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適任

「司令。ご無事でしたか。艦橋昇降機前の隊員からこちらだと。艦橋への侵入を防げず申し訳ありません。」

司令公室を出ると、艦橋方面から日野がやって来て、頭を下げる。

「奇襲だから、仕方ないよ。で、日野さん。部屋の中に男がいる。今は気絶してるが、処置を頼みたい。艦内の様子はどうだい。」

「お一人で倒されたんですか。」

驚く日野に多田野は気恥ずかしくなって笑うだけにとどめたが、それを見て井上が割って入った。

「はい。司令が男の顎を銃で思いっきり殴って倒してしまいました。」

「司令。部屋に銃があったのですか。」

と日野は部下に男を捕縛するように命じる。

「マグス司令から頂いたのがあったんだよ。で、艦内の様子は。」

「ああ、あの時の。あ、申し訳ありません。艦橋以外、艦内に侵入した敵はおおむね排除し、残党捜索のため、第一種警戒態勢を取らせています。ただ、機関室に爆発物が仕掛けられているのを発見しました。」

「早いな。で、仕掛けられた爆弾の解除は。」

「陸戦隊の展開が早くできましたので。爆発物の方は砲術科の連中を呼びましたが、あまり芳しくなく。位置が位置ですので、場合によっては艦を放棄することも。」

多田野は時計を見た。

「あと、45分はある。何とかならないか。」

日野も自分の時計に目をやって答える。

「いえ、司令。総員退艦の事を考えると後30分が限度かと。全力でやらせます。」

ここで多田野はあることをひらめいた。

「いや、適任者がいるぞ。」

「適任者とは誰ですか。ただ、艦外への通信は艦橋で傍受されてしまいます。」

「大丈夫。捕虜の中に爆弾に精通してる者がいたはずだ。」

「捕虜の中にですか。取り調べたものに確認します。」

「いや、時間が惜しい。確か…。」

多田野が思い出そうとしていると、不意に井上が手を挙げた。多田野は発言するように促す。

「連続爆弾魔のジョセフ・アーイですね。司令。」

「そうだ。よくわかったね。井上くん。」

多田野に褒められ、井上は満面の笑みになって髪の毛を揺らした。

「いえ、捕虜の方々の見張りの交代順の申請書がきておりましたから。」

「ですが、敵国のしかも捕虜ですよ。協力しますかね。」

日野の言う通り、多田野もその点は懸念していた。賊が捕虜を助けに来たかもしれない以上、協力を拒む可能性はあると。

「お願いしてみる価値はあるだろう。砲術科には作業を続けてもらって。」

「かしこまりました。機関室に伝令を頼む。」

日野が後ろにいた兵士に伝令を頼み、そのまま多田野たちは営巣に急いだ。敵は営巣には目もくれずに行動しているようだった。多田野の命令に若干、暇そうに見張りをしていた兵が言う。

「ジョセフ・アーイ。前に出なさい。」

「なんだか騒がしいようだね。なんだい。話なら私が聞くよ。」

直ぐに、ニキータがジョセフをかばうように前に出てきた。

多田野は営巣のカギを開けるように頼んだ。そして、日野が止めるのを手で制して営巣の中に多田野は入った。

「ニキータさん。実は、艦内に賊が入って機関室に爆弾が仕掛けられた。アーイさんに解除して欲しいんだ。お願いできないか。」

多田野は、ジョセフに頭を下げた。

ジョセフは無言のままニキータの隣にきて、ちらりとニキータを見た。ニキータは思案するように腕を組んだが、しばらくして決心したようにうなずくと、ジョセフの背中を思いきり叩いた。

「真っ先にここに来ないところを見ると、奴ら、私たちを救いに来たわけじゃないだろうしね。また水浸しも勘弁だ。いいよ。ジョセフ。協力してやんな。」

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