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「仮想世界が関係してるなら、私よりも真実の方がいいと思う。明日、巳神史郎と会う約束があるんだけど、真実がこの依頼を引き継いでよ。当然、報酬は真実の物で構わないし。小鳥遊源の事にも繋がってる可能性もあるんじゃないかな?」
「……分かった。その依頼は俺が引き継ぐが……他にも別の誰かの依頼を受けてるな?」
小鳥遊源の兄はコメントに書かれていたらしいが、それも依頼に含んだとして、巳神真理亜の父親からのネット依頼。
二つの依頼がカシムの元に来たわけだが、情報次第で俺の依頼料はタダ。
巳神史郎からの依頼も俺に渡すのであれば、カシムはタダ働きになる。
依頼の引き継ぎに何割かは報酬を求めてくるはずが、それがない。
巳神史郎が小鳥遊源に関する情報を欲するかどうか。
エルドラド国の外交官とはいえ、仮想世界に詳しいとも限らない。
別の誰かからの依頼だと考えてもいい。
「そうだね。けど、誰かまでは言わないよ。真実も話せない事はあるでしょ」
カシムはカクテルを一口飲み、こちらの心を見透かしたように言葉を発した。
依頼人は他にもいる。それも小鳥遊との事件と関わりがあるとは限らない。
「……否定はしない」
「だよね。巳神史郎には真実の事を……優秀な探偵だと伝えておくから。待ち合わせ場所はシティホテルの地下にあるBAR。時間は昼の十一時。遅刻は厳禁。彼の予定が埋まってるみたいだから」
シティホテル。N市の中で一番のホテル。政治家や大企業の社長、有名人が愛用する場所。
俺なんかが泊まれるようなホテルじゃない。
ただし、シティホテルの地下にあるBARは、ホテルの宿泊者以外、一般人にも開放されている。
「彼は一人が来るつもりのようだけど、外交官だからね。ボディガードが潜んでいる可能性もあるし、下手な対応はなしだよ」
外交官ともなれば、何者かに狙われる事も十分ありえる。
それに探偵みたいな怪しい奴が近寄れば、相手は警戒するかもしれない。
だからといって、ちゃんとした服……スーツが事務所にあるかどうか……
「服装や見た目、身嗜みは気にしないでいいよ」
俺が自分の服装を見た事で、カシムも察したようだ。
「巳神史郎が映った写真……風間達のも全て渡しておくから。自身の目で確認に行くでしょ」
「助かる。先程お前から聞いた風では無くなってるんだろ? 小鳥遊の事も直接聞かないとな」
巳神真理亜に関しては、巳神史郎の許可を得るとして、他三人の接近方法を考える必要がある。
「それは真実が好きなようにすればいいよ。情報は以上だね」
カシムが俺に渡せる情報はここまで。いつもなら、ゆっくり話もせず、俺よりも先にここから出ていくのが常なんだが……
「今日は真実以外に会う人がいるんだよ。まだ時間はあるから」
今回、俺が先に出ていく方がいいらしい。とはいえ、折角の酒を飲まないのもマスターに申し訳ない。
「いや……早々に出ていくよ」
俺は残ったブラッディマリーを一気に飲み干した。
「そう? 何かあった時は……解決した時にでも連絡してね」
情報屋のカシムが、俺以外に顧客がいてもおかしくはない。彼女自身の情報が増えるかもしれないが、巳神史郎本人と会う前にある程度の情報を自身の手で見る方を優先する事にした。




