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「ん……アレは?」
メイド服を着た若い女性がシティホテルへ入場した。
とある喫茶店では見掛ける方ではなく、彼女が着ているのはクラシカル。ロングスカート型のメイド服。
敷居の高いホテルなら、執事やメイドを従えている宿泊客がいてもおかしくはないだろう。
だが、彼女はフロントに向かわず、黒服の元へ。巳神に仕えるメイドだとしても、この場に来る事に違和感がある。
黒服二人は外国人のようだが、メイドの彼女は日本人のように見える。
それも年若い。黒服達よりも一回り下……巳神真理亜本人ではないが、彼女の方が近い年齢じゃないだろうか。
巳神史郎が黒服に連絡を寄越すにしても、同僚の黒服でも問題ないはず。
この二人以外に黒服、ボディガードはいる事は情報屋の写真で確認済み。彼の身に何か起きた場合、救援を求めるためだとすれば納得出来るわけだが……
メイドは黒服二人に頭を下げ、すぐにホテルから外へ。
直前に振り向き、俺に視線を向けたのは気の所為か。
彼等がこの場から移動する事はなく、何かの伝言を伝えに来ただけなのか。
俺はトイレに行く振りをして、メイドの行動に視線を向けた。
彼女は駐車場に向かう。車に乗るが、出発する様子はない。後部座席には誰も乗ってないように見える。
巳神史郎に何かあった場合の移動手段……にしても、黒服も車を使って、このホテルに来たはずだ。
「俺も相手も気にし過ぎだな」
カシムの代行として依頼を引き受けたが、本来の目的は違う。
小鳥遊の死、怪事件の究明。それによって、師匠の情報が得られるかだ。
巳神親子をどうこうするつもりはない。
巳神史郎もカシム本人ではなく、代行となったのなら、様子見をするのは当然だ。
黒服も俺がトイレへ移動すると、こちらに移動する足音が聴こえてくる。
相手も流す音が聴こえた時点で、その場から離れるか、長居した場合は中に入ってきそうではある。
勿論、トイレに長居する気はない。怪しい行動をして、これから会う巳神史郎の印象を悪くするつもりもない。
「探屋様で間違いございませんか?」
「うおっ!! そうですが……巳神史郎の部下……ボディガードですよね。彼に何かあったわけですか?」
黒服がトイレ前で待ち構えており、俺が出てくるなり、頭を下げてきた。
俺の名前を口にした以上、知らない振りをするわけにもいかない。
こちらも巳神史郎の名前を出して、何が起きたのかを把握するべきだ。
約束の時間まで一時間はあるのに、あちらから声を掛けてきたのには理由があるはず。
「史郎様に急遽予定が入り、約束の時間よりも前に話を。探屋様が先にホテルにいる事は、カシム様から史郎様へ伝えていたようで」




