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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 馬車ではなく竜車になると言われた。

 竜車の方は、文字通り荷車を竜が引くものだ。

 目的地に早く着くうえ収容人数が馬車よりも多い、しかし若干値段が割高になる。


 「え、でも広場には馬車が止まってましたよ?」


 受け付け嬢に首を傾げながら聞けば、大口の予約が入ったらしい。

 安い馬車もそうだが、割高になる竜車もほとんどが出払っているとか。


 「なんでも、フィストリア山脈に冒険者達が集結しているとかで、色んな国からとにかくそちらの方に集中的に馬車と竜車を集めろって言われてて。

 他にご利用するお客様からは苦情も出てるんですよ。

 温泉街の方からも定期便が激減したことで苦情が来てるし」


 馬車と竜車を運営しているここも、かなり参っているようだった。


 「でも、温泉街には行けるんですよね?」


 「はい。定期便が激減しただけで、一日に三便ほど出てるんです。

 ただ本当なら温泉街方面は三十便はあるのにこれですから」


 「なら、それで予約をお願いします。

 出来るだけ、早い時間の便でお願いします」


 「でしたら、明後日の便になりますね。

 今日と明日は既に予約で満席なんです。

 キャンセル待ちはされますか?」


 「そうですね。一応明後日で予約して、もし今日明日でキャンセルが出るようならそちらで」


 そこまで言って、レジナはやはり訂正した。


 「あ、いや、やっぱりキャンセル待ちはしないです。明後日の一番早い便でお願いします」


 三十便が十分の一にまでなっているとなると、キャンセル待ちは望み薄だ。

 なら確実に乗れる奴の方が良いと判断した結果だった。


 「分かりました」


 そんなこんなで手続きをして、三人は受け付け所を出る。

 

 「次は、宿か。

 空いてるといいんだけど」


 おそらく、レジナ達のように思わぬ足止めを食っている観光客がそれなりにいるはずである。

 となると、あまり期待はできない。

 しかし、出来るならそこそこの宿に泊まりたかった。

 

 「あ、あの!」


 とりあえずこの街にも観光案内所があるので、そこで聞いてみることにした矢先、可愛らしい声が掛けられた。

 見れば十歳前後の獣人の少女が、目に涙を溜めて三人を見ていた。


 「こ、この街に、観光にきた方ですか?」


 どこかオドオドした感じの猫耳の少女だった。


 「それが?」


 「あ、あのあの!

 わ、わたしを買ってください!!」


 「君、奴隷?

 じゃないか、首輪も鎖もないし、商人もいないし」


 「あ、えと、そうじゃなくて!

 が、ガイドなんです!」


 「ガイドって、この街の?

 ここって観光するところあるの?」


 アーサーが怪訝な表情をした。


 「あります!

 足湯とか、勇者王様の隠れ湯とか!

 温泉まんじゅうが美味しいお店もご案内できます!!」


 すごく泣きそうな顔で言われてしまう。

 まるで、三人がその子を虐めているようだ。


 こういうことは、基本レジナかアーサーの担当なので、カガリは成り行きを見ているだけだ。


 「それじゃあ、お願いしようかな。

 その隠れ湯って、あたし達でも利用できるの?」


 「あ、ありがとうございます。

 えとえと、はい!

 足湯と、露天の両方があって露天の方は混浴になってます!」


 「と、ごめん順番が前後したんだけど、ガイド料金ってどれくらい?」


 「あ、き、決めてなかった、です」


 アーサーが不思議そうに訊ねた。


 「ガイドなのに?」


 「その、私、組合に登録してなくて。でも、お金稼がなきゃいけなくて、でも、誰も雇ってくれなくて」


 そして、おいおい泣き始めてしまった。

 さて、どうしたものかと困り顔のレジナ達に今度は別の方向から、また声がかかった。


 「おい、なに虐めてるんだ!」


 三人がそちらに振り向くと、五人の少年少女が非難がましい視線を向けていた。

 ちなみに、少年が一人の少女が四人のグループである。

 アーサーが、物凄く嫌そうな顔をしてカガリの腕を引っ張って横に退避する。

 

 「はい?」


 「その子を泣かせていただろ!」


 「いや、泣かせてなんていないけど」


 戸惑いながら、レジナは退避したアーサーを見た。

 アーサーも困り顔である。


 「現に泣いているじゃないか!!」


 レジナは今度は自分たちに声を掛けてきた、獣人の少女を見た。

 その少女も、かなり当惑しているようだ。

 ただ、自分のせいで何故かレジナ達が非難されているのはわかったらしい。

 なので、


 「ち、ちがうんです!

