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境界線  作者: Gan
27/33

巳神史郎 ー1ー


 午前九時。シティホテルのロビー前。


 巳神史郎との待ち合わせは午前十一時の地下BARだが、ロビー前の……柱で視界が狭まる位置にあるソファに座り、二時間前ながらも待機している。


 流石に外交官というのもあり、予定も有るだろう。先にBARで待機しているはずもない。


 彼に関してはカシムとは別の情報屋からある程度の情報を買った。


 カシムを信用してないわけじゃない。別の情報屋と掛け合わせる事も必要になる場合もある。


 情報といっても、カシムよりも質は落ちる。ネットで拾える物が多数。写真も複数枚。


 巳神真理亜……家族構成の情報もなし。


 彼女の目や、巳神史郎が外交官をしている事から、母親がエルドラド人と思っていたが……不明のまま。


 今回の小鳥遊の事件で、巳神史郎……巳神真理亜の母親まで調べる必要はない。


 そもそも、小鳥遊が師匠の情報を持っていたかどうか。怪事件になっているかを知るため。余計な情報は少ない方が良い。


「……念の為に先回りはするよな」


 カシムが用意した物とは別の巳神史郎の写真を見る。


 巳神史郎。年齢五十。身長百八十二、体重六十八。巳神真理亜と同じく、眼鏡を掛けている。瞳の色は黒。彼女とは違う。温和な雰囲気ではなく、厳しい表情を見せる事が多い。


 彼の姿だけなら、カシムが渡した巳神親子の写真で事足りる。


「二人か。安全を確認するため、来るまで待機してそうではある」


 シティホテルに黒服の二人が入ってきた。ホテルにチェックインするわけではなく、ロビー周辺の確認。一人はBARに足を運び、十数分でロビーに戻ってきた。


 巳神史郎の付き人……ボディガードだ。


 情報屋の写真には巳神史郎と彼を守るボディガード数名の姿も。


 それは俺が要求しておいたわけだが、予想通りの行動をしてくれている。


 彼等が来た事によって、巳神史郎が待ち合わせ場所に来るのは確定。


 黒服達は周囲の人々を見て回る。当然、柱の影に隠れる形になる場所も見逃さない。


 ただし、俺の姿を発見したところで、彼等はスルーしていく。


 巳神史郎は誰と会うのか、その姿を教えてないのか。


 カシムも俺の写真を彼に送っていない可能性もある。ある程度の情報だけ。俺が隠れて確認する事を彼女が予想したのか。


 いや……黒服は気付いている。


 彼等はホテルマンに話を通し、巳神史郎が来るまでの間、立つ位置を決めていた。


 一人が出入口を警戒するのは当然だが、もう一人は俺が視界に入る場所に立っている。


 顔はこっちに向いてなくとも、視線を感じる。


 声を掛けてこないのは、俺がボディガードの存在を知らないと思っているからだろうが……


 俺も人の事は言えないが、黒服の姿は場にそぐわない。重鎮が来るのを教えているようなものだ。


 黒服が周囲の人達を見たように、その逆も。直視はしないが、チラチラと見てしまっている。

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