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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 使者からはフィストリア山脈で、聖剣探しをしている者達を何とかしろと言われたが、竜車の予約がもったいなかったので遠回りになるが、勇者王の隠れ湯があった街以上に温泉を売りにしているその街、【リテーゼ】から乗り換えてから山脈へ向かうことにした。


 竜車でも五日程かかる。

 その途中で何度か小さな村や街で休憩を挟んだのだが、その度にイキった転移者らしき者達と遭遇した。

 アーサーとカガリは基本寝たフリと普通に寝てやり過ごした。

 レジナは、読もうと思っていた小説ーー所謂積み本を消化していったので、極力トラブルとはここに来て無縁となった。

 最終地点がリテーゼなのだが、その途中で下車する者もいれば乗車してくる者もいた。

 その者は、そんな乗客の一人だった。

 月光のような銀髪をアーサーとは違い首のところで緩く束ね、その瞳は獅子を思わせるほど意思が強そうな、黄金色をしていた。

 歳は、十代後半くらいだろうか。

 どこぞの貴族か、王族の血が入っているのかもしれない。

 その男は出発して三日目に乗ってきた客の一人だった。武器なのか長物を布で包んでいるものを持っていた。

 一人旅のようで、適当に雑魚寝しているカガリとアーサー、そして、そのすぐ側で物静かに本を読んでいたレジナの近くに腰をおろした。


 「失礼ですが、酔わないのですか?」


 しばらくして、男がそう訊ねた。


 「…………」


 本に集中していて、レジナは気づかない。


 「あの」


 戸惑った銀髪の男が、さらに続けようとする。

 そこに、寝たフリをしていたアーサーが声をかけた。


 「あー、無駄だぞ。

 そいつがそうなってると、竜王(ドラゴン・ロード)に踏み潰されでもしない限り反応しないから」


 「はあ、なるほど」


 寝たフリにも飽きていたアーサーは起きて、背筋を伸ばす。

 

 「商人、ですか?」


 「いいや、俺はただの旅の傭兵。

 そいつは、旅の魔法使い。

 んで、そこで寝てるガキはその魔法使いの弟子」


 「今どき珍しい。冒険者ではないのですか?」


 「そうとも言うな。

 俺はアーサー」


 「レオン、と申します。

 てっきり冒険者パーティかと」


 「あー、フィストリア山脈になんか集まってるってやつか」


 「ええ」


 「レオンさんもそれ目的で?」


 「まぁ、そうですね。

 あなた方も?」


 「いいや、物見遊山で行こうとしたら止められて、温泉に観光ルートに変わったんだ」


 「それはまた」


 苦笑しつつ、言いながらレオンはアーサーの剣を見た。


 「失礼な方もいたものだ」


 「?」


 「こちらの美しい方も、あなたも並々ならぬ力量を持っているというのに」


 美しい、という言葉にアーサーは、本に集中しているレジナと言った張本人であるレオンを交互に見る。


 「一目惚れ?」


 「さて、どうでしょう?

