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境界線  作者: Gan
31/33

ー5ー

「霊姫探偵事務所も調べたのなら、何故俺を選んだんですか? 調べたのはカシムの代役が俺になった後ですよね」


「その事務所の評判が落ちているのもある。どうやら、所長の霊姫叶が行方不明になっているようだが」


 通常の依頼は問題ないが、所長と俺が受け持っていた面の方が無理になったのもある。


 巳神史郎は所長が行方不明である事まで調べていたようだ。流石に居場所までは把握していないだろう。


「私が出す依頼にはVR……仮想世界に精通、詳しい者が適任でね。貴方はそちらの依頼も受けている事も教えて貰っている」


「確かに俺は仮想世界の依頼も引き受けていますが、今回の依頼と関係しているんですか? 依頼内容は……」


 俺はそう思っているからこそ、引き受けたわけだが、巳神史郎は何処まで把握しているのか。


「彼女が言った通り、娘が変化した原因の調査だ。娘は興味を示すのはあちら側で、現実には興味がなかったはずだ。何かあったとすれば、仮想世界に他ならない」


 興味があるのは仮想世界だけ。そういう人間がいるのは間違いないが……


「逆に現実へ興味を示したからの変化は」


「ない。娘が見知らぬ誰かと会ったという報告はない」


 巳神真理亜の身辺を警護している人物がいて、その報告から、彼女と怪しい人物が接触する事はなかったと……


「娘の部屋にあるのはVR装置ぐらいだ。大半はそちらで過ごしている」


 大半で仮想世界で過ごしているという事は、現実逃避の可能性がある。


 それを考えると、親との繋がりは薄そうにも思えるが……


 カシムが用意した巳神真理亜の写真も、変化前だと想像出来る。


「そこまで分かっているのなら、俺やカシムに頼らなくとも」


 仮想世界に原因があると考えているのなら、彼女の部屋にあるVR装置を調べて、どの世界なのかを把握。そして、自身で直接入れば問題ないはず。


 彼自身でなくとも、黒服達がいる。エルドラド国の外交官であるなら、仮想世界の事は俺よりも……


「私が仮想世界に……無理な話だ。私は外交官であり、技術者ではない。詳しい事は分からない。それだけでなく、仮想世界の中に入るのは厳しい体質でね」


 巳神史郎は仮想世界に入れない体質らしい。外交官だからといって、知識もそこまであるわけではないようだ。


 だからこそ、巳神真理亜は仮想世界に逃げ込んだ……という事もあるのか?


 彼の娘を心配する態度は演技なのか。だとしても、依頼するぐらいだ。


「黒服達も私の警護で忙しい。他に頼むしかなかった」


 巳神史郎はマスターからコーヒーを受け取り、一口。俺も同じようにコーヒーを一口流し込む。

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