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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 見晴らしがとても良くなった。


 「絶景かな絶景かな」


 生えていた木々が消え、肉片のようなものが散らばっている。

 適当なところで、レジナが神聖魔法の一つである【天崩鉄槌炎舞(イムグルア)】を発動させた結果である。


 「その杖、何なんですか?」


 レオンが何とかそれだけ言った。


 「専用武器?」


 「そんなものをいったい、どこで?」


 伝説の武器で杖となると、狂骸杖あたりだろうか。

 レオンの疑問に、いい笑顔でレジナは返す。


 「作った!」


 「え」


 「作った」


 無いものは作って手に入れる。

 昔から、父譲りのその性質のお陰かレジナはそれが得意だった。

 ただ、自分だけのために作り上げた杖は、今も彼女と成長段階にある。


 「…………」


 改めて、レオンはこの少女のことが怖くなった。

 地形を変えるほど強力な魔法を使用でき、更にはそれを発動させるための道具を自作できる存在。

 そんなに凄い、反則的な存在だと言うのに、レジナという名前すら有名ではない。

 そんなことがありうるのだろうか?

 噂にくらいなっても良いはずだ。

 国の軍部からスカウトだってきても良いはずだ。

 しかし、彼女は自由にあちこち旅をする魔法使いだ。

 安定した収入を得ることだって難しくないだろう。


 「質問を変えます。

 貴女は、どこでそれだけの力を手に入れたのですか?」


 「うーん、先生達が良かったのかな。

 あたしの故郷じゃ、普通だったし」


 それ以上の答えは、結局返って来なかった。

 そう言えば、今更に気づいたことがある。

 彼女は、レオンの前ではあまり魔法を使わない。

 もしかしたら、いま初めて見たかもしれない。

 だから、気づいた。

 彼女は、レオンを見ようとしていない。

 まるで、目を見られるのを避けているかのようだ。

 今だって、レオンよりも数歩先に立って背中だけしか見せていない。

 ここからは、顔が見えない。


 「…………」


 見てはいけない、と直感が告げた。

 知識として、魔眼保持者がそういった行動をとることがあると聞いたことがある。

 もしかしたら、魔眼保持者なのだろうか?

 だとするなら、彼女の瞳の色が変わっているはずで。

 それも、見せられない色となるとたった一つだ。

 しかし、まさかな、と思い直す。

 魔眼の色は様々だが、その中でも厄災をもたらすとされる禍々しい深紅は、一番忌み嫌われる色であり、出にくい色だとされている。


 (考えすぎ、だな)


 どの色であっても、魔眼保持者は色が変わることにコンプレックスを持っていて自然と見せないようにする。

 おそらく、彼女の行動もそれだろう。

 であるなら、見て見ぬふりがマナーというものだ。



 

 崖を切り抜いて作った神殿だった。

 入口の両脇には古代に信仰されていたとされている、神の姿が掘ってあった。


 「すごいなぁ」


 「なんか、すげえ宝探しっぽい」


 「これは、足を踏み入れるのを躊躇ってしまいますね」


 男達が口々にいう。

 

 「でも、どこかで見たことがあるような。

 あ、あれだ!

 インディ・ジョーンズの【最後の聖戦】の撮影に使われた場所に似てるんだ」


 カガリの言葉に、こちらの世界の住人であるレジナ達は首を傾げる。


 「その話、あとでまた教えてね」


 そう言われても、カガリに説明できることは限られる。

 ちなみに、カガリが口にした作品は有名な映画作品の一つである。

 撮影に使われた場所、いわゆるロケ地だが、この映画で世界的に知名度を上げたようだ。

 

