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Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
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 出回っていた手配書は、その日のうちに回収されたようだ。

 三人の中でそのことを何よりも喜んでいたのは、カガリだった。


 「ああ、牛さん豚さん鳥さん美味しく食べさせていただきます」


 女装せずに、堂々と野生のものではなく、きちんとプロが処理し調理した食事をすることの有り難さを味わっていた。


 「さて、と。

 とりあえず、これで気兼ねなく聖剣探しが出来るわけなんだけど」


 とある宿の部屋に料理を運んでもらって、料理がそろったことを確認してからレジナはそう口を開いた。


 「ただ、懸案事項がぜんぶ片付いたわけじゃないんだよね」


 「?」


 「今のところ、魔族側に君のことは知られてないみたいだけど、知られた時にまたあの魔族がお仕事にきそうだからなぁ。

 だから、いつ来ても良いようにさっさと聖剣を手に入れよう!」


 その言葉に、カガリは思い出す。

 あの時、元クラスメイトが目の前で殺された時。

 あの魔族は、カガリのことは殺さなかった。

 元クラスメイトが泣き叫びながら命乞いをしていたのをおもいだす。

 あの魔族の青年ーーエルブドゥーゼはその首を淡々と切り飛ばした。

 その後、カガリには目もくれず立ち去ろうとした。

 今思えばどうして、そのようなことをしたのかカガリにも不思議だったのだが、彼はエルブドゥーゼに声をかけた。


 『俺は、殺さなくていいのか?』と。


 そう声を掛けた。

 

 『俺も勇者として召喚された人間なんだけど』と。


 すると、エルブドゥーゼは面倒くさそうに一言だけ返してきた。


 『業務内容にないし』


 つまり、今回の襲撃に関しての彼の仕事は王族パーティに属する転移してきた者達だけを目的にしていたようだ。

 必要以上の仕事はしたくない、という副音声が聴こえた気がした。


 「あー、レジナ。

 そのことなんだけど」


 言いにくそうに、カガリはやり取りを報告する。

 怒られるかなとも思ったが、意外とレジナの反応は軽い、というか薄かった。


 「えー、わざわざ自分からネタばらししたの?」


 「う、うん。やっぱり不味かったかな?」


 「どうだろ?

 何ともいえないなぁ。

 向こうからしたら脅威にならないと判断したのか、もしかしたら」


 「?」


 カガリが不思議そうな顔をして、レジナを見る。

 彼女はコーンのスープを一口、スプーンで掬って口にする。


 「あたしのせいかも」


 最初からお代わりのことも考えて五人前のパンを注文しており、それをガツガツ頬張っていたアーサーも不思議そうな顔をしてレジナを見てくる。


 「ちょっと強力な攻撃魔法使ったから、カガリよりあたしのことを危険視した可能性も無きにしも非ず。

 いや、わからないけどね。

 これから、改めて命令されて襲撃してくることもあるかもだし。

 ただ、単純にカガリの情報が魔族側に行ってなくて抹殺目標から外されただけかもだし」


 つまり、考えたところでわからないのだ。

 無駄とは言わないが、生産的な答えが出てくるわけでもないので、この話題ーー魔族に関する話題はこれで終わりになった。


 「そういや、あの時一瞬空が暗くなったかと思ったら、爆発したような。

 あれ、お前の魔法だったのかよ」


 アーサーは薄々勘づいていたのだろう。

 呆れながらも、その口調は確認しているようだ。


 「うん」


 サラダをモサモサ食べながら、レジナは頷く。


 「久々に神聖魔法使った」


 「危ないことしてんな」


 そんな二人の会話に、カガリが口をはさむ。


 「シンセー魔法って?」


 アーサーが噛み砕いて説明する。


 「うん?

 あぁ、現代の魔法でも最高位だとされる魔法だよ。

 めっちゃ強力。

 それこそ、使用者一人いれば国一つ消せるほどの攻撃力というか火力がある。

 ただ、扱いが難しくて謎が多い魔法だから使える術者は限られてる。

 ぶっちゃけ覚えれば、一生食うに困らない仕事に就ける」


 「って言えば聞こえは良いけど、それってどっかの国の研究機関で一生籠の鳥生活ってことだからね」


 レジナが補足した。

 それを聞いたカガリは、たしかにレジナの場合、そんな生活は似合わないというか出来ないだろうと妙に納得してしまった。


 「どちらにしろ、わからないことをこれ以上考えても仕方ないし。

 相手が魔族なら、なるべく早く対抗手段になる聖剣を手に入れるに越したことはないしね」





 「へ?」


 手配書が撤回、回収されたことで堂々と乗合馬車にも乗れる。

 三人は、馬車と竜車を乗り継いでフィストリア山脈に一番近い村の一つに向かっている途中だった。

 それも、あと二つ大きな街を通ればというところで、その話を聞いたのだ。

 ガタゴト揺れる馬車の中、乗り合わせてその話を三人にしてくれたのはレジナやカガリより少し年上で、アーサーより少し年下という少年と、少年と同い年くらいに見えるエルフの美しい少女の二人組だった。


