言命令するだけでクルーたちは全てを理解して作業に取り掛かる。

 帆を畳んで船を桟橋へ近づけていくと桟橋にした作業員が数人掛かりで移動式の階段を運んでくる。この世界基準でいうとギャングウェイに当たるのかもしれないが、規模的にはタラップのような簡易的な階段である。


 作業員と連携をしてクルーが船にタラップを付けると船長はまずルナやアイリスたちを降ろしてくれる。そのあとに積み荷を降ろして、最後に全船員が下船していく。僕とマクマクは当然積み荷を降ろす手伝いがあるので、クルーたちと同じ扱いである。




「ここがロズロ国か。綺麗な場所だな。」


 積み荷を全て降ろした後、僕とマクマクも下船してルナたちの待っている場所までいくと、そこに広がる景色に僕は目を奪われる。アヅィールも白と青のコントラストが綺麗であったが、ここロズロも負けず劣らずでとても美しい。何と言っても川が街中にまで広がり、建物と接していることが特徴的である。

 船長に聞いた情報だが、ここの主な移動手段は舟なのだそうで、皆建物に舟を乗りつけてはそのまま建物内へと入っていく。歩道も設けられてはいるものの、もっと内陸まで足を延ばさねばこの街では歩きにくいのだという。

 そのせいか、街全体が独特な雰囲気を醸し出していてその景観が実に神秘的に見えた。


「まずは宿を探しましょうか。今日は遅いので、内陸へ赴くのは明日の方が良いでしょう。」


 ルナがそう言うと桟橋と繋がる待合室にある窓口で街移動用の舟を調達する。舟は自分で漕ぐものと船頭が付くタクシーのようなものの二種類があるらしい。その二択を聞いたルナが何の躊躇いもなく自分で漕ぐほうを選んだのは僕とマクマクに漕がせるためだろう。…え、これ以上労働すると僕の筋肉が悲鳴を上げてしまいますが?


 そんなことはお構いなしにルナは淡々と手続きを進めていく。軽い溜め息を吐きつつ手続きをルナに任せることにして待合室の奥まで進むとアイリスが佇んでいた。


「うわぁ、大きいですね。」


 待合室の奥は出口となっており、そこを出ると大きな運河が横に広がっていた。そちらは僕たちが乗ってきたような中型船の他に大型船も停泊している。僕自身そのスケールに圧倒されているわけだが、ふとアイリスのほうを見るとアイリスは瞳を潤ませながら感動に浸っていた。


「世界は何と大きいのでしょう。海を渡り大陸を股にかけるだけでも驚きであったのに、内陸にもこのような運河を望めるとは。私の生きてきた世界が如何にちっぽけなものだったのか思い知らされます。」


 アイリスが暮らしていた場所は島国で魔物がいるため海へ出ることもできないと言っていたので、かなり閉鎖的な場所なのだろう。そんな場所に住んでいれば目の前に望む雄大な景色に圧倒される理由もわかるというものだ。


「本当に世界は広いものですね。祖国が大変な危機に晒されているというのに、私は暢気にもこの情景に目が離せないでいる。私はとんだ虚け者です。」


 アイリスはそう言いながら涙を流す。この景観に心を打たれたのか、はたまた平和な街並みを見て祖国を憂いているのか。いずれにしてもこの場は見なかったことにして思う存分泣いてもらうほうが良いだろう。

 僕は何も言わず、何もせず、ただアイリスの側に立ち桟橋から見える景色を眺めるのだった。





 その後、ルナが舟の手配をしてこちらへ来ると他の一行も集まってくる。


「どうなさったのですか、姫様!?まさか、そこの男に良からぬことをされたのではありませんか!?」


「………。殺す。」


「えぇ!?いやいや、誤解だって!僕は何もしてないよ!!」


 泣き腫らしたアイリスの目元を見てヤンヤンとマニマニが変な想像を膨らまして剣呑な雰囲気となる。こんな冤罪で殺されるのも変な雰囲気になるのもごめんである。が、僕は全力で否定するものの、中々信じてもらえない。


「いや本当だって!ちょっと、ルナもマクマクさんも僕がそんな人間じゃないって言ってよ!」


「シュウ様。まさかあなた様がそんな方だったとは。」


 このクソガイドぉぉぉ!!絶対今の状況楽しんでるだろ!口元がニヤついてるっての!

