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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 使者は、レジナへ聖剣の場所を伝えると、


 「これで少しは娘の願望実現に前進できるかね?」


 なんて言って去っていった。


 「さて、どうでしょう?

 夢も憧れも、追っかけているうちが楽しいものですから」


 そう、レジナは呟いた。


 途端に時間も動き出す。

 何事も無かったかのように、レジナは猫耳獣人の少女エトワールと握手を交わした。


 そして、街から少し歩くとある山。

 その遊歩道を歩きながら、二人は何気ない会話をする。


 「勇者王のお話しは、パパが好きでよく寝る前に聞かせてくれていたんです」


 「へえ、たしかに男の子の人気ヤバいもんね」


 「やば?」


 エトワールの反応を見て、レジナは言い直す。


 「男の子にも物凄く人気だもんね」


 「はい!

 でも、私は姫救済の話が好きなんです。

 パパは、決戦夜話が好きですけど」


 「王道だね」


 「レジナさんは、どのお話が好きなんですか?」


 「あたし?

 マイナーだよ。

 勇者使徒前話」


 「?」


 「知らないでしょ?」


 「はい。そんな話ありましたっけ?」


 「うん。物凄くマイナーであまり知られてないし、規制が掛かったこともあって、その話が書かれてる本は基本、確認、発見される端から燃やされちゃうから」


 「え、じゃあ、なんでレジナさんはそのお話を知ってるんですか?」


 「まぁ、色々縁があって教えてもらったんだ」


 エトワールが、誰に? と再度聞こうとしたがちょうど隠れ湯の場所へ着いてしまう。

 そこは、洞窟だった。

 いや、トンネルだ。

 元は手か魔法か、普通に掘ったらしきその穴に沿って石がアーチ状に積まれている。

 その中には魔法による明かりが点っていて歩きやすい。


 抜けると、崖の側面に足場を組んでいる場所に出た。

 下には川が流れていて、すぐ横に水たまりのような場所があった。

 白い煙ーー湯気が出ているのでお湯たまりと言ったところか。

 その場所を指差しながら、エトワールが言う。


 「あれが勇者王が、仲間と共に入ったとされる隠れ湯です。

 さっきの洞窟を抜けて偶然見つけたらしいです」


 「へえ」


 「すぐ近くから源泉が出ていて、川の水と混ざるとちょうどいい温度になるとか」


 「ふむふむ」


 そんな感じで説明を受け、しばらく見学した後来た道を戻ってきた。

 温泉街まで戻ると、喫茶店に入りチップ代わりにお茶と甘いものをレジナはエトワールに奢った。

 そして、ガイド代にだいぶイロをつけて渡し、かなり感謝されたのだった。

 

 「んじゃ、今日はありがとね」


 「あ、こちらこそありがとうございました!」 


 そうして、二人は分かれレジナはホテルへと戻ろうとしたのだが、その道中に何やら人集りが出来ていた。

 どうやら喧嘩のようだった。

 興味を持ったのが運の尽きで、その人集りを掻き分け、騒ぎの中心の光景を見ようと中央に近づくと、何故かその辺に生えてる猫じゃらしを持ってつまらなそうにしているアーサーの姿があった。

 その眼前には息荒く仰向けで倒れている、ヨシハルの姿があった。


 「うわぁ」


 そのヨシハルに群がる少女達。

 少女達は、アーサーのことを睨みつけていた。

 しかし、そんなことはお構い無しにアーサーは、どうしてそんな所に落ちているのかわからない鞘から抜かれた剣と、また別の場所に落ちていた鞘を拾いあげる。

 そして、剣を鞘に収める。

 剣には背中で背負えるように、皮のベルトが取り付けてあり、その通りにアーサーは身につける。


 「んじゃ、これ貰っていくから」


 少女達から驚愕と非難の声が上がる。


 「なっ?!」


 「か、返しなさいよ、泥棒!」


 「それは、ヨシハル殿の物だ!」


 「そうなのです! ハルのものを盗っちゃダメなのです!」


 順に、エルフの少女ミーファ、人間の少女エミル、鬼人族の少女ゾネス、兎の獣人の少女ルルドから口々にピーチクパーチク、キーキー喚かれて、ピキっと、アーサーに青筋が浮かぶ。


 「選ばれたヨシハルにしか扱えない、聖剣です。

 貴方なんかには宝の持ち腐れでしょう!」


 ピキピキ、ビキィ。


 「おい、言いがかりつけて俺の神剣を強盗しようとした盗人どもが言うじゃねーか」


 アーサーはニッコリと笑顔でそんな事を言う。


 「そ、それは、だって、貴方が持つような物ではないからです!」


 エミルがおそらく少女達の中でもリーダー格の存在なのだろう、強気で言い返してくる。


 「んじゃ、その言葉をそのまま返すぞ。

 俺の神剣、フツノミタマはお前らみたいなガキンチョが扱えるものじゃねーよ。

 現にお前らのリーダーは猫じゃらしに負けたしな」


 「それは、貴様が卑怯な手を使ったからだろ!

