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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 おそらくレジナは運が良い。

 ラッキーガールと言うやつだ。

 既に、レジナ、カガリ、アーサー、レオンの四人はフィストリア山脈の麓まで来ていた。

 ここは既に、どこの国の領地ではない。

 無法地帯だ。

 何が起きようと罰せられることはない。

 きっと、それもあって聖剣探しは殺し合いの潰し合いになっているのだ。

 

 「アンタらだね?

 行く先々で強盗紛いのことしてたのは!!」


 レジナの視線の先には、他でもないレジナによって顔の形を変えられた召喚された勇者だか、冒険者だかが逆さ吊りにされていた。

 人数は計十二人、全部で三つのパーティがレジナによるお仕置きを受けたあと、逆さ吊りにされ説教タイムとなっていた。


 サンドバッグ宜しく、全員が例外なくボコボコにされていた。

 レジナの凄いところは、男女を差別することなく、まるで機械のように平等に全員をシバいたところだろうか。

 ある程度したらレジナは満足したのか彼らが持っていた金目の物を、今までの慰謝料代わりに回収し、彼等は吊るしたままで四人はその場を去った。

 レオンがさすがに同情したが、しかし同情しただけだった。

 彼もそうだが、カガリもアーサーも、身に覚えのないことで吊るされてる者達のお仲間扱いを受けていたことに苛立っていた。

 だから、止める者はこの場はいなかった。



 「結局、山脈まで来ちゃいましたね」


 レオンの言葉に、レジナは凶悪顔で返す。


 「……聖剣手に入れて迷惑な奴らをドつきまわそうかと思ってる」


 「え、でも、わからないんじゃ?」


 レジナは、数秒、レオンの顔を見つめた。

 そして、続ける。


 「分かってる」


 「やはり、元々こちらが本命でしたか」


 「まあね。だから、今のうちにいっておく。

 早い者勝ち。取り合いになったら容赦なく潰す」


 レオンのことも容赦しない、と含ませる。


 「それは怖い。

 しかし、聖剣の在り処。その情報はどこで手に入れたのですか?」


 「内緒」


 「……それを聞いた私が貴女に危害を加えるとは思わなかったのですか?」


 「欲しいものは一つ。分けっこ出来ないなら、喧嘩になる。

 あたしは、両手両足を失っても、最悪首一つだけになっても相手の喉元に噛み付いて、手に入れる覚悟がある。

 そんな馬鹿に、簡単に勝てると思ってる?」


 「怖いなぁ」


 「弱いなら死にものぐるいで頑張るしかないもん」


 ふと思い出すのは、育ての母のことだ。

 美しい人だ。

 喋らずに、大人しくしていれば絶世の美女であり、女神のような人だ。

 本当に、口を開かず大人しくしていればの話だが。

 あの母に育てられたレジナは、性格にかなり影響を受けてしまった。

 言葉遣いも影響されて、直すことになったほどだ。

 今でも、時折出てしまうが、それはもう仕方ないだろう。


 「弱い?」


 レオンが訝しむ。


 「誰が?」 


 「あたし」


 「は?」


 レオンが、カガリ達の方に視線をやるが苦笑を返されて終わる。


 「んじゃ、レオンさん。

 今ここで潰しあおっか?」


 「三対一かぁ。

 提案なんですけど」


 「ん?」


 「探すの手伝うんで、露払いをしてもいいですか?」


 カガリはともかく、レジナとアーサーとは戦いたくないのだ。

 だからこその提案だった。


 「え、聖剣いらないの?」


 「欲しくない、と言えば嘘になりますが。

 あなた方と争う方が分が悪いので」


 「まぁ、いっか。

 どーせ、それも頼まれてたし」


 「?」


 「いや、フィストリア山脈の関係者にね。

 最近、山が聖剣目当ての人達が来すぎて荒らされてるから、駆除してくれって言われててさ」


 「え、でも、ここってどこの領土でもないですよ」


 「……条件が揃うとね、フィストリア山脈から妖精というか天使というか、まぁそんな存在が派遣されるの。

