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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 英雄王とは、勇者王の時代から数えて二千年後ーーつまり現代(いま)から三千年前に現れた勇者である、とされている。

 しかし、英雄王が歴史の表舞台に現れた時期に関しては諸説ある。

 通説では三千年前の人物だが、史料によっては勇者王の死後二百年後の人物だとか、そもそもそんな人物はおらず、後世の創作だとも言われている。

 ただ、いなかったにせよ、モデルになった人物はいたようだが。

 その人物は雷神の加護を受けたとされる、某国の将軍であった。

 

 英雄王にしろ、某国の将軍にしろ、共通するのはその人物が所持する武器だ。

 最も有名な物は、二つの槍。

 雷神の槍(エージス)聖槍(ロンギヌス)の二つだ。

 雷神の槍(エージス)は一振すれば戦場にて雷を降らせ、相手の兵士を全滅させたと伝えられている。

 聖槍(ロンギヌス)は、数多の選ばれし勇者、英雄、そして神や神の血を引く者達の命を奪ってきた曰く付きの槍だ。


 尊い、そして聖なる血を吸った槍という意味で、聖槍という皮肉な名前がついている。

 レオンが所持していたのは、何を隠そう雷神の槍(エージス)であった。

 レジナはカガリに二つの武器の簡単な説明を終えると、彼女は彼の反応を待った。


 「前から思ってたんだけどさ、こっちの世界の武器ってなんでそんな節操ない名前ばっかりなの?」


 カガリが起きると同時に、竜車は今日の野営地兼駐車場に停車した。

 荷台から外に出ると、日が傾きかけていた。

 ずっと座りっぱなしであるため、休憩時もそうだが他の客達も思い思いに体を動かしている。

 寝る時は、荷台で雑魚寝であるので、決められた消灯時間までは自由に過ごせる。

 食事は各自が用意することになっている。

 あまり重いものは口にせず、干した果物やお湯で戻した乾し飯などが竜車に乗ってからの主食であった。

 

 乾し飯から作ったお粥を食べながら、カガリはレジナに訊ねた。

 

 「?」


 意味が分からなくて、レジナはキョトンとしている。


 「えーと、聖剣(エクスカリバー)は英語? なのに、アーサーさんの神剣(フツノミタマ)は日本語だし。

 かと思ったらレーヴァテインなんて、名前のやつがあるし」


 「エーゴ? ニホ、ゴ?」


 「えいごと、にほんごね。

 俺のいた世界だと国ごとに言葉が違ってたから。

 というか、本当に今更なんだけど元の世界にある伝説の武器と名前が一緒ってどういうことなんだろ?」


 「ああ、そういうことか。

 命名は武器の作成者がつけることが多いから、カガリと同じ転移者か生まれ変わりである転生者が、持っていた知識から付けたんじゃないかと思うよ。

 そんな記述を読んだことがある。

 …………その口振りからすると、レーヴァテインはえやエーゴやニホンゴとは違う地域の言葉ってことかな?

 そう言えば、聖剣の名前も知ってたしいつか聞こうと思ってたから色々教えてよ」


 「いや、そんなグイグイこられても、俺も詳しくないし」


 マンガか何かで、語源だかが古ノルド語ということしか、カガリは知らなかった。

 そして、聖剣エクスカリバーについても、元の世界の話はよく知らなかった。

 中学時代の友人に、イギリス版桃太郎みたいな話、としか聞いていない。

 この話に詳しい人がいたら、きっとカガリはフルボッコに合っていたことだろう。

 しかし悲しいかな、ここにそれらを詳しく語ることのできる者はいなかった。


 「じゃあ、カガリは何に詳しいの?」


 「え」


 「いや、元の世界のそう言った伝説とか知ってることで良いから。

 知ってる範囲で教えてよ」


 「うーん、そんな詳しくないよ、俺」


 「えー、宗教とかで良いからさ」


 「じゃあ、古事記でいいかな?」


 「物乞いのこと?」


 「それは、乞食。

 俺のいた国だと犯罪だった」


 「そうなんだ、なんで?」


 「憲法で働くことが義務づけられてたから。

 要は、働かないで金を集めることを禁止してたってこと」


 「なるほど、結構ルールがちゃんとしてたんだ。

 それで、物乞いじゃない方のコジキって?」


 そこまで、ルールがちゃんとしていたかは、正直なところ謎だ。

 カガリがこちらの世界に来て、何度か目にした奴隷達より、元の世界の大人たちはもしかしたら働いていたかもしれない。

 違うのは、鞭で打たれるか、言葉で殴られるか、あるいは手や足で暴力を振るわれるかの違いくらいだろうか。

 

