予感
遠藤が帰った後、多田野は直ぐに彰子たち参謀を招集した。
「わざわざ遠藤司令がお見えになり、その後すぐに我々をお呼びになったということはあまり良いお話ではなかったと。」
さすがに彰子は参謀長を務めるだけあって鋭いと多田野は思ったが、これからする話が悪い話というのは3人ともに予感してるようだった。
「ああ、正式な作戦指令はまだだが、南方攻略作戦の作戦開始日時が決定された。我々は一週間後の午前8時に出撃する。」
「え。あ、しかし。司令。遠藤司令と話し合って作戦は事実上無期限延期にするというお話では。まさか遠藤司令は承知されなかったのですか。」
「いや、二階堂君。遠藤司令に限ってそのようなことは無いはずだ。大本営が動きましたな。南方作戦に新たな作戦指示書が来ると。」
と猿渡が言った。
多田野は頷いた。
「しかし、司令。レブ島とモロ島の防衛を考えると出せる艦艇はやはり少ないのでは。」
と彰子が言う。
「今回は防衛のことは一切考えない。南方海域にいる艦艇の全力出撃となる。」
「殿下の護衛は?」
「連絡機にて秘密裏に本国へ退避される。」
「そんなむちゃくちゃな。士気に関わりますよ。軍令部は何をやってるんだ。」
二階堂が思わず声を荒らげた。
「無茶苦茶な作戦だが、正規のルートでの命令だ。断る訳にはいかない。もちろん、参謀として反対してもいいが。」
やはり説得は難しいかと多田野は困ったように言った。
「解任の上、本国送還ですかな。私も個人的にはこの作戦には反対です。しかし司令もお辛い立場。それを支えるのが参謀だと思っております。」
「猿渡大佐。助かります。」
と多田野が頭を下げると、猿渡は少し照れくさそうにいやいやと手を振った。二階堂がメガネを直しながら続く。
「自分も反対ですが、司令にはついて行きます。」
多田野は安堵しながらも後は参謀長だけだなと思ったが、その心配はなかった。
「では、我々の任務ですが…。」
彰子がさも当然とばかり、そう聞いた。多田野は嬉しさを抑えながら咳払いを一つする。
「陸軍の護衛と上陸支援といった所だろうか。敵主力との海上戦闘は遠藤艦隊が行い、我々は戦闘海域を大きく迂回して敵本拠地を直接叩く。」
「わかりました。細かい作戦立案は私と猿渡大佐とでやっておきます。」
「自分は遠藤艦隊や陸軍との調整に入ります。陸軍にもかなり細いですがコネはあるので。」
3人は頼もしくそれぞれの仕事へと入っていった。




