出撃
事前演習に課題は残ったものの、海軍と陸軍近衛隊の御前会議は二階堂の事前の根回しが功を奏し、前回とは反対に穏やかなもので終わり、いよいよ多田野達は出撃の朝となった。多田野以下、第13艦隊は陸軍近衛部隊と本作戦の為に本国から回航してきた工作艦アカシに技術顧問としてメルルを加え、総勢10艦での出撃だった。
「艦長、司令。出港準備整いました。」
日野の報告に立って外を眺めていた多田野は司令官席に座った。
「ありがとう。副長。全艦微速前進。先行している遠藤艦隊に続け。」
「微速前進。こちらには艦隊行動に慣れない陸軍艦もいるわ。各艦、艦の間隔に注意して。」
彰子が多田野の指示に補足しながら命令を復唱する。多田野にとって、こういう所は本当に有難かった。
ゆっくりとアサマが岸から離れ海へと出ていく。第13艦隊の各艦も同じように離岸していく。
「しかし、いくら大本営の指示とはいえレブをがら空きにするのは心もとないですな。蓮子殿下もいるわけですから。」
と日野がぼやく。
「がら空きでは無いわ。モロ島守備艦隊がいるから。」
彰子が日野の発言をすかさず訂正した。
実は、事前の作戦概要とは異なり、アリークが率いていたモロ島の守備艦隊は言語の違いなどによる諸事情から今作戦には参加せず、モロ島とレブ島の守備につくことになっていた。その実、苦肉の策で、遠藤が何とか残した直接的防衛戦力だった。
「駆けつけるのに最悪3時間はかかりますよ。」
「3時間とは言え、いないよりはいいだろう。哨戒してくれれば、牽制にはなる。それに水上戦力は遠藤司令が何とかしてくれる。我々は迂回と上陸作戦に集中しよう。」
蓮子殿下の退避の事も、切り札である赤色弾の事は言えないので多田野は歯切れの悪い答えとなる。第13艦隊の面々はレブ島が故郷であるものが多いので、日野の反応も当然のものだと言えた。
「作戦が開始された以上、文句を言っても始まらないでしょ。」
「はい。艦長。すみません。進路に索敵機飛ばします。」
「言いたいことはわかるよ。副長。索敵機よろしく頼む。」
多田野はそう言って宥めるしかなかった。




