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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 トーマとエリシアの二人とは、途中で別れた。

 乗る馬車が違うためだ。


 「うーん、すごいなぁ」


 遠ざかる馬車を見ながら、レジナが呟いた。


 「おい、良いのか?」


 トーマ達の乗った馬車を見送って、温泉街へ目的地を変えたらしいレジナにアーサーは問いかけた。

 カガリも同じことを聞きたかったようで、レジナを見ている。


 「何が?」


 「何がって、先越されるんじゃねーの?」


 「かもね」


 「お前なー」


 レジナはとにかく余裕のようだ。


 「なにか、考えでもあるの?」


 さすがにカガリも気になってそう訊ねる。


 「いや、考えってほどでもないよ。

 でもさー、色んな国が今まで軍隊を派遣してまで探してたものが、冒険者や勇者にそう簡単に見つかるとも思えないんだよね。

 よしんば見つけたとしても、帰りつくまでがお使いなわけだし」 


 「というと?」


 「まぁ、急いては事を仕損じるってヤツだよ。

 さっきのあたしとエルフさんの話聞いてた?」


 「一応」


 「彼女たちもそうだけど、たぶんその集まってる冒険者やら勇者やらは、剣だけを探してる。

 勇者王の伝説や噂話の方だと、ハジマリの地で展示されてた日記には剣の行方について記載されているって話が独り歩きしてる状態なんだよ。

 だから、誰もお墓を見つけようとしていない。

 これは、調べればわかることなんだけど、お墓とともにあるっていう話はファルゼル王国内で勇者王と縁があったとされる場所のみに語り継がれてて、そこから離れると、聖剣のみの伝説になるの。

 フィストリア山脈の話はいい例かな。

 さっきの二人組は、こういった話だとまだまだ新人さんなんだろうね」


 「新人?」


 ますます意味がわからなくて、カガリは首を傾げる。


 「一日二日、半年、いや長くて一年。

 でも、見た感じ数日から一週間ってところかな」


 「はい?」


 「神話や伝説について調べた期間。

 勉強した時間といいかえても良いよ。

 二年以上、五年未満だったらまだわかるけど、あの子達は新人なんだよ。

 フィストリア山脈に手を出すってことがどういうことなのか、わかってないんだよ。

 わかってるなら、わかってたならあんな注意はしないんだよ」


 「ごめん、わかんない」


 「フィストリア山脈はね、下手に手を出せないんだよ」


 アーサーは黙ったままレジナを見ている。


 「それって、どういう?」

 

 「フィストリア山脈はね、昔は別の名前で呼ばれてたんだよ。

 歴史を見続けてきた山。

 歴史の中にあって、ずっとそこに在り続けてきた山々。

 神様の歴史すら見続け、見届けて、悠久の歴史が封じられてきたといわれる神聖な場所なんだよ。

 

 だから昔の人達はあの山をこう呼んだ」


 レジナは遥かに延びる街道の向こうにそびえる、フィストリア山脈を見ながら続けた。


 「世界の記憶が眠る場所(ヒストリア山脈)って。

 あそこには、闇に葬られてきた歴史も眠ってる。

 無かったことになった、起こったことも全てがあるとされてる。

 というのもね、あの山、天にまで届くほど高くて、んで今でも山が生まれ続けてるんだ。

 一部の錬金術士や科学者が言うところの、地殻変動とか火山とか関係なく、一つの時代が始まって、終わるまでに山が生まれ成長し続けるんだ。


 そして、あの山に生きて入って、生きて戻るには条件が必要なんだよ。

 そうでなければ、山に、歴史に喰われるから。


 あの山は歴史そのものであり、膨大な記憶と記録の塊ーー年代記(クロニクル)になってるんだ」


 「なんで、レジナはそんなこと知ってるの?」


 山に入る条件、そして生きて戻る条件があるなんて、カガリは今初めて知った。

 アーサーはとくに驚いていない。

 ということは、知っているということなのだろう。


 「簡単だよ、調べたから。

 ある程度、この世界の歴史を調べて真実に掠るとね、山から使者がくるんだ」


 「…………」


 「今から五年前、あたしはこの世界の歴史と神話、伝説を調べて荒唐無稽な仮説を立てた。

 でもそれが、真実に触れたらしくて、山から使者がきた。

 その使者から、山に入っても良いという許可をもらった。

 そして、あの魔剣(デモン・スレイヤー)を手に入れた。

 それから、あたしは同族の人達と出会った。

 あたしと同じで歴史や神話、伝説が好きな人達。

 んで、山に入る許可を貰えた人達。

 そんな人達と出会った。

 

 そして、今は協力関係にある」


 「協力?