 少年の名前はトーマ・タナカ、エルフの少女の名前はエリシア・フェミリオンと言うらしい。


 少年の名前を聞いて、カガリは少なからず動揺した。

 名前はともかく、タナカという姓はこちらの世界では珍しいものになるからだ。

 おそらく、転移者なのだろう。

 わざわざ確認はしないが。

 トーマの顔立ちも、カガリが見慣れた日本人のそれだった。

 象牙色の肌に、のっぺりとした顔立ち。

 こちらの世界の人達は、基本西洋の国の人達と同じで彫りの深い顔立ちの人が多い。

 カガリが名前を名乗った時、トーマもやはりという表情をしていた。

 だからか、


 「ところで、カガリさんはどちらの出身なのですか?」


 おそらく探りと思われる質問をぶつけられた。


 「えっと」


 わざわざ話の腰を折って、トーマはそう聞いてきた。

 カガリはどう答えたものかと、迷う。

 そこに、レジナが口を挟んだ。


 「女の子より先に男の子の情報を聞くなんて!」


 物凄く意味深に聞こえる声でレジナが呟いて、エルフの少女エリシアを見る。


 「頑張って!」


 主語を抜かしてレジナがエリシアを見ながら言った。

 勘が良いのだろう、レジナがトーマについて変な方向で勘違いしたと当の本人が気づいて、訂正してくる。


 「えーと、レジナさん?

 変な誤解をしないでください」


 そこですかさず、アーサーが会話に加わった。


 「それより、フィストリア山脈に冒険者が集まってるって、本当なのか?」


 それに答えたのはエリシアだった。


 「ええ、皆さんは勇者王の伝説はご存知ですか?」


 三人はそれぞれうなづいて見せる。

 カガリも、その伝説については寝物語のようにレジナから聞かせられていたので、覚えてしまった。


 「では、フィストリア山脈に勇者王の剣が眠っているという話もご存知で?」


 「もちろん。オカルト好きや伝説好きには有名すぎる話ですから」 


 レジナが楽しそうに答える。

 反応を窺うように、さらにエリシアは続けた。


 「その剣を探そうと、今世界各地から冒険者や神の世界から召喚された勇者様方がフィストリア山脈に集まっているそうです」


 「なんでまた?」


 「魔族の動きが活発化しているというのが、一番大きい理由でしょうか?

 つい最近も、このファルゼル王国内で召喚された勇者様達が魔族によって殺害されたと聞いています。

 似たようなことが、今あちこちで起きているんです。

 それで、各国は冒険者に聖剣の行方を調査するクエストを破格の金額で依頼しているのです。

 同時に勇者様方も、伝説の聖剣を手に入れて魔族への対抗策にしようと動いているのです。

 その手がかりとされるものも、歴史的史料としてファルゼルにはあったらしいのですが、それを展示していた場所が魔族に襲われ失われたらしいです。

 幸いそれは複製品だったということですが、オリジナルは厳重に保管されていてたとえ勇者であろうと閲覧することができないということで、少ない手がかりと噂を信じて、フィストリア山脈に人が集まりつつあり、聖剣探しをしているとのことです」


 「なるほど。

 あそこはどこの領土でもないから、好き勝手入れるらしいからね」


 「はい。貴方方もそう言ったクエストを受けたのでは?」


 レジナはパタパタ手を振って、答えた。


 「いや、クエストは受けてないけど、そう言った話が好きで。

 話のタネに探してみよっかー、みたいな感じで向かってた途中」


 レジナの答えが軽すぎたのか、エリシアは少しムッとしたようだ。


 「そんな動機で行っても、他の方の迷惑になるか山に喰われるだけです。

 観光だけにした方が良いと思いますよ?」


 意訳すると、お前らミーハーかよ、帰れ帰れと言った所だろうか。

 しかし、レジナはとくに気分を害したようではなく、ニッコリ笑って返した。


 「まぁ、たしかに。遊びで行く場所でもないか。

 近くに評判の良い温泉街があるらしいし、そこでゆっくりするのも良いかなぁ」




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