 で、その妖精に頼まれたんだよ、駆除を。

 その代金は前払いだった」


 「つまり、前払いとして聖剣の場所を教えてもらった、と」


 「そういうこと」


 レジナという少女の、その存在の底が見えない。 

 レオンは、言いしれない恐怖が大きくなるのを感じた。

 この少女は、いったいどこを目指しているのか。

 強い、弱いとかそう言ったレベルでは測れない【何か】のような気がしてならない。


 「この際です。

 あなたの持つ、聖剣の情報を開示してもらえませんか?」


 「そう言われても、ね」


 レジナは困ったように、頬を掻く。


 「ただ、一つ気になっていることはあるけど」


 そこで、レジナはチラリ、と山から視線を背後にやる。

 四人がやってきた方向には、鬱蒼とした森が広がっている。


 「というか、レオンさんは聖剣の何が知りたいの?」


 「まぁ、この自分の槍とどっちが強いかな、ということでしかないんですけど」


 「子供じみてる」


 槍と剣の違いは、そのリーチの違いだろうか。

 あとは、カガリのナイフやアーサーの持つ神剣(フツノミタマ)は、切れ味を重視して作られている。

 槍は斬るモノではなく、基本的に突き殺すのを目的に作られている。

 刃の形状によっては斬ることも可能だが、使い方がそもそも違うのだ。

 それも、分かっているだろうにどうしてそんな子供みたいなことを聞いてくるのか、レジナにはわからなかった。


 「重々承知の馬鹿な質問です。

 でも、男は馬鹿なんですよ」


 その言葉に、レジナは今度は父のことを思い出した。

 

 「よく知ってる」


 馬鹿でいる、記憶の中の父はいつでも楽しそうだ。

 

 「で、答えは、『わからないから、自分で確かめろ』ってところかな」


 「そりゃそうか。

 でも、そうすると私は、結局聖剣を手に入れたレジナさんと戦うことになるのかぁ」


 「あ、いやいや。

 聖剣はカガリ用だよ。

 たぶん、手に入れられても、あたしもだけどアーサーも、そしてレオンさんにも本当の意味で使うことは出来ないと思う」


 「あぁ、選ばれた人にしか抜けない、使えないって話で有名ですもんね」


 「そういうこと。

 所持はできるけどね。

 その所持したまま、ド突くことは出来ると思うけど」


 あ、するつもりだったんだ。

 なんとかして、所持してそのままぶん回すつもりだったのだと、レオンは気づいたが、これについてはあえて確認しなかった。

 個人の考えはさまざまだからだ。


 「でも、ま、それよりも、ここで少し潰しておこうかな」


 まるで、レジナのその言葉が合図であったかのように、カガリ、アーサー、レオンは武器を準備し始める。

 カガリが静かに殺人ピエロの凶器(ナイフ)を。

 アーサーが神剣(フツノミタマ)を。

 レオンも、布を取り払い雷神の槍(エージス)を二人のように構えた。


 レジナは少し考えて、お手製の杖を出現させた。

 途端に、息をひそめていたらしい夥しい数の気配が出現する。


 「うわお、こっちから行く前に動いた。

 カガリとレオンさん!

 疲れたら直ぐに言ってね、一掃するから!」


 少し悲しそうにアーサーが呟いた。


 「俺は?」


 しかし、その呟きは突如として上がった怒号に掻き消される。

 

 「軍隊かね?」


 アーサーの言葉に、レジナは考える。


 「かもね。でも、誰だろうとここじゃ関係ないよ。

 ここには人のルールは通用しない。

 ルールはフィストリア山脈のそれだけ。


 で、よくわかった。

 浄化も防御も、たしかにこれじゃ間に合わないわけだ」


 怒号とともに銅鑼の音や、角笛のような音も聴こえてきたので、おそらくだが別の国の軍隊同士が鉢合わせして戦闘に突入したのだと思われる。


 おそらく、森の中に潜んでいたのは軍隊だけでは無いはずだ。

 この戦闘に巻き込まれつつあるのは、勇者パーティや冒険者も同じである。

 

 


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