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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 「あのエルフの女の子、魔法が解除出来なくて焦ってて、いやいや中々痛快だったなぁ」


 人の悪い顔でレジナがそう言ったのは、観光案内所の建物まできた時だった。


 「あの誇り高いとかで有名な、いけ好かない憎ったらしいエルフに勝った!」


 そんな風に喜んでいるレジナに、カガリが訊いた。


 「え、でもレジナってかなり強いよね?」


 「いんや、あたしは元々魔法も体術も基本人並み以下なんだよ」


 「え?」


 「ん?」


 「お前なー、そういうの逆に嫌味に聞こえるぞ」


 アーサーが呆れて言う。

 意味がわからなくて、レジナは首を傾げる。

 カガリもアーサーを見た。


 「というか、お前にとっての人並み基準がそもそも間違ってるって何回言えばわかるんだよ?」


 「どういうことですか?」


 「こいつの考える、傭兵とか魔法使いの平均値ってかなり高いんだ」


 「かなり、ってどれくらいなんですか?」


 それに答えたのはレジナだった。


 「あたしの故郷じゃ魔法の全属性使いはゴロゴロいたし、基本一人で竜狩りするのが当たり前だったよ」


 「普通は一人ひとつの属性しか使えないし、そもそも竜は一人で狩れるもんじゃないんだよ」


 アーサーから疲れた声が漏れた。

 このやり取りもかなりの回数こなしているのだろう。


 「あたしのお母さんなんか、故郷を滅ぼしにきたイキった魔族をワンパンで血祭りにしてた」


 「レジナのお母さんって、魔王かなんか?」


 「産んでくれた、お母さんは普通の人間だよ。

 育ててくれたお母さんはゴリラだったけど。

 あと魔王なのは師匠の方」


 「は?」


 アーサーが戸惑いの声をあげ、


 「???」


 意味がわからないとばかりに、カガリの顔に疑問符が浮かぶ。


 「え、なに、お前母親二人いんの?」


 アーサーも初耳だったのだろう、そう訊ねる。


 「そうだよ。あれ?

 言ってなかったっけ?」


 これはもしかしなくても、複雑な家庭環境と言うやつだろうか?

 カガリがハラハラしつつ続きを待つ。


 「聞いてねーよ!」


 「えーと、レジナのお父さんは複数のお母さんを娶っていたってこと?」


 遠慮がちに、それでも好奇心が勝ってカガリはきいてみた。


 「ん?

 あー、違う違う。

 あたしを産んだお母さん、産んだ後に、体が弱くなっちゃって入退院を繰り返してたの、で、お父さんは仕事が忙しくてあたしを職場に連れて行ったりとかしてたんだけど、なかなか厳しくて。

 で、二人の共通の友達だった育てのお母さんが見兼ねてあたしの面倒をみることにしたんだって。

 その時丁度暇してたみたいで、小さい頃のあたしも懐いてたからってことで。

 よくあちこち、連れてってもらったなぁ。懐かしい」


 「えと、その育ての母親がゴリラってのは?」


 ゴリラの獣人ということだろうか?

 見たことも聞いたこともないが。


 「なんか、昔の仲間の人達からはピンクゴリラって言われてた」


 それを聞いて、カガリはアーサーに耳打ちした。


 「こっちの世界にはピンク色の毛のゴリラがいるんですか?」


 「いないいない」


 気を取り直して、師匠について聞いてみる。


 「その、師匠が魔王ってのは?」


 「あたしが旅に出ようと決めて、両親に相談したら、一年間異世界の魔王のお城でバイトするように言われて、そこの上司で魔王だった人に色々基礎からの応用を教えてもらったんだ。

