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境界線

 この世界の火薬の作り方は、グリセスという草から抽出した液体を炭に混ぜることで完成する。ぐりセスは何処でも生えており比較的入手は簡単である。ただ抽出の手段と炭との混ぜ方が非常に難しいのだ。また炭に吸収されたグリセスは振動により急激な熱を帯て大爆発を起こす。取扱も非常に難しい。しかし、花吹雪はアイテムボックスがあり、扱い方を間違えて大爆発を起こしても不老不死の肉体のため、何も問題ない。


 薄暗い竹林の中、耳を劈く爆発音が響く。《広川》の配下の武士達が集まっていた。その中心にいるのは、真っ裸の花吹雪だ。


 花吹雪の右手は先程の大爆発で吹き飛んでいた。また花吹雪の足元には肉塊とかした何十体もの武士たちが転がっていた。


「手、手が、生える前に斬り伏せろ!!」


 年配の武士が震え上がる若者たちに喝を入れるように叫ぶ。一斉に襲いかかる武士たちの刀に花吹雪はなす術もなくバラバラにされる。しかし、花吹雪の返り血を浴びた者たちが苦しみだす。花吹雪の血には猛毒が仕込まれていたのだ。この数日で花吹雪は不老不死の肉体の操作に慣れ始めていた。一分程度であれば再生の力を止めることが出来るようになったのだ。武士たちが斬りかかる少し前に己の血管内に入る程度の大きさのアイテムボックスを召喚して血液内に毒を注入していたのだ。


 バラバラの花吹雪の頭部、その顔は笑っていた。


「も、モノノケめ!!」


 花吹雪の頭部を蹴り飛ばそうとした若者に、バラバラに落ちていた花吹雪の肉塊から伸びた血管が巻き付く。そして花吹雪の数十本の血管が若者の肉体に突き刺さり、その肉体の中で再生した花吹雪が、若者の肉体を引き裂くように内部から花吹雪が現れた。


 流石にその光景にゾッとした武士たちは刀を捨てて逃げ始める。しかし、竹林全体に油を撒いていた花吹雪は、アイテムボックスからたいまつを取り出し、ポイッと地面に投げ捨てた。


 武士たちが竹林から逃げ出すよりも早く、火が竹林を覆い尽くした。勿論、花吹雪は煙と炎に巻かれ、何度も焼死と窒息死を連続で体験する。しかし、痛みをちょっとした刺激だと思い始めていた花吹雪は、燃え盛る竹林を一歩一歩ゆっくりと出口へ向って歩いていた。


 そして、竹林を出た所で待ち伏せしていた《広川》の騎馬隊に遭遇する。花吹雪は無表情でアイテムボックスに手を突っ込む。そして火薬を握りしめた拳で目の前にいる武士を乗せる馬を殴った。

 

 竹林のときよりも多めに握っていたため、半径50m以上が跡形もなく吹っ飛んだ。バラバラになった花吹雪は、木の陰で静かに再生を始める。


「ま、まさか……本当にモノノケがいるとは……」

「《雲水》様、あのモノノケは不死身だと聞いております。まだ近くにいると思われます」

「ならば、探し出せ!! あれを都に近づける訳にはいかんのだ!!」


 そう、再生した花吹雪は再び、騎馬隊の目の前に姿を晒した。しかし、今度は騎馬隊に突っ込んでいくようなことはせずに、落ちていた刀で地面に一本の線を引いた。


「ここから、こっちが。私の領地。入ってくるなら容赦しない。だから私もこの線の向こうには行かない」

「何と、言葉が話せるのか?」

「私を何だと思っているんです? あと、マジマジと見ないでください。一応、乙女ですから」


 今更裸を気にするのかと、雲水は驚く。しかし、その線を超えなければ戦わないと言うならば、その案に乗るしかないと雲水は考えた。不死身の肉体と不思議な術を操る、この幼女を倒す術を見つけるまでの時間稼ぎになればよいのだと。


「で、そなたの名は?」

「ハナ」

「そうか、ハナか。あいわかった。それより先に足を踏みれぬことを民にも周知しよう」

「うん、お願い」


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