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「いかがなさいますか。様々な飲み物を御用意出来ます。巳神様が自由に飲んでいいと」
地下BARのカウンター席。そこが一番端の席であり、横並びは全て予約で埋められていた。勿論、埋めたのは巳神史郎だろう。
他のテーブル席は一般の客達が会話を楽しんでいる。客も外国人が多く、日本語が聴こえてこない。
ここで内密な話をしても、日本語で話せば、理解出来る人間は少なそうだ。
とはいえ、シティホテルの地下BARのマスターは日本人。勿論、口は堅いのだろう。巳神の名前を出している以上、贔屓のBARなのかもしれない。
黒服はBAR内にはおらず、ロビーで待機している。巳神史郎を出迎えるためなのか、警戒を怠らないのもあるだろう。
「コーヒーや紅茶等があれば」
巳神が自由に飲んでもいいと許可したとしても、こちらだけが飲むのは違っている気がする。
彼がカシムに頼むのであれば、重要な依頼のはず。酒を飲みながら聞くべきではない。
俺を信用するべきかのテストを兼ねている可能性もある。
「かしこまりました。それでは珈琲を。ブレンドで宜しいでしょうか。ご一緒に軽食も用意出来ますが?」
「ブレンドだけで」
マスターがコーヒーの準備を始める。メニューの中には酒のアテになるチョコやナッツ、チーズがあり、軽食にはサンドイッチやパスタ等がある。
彼に会う前に食事は軽く済ませているので問題ない。
「探屋真実さんですね。私の都合に合わせて貰い、感謝します。巳神史郎です。」
巳神史郎が地下BARに到着。
彼が地下BARに足を踏み入れた時、BAR内が静かになった。
見るからにして貫禄のある姿、雰囲気があり、思わず視線を向けてしまう。俺もその中の一人だ。
「いや……こちらも早く来ていたので。探屋真実です。カシムの代役を引き受けて来ました」
「聞いています。小さな個人事務所ながらも、優秀な探偵ではあると」
含みのある言い方だ。カシムがどう説明したのか。他にも有名な探偵事務所はあるのは確かだ。
師匠がいた探偵事務所がそれだ。俺も独立するまではそこで働いていた。優秀な人材も豊富で、連携が取れるメンバー達が揃っている。
俺と師匠だけが特殊で、単独行動や二人行動が多かった。危険な依頼が主だった事もある。
「頼んだのはコーヒーか。なら、私も同じ物を頼む」
「承知しました」
マスターが俺の前にコーヒーを置いたのを巳神史郎は見て、同じ物を頼み、横に座る。
「勿論、優秀というだけで決めたわけではありません。N市には霊姫探偵事務所がありますからね」
カシムは俺を紹介したわけだが、巳神史郎は別の探偵事務所も調べていたようだ。条件次第で、俺が代行するのを断っていたのだろう。
普通は師匠の探偵事務所の方を選ぶ。