 マクマクはというと妹が殺るなら俺も手伝うと言っていないのに空気だけで分かってしまう。クソ、シスコンめ!


「皆、やめなさい。私は別にシュウさんから何かされたわけではありません。少し心が弱っていたところにこのような美しい景色が目に入ったので感極まってしまっただけです。」


 アイリスが恥ずかしそうに言うと殺気立っていた一同は急に柔らかい雰囲気となっていく。


「そうでしたか。これは気が回らず大変申し訳ありませんでした、姫様。確かにこの場所は美しいですね。心が洗われるようです。」


「迷惑をかけてしまいましたね。二人とも心配させるようなことをしてごめんなさい。」


「私は姫様が傷ついてないならそれで満足です。」


 ヤンヤンの言葉にアイリスが応えてマニマニがそれに返事をする。三人の周りにはとても暖かな空気が流れており良い雰囲気となっているが、僕を殺そうとしていたあれはなかったことになったんですかね?


「シュウ様、細かいことを気にしているとモテませんよ。」


 僕の心を読んだようにルナが僕へ囁いてくる。別に気にはしてないが、ルナに言われると何だか腑に落ちないのは何故だろうか…。


「おい、宿を探すのだろう?早く乗らないか。」


 マクマクはいち早く舟に乗り込みオールを手にしている。僕的にはこれも腑に落ちないわけだが、これ以上何か言うのも違うような気がするので僕たちはとりあえずルナが窓口で教えて貰った宿までいくことにして舟に乗り込む。

 マクマクは巧みに舟を操ると目的の場所まで危なげなく辿り着くことができた。これも隠密の技能なのかマクマクはかなりの芸達者である。

 着いた宿は船乗りたちも利用するらしく、大所帯が泊っても問題ないように大部屋が備えられていた。女性陣と男性陣二人に分かれて宿を取るとその日は名物の海鮮料理を堪能して就寝するのだった。


 ◇◇◇


 次の日、僕たちは舟に乗り込むと街の内陸部まで進むことにする。

 マクマクの操舵術は昨日よりも向上しており、快適に進むと直ぐに内陸部まで辿り着いた。


 海まで続いている運河はまだ内陸の方へ伸びているものの、街を移動するための舟を利用できるのはここまでらしい。僕たちは舟から降りると久しぶりに自分の足で街中を探索していく。

 途中でたこ焼きが売っていたので皆で味わいながら情報を集めつつ探索を終えると、ロズロ国の国境付近まで向かいそこで宿を取ることになった。


「それではシュウ様、あれの出番ですよ。」


「あれ、とは何でしょう?」


「あぁ、これのことだね。」


 アイリスが不思議そうに聞くと僕はドヤ顔で懐からある道具を出す。


「この方位磁針は錬金道具で、魔力を込めながら目的地を思い浮かべるとその方向を示してくれるっていう道具なんだ。」


「そんな便利な道具がこちらの世界にはあるのですね。」


「姫様、俺も初めて見る道具です。このような機能はアーティファクト級の代物でしょう。」


「アーティファクトって…。それは流石に言い過ぎでしょう、マクマクさん。」


 オーベロンが旅の餞別として貰った道具ではあるが、特別な道具という感じの渡し方ではなかったので単にマクマクが見たことがなかっただけのことだろう。ただ、懐中時計も高価なこの世界なので、もしかしたらこの道具も高価な品なのかもしれない。そう考えればこれまで目につかないように『ボックス』の中に仕舞っておいたのも正解だったのかもしれないな。


 そんな考えを巡らせた後、僕は方位磁針を使う。


「よし、こっちの方向だね。あの街道を通っていくのが良さそうだ。」


「それでは参りましょうか。」


 僕とルナが意気揚々と街道を歩いて行く。それに合わせて一同もついてくるが、この時の僕たちはまだ気付いていなかった。他にも僕たちの跡を付け狙う悪意があることに。

ロズロの入り口付近は江戸時代の廻船問屋やベネチアを思い浮かべて貰えると分かりやすいかと。

ちなみにアヅィールのモデルはギリシャのサントリーニ島とモロッコのシャウエンを掛け合わせた感じですね。どちらも筆者が観光で行ってみたい憧れの街。

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