 「俺のいた国の歴史書の一つ、だと思う」


 カガリは中学生の頃、学校の図書室で子供向けの古事記のマンガを読んだことがあり、その内容を少しだけ覚えていた。

 高校の図書室では、もう少し大人向けというか、より原作に近い内容の本が置いてあり、つい手に取って読んだのだ。


 「あ、」


 不意に思い出してしまった。

 古事記の元々の話には、かなりアレな描写があるのだ。


 「へえ!」


 レジナが目を輝かせる。

 子供向けの方で良いだろう。

 そうでなければ、話せない。

 何しろ、とある場面では男女の神様達が、出ている部分がどーだとか、こちらは足りない部分があるとか、ならそこを合わせたらいいんじゃないかとか、とどのつまり夜の営み的な描写があったのだ。

 レジナなら、淡々と、そして平然と話を聞きそうだが、話をするのはカガリなわけだ。

 こちらの生活にも慣れ、まぁかなり殺伐とした場面も経験したが、そういったところはまだまだ歳相応だ。

 そう言えば、レジナは歴史に興味があるといいながら、そして異世界から召喚した勇者達に興味があると示しておきながら、こうして、カガリの故郷について積極的に聞いてくることは稀だ。

 どちらかと言うと、話の流れでカガリが口を挟んで、そこにレジナが疑問をぶつけてくる。

 

 楽しげに会話するレジナとカガリの二人を横目に、竜車に乗り合わせたレオンは、淡々とお粥を食べるアーサーに聞いてみた。


 「彼女、いったい何者なんですか?

 それに、あのカガリとか言う少年の顔立ちは、最近世間を騒がせている召喚された勇者達と同じですよね?」


 「さあな」


 「それは、どちらの答えの【さあな】ですか?」


 「両方」


 「仲間なのに知らない、ということでしょうか?」


 「自分で訊けよって意味の【さあな】だ」


 「…………」


 「レジナとの付き合いはそれなりに長いけど、お互いそんなに知ってることは多くないぞ。

 カガリについても、疑問があるならアレの保護者はレジナだからな。

 レジナに訊けよ」


 「そうは言っても、なかなか聞にくいものですよ。

 この槍について、布を取らずに中身を言い当てたんですから」


 「雷槍については、俺も実物を見るのは初めてだ。

 この際だし聞くが、レオンさんはどこでそれを?」


 「呼び捨てで構いません。

 教えても良いですが、あなた方のことも教えてください」


 「……まあ、良いか。

 と言っても最初にした紹介以上のことは話すネタなんてねーぞ」


 「いやいや、色々あるでしょう。

 カガリさんの話している内容も実に興味深い」


 「なら、何度も言うが自分で交ざってこいよ」


 たぶん、もうとっくにカガリが何者なのか知ってるだろうに。


 「そうなんですけどね~。

 事前に情報を集めてからでないと、失礼にあたるかなと思いまして」


 「俺にはかなり気安いじゃねーか?」


 「いや、アーサーさんは話しやすいタイプですから。

 カガリさんもそう言った点では同じです。

 でも、レジナさんは、正直わからないんですよね~。

 本を読んでいる時も、そうでしたけど。


 なんていうか、隙が無さすぎて本当に人形のようだ」


 「あはは、お前、面白いこと言うなぁ。

 アイツはそんなお人形さんってタイプじゃねーぞ」


 「というと?」


 「お前が言ったんだろ?

 力量は遥かに上、相手にしたくないって。

 んで、その棒が槍だと見抜いたって」


 レオンは苦笑するしか無かった。



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