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思惑

御簾を上げた蓮子は北村を見た。すでに他の幕僚たちは退席し、部屋の中には蓮子と北村しかいない。

「妾は北村の言う通りにしたまで。これでよいのだな。」

北村は頷いた。

「ご聖断、感謝致します。これで隊内の強硬派も大人しくするでしょう。」

「北村、この戦勝てるのか?妾は逃げて来たのではない。本来なら攻勢に転じるべきではないか。」

「勝たなくてはなりませんな。そのためにはまず、海軍兵力の増援を得なくてはなりません。」

近衛隊内には切り込みで離島攻略を狙う主戦派が多く、先ほど北村の横に座っていた男もその一人だった。今回の御前会議がそうした主戦派を押さえつけるための蓮子も北村の計略ということは分かっていた。蓮子とて戦争がしたいわけではなかった。

「海防艦では不足か。」

「ですな。北戦線が落ち着けば遠藤艦隊が戻ってくるでしょう。」

「ロビエトアがそう簡単に戦争をやめるものか。」

自ら宣戦布告したロビエトアがその戦争をやめるとは蓮子は思えなかった。北村は自信ありげにその狐のような目つきをさらに悪くさせる。

「ロビエトアとて、勝てない戦ならしません。すでに国際世論も調整済みです。遠藤艦隊が二ヵ月も持ちこたえれば、北戦線は下火になるでしょう。」

「国際世論。お得意の調略か。それでアメリアも何とかならんか。」

北村は蓮子のそばで、近衛を率いるだけでなく、外務大臣をはじめとする外交畑の政治家と親しく先の大戦でも独立を守るために国際世論の形成や各方面の交渉をやっていた。

「無理でしょうな。我が国とアメリアの間にはわだかまりが多すぎます。貿易不均衡問題や、ここ南方の権益。長年の恨みつらみが爆発したんでしょうな。先の大戦でどちらにも与せず、独立を守り抜いたことも遠縁にあるでしょうね。あそこは常に強国でありたい国です。」

「難しいな。」

蓮子はつぶやくように言った。北村がにやりと笑う。

「難しい仕事はこの爺めの仕事でございますゆえ、殿下は常に上に立つものとして…。」

蓮子は不機嫌そうに北村のセリフを取った。

「それにふさわしい言動・行動をせよ、だろ。わかっている。耳にタコができそうだ。」

北村が満足そうに頷く。

「御意にございます。今後一切、勝手に多田野司令の船に乗り込むなどしないことですな。」

蓮子は膨れるしかなかった。

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