 この人たちはーー」


 理由を説明しようと少女が声をあげる。

 しかし、その声など無視してツカツカと少年が少女に歩み寄ってきた。

 レジナを押しのけて、少女の目線に合わせて会話を始める。


 もう大丈夫、本当のことをいってごらん、等と思い込みをふんだんに込めた会話を一方的に始める。

 その間に、レジナは退避していたアーサー達のところへ移動し、そちらを見ながら口を開いた。

 ただし、声は小さい。


 「なにあれ?」


 「最近多いんだよ。ああやって話してたら勘違いだけで会話に割り込んできて、糾弾されるの。

 お前と久しぶりに顔合わせた時は、飛び蹴りだったけどな」


 「なに、新種の美人局?

 それとも、新手のナンパ?」 


 「わからん。

 ただ、傭兵仲間や知り合いの冒険者から聞いた話じゃ、勇者の召喚が頻繁になったあたりで、こういったことが増えてきたらしい」


 「斬新な当たり屋とか?」


 カガリがそう呟いた。


 「かもな。

 どちらにしろ、いい迷惑だ」


 「同感。あの子には悪いけど、さっさとこの場からお暇しよう」


 レジナの判断に、二人は異論は無いようだった。

 と、声を掛けてきた獣人の少女と目があう。

 ジェスチャーで謝って、その場を去ろうとするが少年の仲間らしき少女達によって邪魔されてしまう。

 多種多様な美人揃いだ、鬼人、エルフ、兎の獣人、そして人間。

 年の頃、十代半ばから少し上といった所だろう。


 少女たちを代表するように、人間の少女がずいっと前に出てきた。


 「やましいことが無いなら逃げないでください」


 「逃げてないでしょ、会話の邪魔になりそうだから席を外そうとしてるんだよ」


 「それを世の中では逃げる、というんです。

 役所に突き出しますから、大人しくしておいた方が身のためですよ」


 「なんで?」


 話が突拍子も無さすぎて、レジナは首を傾げる。


 「あのような幼女に暴行を働いたのですから当然だと思いますが?」


 

 ハア~~~~~~~。


 盛大なため息を吐いて、レジナは頭痛がしてきた。

 おそらく、彼女たちには【頭痛が痛い】と言っても会話が成り立ちそうだ。


 「あのねー、あの子のどこに暴行の跡があるって言うの?

 無いでしょ?

 変な言い掛かりは」


 「言葉による暴力ですよ。

 貴女は彼女を言葉によって傷つけた、だから泣いていた。

 違いますか?」


 全くもって違いますよ、バカですか、バカなんですか?

 そう言いそうになって、すんでのところで止める。


 「だから、変な言い掛かりはやめてほしいんですけどー。

 というか、これ以上は時間の無駄なんで、彼女のことは貴方方でお好きなようにしてください」


 もう面倒くさすぎて、レジナは棒読みでそんなことを言ってその場を立ちさる。

 それを阻もうと、代表の人間の少女や他の少女達が動こうとする。


 「いたいけな幼女を泣かせた犯罪者をみすみす逃すとでも?」


 「いや~、逃さなくても良いけど~。

 出来る?」


 小馬鹿にしてくるレジナに、四人が彼女を取り押さえようとするが、出来なかった。

 

 「え、なに、これ?」


 「うそ、体が、体が……」


 「動かない?!」


 「卑怯だぞ!」


 レジナがこれ見よがしに、両手で自分の耳を塞いで、アーアーきこえなーいをやりながらその場を立ち去る。

 苦笑しつつ、カガリとアーサーがそれに続いた。

 どうやら、動けないのは少年も同じようで、レジナ達に声をかけてきた少女も、こんな面倒な人の相手はゴメンだとばかりに形だけ頭を下げてその場から立ち去ったのだった。

 

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