暴露
多田野はニキータを司令公室に呼んでいた。
「司令自ら、早速、尋問かい。煙草をいいかな。」
「いや、ちょっとお話をと思っただけですよ。すみません。僕は煙草は吸わないので。でも、紅茶はお出しできますよ。」
多田野は久しぶりに自ら2人分の紅茶をいれた。ふたりで話したいと井上は艦橋に用を作って遣っていた。多田野はニキータが、なぜ挑発的な態度を取っているのかが気になっていた。
「そうかい。」
ニキータはニコリとして紅茶を受け取る。
「にしても、だいぶ、猿渡艦長を困らせたようですね。それに皆さん、軍人ではないとか。」
「そうだね。さっきわかったろ。だって、みんな、アメリアで、終身刑以上の囚人さ。それなりに変わったやつばっかりで、特にジョセフなんかは特に無口でパッと見た感じでは、何考えてるか分からないからね。いいヤツだけどね。」
「仲間思いですね。」
「そりゃ、あの3ヶ月の促成訓練に耐えたんだ。絆もできるさ。それに私を艦長にしてくれてるんだ。」
「してくれているとは。」
「私らに軍隊みたいな階級は必要ないんだよ。だから私は強くなきゃならない。みんなをまとめていけるようにね。」
多田野はニキータが皆をまとめるために、わざと反抗していたことを察した。
「そうですか。ところで、潜水艦からどうやって脱出を。」
多田野は気になっていたことを聞いた。なぜ海の棺桶から脱出できたのか。
「浅い海域だったからね。私の提案で魚雷発射管に2人1組になって入って、残った圧縮空気で射出されたんだよ。」
「なるほど。そうですか。それは大変でしたね。」
「脱出すら出来なかったやつもいるから大変とはいえないさ。」
「それも艦長のつらいところですね。私も部下を亡くしましたのでわかります。」
多田野の脳裏に山崎一水の姿が浮かぶ。
「そうか。司令さんも。部下をなくしたか。歳も若いし艦を纏めるのは大変だろう。」
「そうですね。でも神城艦長や猿渡さん、優れた仲間がいますから。」
「仲間か。」
ニキータはなにか思案するように紅茶に口をつけた。
「いいこと教えてやるよ。」
「いいことですか。」
ニキータは少し前のめりになって小声になる。
「ああ。ゼン島には水雷源があるらしい。気をつけな。あの辺の海域は深い青色で目を凝らさないと水雷源を発見できないからな。無論、通常航行用の切れ目もあるらしいがな。」
「水雷原ですか。何故私に教えてくれるのですか。利敵行為にもなりかねませんよ。」
先の大戦を受けて制定された国際的捕虜取り扱い条約によって捕虜は名前と所属さえ言えばいいことになっており、作戦内容の漏洩などは本国に帰ってから利敵行為と見なされかねないことを多田野は指摘したのだった。
「なぁに。同じ艦長のよしみさね。」
そう言うとニキータは静かに残りの紅茶を飲み干した。