 私は、かつて仕事柄、とある国の貴族や王族の美姫達を見たことがあるのですが、彼女はその姫達よりも美しくみえます」


 ぞわわ、とアーサーは鳥肌が立った。

 見たところ、レオンは育ちが良さそうだ。

 没落した元貴族の血縁者か、仕事柄貴族や王族の美姫を見たことがあると言ったので、もしかしたらそういった身分の者専門に商売をしている貿易商人なのかもしれない。


 「それこそ、職人かあるいは神が直々に作ったとされる作品のようだ」


 「…………。

 もしかして、作家かなにかか?」


 「そう、見えますか?」


 「あまりにも、歯が浮きそうなセリフばかりなもんで」


 「あはは。

 違いますよ、まぁ、聖剣を手にして一攫千金を狙ってはいますがね」


 「おいおい、俺が俺達がその聖剣を奪い合うライバルだとは思わないのか?」


 「あなたが今しがた言ったんじゃないですか、物見遊山で聖剣があるとされるフィストリア山脈に行こうとしたけど諦めたって」


 「まぁな」


 「……聖剣のことなんですけど、本当のことを言うと、腕試しに行くが正解なんです。聖剣はついでです。」


 「腕試し?」


 「お恥ずかしい話、とある姫の御機嫌を損ねて国外追放になりまして。

 その際、まぁ、姫の想い人にボコボコにされてしまいましてね。

 自惚れ、は無かったと思うんですが、まるで神が彼に味方しているように派手に負けて、糾弾され、断罪されました。

 あちこち旅をして武者修行の最中なんです。

 それで先日、フィストリア山脈の話を聞きまして、天界から各国が召喚したとされる勇者達に、腕に覚えのある冒険者達が集結していると話を聞いて、ちょうど良いな、と」


 聖剣は一つ。

 しかし、それを求める者は大多数。

 争いが、取り合いが起きないわけはない。

 レオンは、そこに乱入して暴れまくるつもりなのだろう。


 「でも、あなた方は聖剣探しには挑戦しないと聞いて安心しました。

 このような、美しく強い方も、あなたのように勇ましくやはり強い方も私の手には余りますから。

 その少年でギリギリ渡り合える、といったところしょうか?」


 「腕は上げたいが、死にたくはないと」


 「まあ、そんなところです。

 しかし、盗賊とは別で最近はおかしな連中が増えました。

 言動や装備品からみて、召喚されたと思われる者達が奇妙な行動をとることが多いようなのです」


 「もしかしなくても、レオンさんも飛び蹴りをいきなり食らったのか?」


 「と、飛び蹴り?」


 反応に困っているレオンに、アーサーはこれまでのトラブルを面白可笑しく話す。


 「そんなことが。

 そう、ですね。さすがに、いきなり飛び蹴りは無かったですが似たようなトラブルに何度か巻き込まれました。

 相手が思い込みで、がなり立てて騒ぐので苦労しました。

 そう言えば、姫の想い人も似たような言動をしていましたね」


 その想い人もかなり位の高い人物だった。

 あのあと、風の噂で二人の婚約が決まったのだが、姫の想い人の男には別に婚約者がいて、その婚約者との話は破棄されたとか。

 奇妙なことに、こう言った話をレオンは行く先々で聞くことになった。

 さらに奇妙なことに、話の流れがほぼ一緒なのだ。

 まるで、そう言った作り話が同時多発的に、そして意図的に流布されているかのように。

 

 「召喚された者でなくても、そう言った者達が出始めているようなのです」


 と、そこで本を閉じる音がした。


 「たぶんそれ、生まれ変わりだと思う」


 満ち足りた表情で、本をカバンに仕舞いつつレジナはそんなことを言った。


 「生まれ変わり?」


 「そ、前世の記憶ってやつ」


 怪訝そうなアーサーの言葉に、レジナはそう答えた。

 そして、レオンを見ながら名乗った。


 「あたしは、レジナ。よろしくレオンさん」


 どうやら声は聴こえていたようだ。


 「よろしく。それで生まれ変わり、というのは?」


 「文字通り、今死んでも来世で別人として生まれることだよ。

 輪廻転生ともいう。

 本来は記憶を引き継ぐとか、前世、生まれ変わる前のことは覚えていないんだけど、極々稀にその記憶を宿す場合があるらしいよ。

 伝説じゃ英雄王を含めて何人かそのタイプがいたらしいし。

 特徴としては、誰も教えていない知識を幼い頃から有していたり、魔力なんかが五歳くらいまでに、まるで訓練され修行したプロ並みのキャパシティだったり、扱いもやっぱりプロ並みっていう人が多いみたい。

 どーも、赤ん坊の頃から自我があって、自主トレしてたみたい」


 呆然と話を聞いていたレオンが思わず呟いた。


 「よくご存知ですね」


 「まぁ、そういうのが好きでね。

 多分、有名な学者よりへんな話を知ってる自信はあるよ。

 たとえば、君の持つその槍の事とか、ね」

 

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