 ヨルダンのペトラ遺跡のエルハズネ、またはエルカズネと呼ばれる。意味は宝物庫、あるいは宝物殿らしい。

 一説では、王の墓らしい。

 ということしか知らない。

 しかし、だからこそカガリにとって目の前の建造物が、勇者王の墓であるということに納得できた。

 宝物が眠っていそうだ。

 もしかしたら、不老不死の騎士がいそうな雰囲気だ。


 「なるほど、聖剣はともかく、聖杯にはぴったりな場所だ」


 子供の頃の、宝探しごっこのようなワクワク感が出てきて、カガリの心臓はその鼓動を早くした。

 こんな感覚は、正直、宝探しごっこでは味わえなかったかもしれない。


 見れば、レジナの顔が今まで見てきたどの彼女の表情よりも生き生きしている。

 ひょっとしたら、彼女が楽しんでいるのはこういった感覚なのかもしれない。

 とは言っても、この場所に聖杯はないらしいが。

 王様の墓と聞いて、日本人であるカガリが最初に思い浮かべたのは、エジプトのピラミッドとマヤのピラミッドだった。

 しかし、すぐに彼の故郷である日本にも古墳というものがあることを思い出す。

 教科書なんかには前方後円墳等とと記載されているが、小テストの時に鍵穴古墳とか、てるてる坊主古墳、女子トイレ古墳とか書いた記憶まで思い出してしまった。

 きっと、彼女には色んな話をさせられると思うので、ある程度思い出しておかないとなあ、なんて考えながら、眼前で圧倒的な存在感を放ち、荘厳さを保っている勇者王の墓を見ていた。


 「止めたのに、来たのですか?」


 そんな声を掛けられなければ、きっといつまでもカガリはその遺跡に見とれていたと思う。

 それは、いつぞや乗り合わせた人間の少年トーマとエルフの少女エリシアの二人組だった。

 声を掛けてきたのはエリシアの方だった。

 丁寧な言葉ではあるが、声には呆れと、そして棘がが含まれていた。


 「おや、無事だったんだ。意外としぶといなあのエルフ」


 死んでなかったのか、残念。

 そんな副音声が聞こえた気がした。

 言ったのは、当然レジナである。

 副音声だけでなく、舌打ちも聞こえてきそうだ。


 「いや、あのトーマとかいう奴も、か」


 今度は舌打ちが聞こえた。

 レオンがレジナ達とトーマ達を交互に見ながら疑問符を浮かべている。


 「お知り合いで?」


 やがて、そうアーサーに訊ねた。


 「話さなかったか?

 馬車に乗り合わせて、親切な忠告をした二人組だよ」


 アーサーの声に被せるように、トーマが言ってきた。

 

 「先程、野を焼き地形を変えるほどの魔法を見ました。

 あなた方には、荷が重い存在がこちらに来ているようです。

 早々に帰ることをオススメします」


 トーマはカガリを見ながら、そんなことを口にした。


 「なんだ、結局この子もか」


 残念そうにレジナが呟いた。

 そして、その忠告擬きを無視してレジナは男達に向かって言う。


 「んじゃ、確認ね。

 こういった遺跡に入るのが初めてな人、手上げて」


 カガリとレオンが挙手する。


 「よし、じゃあ注意事項ね。

 こういった場所には色んな罠があります。

 なにか見つけたら、まず報告すること!

 遺跡の中の物には勝手に触らない、先頭の人より先に行かない!

 なにか見つけたら、あたしかアーサーに報告するように!

 はい、わかった人は手ぇ上げて」


 先程と同じようにカガリとレオンが挙手する。

 それを確認して、レジナが先頭に立って歩き出す。

 ワナワナとエリシアが体をふるわせる。

 せっかく、注意してやったのに、しかもエルフという上位種族である自分が注意してやったのにその態度は何なんだと言いたげだ。

 しかし、口より先に手が動いていた。

 エリシアの指が中空を滑る。

 魔方陣が展開し、雷撃が放たれた。

 それは、今まさに遺跡に足を踏み入れた四人に迫る。


 「こっちの忠告も聞いとけっつーの」


 そんな冷たい声がレジナから漏れた。



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