 だから、魔王が師匠」


 ダメだ、話が噛み合わない。

 というか、おそらく作り話だろうと思われた。

 先程のハーレム風五人組なみに話が噛み合わない。

 何故なら、アーサーの反応を見てもそうだがこの世界での、おそらく一般的なお母さんはワンパンで魔族を血祭りに上げたりできないだろうと思われるからだ。

 育ての母親がいるのは、おそらく本当だろうが面白おかしく誤魔化しているように思われた。

 そもそも、ピンク色のゴリラがいないらしいし。

 仕方ないので質問を変えてみた。


 「えっと、じゃあ前にレジナが言ってた、俺が他の勇者より強くなれるって言うのは?」


 失礼だが、弱い人に教わっても強くなれないよね、という意味で聞いてみる。


 「何事も基礎って大事でね。

 あたしは、故郷で一番弱っちかったけど基礎だけ馬鹿みたいに訓練して習得したら、人並みになれたんだ。

 だから、元々才能とか素質のあるカガリだったら、基礎を完璧に習得すればきっとあっという間に、あたしを追い抜いて最強になれると踏んでるんだ」


 ごめんなさい、たぶんそれ無理。

 そう言いたいのだが、レジナはカガリが強くなると信じているようだ。

 どこまで本気かはわからないが。




 観光案内所で、冗談交じりに受付の人に先程の事を話したらかなり深刻そうな表情をされた。


 「その件ですか。

 おそらく子供の方は、最近増えてる孤児かと思われますね」


 「孤児が増えてるんですか?

 見たところ、この街はそれほど貧乏には、思えませんが」


 「ええ、雇用もそれなりにあります。観光資源も。

 でも、ちょっと前からフィストリア山脈の調査のクエストで、冒険者達がサポート要員を破格の金額で募集していて、そちらの方に人材が流れて行ってるんです。

 流れて行くのは、主に非正規雇用の元冒険者の方々です。

 結婚や怪我、その他様座な事情で冒険者を引退した人達が、もう少し稼ぎたいあわよくば一攫千金狙いでそちらに雇われているようなのです。

 仕事内容は荷物持ちなどの雑務ということですが、やはり職種が職種なので帰らぬ人となる人も日に日に増えているようです。

 生死が分かればまだいいんですけど、生死不明の行方不明となる場合もあるらしくて」


 「なるほど、つまり生死不明の行方不明になった者達の家族がさっきみたいな子供たち、というわけですか」


 「その通りです。

 最近では、そのような子供たちをさらって売り飛ばす奴隷商人もいるとか。

 役所のほうでも対策をしてるんですが、色々と追いついていないのが現状のようです。

 中には、売り飛ばされなくても旅人などに物乞いをしたり、あなた方が出会った子供のようにガイドをしてお金を稼ごうとする事もあるようで。

 あとは、子供たちだけで徒党を組んでスリをする子も増えているのでお気をつけください。

 そうそう、人さらい、とは違うのですが貴方方が遭遇したような事案も増えてるのです」


 「というと?」


 「他からこの街にきたであろう正義感の強い旅人が、善意で子供たちを助けたいがために他の旅行客とトラブルになる、という事案です。

 いきなり殴られたり、勘違いされた上冤罪で役所に突き出されるというトラブルが発生しています」


 「……そういった子供を見つけたら、どうするのがこの街の正解ですか?」


 「通報してください。

 役所の大人が対処します。

 子供たちにガイドを依頼しても良いですが、その場合いかなるトラブルが起きてもお客様の自己責任になります。

 声を掛けられた場合のトラブル回避については、一番良いのはは、酷いとか冷たいと言われますが無視することですね」


 「わかりました。

 それじゃ、本題に入りましょう。

 勇者王の隠れ湯ってどこにありますか?

 それと料理が美味しい宿を教えてください」


 そうして、勇者王の隠れ湯とそれ以外の観光スポットの場所が記載された地図と、いくつかの宿候補を定時される。

 ちらり、とレジナは退屈そうにしているカガリとアーサーを見て食べ放題プランのある宿を選んだ。

 それから目的の宿に行って、二日間の宿泊で手続きをする。

 

 「よし、じゃあ足湯に行こう!」


 街のあちこちに、主に日帰り目的の客をターゲットにした足湯を提供している施設と露天風呂を含めた様々な湯を提供している施設があるらしい。

 混浴施設も、複数箇所あるようだ。

 レジナの言葉に、カガリとアーサーは口を揃えて混浴に入りたいとのたまった。

 童貞のカガリはそわそわしている。

 童貞ではないアーサーは、下心が顔に出ていた。


 「じゃあ、別行動しよっか!

 あたしは好きに見て回るからさ、夕飯までにはこの宿に集合ね」


 レジナの言葉に、何故かカガリは残念そうにする。

 と、一応、念押しを忘れない。


 「あ、それと、さっきの受け付けの人の注意も聞いてたよね?

 子供に話しかけられても相手にしない、見つけたら近くのお店とかに入って通報してもらう。

 あとは、さっきみたいな一方的な勘違い連中とのトラブルも避けること。

 カガリは、もし巻きこまれたら逃げること」


 二人して、わかったわかったとうなづいている。

 心は既に混浴に支配されているようだ。


 そうして自由行動となった。



 




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