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空を見て、そうなった

 三週間後、何喰わぬ顔で戻ってきた花吹雪を勢い良く抱きしめるテン。テンは少々汗臭く、薄汚れていた。恐らく、何日もハナを森の中で探し続けていたのだろう。


「ハナ……。よく無事で帰ってきた」


 テンに抱きしめられていた花吹雪は、テンの肩越しにホッとため息を付く月読が見えた。村はハナが帰ってきたことで、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。


 テンはハナから一時も離れようとはしない。花吹雪はそれでも良いと思った。


 犬山半島における《広川》、《富田》、《星の輝き》の位置関係は、この《広川》に滅ぼされた南に位置する《岩国》を中心に考えると、北西に《広川》、南東に《星の輝き》、北に《富田》となる。南は海になるが絶壁の海岸が、北西の《広川》から南東の《星の輝き》まで続いている。なので《広川》は、大船を着岸できる港を必死に探しているのだ。また元《岩国》は森の国として有名で、その土地の多くは大森林に囲まれている。そして大森林の地形は複雑で起伏が激しい。北西の《広川》から南東の《星の輝き》へ行く最良の経路は一本しか無く、その経路上の近くにこの村があるのだ。


 しかし、《広川》の《雲水》と呼ばれた男の様子から、しばらくは陸路による《星の輝き》への遠征を諦めるだろうと花吹雪は考えた。


 だから、また……あのテンとの優しい時間が楽しめる……。


 あっ。そうか、テンとの時間を邪魔されたから腹が立ったのか。急に花吹雪は恥ずかしくなった。


「おい、ハナ? 顔が真っ赤だぞ? 熱でもあるのか?」


 花吹雪はパシンとテンの手を払い除けた。そして、服を掴むと歩き出す。


「お、おい……。ハナ、何処へ行くんだ?」


 テンは決してハナに怒ったりしないし、逆らったりもしない。何だかんだでハナの横を歩き出す。


 テンはこの先にある場所に気が付く。急にオドオドし始めるが、花吹雪はテンの服を掴んだまま離さなかった。


 その場所に着くと、花吹雪は服を脱ぎ、当たり前のように全裸になる。つまり、ここは天然温泉が吹き出す村の風呂場である。


 んっ! とハナが怒ったように服を引っ張る。これ以上ハナの機嫌を悪くする訳にはいかない。覚悟を決めたテンは初めてハナの前で全裸になる。ハナはしばらくテンのそれを見つめて、何もなかったかのように岩風呂に飛び込んだ。


 テンは岩風呂の中でハナの隣に座るも、人半分くらいの距離を取る。しかし、花吹雪はズズッと移動してきて、ピタッとテンの肌に自分の肌を触れさせた。


 ブルッと身震いするテンにハナが笑った。めったに笑うことのないハナが笑ったため、テンは少しばかり気分が良くなった。


 ハナは服越しには理解らなかったテンの鍛えられた肉体をペタペタと触っていた。テンはくすぐったかったが、ジッと動かずに我慢する。真剣になったハナは自分の邪魔をされるのをとても嫌うのだ。


 当たり前のように、男として当然の反応を示す触ってはイケない部分も平然と触ってくる。ハナは何も言わずに一通り触って満足すると、ぼーっと空を見上げ始める。


 この不思議な幼女というか少女にぞっこんなのは、きっと理解できないからだろうとテンは思った。


 しばらくすると、ハナは左手でテンの両目を塞ぐ。そして、テンの唇に己の唇を重ねた。花吹雪八歳、始めの接吻であった。テンもハナを優しく抱きしめ、それに答えた。そして、長く、甘い、素敵な時間は、ゆっくりと過ぎて行く。


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