 いや、ちょっと待ってよ。

 山に自由に入れるなら、聖剣の場所もわかるんじゃ?」


 そこで、アーサーが補足してきた。


 「違う、使者は山に入る許可を出すだけで宝物の場所を教えてくれるわけじゃないらしい。

 ……だよな?」


 アーサーもまだその使者に出会ったことはない。

 しかし、一部の都市伝説好きの間では有名な話だった。

 ただ歴史や伝説を本格的に研究する学者の間では、笑われる内容でしかなく。

 

 そうやって、実際に使者と接触するものがいて、そのことを口外しても誰も信じてくれないのが普通である。

 

 「そう。

 だから、って言い方も変だけどさカガリもアーサーも、あたしに着いてくるっていう名目ならギリあの山に入れるはずだよ。

 まぁ、アーサーは元々この話を信じてくれたしね。

 カガリも、少しは信じてくれてると思うし」


 正直なことを言ってしまえば、信じる信じない以前の話で、カガリの頭はキャパオーバーを起こしていた。

 だから、とりあえずレジナが言うならそうなんだろうなぁ、あと異世界だし程度で思考が止まっていたりする。


 異世界ならなんでもアリ的な考えが、カガリの中にあったことも幸いした。


 「そういえば、さっきレジナがあの二人組のこと凄いって言ってたのはどういう意味?」


 カガリに訊かれて、レジナはクスクスと楽しそうに笑って返した。


 「あぁ、大した意味じゃないよ。

 ただ、自信満々。自分たちの力に絶対の自信があるって本当、羨ましいなぁって思っただけ」


 「?」


 「無知が悪いとは言わないよ。

 でもね、あの子達は自分が正義と思ってる気がする。

 だから、きっとあの場所で何かしら触れても否定する可能性が高い」


 アーサーもフィストリア山脈には足を踏み入れたことはない。

 だから、レジナの説明を奇妙に思って訊いた。


 「どういうことだ?」


 「あの山で、何かの記憶、歴史に触れたら絶対やってはいけないことをしそうだなって思ったんだ」


 レジナが温泉街へ向かう馬車の手続きをするために歩き出す。

 受け付け場所はすぐ近くだった。


 「絶対、やってはいけないこと?」


 「なんだそれ?」


 カガリとアーサーが順にきいてきた。

 受け付け場所である建物へ向かいながら、レジナは答える。


 「言ったでしょ?

 フィストリア山脈は歴史であり記録のかたまりだって。

 つまり、あそこにはいろんな視点での歴史があるってこと。

 それこそ、真実がね。

 誰かにとっての勝利の歴史は、誰かにとっての敗北の歴史だよ。

 記録のうえで、歴史が勝利者にとって都合の良いように改竄されてるってのもよくあることだしね。


 あそこには、改竄される前の記録があるってこと。

 エルフの一部には、人間たちに迫害されたことを未だに根に持つ世代がいるけど、じゃあ、なんでエルフが迫害されるに至ったか、って話を持ち出すと逆ギレして歴史にも記憶にもさらに改竄が加わることになる」


 「ごめん、わからない」


 「エルフの歴史については今度教えるよ。

 つまり、ね。

 自分達の歴史こそが正史。それ以外は改竄されたニセモノの歴史ってなって話を聞かなくなるんだ。

 だって、自分達の正しさを否定することに繋がるから。

 あの山で歴史に触れる、つまり、あの山に手を出す時、絶対に否定をしてはいけないんだよ。

 あの山はこの世界のどんな歴史書よりも、どんな年代記よりも正確な記録だから。

 それを否定するってことは、今自分たちが存在していることを否定することになるからね。


 だから、あの山で自分たちにとって都合の悪い歴史に触れて、それを否定した存在は、今度は世界から消されるってこと」



 「なんか、こわい」


 「真実が綺麗なものなんて保証はどこにもないんだよ」


 またレジナがクスクス笑った。


 「そうだ、ついでに聞いてもいい?」


 「なに? カガリ?」 


 「その使者ってどんな人なの?」


 「どんな?」


 「服装とか、そもそも人間の形をしてるのかとか」


 「あー、そういう意味ね。

 うん、と。黒スーツ姿で色眼鏡ーーサングラスをしてて、スキンヘッドの男の人が多いらしいよ。

 あたしのとこに来たのも、その格好の人だったし」


 (メン・イン・ブラックだ!!

 メン・イン・ブラックは異世界にもいたんだ!!)

念の為に。

メン・イン・ブラック、あるいは黒衣の男。

元々は海外の都市伝説。

本来の都市伝説の方ではUFOの目撃者宅に押しかけ、見たことを口外するなと脅しをかける男性達のこと。

複数で行動している。


作中にあるように、説明するわけではない。

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