 そうで無ければ、ヨシハル殿が負けるはずない!」


 ぶっつん。

 レジナには、アーサーの堪忍袋の緒が切れる音が聞こえた気がした。


 「そーかそーか。

 選ばれた存在には、血反吐を吐いて手にした強さに価値は無いと、そういうことだな。

 オーケー、オーケー。わかった。

 よーく、わかった。

 んじゃあ、王子様を守るためにお前ら全員かかってこいや」

 

 「はあ!?

 サイってー女を殴る気??」


 「なるほど、正当防衛で身を守るための行為ですら、許されないのな。

 アホくさ、お前らどんだけ偉いんだよ?

 それとも自信がないのか?

 そうだよなぁ?

 なんせ、お前らキャーキャー言って王子様に守られるだけのお姫様的存在だもんな?」


 この言葉にゾネスが剣を抜く。


 「おい、取り消せ」


 「なにを?」


 「今の言葉だ。

 取り消せば命だけは助けてやる」


 「はぁ?

 なんでそんなことをしなければなんないんだよ?

 あ、なるほど本当のこと言われて怒ったのか」


 と、そこでゾネスが一気に間合いを詰めて大剣を振るった。

 当たったなら骨を砕いて、相手を死に至らしめるだろう強烈な一撃だ。

 しかし、


 「うんうん、近づいて斬る。

 普通ならこれで死んでるよなぁ?」


 ゾネスの持つ剣が重くなった。

 驚愕の表情で、ゾネスが剣を見た。

 そこには、曲芸師のように剣の上で器用にしゃがんで頬ずえついて、彼女を見ているアーサーがいた。


 「はい、反応が遅い」


 なんて言って、アーサーは少し強めのデコピンをゾネスに繰り出した。

 瞬間。

 彼女の頭が後ろに仰け反って、吹っ飛んだ。


 「これで三回は死んでるよ、鬼人族のお嬢ちゃん」


 危なげなく着地して、アーサーはそう呟いた。

 直後、今度はアーサーの足元に魔方陣が出現する。

 エルフの少女、ミーファが展開している支援魔法のようである。


 「魔法の展開、ってこんな遅いっけ?」


 レジナの魔法展開の速度に慣れてしまったのか、アーサーは首を傾げつつそれを鞘に収まったままの神剣で小突く。

 それだけで、展開していた魔方陣はその力を発揮することなく、消えてしまう。


 「うそ、どうして?!」


 レジナの時以上に、信じられないとばかりに絶望の表情がミーファに浮かぶ。


 「おー、さすが俺の神剣(フツノミタマ)


 そう鼻高々なアーサーに、今度は兎獣人のルルドがその俊敏性を活かして彼に襲いかかった。

 投げナイフなど、投擲の武器が彼女の武器のようだ。

 それらが、アーサーに迫る。

 しかし、アーサーは余裕なもので、足元に落ちていた石ころを複数拾うとそれらを指で弾き飛ばし、向かってきた武器を撃ち落とした。


 「さすがに、その足は厄介だな」


 続いて、そう呟いて。

 今度はポケットから、似たような小石を取り出す。

 石は目立つ赤やオレンジに塗られていた。

 それを同じように指で弾く。

 弾かれた小石は、ルルドの足をかすめ、小さな傷を作った。


 「ついでに、あっちも」


 デコピンで吹っ飛ばしたゾネスの方にも、両腕と両足に同じように石を弾き飛ばして傷をつける。

 

 「そんなので、私の足を……??」


 ガクン、とルルドが倒れ伏した。

 

 「な、え?」


 何が起こったか分からずに、ルルドが戸惑う。


 「毒だよ。

 安心しな数分もすれば動けるようになる。

 あぁ、なんだっけ?

 あらゆる身体異常を無効化するスキルとか言ったか?

 それ使っても無駄だぜ。

 なにしろ、アレで無効化できるのは発見、研究されてる毒だけだからな」


 そう言えば、前に指名手配されサバイバル生活をしていた時に、さまざまな毒を採取して何やら調合していたが、おそらくあの小石を作るためだったようだ。


 「さて、ガキンチョども。

 格の違いは学べたか?」


 

 


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